恐るべき旅路 [▼科学ニュース New!]
科学は成功と失敗の連続です。「失敗する」ということを知らないと、成功はありえないのです。昨日は「失敗と復旧」のニュースを紹介しましたが、今日は「失敗に終わったプロジェクト」を追い続けたドキュメントを紹介します。
この本は、火星を目指して奮闘し、そして力尽きた惑星探査機「のぞみ」のたどった12年間の記録です。著者の松浦氏は宇宙へ挑んだ男たちの目線からだけでなく、政治や経済の側面からもこの「失敗」を描き出していきます。
本書の前半は、「のぞみ」の打ち上げまでを描いています。様々なバランスの上のせめぎあいの連続です。既存のノウハウで到達可能な金星に向かうか、新技術を導入してより科学的対象の多い火星に向かうか? 探査機の安全性重視か、観測機能重視か? 工学の「現実」と理学の「理想」のせめぎあいともいえます。結果、「のぞみ」は小さな体に多数の科学センサーを搭載して火星に向かうこととなるのです。打ち上げ後に修理できない探査機の運命はここで決まりました。