「日本人」とは、なんなのだろうか?(3) [ 科学コミュニケーション]
前回そして前々回と、「日本人」をテーマとしてブログ記事を書いてみたが
そんな中、少し前に参加した下記のシンポジウムを思い出した。
●国際京都学シンポジウム「テレビドラマの外国語」
http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/tvdrama.html
平成30年10月21日(日曜日) 13時30分~16時
京都府立京都学・歴彩館 大ホール
第1部:講演「京都育ちのアメリカ人の役者人生」
講師:ブレイク・クロフォード氏(俳優)
第2部:パネルディスカッション「テレビドラマの外国語」
パネリスト:ブレイク・クロフォード氏(俳優)
渡辺宥泰教授(法政大学)、小林めぐみ教授(成蹊大学)
司会:山口美知代教授(京都府立大学)
※ちらしより(http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/documents/tvdramaflyer.pdf)
講演者のブレイク・クロフォードさんは見た目こそバリバリの欧米人
だが、実は京都育ちで、日舞も達者。京都南座で裏方のアルバイトも
されたこともあり、日本人以上に日本人らしい外国人である。本業は
俳優で、現在放送中のNHK大河ドラマ「西郷どん」にもアメリカ全権
大使のハリス役で出演されていた。
講演内容は多岐にわたったが、私が印象に残ったのは以下。
・NHKの歴史ドラマに何度か出演されたブレイクさん。
日米の交渉事の場ではいつも「机を叩く」演技をやらされるそうです。
・あるいは、徳川将軍の奇行に驚くハリス役のときには「もっと驚いて」
と監督から指示されるそうです。
・土足で畳を踏み歩くベリー役をやらされることも、一度ならず二度三度。
・現代劇(CMなど)の場合は、今度は「たどたどしく話す外国人」を
演じることも多いそう。
共通するのは「日本人がみる(江戸時代の)アメリカ人」を演じさせられる
ことが多いらしい。ブレイクさんご自身「え、そんなことしないでしょ?」
と感じる所作も多いとか。
これはいわゆるステレオタイプというものだ。すなわち、ある集団が抱いている
先入観とか固定観念である。ステレオタイプがどうできあがるかは多数の研究が
あるが、自動的に生まれて育つ部分もあるらしく、やっかいである。
●反証事例が潜在的ステレオタイプ・偏見に及ぼす影響
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/27144/8/soc020201401603.pdf
●ステレオタイプの認知モデル
https://aue.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1650&item_no=1&attribute_id=15&file_no=1
日本人のステレオタイプ…
wiki.chakuriki.net/index.php/日本人_(ステレオタイプ) より
こうしてみれば、私たちが求める外国人像から、私たち自身が思う日本人像が
見えてくる気がする。すなわち、ブレイクさんへの演技指導の裏返しである。
「日本人」とは、黒い髪で、流暢に日本語を話し、感情を大げさに表現せず
暴力的ではない人物を指すのだろうか? そこには「日本で生まれて
日本で育った」という要素が明々白々には含まれてはおらず、興味深い。
一口に日本生まれと言っても、多様な風土を持つ日本である。生まれた場所
よりも、身につけた所作の方に重きが置かれているのかもしれない。
----
ブレイクさんの講演やその後のシンポジウムでは、
こんな話題も取り上げられていた。
・日本のドラマの台本には「・・・」というセリフが記されているが、
外国の台本にはこんなのはない。
・早口で喋れば上手な英語、というわけではない。むしろ何をしゃべるか、
どのように伝えるか(emotion)が重要。
・英語の発音を上手になるにはノリが重要。英語の歌などを真似ること。
・ドラマでは音声さんがルームノイズを録音する。5分間、みんな喋らない。
会場ではルームノイズを体験する試みもなされた。
静かなのに一体感を感じるという、不思議な瞬間であった。
短い時間であったが、なにか心に残るシンポジウムであった。
機会があれば、また参加したい。
そんな中、少し前に参加した下記のシンポジウムを思い出した。
●国際京都学シンポジウム「テレビドラマの外国語」
http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/tvdrama.html
平成30年10月21日(日曜日) 13時30分~16時
京都府立京都学・歴彩館 大ホール
第1部:講演「京都育ちのアメリカ人の役者人生」
講師:ブレイク・クロフォード氏(俳優)
第2部:パネルディスカッション「テレビドラマの外国語」
パネリスト:ブレイク・クロフォード氏(俳優)
渡辺宥泰教授(法政大学)、小林めぐみ教授(成蹊大学)
司会:山口美知代教授(京都府立大学)
※ちらしより(http://www.pref.kyoto.jp/rekisaikan/documents/tvdramaflyer.pdf)
講演者のブレイク・クロフォードさんは見た目こそバリバリの欧米人
だが、実は京都育ちで、日舞も達者。京都南座で裏方のアルバイトも
されたこともあり、日本人以上に日本人らしい外国人である。本業は
俳優で、現在放送中のNHK大河ドラマ「西郷どん」にもアメリカ全権
大使のハリス役で出演されていた。
講演内容は多岐にわたったが、私が印象に残ったのは以下。
・NHKの歴史ドラマに何度か出演されたブレイクさん。
日米の交渉事の場ではいつも「机を叩く」演技をやらされるそうです。
・あるいは、徳川将軍の奇行に驚くハリス役のときには「もっと驚いて」
と監督から指示されるそうです。
・土足で畳を踏み歩くベリー役をやらされることも、一度ならず二度三度。
・現代劇(CMなど)の場合は、今度は「たどたどしく話す外国人」を
演じることも多いそう。
共通するのは「日本人がみる(江戸時代の)アメリカ人」を演じさせられる
ことが多いらしい。ブレイクさんご自身「え、そんなことしないでしょ?」
と感じる所作も多いとか。
これはいわゆるステレオタイプというものだ。すなわち、ある集団が抱いている
先入観とか固定観念である。ステレオタイプがどうできあがるかは多数の研究が
あるが、自動的に生まれて育つ部分もあるらしく、やっかいである。
●反証事例が潜在的ステレオタイプ・偏見に及ぼす影響
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/27144/8/soc020201401603.pdf
●ステレオタイプの認知モデル
https://aue.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1650&item_no=1&attribute_id=15&file_no=1
日本人のステレオタイプ…
wiki.chakuriki.net/index.php/日本人_(ステレオタイプ) より
こうしてみれば、私たちが求める外国人像から、私たち自身が思う日本人像が
見えてくる気がする。すなわち、ブレイクさんへの演技指導の裏返しである。
「日本人」とは、黒い髪で、流暢に日本語を話し、感情を大げさに表現せず
暴力的ではない人物を指すのだろうか? そこには「日本で生まれて
日本で育った」という要素が明々白々には含まれてはおらず、興味深い。
一口に日本生まれと言っても、多様な風土を持つ日本である。生まれた場所
よりも、身につけた所作の方に重きが置かれているのかもしれない。
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ブレイクさんの講演やその後のシンポジウムでは、
こんな話題も取り上げられていた。
・日本のドラマの台本には「・・・」というセリフが記されているが、
外国の台本にはこんなのはない。
・早口で喋れば上手な英語、というわけではない。むしろ何をしゃべるか、
どのように伝えるか(emotion)が重要。
・英語の発音を上手になるにはノリが重要。英語の歌などを真似ること。
・ドラマでは音声さんがルームノイズを録音する。5分間、みんな喋らない。
会場ではルームノイズを体験する試みもなされた。
静かなのに一体感を感じるという、不思議な瞬間であった。
短い時間であったが、なにか心に残るシンポジウムであった。
機会があれば、また参加したい。
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