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東海地震がわかる本 [▼科学ニュース New!]

「東海地震」はほとんどの日本人が知っている地震です。
と同時に、発生する前から名前がついている唯一の地震です。
普通、地震は「発生してから」名前がつけられます。
「東海地震」はそれだけ恐れられていると同時に、よく調べられている地震といえます。

東海地震がわかる本

東海地震がわかる本

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京新聞出版局
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本


その東海地震も「起きるかも!」といわれ続けて30年強。
いま東海地震はどう捕らえられていて、人々はそれにどう立ち向かえばよいのでしょうか?
「東海地震がわかる本」は、その最前線に立つ名古屋大学の研究者達による一冊です。
この本は専門書や教科書ではありません。正直な表現で、現在の地震予知や
耐震設計で、できることとできないことがはっきりと書かれた啓蒙書です。
かなり、お奨めです。

例えば次のようです。
・東海地震はそれ単独では起きないようだ。
 2030~2040年頃にお隣の東南海・南海地震と同時に起きるのでは?
・どんな建物が地震で壊れやすいのか?
・地震時の様子を予想
 ※さすがは専門家によるシミュレーションだ。怖い。映画「日本沈没」を見ているようだ。
・地震が起きたとき、生き残るにはどうすればよいか?

また地震の基礎も非常に分かりやすく解説されています。例えば「糸魚川-静岡構造線
断層での30年間での地震発生確率は14%」(地震調査研究推進本部による)だそうです
が、これが高い確率かそれとも低いか、日常(=競馬やパチンコ!)に照らし合わせて
説明しています。
例えば競馬の3連単のあたる確率は0.12%(注)だそうなので、14%は結構な確率です。
さらに(本書にはありませんが)計算してみると、3連単馬券を130回買って、少なくとも
1回はあたる確率がだいたい14%です。十分ありえそうな話です。
マグニチュードと震度の違いなども、同様に分かりやすく説明されています。

専門的なコラムも興味深いです。本ブログでも紹介していますが、東海地震の
予想震源域(赤)の隣では2000年頃から「ゆっくりすべり」(青)がおきていました。
(現在は停止しています)

「ゆっくりすべり」は「巨大地震」の前触れかもしれない、という考えがありますが
(詳しくは巨大地震とゆっくりすべり)、本書によれば、1980~2000年の間にも2回ほど、
ゆっくりすべりらしきものはあったようです。つまり「ゆっくりすべり」があるからといっても、
すぐに「巨大地震」=東海地震になるわけではないようです。
(地震発生の確率は高くなっているとおもいます。)

東海地震はまだこない=ずっとおきないのではないかと思っている人もいるでしょう。
本書を読めば、それが大間違いであり、東海地震が起きるその日が一歩一歩、
確実に近づいてきていることがお分かりいただけると思います。
備えましょう、その日のために。

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地震予知も、耐震設計も、実際にはあいまいさが残ります。本書を読むと、
あいまいさを少しでもなくすために、日夜戦っている研究者の姿が目に浮かびました。
私も科学面でのあいまいさを減らすべく、東海沖の調査観測を行っているところです。

(注)
3連単のあたる確率は、16頭立ての場合は
1/16*1/15*1/14 *100 = 0.029%だと思うのだけれども、本書では0.12%だ。
なんか計算の仕方があるのかな?競馬をやらんからわからないや。


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シェリー・ルー

どもども、シェリー・ルーです。
東海地震・・・今、名古屋に住んでいるので
ニュースとかで目にすると、チラッと見る程度で。。。
「ゆっくりすべり」なるものがあるのも、
MANTAさんのこのブログを見て知りました。

もう、10年前になりますが、
阪神大震災の朝、あまりの揺れに目が覚めて、、、
一先ず、大丈夫そうなので、一寝入り。
いつもの時間に起きて、TVをつけたら凄いことになってました。
確か名古屋は震度3位だったと思います。
3で、あの怖さ。。。東海大地震になってしまったら。。。
どうしようもないのかもしれません。。。

一応、非常食などは置くようにしたのですけど。。。
今のところ、それくらいしか出来ませんね。
自然に敵うものは、無いのではないでしょうか?
by シェリー・ルー (2007-02-23 18:20) 

honyapin-turedure

地震が小出しで頻発すればエネルギーは少しづつでも発散されて・・・・なんてラッキーな答えは、無いのでしょうか?
そんな事を考えてしまいました。・・・・そんなに都合のいい答え、無いですよね(´`)
by honyapin-turedure (2007-02-23 21:35) 

MANTA

- シェリー・ルーさん、どうもです。あのときは名古屋でも震度3でしたか。
東海地震が、お隣の東南海地震と連動すると、名古屋での予想震度は
6弱(立ってられない、かなりの建物で窓ガラスが割れる等)だそうです。
※詳しくは名古屋市のページへ
 http://www.city.nagoya.jp/kurashi/shoubou/bousai/jishin/
 (「あなたの街の地震マップ」をクリック)
ただ日頃から心がけていれば、これくらいの揺れだと命は助かると思います。上記の本は図やマンガも多いので、読みやすく、参考になると思いますよ。
by MANTA (2007-02-25 16:39) 

MANTA

- ほにゃぴんさん、結論は前にちょっと書きましたけど、
自然の状態ではムリっぽいです。
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2006-12-11

でもナイスタイミングです。きっとその質問が来るだろうとおもって、
イラストを描いてました。(なぜかハンバーガー)
連載「電気で地震予知」のなかでも、イラストで簡単に解説するつもりです。
だいぶ先になっちゃいますけど…
by MANTA (2007-02-25 16:39) 

シェリー・ルー

MANTAさんへ
ありがとうございました。
あとで早速のぞいてみます。名古屋にすんでますけど、
HP見た事が無い・・・。ではまた!
by シェリー・ルー (2007-02-25 16:55) 

MANTA

- ぜひぜひ。
あ、私も自分の住んでるとこの災害マップ、みたことないや…
by MANTA (2007-02-25 18:05) 

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