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電磁気で地震予知 ~”我が町”の揺れの予測と観測(7) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

さてすっかり間が空いてしまったが連載の続きである。

もともと、東京大学地震研究所の資料「地震予知の科学」に基づいて、近年の地震予知科学の
進歩を書いてきた。そこでこの第7回目の記事ではあと3つ、駆け足で紹介したい。
また次の第8回目の記事では「地震予知の成功例」を紹介したい。
岩手・宮城内陸地震が起きたので、地震予知ってどこまでできるのか、
気になっている人も多いだろう。ぜひ真実を知っていてほしい。

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進歩その7:地震発生確率が議論されるようになってきた
地質調査などに基づいて、日本各地の断層がいつ動いたのかが精力的に調べられた結果、
今後30年間の地震発生確率を計算することができるようになってきた。

(地震に関する評価:地震調査研究推進本部)
ただし先日の岩手・宮城内陸地震では、その北側にある北上低地西縁断層帯での
今後300年間の発生確率ほぼゼロとされていた。
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/01jun_kitakami/index.htm
したがってこの発生確率の算出方法も見直していかないといけないだろう。
近年は地球シミュレータなどを用いて計算機上でも地殻の変形や地震の発生をシミュレート
出来るようになってきている。今後はこのようなシミュレーションと組み合わせて、長期評価を
進めていくことになると思われるが、道はまだ険しくゴールは遠い。30年間という長期間の
予測ですら、この有様である。実用的な地震予知はできるのだろうか?

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進歩その8:我が町が地震時にどれくらい揺れるかも分かってきた。
家.jpg
社会の関心は地震が起きるかどうかだけではなく、起きたとき我が家や我が社はどの程度
揺れるのか?である。それに対しても一定の回答が得られるつつある。一つは強い揺れを
記録できる強震計といわれる地震計の観測ネットワーク構築である。下記がその代表例だ。
●K-net(防災科学技術研究所):   http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/
●SK-net(東京大学地震研究所):  http://www.sknet.eri.u-tokyo.ac.jp/

これによって小さい地震の時にどの程度地盤が揺れるかを記録できるので、より近くで
大地震が起きたときにどの程度揺れるかをちゃんと予測できるようになってきている。
もう一つはやはり地球シミュレータである。超高速計算機の中で関東平野の分厚い堆積層
などを再現して、地震の揺れが関東平野をどのように揺らすかも分かってきている。
(本当にタライの中のお湯のように、堆積層がチャプチャプ揺れるのだ)。
これらの情報は、今後起きるかもしれない大地震への備えとして生かされるべきである。
実際こういった情報に基づいて、自治体の多くでは地震時のハザードマップ(災害予測図)を
作成している場合が多い。一度、お近くの役所に問い合わせてみるとよいだろう。

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進歩その9:衛星を用いて地震時の地表の変形が詳細に見えてきた。
衛星に搭載されているレーダを用いることで、地震や火山に伴う地表の詳細な変形が
手に取るように分かってきた。一例として新潟県中越沖地震の観測例を紹介しよう。
これは地震に伴って地面が褶曲した様子を捕らえた貴重な例である。

●人工衛星データの解析により平成19年(2007年)新潟県中越沖地震に関連した
 地殻変動を新たに発見(国土地理院)
 http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2007/1002.htm

地震の時に地表がこのように複雑に変形するとは思っても見なかった。
しかし実は地下の地震の震源分布は結構複雑なことは知られていた。
(活断層の近く以外でも小さな地震は結構起きている)
この地表と地下の複雑さはおそらくつながっていくと思われる。

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さてこれまで複数回にわたって、ここ10年ほどの地震予知の科学の進歩を振り返ってみた。
電磁気で地震予知 ~13年間の進歩 (4)
電磁気で地震予知 ~ゆっくりすべり(5) 
電磁気で地震予知 ~地下の"格差"が地震を起こす(6)

これらを通じてまず言えることは、地球観測の精度の向上により、地震や地殻変動に
関連する地表や地下の構造の複雑さ=不均質や、地震の時の地表などの複雑な挙動
について、真正直に向き合えるようになってきたことである。
これが近年の「地震予知の科学」の最大の特徴だろう。

それに加えて、これからは海底や地中(掘削孔)といったこれまで観測があまりなされて
いない地域にも観測網を広げていくであろう。さらに超高速計算機を用いた数値シミュレーション
や岩石実験によって得られる、マクロ・ミクロスケールの実験結果や理論が加わっていくだろう。
近未来には、地球観測とシミュレーションの両輪を駆使しながら、地震予知の科学は大きく花
開いていくと思われる(そう思いたい)。

さて、将来像はともかくとして、地震予知は現在どの程度可能なのだろうか?
次回へつづく。
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