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電磁気で地震予知 ~地震予知は成功している(8) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

さて、前回の続きである。
ここまで9項目にもわたって、ここ10年間ほどの地震予知の科学の進歩を紹介してきたが、
将来的展望はともかく、地震予知は現時点でどの程度可能なのだろうか?

「なにいってるんだ、地震予知なんてできっこない」と思われている方も多いだろう
しかし、地震予知にちゃんと成功している希有な例もあることをご存じだろうか?

それがこちら。オカルトでも迷信でもなく、2002年に「2009年2月までに起きる」と
予知されていた地震が、その通りに2008年1月に起きた。

●2008年1月11日 岩手県釜石沖の地震(M4.7)の特集(東北大学)
http://www.aob.gp.tohoku.ac.jp/info/topics/topics-080111/
驚きましたか? いや驚くのは早い。上記のリンク先をちゃんと見てみると…
・実はこの小さな地震(マグニチュード5以下)は、約5~6年間隔で非常に規則正しく
 繰り返し起きる地震である(図4)。
・地震の揺れ方も毎回同じ(図5)。
・地震の震源の位置も毎回ほとんど同じ(図7)

なんのことはない。
「前が2001年に起きたから次は2006~7年、遅くても2008年には起きるよね」
ということなのだ。こういう地震なら予知できそうだ。
言い換えれば「地震予知は現在この程度しかできない」のである。
多くの地震はこんなに規則正しい間隔では発生しないので地震予知はできない、
というわけだ。

誤解がないように補足すると、この「地震予知に成功した小さな地震」はものすごく
貴重な例だ。地球は複雑で地震も地球温暖化も予測不能だと言う人もいるのだが、
いやいやどうして、予知できる地震もあったのだ。
ここで物理学を考えてみよう。複雑な物理現象も、簡単な実験から理解されていき、
法則化されていく。この小さな地震の規則正しさの理由が分かれば、複雑な他の地震に
ついても理解が進み、予知への糸口がつかめるかもしれない。
考古学的に言えば、この地震は「ロゼッタストーン」というわけだ。

予知.jpg
 地震予知の(おそらく)あるべき姿。
 確実に近づきつつはあるが…道は険しく遠い。

…とはいえ、四川大地震や岩手・宮城内陸地震といった大きな地震が起きると、
毎回ではあるが地震予知はできないのか?予知できないですませていいのか?
という議論が巻き起こる。いったいどうすればよいだろうか?
そして地震予知のお話になるとやはり毎回クローズアップされるのが
「電磁気による地震予知」である。やっとこの連載の本題に戻ってきた。
次回以降、「電磁気による地震予知」の真の姿に迫っていこうと思う。

つづく

余談:
ところで… 世の中には科学では解明できないことはたくさんあるし、地震予知のように
科学の力がまだ十分に及ばないときには何にでもすがりたくなる気持ちは分かる。
しかしだ。まずデマに踊らされてはいけない。昨年9月に、「富山で大地震が起きる」という
デマが小中学生を中心に出回った。いま、また「富山で大地震」と言われているようである。
本当に起きるのだろうか? 気になった方はぜひこちらの記事を読んでいただきたい。

一方、世の中には”体感”で地震を予知する人がいるらしい。
体がだるい、頭がいたい、というその日の体調で地震が予知できるというのである。
○地震予知(ブログ「動けば変わる! ~奇跡への軌跡~」)
 http://ameblo.jp/saiyou/entry-10106379968.html

そういう特殊能力をもつ友人は私もほしいところだ。
(いや本当に。そんな友達がいたら地震が起きる前に観測装置を置きに行くよ!)
だから上記のブログ作者を責める気持ちなんて全くない。

しかし、たぶんだが、そういう地震予知なら私にもできる。
「体が重いから、5日以内に関東地方で地震が起きる」っていうような予知。
的中率はそうだなぁ、50%くらいだと思う。私だけじゃなくて、あなたにもきっとできる。
なぜだろう?気になった人は下記のサイトの”3.「予知」は可能か?”を読んでほしい。

●地震予知の科学(東京大学 加藤照之教授)
 http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/panko/openlec2004/openlec_exibition/prediction.htm

平均すれば一ヶ月あたり2.7回=5日に0.5回というわけだ。お分かり頂けるだろうか?

占いをお好きな人を止める気持ちはない。しかしそれは精神的にはともかく、実質的には
意味のないことだと私は思う。だから「地震予知の科学」に一生懸命なのである。
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コメント 8

飛騨の忍者 ぼぼ影

もっと気象科学が進歩して地震予知が正確に出来るようになると素晴らしいですね。
by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-06-18 15:19) 

竜

そういや、加藤さんが指摘されているようなことを、先日小学校でしゃべったら子供たちに妙に受けました。最近、地元の小学校から理科の特別講師ということで依頼を受けて、2時間弱好き勝手にやらせてもらうという貴重な経験をしました。実験とアニメ盛りだくさんのプレゼンで何とか集中力を維持してもらうのに成功。子供たちは正直だし、つっこみは鋭いしでこちらも勉強させられます。

連合大会、私も参加しました。以前関わった研究が団体として賞を頂いてちょっと嬉しかったです。


by 竜 (2008-06-19 03:30) 

MANTA

>気象科学が進歩して地震予知が正確に出来るようになると素晴らしいですね
えっと、、、気象学=一般的には「大気」の学問なので、これが進歩しても
あまり地震予知にはなりません(地震雲!って言ってる人もいるけど)
「地球科学が進歩して地震予知が正確に出来るようになると素晴らしいですね」
という意味と捕らえておきます~(^^) 
しかし、いま気づいたんですが気象庁が地震火山の現象も扱っているって、
言葉の意味的にはおかしいですね。
by MANTA (2008-06-19 04:37) 

MANTA

>そういや、加藤さんが指摘されているようなことを、先日小学校で
>しゃべったら子供たちに妙に受けました。
楽しそうですね。幼き日に、両親によくプラネタリウムに連れて行ってもらい
ました。あと小学校の先生の理科の授業は楽しかったです。そういう記憶
っていつまでも残るものですね。竜さんの授業も子供達の心に残ったこと
と思います。
by MANTA (2008-06-19 04:53) 

ハマの同業者

記象科学という言葉があればぴったりかもしれません
by ハマの同業者 (2008-06-19 16:31) 

MANTA

では「記象庁」ですね!
地震波形のことを「記象」と呼ぶと、初めて知りました!
by MANTA (2008-06-19 19:53) 

SAKANAKANE

天気予報もそうなんですが、カオス現象は予測不可能な事は数学的に証明されています。
それでも、ハズレる事が多くても、天気予報が有用であるように、地震予知の研究が必要なコトは、言う迄も無いと思います。
ただ、天気予報ですら、一般には誤解されている事が多いのに、地震予知ときたら尚更でしょうから、その辺りの啓蒙とかが必要だと思います。
いつまで経っても、大地震の後には、信憑性の無い怪しい地震予想が週刊誌を賑わしているような状況も、どうかと思ってしまいます。
by SAKANAKANE (2008-06-23 03:32) 

MANTA

>カオス現象は予測不可能な事は数学的に証明されています。
SAKANAKANEさん、それは部分的には間違いです。無限の未来までは
予測できませんが、観測直後の初期状態ならばカオスといえども予測可能
です。なので明日の天気予報はある程度あたるのです。

さて地震の場合、初期状態とはどこまででしょうか?観測から1秒後まで
予測可能なのか、1年後まで予測可能なのか? これは地震発生の基礎
方程式の性質によります。私たち研究者がやっていることは、現象がどの程度
科学的に予測可能か?=地震現象の基礎方程式を作っているわけですね。

これは時間と根気のかかる仕事です。「占い」のパワーには勝てません(笑)
でも黙っているとますます「占い」の方が幅をきかせますので、とりあえず
こんなブログ記事で一矢報いてみてます。
by MANTA (2008-06-23 08:27) 

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