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あの地震について意外と知らないこと [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

前回、私は「地球の中が分からないと困ることもある」と書きました。その代表例は巨大地震や火山噴火でしょう。まずは巨大地震について考えてみたいと思います。

すぐに思い出すのは、2011年に東日本大震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」です。マグニチュードは9.0でした。このよく耳にする単語「マグニチュード」とはなんでしょうか? ニュースなどで「地震の規模を示すマグニチュードは…」と聞くことがあるので、なんとなく「マグニチュードが大きいと、大きな地震なんだ」ということは分かりますが、あらためて考えると、マグニチュードってなんだっけ? って方も多いと思います。まずはその辺りから話を始めてみましょう。なお以下に続く文章の所々で、マグニチュードを「M」と略しています。洋服やポテトのサイズではありません。

◎Lサイズなんてもんじゃない
「マグニチュード9.0」は本当に大きな地震です。まずは下の図1を見て下さい。地震計を用いて地震の大きさをちゃんと測れるようになってから約100年が経ちますが、そのあいだに起きた超巨大地震を地図上に描きました。太平洋の沿岸域で多く発生している様子がわかります。

Fig1_maps.jpg
図1. 世界の超巨大地震の発生位置。
表1の1位~6位(合計7つ)の地震を地図上に表示。
「NHK そなえる防災」コラム(2012年7月:大地震は火山噴火を誘発する!?:
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120622.html)に基づきました。
ただしマグニチュードは表1に準じています。

Table1_magnitudes.jpg
表1. 1900年以降に発生した地震の規模の大きなもの上位10位。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html より)
次のアメリカ地質調査所のホームページに基づいています。
http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/world/10_largest_world.php

次に、最近約100年間に起きた地震の大きさランキングも見てみましょう(表1) 。
1位はいまから約50年前の1960年に起きたチリ地震でM9.5です。2位はやはり約50年前のアラスカ地震(M9.2)。3位は記憶にも新しい、2004年のスマトラ地震(M9.1)。そして4位が東北地方太平洋沖地震(M9.0)。同じく4位のカムチャツカ地震とあわせても、過去100年間でM9.0以上の超巨大地震は5回しか起きていません。
ちなみにM8.0以上の地震は「巨大地震」、M9.0クラスの地震は「超巨大地震」と呼ばれることがありますが、この分類にきちっとした決まりはありません。

◎1つMが増えると32倍のエネルギー
なるほど、M9.0の地震が超巨大であることは分かりますが、まだピンときません。具体的にどれくらい大きいのか。マグニチュードとはそもそも地震が放出したエネルギーを表す指標ですが、マグニチュードが「1つ」増えると地震のエネルギーは「約32倍」増えます。マグニチュードが「2つ」増えると地震のエネルギーは「1000倍」になります……ややこしいですね。でも大小さまざまな地震があるということは、そのときに放出されるエネルギーにも何桁もの差があるということです。
「今回の地震の大きさは、前回の地震の約32,000,000倍でした」というニュース原稿を読むアナウンサーを想像してみてください。お世辞にも便利とは言いがたいので、「1増えると○倍増える」という方式が地震の大きさを示す指標として採用されています。
似たような単位の例としては、音の大きさなどを表すデシベルが挙げられます。10デシベル増えると音の大きさは約3.2倍に、20デシベル増えると10倍に増えます。

◎比べてみると……
試みにM9.0の東北地方太平洋沖地震のときに放出されたエネルギーを何かと比べてみましょうか。例えば、1995年に阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(M7.3)とはどれくらいの差があるのでしょうか? 
この地震も神戸の市街地などに大きな被害をもたらしました(本連載でも改めて取り上げます)。M7.3とM9.0ではマグニチュードの差は1.7です。ということは、東北地表太平洋沖地震で放出されたエネルギーは、兵庫県南部地震の約5倍? 10倍?……いえいえ、計算してみると、なんと約350倍に相当します(注1)。あの神戸の地震350個分がほぼ同時に起きたのが東北地方太平洋沖地震なのです。

Fig2_lights.jpg
図2. 日本の総電力量の6か月分と、M9.0の地震で放出されるエネルギーはほぼ同じ!!

私たちが普段使っている電気エネルギーとも比較してみましょう。計算式は末尾(注2)に書くとして、結論をもう言っちゃいましょう。日本全体で約6か月間に使う全電気エネルギーとM9.0の地震が放出するエネルギーが同じくらいです(図2)。
東北地方太平洋沖地震の発生から終わりまではわずか数分間ですから、その短い時間に6か月分の電気エネルギーを一気に使い果たしたようなものです。
あるいは(物騒ですが)爆弾と比べてみましょう。第二次世界大戦の際に広島市に落とされた原子爆弾が放った全エネルギーはマグニチュード6の地震が放つエネルギーと同じくらいと言われています。M9.0とM6.0では約32,000倍のエネルギーの差がありますから、M9.0の地震が放出するエネルギーは広島型原子爆弾3万個分のエネルギーを上回るのです。


…この続きは、以下を御覧ください。
◎地面のずれ方が全然違う
◎海底に、東京-神戸間より長い大断層
◎Mのナゾ
    ↓
※本記事は「Web科学バー」に掲載されたものです。
第2話「「マグニチュード9.0」ってなに?」
https://kagakubar.com/earth/02.html
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