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地震の始まりの始まり(6):若者 [▼シリーズ実況【地震のはじまり調査】]




♪きみのーゆくーみちはー
♪はてしーなくとおいー

調査船には、大学生が研究者の一員として乗ってくる場合もしばしばです。
今回も某大学の学生さんが参加しています(調査航海にははじめて参加)。
以下、彼のことを「若者」と呼ぶことにしましょう。
この若者、なかなか面白いヤツです。以下、箇条書き。

・若者は大学のヨット部所属。船酔いには強い、、、とみせかけて、
 出港してから6日目に船酔いでダウン。え、そんな時間差で船酔い?
 っていうかヨット部では…

 (写真1枚目:台風が去るのを青森県沖で待っている。遠くに見えるのは大間。
  右下でスマホを触っているのが若者くん。ここまでは元気なのに、このあと
  突然船酔いに襲われる)

・若者 「ハンダ付け(※)って今回の調査航海で始めて見ました」
  ※電線と電線を接着剤みたいのでくっつける作業。ハンダとコテを使う。
   ただ強度はないので、ハンダ付けしたところを引っ張ってはいけない。
 私  「ああ、そうなんや。大学の実験とかで使わなかったのね」
 若者 「はい、下船したら自分でも買って使ってみます。」
 私  「?? なに使うの?」
 若者 「部活のヨットでワイヤーとワイヤーをつなぎとめるのに使います」
 私  「・・・あかんで、切れるで」

・Aさん「私は青森出身です。陸奥です」
 若者 「陸奥は魚が美味しそうですね」
 Aさん「そうですね、大間のマグロとか有名ですし」
 若者 「ですね、北海道は魚が美味しいですし、青森も北海道の一部ですし」
 Aさん「??」
 若者 「でも僕、北海道にはまだ行ったことがないんですよね」
 Aさん「…」

 (写真2枚目:台風が去った後も、風が若干残っている。さざなみをバックに
  佇む若者。。。っていうか、まだ作業中だから、手伝って (T-T)  )

・Hさん「私も青森の出身です」
 若者 「青森のどちらのご出身ですか?」
 Hさん「八戸です」
 若者 「日本海側ですね」
 Hさん「??」
 若者 「八郎潟」
 Hさん「・・・それ秋田。八戸は太平洋側だよ」
 私  「・・・漢字の"八"だけ同じだね・・・」

・若者 「Fさんはどちらのご出身ですか」
 Fさん「三重県ですよ」
 若者 「伊勢神宮と近江牛で有名ですね!」
 Fさん「松阪牛じゃ!  っていうかなぜ近江牛がでてくる?」

 (写真3枚目:若者作 「怪獣ジュシルス」。電線を繋いだり切ったりした
  切り端を用いた芸術作品。名前の由来はケーブルを巻いている半透明の
  "樹脂”から。。。っていうか、まだ作業中だから、手伝って (T-T) )

…これだけみると、彼は単なるモノ知らずに見えますが、そうではなく、飄々と
した風体で、他人に積極的に話かけ、自らファンタジスタ的なボケを繰り広げる
エンターティナーです。頭のなかで「自分なり」に考えるのは、研究者向きかも
しれません。あと上記には若干の脚色も入ってます。ご了承ください。

そんな彼ですが、今回の調査活動は実は非常にハード。私も毎日1-3時間くらい
しか寝てなくて、夜中1時くらいにはコックリ、コックリ。そんな私に無理やり
話しかけて(あるいは私に「面白い話をしてください」と無茶ぶりして)、
私を起こそうとしてくれました。
若者よ、ありがとう。
君の将来に幸あらんことを、祈るぜ。

つづく。

地震の始まりの始まり(5):発進! [▼シリーズ実況【地震のはじまり調査】]





乗船レポート5回目です。
前回紹介しました海底観測装置(OBEM)を海底に設置する様子を
ご紹介しましょう。といってもその方法は極めてシンプルです。

まず写真1枚目のように、装置を吊り上げます。
人力ではなく、写真2枚目のようなクレーンで吊ります。
(パワーショベルのようにみえますが、シーリフトクレーンといいます)
大勢の人がいますね。黄色のライフジャケットを着ているのは乗船研究者
です。OBEMは重量物ですので、作業には危険が伴います。
クレーン操作などやったことがない研究者たちは基本的に見学です。
佇んでいる研究者の向こう側には、船員さんが6名ほどいて、
装置の吊り上げ → 船の上から海の上へ移動する作業を行なっています。

余談ですが、このような作業の担当者は国が変われば変わります。
例えば米国の調査船の場合は、船の乗組員ではなく、研究者自身が
クレーン操作を行うこともあります。
「怪我すると危ない」と考えるか、
「高価な観測装置は持ち主自身が責任持って」なのか。
どこの国の調査船にも、それぞれの国の文化(背景)が凝縮されています。

さてOBEMを船の甲板上から海水の上へと移動させたら、そのまま
クレーンを使いつつOBEMを水面までそろりそろりと下ろしていきます。
写真3枚目をよく見てください。右斜め上からロープが垂れ下がってますね?
OBEMが水に使ったその時、このロープをピーン!と引っ張ります。
そうするとOBEMを吊っているフックの留め金が外れます。
バシャーン! OBEMは海の中へと沈んでいきます(写真4枚目)。

注:実際にはそんなに波しぶきは立ちません。
 OBEMは精密機器なので船員さんたちは最新の注意を払うのです。

OBEMは海の中では沈むように重さ(浮力)を調整してあります。
沈降速度は概ね毎分50mほどです。十文字のアンテナをつけた状態だと
これがパラシュート代わりになるために沈降速度はそれほど速くは
なりません。また沈降速度が速すぎると、OBEMが海底と激突してしまいます。

今回は水深5000m強の場所(三陸のはるか沖合です)での調査ですので、
OBEMは約2時間かけて海底に舞い降ります。これで海底への設置終了。
ね、シンプルでしょ? でも船は揺れていますから、重たい装置を落とさず
壊さず、揺らさずに水面へ運ぶには技術と経験が必要です。
船員の皆様、いつもお世話になっております。 m(_ _)m

次回につづく。
こんどはガラリと話題をかえて、ある若者を紹介します。


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