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美味しんぼ騒動とSTAP騒動の共通点(2) [ 科学コミュニケーション]

先日の続きです。
下の図を見て、「野球選手の身長と年俸には関係があるか?」を議論してました。
グラフからは「なさそう」と思うのですが、ある人は「ある!」と言い張ります。果ては
「身長と年俸に関係がないという証拠はあるか?」と言い出します。
fig2.JPG
 前回の図と同じですが、赤・青点の区別をやめました。

どのようなデータにも常に「ノイズ」がつきまといます。いまは身長以外に年俸を左右
する要素がノイズになっています。ですので「身長と年俸の関係は明瞭ではない」と
までは言えますが、「全くなんの関係もない」とまでは言い切れません(※1, 2)。
これは科学の限界だと言えます。「ないこと」を証明するためにはノイズゼロのデータが
必要ですが、実際はムリです。故に科学において「ないこと」の証明は不可能な場合
が多く、「悪魔の証明」(=実行するのが不可能な証明問題)とも呼ばれています。

…人間は思い込みが強い生き物です。多くの人たちは”希望するように物事が動く”
(動いてほしい)と強く思っていますが、願いが強すぎると科学も次のように歪みます。

1) 自身の思い込み(仮説)に沿うデータがあれば、「これは○○の証拠だ」と確信する。
2) 原因と結果のメカニズムを科学的に探らない。仮説を証明できる別の方法があっても
  やらない。仮説以外の要素でデータを説明しようとしない。
3) 反論する人には「これが○○と関係がないって証拠を持ってこい」と向き直る。

この3要素(※3)が揃うと、もう立派なニセ科学(疑似科学)です。しかし一般市民には
科学的な議論に見えてしまうようです。 さらに「科学vsニセ科学」が勝負した場合、
(後で詳しく述べますが)、結果はいつも「ニセ科学の勝利」に終わります。

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さて、「美味しんぼ騒動」はどうだったのでしょう?あらためて特徴をみてみましょう。

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