続 東海に挑む ～トラブル～(6)

前回からの続きです。

今回のミッションは、豊橋沖に延びている海底ケーブルの先っぽ（こちら→）に
「分岐装置」を取り付けることです。

　　これが「分岐装置」です。

以前は黒かったのですが、お色直し？で白くなりました。分岐装置の能力は、海底へ置く
予定の様々なセンサーに電力を送り、時刻を教えて、その代わりにセンサーの測っている
データを陸上へ送り返します。電力・時刻・通信の分岐を行うから「分岐装置」なのです。

分岐装置には水中で着けたり外したりが可能な特殊なコネクターが付いてます。
「ROVコネクター」といいます。

左の青いものです。右のオレンジのは単なるキャップです（大袈裟！）。
このROVコネクターを使って、色々なセンサー（地震計や磁力計など）を海底で分岐装置に
つないだりはずしたりできます。故障したり旧型になったセンサーを新型に変えることもでき
ますし、全然違う種類のセンサーと取り替えることも可能です。都合により、今回はまだ
センサーは取り付けません。年度明け（4月）の航海で、地震計と磁力計を取り付けに、
この豊橋沖の海域にまた戻ってくる予定です。

ところが…問題が発生。

船に持ってくる前には正常だった分岐装置ですが、どうやら陸上からの時刻の信号を
地震計などのセンサーに送ることができません。時刻の信号がないと海底のセンサーは
いま何時何分何秒か分かりません。海底でとったデータを陸上のパソコンへ転送するのには
ちょっと時間がかかりますし（0.1秒とか？）、転送にかかる時間は一定ではありませんから、
このままでは海底で測った地震データなどが何時何分のものは正確には分かりません。
データの時刻が分からないと、陸上のデータとの比較ができなくなりますから、例えば地震の
震源決定ができなくなります。

原因はどうやら、分岐装置の耐圧容器内の回路にあるらしいことがわかりました。
しかし、洋上では分岐装置のデカイ耐圧容器（こちら→）を開けてチェックする
のが難しい。丸1日くらいがんばればできないことはないでしょうが、一方で低気圧が
近づいてきていて、海はこれから荒れるらしい。そうそう時間があるわけではありません。

さらに色々調べたところ、分岐装置から出すことができる時刻の信号には2系統あって、
片方は正常とのこと。最悪の事態は脱しましたが、一安心とは行きません。
地震計などは4月の調査航海で、この分岐装置に接続するのです。すぐに、新しい系統の
時刻信号に対応できるよう改造しなければなりません。

　「地震計の改造は間に合うのか？」
　「いや分岐装置はこれで海底にいってしまうんだ。改造後の地震計をどうやって
　　試験するんだ？」
　「今回、分岐装置を海底に置かずに持って帰って、原因究明と修理をするべきでは
　　ないか？」
　「そんなことしたら、今度いつ海底に分岐装置を設置できるかわからない！」

…などなど、陸上と何度も電話で相談です。

船舶電話は衛星経由なので、微妙に時間差（0.5秒）があります。
シビアな議論が一層もどかしくなります。

そうこういっている間にも、ケーブル接続は終了。

この秘密のテント？の中で前の記事で引き上げてきた海底ケーブルと、分岐装置に
くっついているケーブルが接続されています。豊橋の海岸と50km沖合いの分岐装置が
船の上でつながっています。

日も暮れていく。小さく一番星が写ってます。
昼夜連続して作業してますが、夕焼けを見ると時間の経過を感じます。
最終結論は・・・「分岐装置を海底に設置」。
地震計などの側で新たな時刻の信号を受信できるように改良する、ということになりました。
研究者全員が納得できる結論ではありません。岸壁や洋上での最終試験が足りなかった
といえます。やむをえません…　先に進みましょう。

つづく

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※このときのケーブルの状態

船につりあげたまま保持しています。

※本シリーズの続きは下記でご覧頂けます。
　http://obem.jpn.org/field056.html

コメント 3

なんか難しいお話ですね
by (2007-03-26 17:17) 

海底コンセントって、ショートしたりしないんです
by るれん (2007-03-26 19:02) 

- 船の上の限られた時間で書くと、文章がわかりにくいですね。
　＞　りーちさん
またあとで分かりやすいように書き直してみます。

- ショートしないんですよ。ふしぎでしょ？　＞　るれんさん
詳しくはこちら！
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-01-04
by MANTA (2007-03-29 08:08)