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地震とは「点」ではなく「面」である。 [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

映画「日本沈没」(リメイク版、2006年公開)にはこんなシーンがあります。場所は東京の地下にある政府の防災本部。そこでの地震観測官のセリフです。「巨大地震発生! マグニチュードは、7…7.5…8、なおも増大中! 本震、きますっ!!」 首都を襲う巨大地震の揺れ、緊迫するシーンです。ところで、このようにマグニチュード(以下では随所でMと省略します)が徐々に増大することは実際にあるのでしょうか?

◎大地震はドミノ倒しのごとく
前回お話ししたように、地震は断層がずれ動くことで起きると考えられています。小さい地震では小さな断層がずれるため、地面の揺れ始め(つまり断層のずれ始め)から揺れ終わり(断層のずれ終わり)まではさほど時間はかかりません。しかし大きな断層ではどうでしょうか? これはドミノ倒しに似ています(図1)。

Fig1_s.jpg
図1. ドミノ倒しと大地震の発生は似ている。

小さな断層の1つ1つをドミノの1個1個だと思ってください。大きな断層はたくさんのドミノが並んでいる、つまり小さな断層がたくさん繋がってできているようなものです。

地震が起きる前は、すべての断層がずれていない(=すべてのドミノが立っている)状態。やがて、小さな断層の1つが何かのきっかけでずれ始めます(=図1の左端のドミノが倒れます)。これが地震の始まりです。このずれは隣の小さな断層をギューギュー押すため、やがてこの断層もずれ始めます(=2個目のドミノが倒れる)。すると更に隣の断層もずれ始めます(=3個目のドミノが倒れる)。こうして(ドミノが1個ずつ倒れていくように)、小さな断層は連鎖的に1つまた1つとずれていきます。
やがて何かの理由で、この断層のずれの連鎖が止まります(=ドミノ倒しが止まる)。これが地震の終わりです。このとき、断層のずれ始めの場所は「震源」と呼ばれます。

◎3分間揺れ続けた巨大地震
M8.0を超える巨大地震では断層面の長さは100km以上になります(前回お話ししましたね)。こんな大断層は一斉にずれ動くことはできず、断層のずれは震源から連鎖的に広がります。当然、地震の始まりから終わりまでかかる時間も長くなります。
例えば東北地方太平洋沖地震の際の、地面の揺れの様子を見てみましょう(図2、3)。

Fig2_s.jpg
図2. 宮城県石巻市大瓜での地震時の揺れの様子。南北・東西・上下方向
の揺れの速さを示しています。▼は地震速報が出された時刻。
気象庁強震波形(2011年、東北地方太平洋沖地震)を改変。 http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/jishin/110311_tohokuchiho-taiheiyouoki/index.html

Fig3_shakes.jpg
図3. 2011年東北地方太平洋沖地震の際の日本各地の揺れの様子。
防災科学技術研究所高感度地震観測網「Hi-net」より。赤色ほど大きく
揺れています。このアニメーションは下記で公開されています。
過去の地震における最大振幅分布図をクリック → http://www.hinet.bosai.go.jp/

2011年3月11日、14:46頃にM9.0の超巨大地震が発生。その約30秒後、宮城県石巻市に設置されていた地震計が最初に揺れをキャッチしました。
図2のグラフ上でははっきりとは見えませんが、「P波」と書かれている時刻に地面が微かに揺れ始めています。そこから約30秒後~90秒後、地面が大きく揺れています。揺れがおさまったのは揺れ始めから3分以上経った後です。超巨大地震では、断層のずれ始めからずれ終わりまでこれだけの時間がかかるのです。ちなみに兵庫県南部地震(M7.3)では、大きな揺れの始まりから終わりまではおよそ50秒間でした。

◎急増したマグニチュード
地震の揺れ始めから揺れ終わりのあいだ、日本各地の地震を観測している気象庁は、時々刻々とマグニチュードや震源を計算しています。その早業たるや、石巻市の地震計が微弱な揺れを検出したわずか5.4秒後、気象庁のコンピュータは「これはM4.3の地震だ」と判定しています。さらに1.1秒後には「M5.9へ修正!」。さらに2.1秒後(最初の揺れをキャッチしてから8.6秒後)には「M7.9の地震発生!」という地震速報を発表しています。
この時点(図2の▼)では、石巻市には大きな揺れはまだ到達していません。揺れが大きくなるにつれてマグニチュードは再計算され、速報値のM7.9からM8.0、M8.1…へと徐々に大きく修正されました。
最終的に地震の揺れがおさまった後、気象庁は東北地方太平洋沖地震のマグニチュード(暫定値)を8.4と発表しました。映画「日本沈没」ではこの様子、すなわち地震の揺れやマグニチュードが地震の発生後に徐々に大きくなっていく様子を映像化していたのです。

…この続きは、以下を御覧ください。
◎マグニチュード"修正"の疑惑?
◎世界共通のマグニチュード
    ↓
※本記事は「Web科学バー」に掲載されたものです。
第3話「マグニチュードがだんだん増える?」
https://kagakubar.com/earth/03.html
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伊牟田勝美

断層のずれ始めを『震源』としていますが、『震央』ではないのでしょうか。若しくは、『震源』と『震央』は同じ意味でしょうか。
連鎖の終了点の内側が『震源域』と理解していましたが、これで間違っていないでしょうか。
御教授いただければ幸いです。
by 伊牟田勝美 (2019-08-19 00:24) 

MANTA

震源は「3次元的」にみたときの破壊の開始点であり、
震央は「2次元的」にみたときの破壊の開始点です。
詳細は下記をご覧ください。
●震源と震央の違いは?
 http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/bosai/tounannkai/kisochishiki/tunamikankei/shingentoshinou/shingentoshinou.html

震源域の解説もありました。
●震源域とはなに?
 http://www.skr.mlit.go.jp/bosai/bosai/tounannkai/kisochishiki/tunamikankei/shingeniki/shingeniki.html

ただ、多くの方が、地震=震源=1箇所で起きている、と勘違いをしています。私は震源域という呼び方はあまり使わず、「震源断層」と呼ぶようにしています。


by MANTA (2019-08-19 09:01) 

伊牟田勝美

御教授ありがとうございます。
自ブログで誤用があるので、今後、修正していくことにします。

私は、本震で動いた範囲を「震源域」、「震源域」が存在する断層を「震源断層」と理解していました。
また、余震は、主として「震源断層」で発生すると考え、断層面の位置を余震の発生場所から計算していました。(三次元平面の最小二乗法で算出していたが、間違っていたかも)
「震源域」、「震源断層」の私の理解を訂正いただければ、幸いです。

何度も申し訳ありません。

by 伊牟田勝美 (2019-08-19 12:30) 

MANTA

「震源域」「震源」「震央」は上記に示したとおりです。

「震源断層」は下記にあります。
●地震と断層
https://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/katsudanso/Chap1.pdf

では震源域=震源断層でしょうか?事はそう単純ではありません。まず震源域は主に余震分布から定義されています(地表地震断層も考慮はされていますが)。では「余震」とはなんでしょうか? 気象庁によれば以下のようです。
●大地震後の地震活動(余震等)について
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/aftershocks/kiso_aftershock.html
"震源近くでは、最初に発生した大地震よりも規模の小さい地震が引き続いて発生することが多く、これを余震といいます"
「近く」といってもその定義はなく、従って、どの地震が余震であり、どれが本震に誘発された(別の断層で起きた)地震かを定量的に識別することは容易ではありません。なので、震源の近くで起きた、本震よりも小さな地震を、なんとなく「余震」と読んでいるに過ぎません。

このような曖昧なものですので、震源域=震源断層として「概ね」は問題ないですが、細かく考えると議論は尽きません。近年は震源決定制度は向上してきたので、複数の活断層が本震時にほぼ同時に動いたケースも報告されています。新潟県中越地震や熊本地震がその代表例です。はたして、地震と活断層の関係はどうなっているのか、その根本から考える必要があります。


by MANTA (2019-08-29 08:59) 

伊牟田勝美

御教授ありがとうございます。
MANTA様が『震源域』ではなく『震源断層』とする意味が
朧げながら見えてきた気がします。

ありがとうございます。
by 伊牟田勝美 (2019-08-30 19:21) 

MANTA

ちなみにご存知と思いますが、気象庁は「余震」という言葉を使わなくなっています。
●7割の人が知らない!? 「余震」という言葉が消えたワケ
 https://weathernews.jp/s/topics/201904/090185/

余震や震源域と、震源断層の関係について、再考が必要な時期になっているのだと思います。
by MANTA (2019-08-31 10:48) 

伊牟田勝美

私も、地震はドミノ倒しに似ていると思っています。

地震がドミノ倒しに似ているなら、少なくとも最初のドミノが倒れる前に、その兆候を捉えなければ地震を予知できません。
最初のドミノは、最小規模の地震より小さいと考え、ざっと調べてみたところ、マグニチュードが-1.0(約2000J)の無感地震がありました。2000Jは、走る自転車の運動エネルギの2〜3倍くらいですから、こんな小さなエネルギの地震の兆候を捉えることは至難の業ですね。
しかも、この兆候を捉えることに成功しても、地震の規模は、周辺のドミノの並び方によって変わるのですから、厄介です。

地震を予知するには、地震が起きる兆候を捉えることと、その地震が巨大化するか否かを予測することの二つが必要だと、考えています。
世の中の地震予知研究者は、一つの兆候で地震の発生時期も規模も分かると言いますが、考えが浅いように思います。
それは、『前兆すべり』で東海地震を予知しようとしていた地震学者に対しても、感じています。
by 伊牟田勝美 (2019-09-11 22:51) 

MANTA

>こんな小さなエネルギの地震の兆候を捉えることは至難の業ですね
はい、それが地震予知の難しさの本質です。そしてもう一つの本質は
地殻のどこにどれくらいの歪が溜まっているか、いまはまだ分からない
点です。これは天気予報と比べるとよく分かります。天気予報でも、雨の始まりはわかりません(凝結核は小さい)。しかし電波の反射強度が高い雲塊の分布や気圧配置から、大雨の起きそうな場所をある程度の可視化・予測ができています。

>しかも、この兆候を捉えることに成功しても、地震の規模は、
>周辺のドミノの並び方によって変わるのですから、厄介です。
地震はドミノ倒しの最初の瞬間から「自分の大きさ(マグニチュード)」を知っているという研究結果と、知らないという研究結果があります。知る・知らないというと、地震がまるで心を持っているようですが、そういうことではありません。地震の始点(震源)から放射される最初の地震波の波形が、最終的なマグニチュードと関係があるかどうか、といった議論です。あるという研究と、ないという研究が両方あります。M5を超える地震については、地震波の波形がなにか違っているようにみえるようですが、はっきりしていません。

>『前兆すべり』で東海地震を予知しようとしていた地震学者
最近はそこまで単純ではないと理解されてきています。
一方で、新たなアイデアを地震予知という「業務」(例えば気象庁にとって予知は業務なのです)にどう組み込むか? まだ仮説に過ぎない地震諸現象(例:スロースリップ)や数値計算結果を、どの程度「業務」に利用できるのか? そこが進んでいません。なので、古くから知られている(でもあてにはならない)前兆すべりや前駆的地震活動に頼りがちなのでしょう。
どうせ当たらないのだから、思い切った発想転換が必要でしょうね。
by MANTA (2019-09-12 12:59) 

伊牟田勝美

お返事ありがとうございます。
違和感を覚える部分がありましたので、再びコメントさせていただきます。

〉地震の始点(震源)から放射される最初の地震波の波形が、最終的なマグニチュードと関係があるかどうか、といった議論です。

感覚的には、違和感があります。
仮に、ニューヨークの真下で、大地震と同じ地震波を放射しても、大地震になりそうにありません。つまり、少なくとも別の要因も存在するように思います。

最小クラスのM=-1.0の地震の破壊長さは3〜4mですから、時間にすると1mS以下のはずです。『最初の波形』とは、どこまでを『最初』としているのか、気になるところです。
また、『最初の波形』は、地震の規模より、むしろ破壊開始点の岩塊の硬さを反映すると考える方が、自然に思えます。

まあ、いずれも素人考えですが。
by 伊牟田勝美 (2019-09-13 23:43) 

MANTA

>仮に、ニューヨークの真下で、大地震と同じ地震波を放射しても、
>大地震になりそうにありません。つまり、少なくとも別の要因も
>存在するように思います。

コメント、ありがとうございます。
仮説としましては、震源で起きる「最初の地震」の大きいと、最終的な地震のマグニチュードも大きくなるのではないか?ということです。
直感的にはありそうです。これはP波の立ち上がりの様子から検討されていて、時間で言えばわずか数十msecの話です。この波形観察からはこれまでに、「ある」「ない」という結果が両方報告されています。ただ、近年は「ない」というほうが優勢のようです。ちょうど数日前にもニュースになってましたね。
●地震の揺れ始め、規模の大小で差なし 超速報は「困難」
http://a.msn.com/01/ja-jp/AAHa36E?ocid=st

ちなみに最小クラスの地震はM=-1ではありません。もっと小さな地震は発生しています。例えば南アフリカの金鉱山では、M=-4以下の地震が見つかっていて、さらに小さなものもあると思われます。
https://www.semanticscholar.org/paper/Frequency-Magnitude-Characteristics-Down-to-4.4-for-Kwiatek-Plenkers/2d02cb05b6d2aeecf10bc16f60150c1715f40169

by MANTA (2019-09-16 11:00) 

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