SSブログ

ちょっとアメリカに ~スクリプス海底電磁気ラボ~(7) [ シリーズ実況 Old..]

今回の訪米では、スクリプス海洋研究所のスティーブン・コンスタブル教授のもとをたずねました。ここは世界随一の海底電磁気学の研究室なのです。特に海底付近で人工的に電流を流して海底の調査を行う「人工電磁波探査」の分野ではトップランナーです

  Marine Electromagnetic Laboratory at Scripps
  ロゴ。かっこいいなあ…

人工電磁波探査は、こちらの漫画のように行われます。
まず人工電磁波送信装置"SUSEI"(Scripps Undersea EM Source Instrument:スージーと読むようです)を海底付近へ吊り下げて、船で引っ張りながら送信アンテナに電流を流します(漫画のうち、左の方の矢印)。
   ↓
その信号を海底に設置した受信装置(海底電位差磁力計:OBEM)で受信します(漫画のうち、右の方の黄色&白の装置)。
このとき、受信信号の大きさが海底の電気の流れやすさによって変わるのです。たとえばマグマのように電気を通しやすいものがあれば、受信信号は小さくなります。逆にメタンハイドレートや石油のように電気を通しにくいものの上では受信信号は大きくなります。この原理を利用して、地下の様子を知ろうというわけです。近年は日本も同様の調査を本格的に実施し始めましたが、10年以上の経験の差はそう簡単にはうまりません。そこで今回は、世界トップクラスの観測機器と解析技術を見学させてもらい日本の同様の調査技術のレベルアップを図ることと、将来の日米間での共同研究の相談のため、彼らの研究室を訪問したのです。

こちらがスクリプスの海底電磁気ラボ(建物の全体像はこちら)。大きなガラス戸ですね。ラボは1区画分のみ、あまり広いとはいえません。


ラボに入ったところ。1階手前側が大型装置の整備スペース、その奥が電子機器等の整備スペースです。ベランダのように見える中2階が研究者や技術者の居室です。手前に見えるファンつきラックはSUSEIの船上装置です。SUSEIは2セットあるようですね。右に見える白い丸いものはSUSEIの海底部分(曳航体)です。これに電流発生装置・高度計・送信ケーブル(長さ数百m)を搭載して、海中に人工電流を流すのです。


お、ラボの壁に調査時のポスターがありました。これがSUSEIの曳航体部分です。海中で200A流すことができます。最近、500Aバージョンも完成したそうです。ひえー。


左右の壁面には調査機器が収納されています。ほとんどがOBEM関係です。彼らはOBEMを実に50台近く所有しています(日本のOBEMは東大・JAMSTECなどをあわせても、やっと30台程度)。棚の下に並んでいる青い円筒形の筒はデータ記録部です。その上は小物関係が入った銀トランク。その上には磁場センサー(コイル)。この収納のされ方を見ても、50台のOBEMが機能的に効率よく管理・運用されていることがわかります。日本の場合は?うーむ…がんばります。


やはりラボの壁のポスターから、投入前のOBEM。これをこちらのアニメーションのように海底に設置していきます。SUSEIからの人工信号だけではなく、電離層から降ってくる自然信号も記録可能ですので、海底下の浅いところ(数十mくらい)~深いところ(数百kmくらい)まで、総合的な構造調査が可能なのです。すばらしい。

そのほかに、解析ソフトを一部提供いただいたり、共同で論文を書くことが決まったり、将来的には共同で調査をしよう、などなどいろいろと進展がありました(詳細はざっくり省略)。
つづく。

追記
うなる海底観測装置。おおすぎ(こちら

※本実況の続きを下記で読むことができます。
 http://obem.jpn.org/oversea063.html
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。