SSブログ

立花隆の冥福を祈る [▼科学ニュース New!]

ドキュメンタリー作家の立花隆さんが亡くなった。80歳だった。
●立花隆さん死去 ジャーナリスト、評論家「田中角栄研究」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c390c7efcf383876620c1c97e868ef5c73aeedc

実は4月30日に亡くなっておられたそうだ。ご冥福をお祈りする。
彼の本は、いまの私にジンワリと影響を与えている。

宇宙からの帰還 (中公文庫)

宇宙からの帰還 (中公文庫)

  • 作者: 立花 隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1985/07/10
  • メディア: 文庫


最も大きな影響を受けたのは、この「宇宙からの帰還」である。
タイトルだけ見ると探査機「はやぶさ」とかを思い出す人がいるだろうし
宇宙=科学の本と思う人もいるだろう。しかし科学の本ではない。
宇宙飛行士といえば、誰しも、宇宙に行くまでのサクセスストーリーとか
宇宙で何をしてどう思ったか、に関心が向く。この本では、宇宙の話も
もちろんでてくるが、宇宙飛行士が地球に帰ってきてからがメインパート
である。宇宙飛行士のその後を追うわけだが、意外なストーリーに満ちている。
そしていつの間にか「宇宙とは人間にとってなにか?」という哲学的な問いや
「神とはなにか?」という宗教的な問いに包まれていく。

この本を読んだのは、私が大学生の時だっただろうか?
当時の私は、どう生きるかべきか?なにものになるべきか?ということを
悩みというほど深刻にもならず、ぼんやり考えていた。
多くの若者にありがちな感じである。
他方、科学と自分や人間の関係性についても深くは考えていなかった。
科学が好きで(いまも好きで)、宇宙に憧れていた(いまも)。
しかし、その理由を考えたことなどなかった。
なぜ人は科学や宇宙に夢を抱くのか?
それまでに科学者の伝記をたくさん読んだが、教科書的というか、
そこにヒトの情熱や夢を感じることは出来なかった。
「宇宙からの帰還」を読んで、科学最先端の象徴とも言える宇宙飛行士が
実に人間的であったことを知り、科学に血が通った気がしたのである。
私が科学者を目指した遠因、一因になっていると思う。

サル学の現在 上 (文春文庫)

サル学の現在 上 (文春文庫)

  • 作者: 立花 隆
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/01/10
  • メディア: 文庫


その後も立花氏の本をいくつか読んだ気がする。
「100億年の旅」や「21世紀 知の挑戦」は読んだ。
「サイエンス・ミレニアム」も読んだ。「サル学の現在」も読んだと思う。
いずれも面白かったが、感銘を受けるほどではなかった。
「宇宙からの帰還」出版当時は日本人宇宙飛行士もまだいない。
むろん立花隆氏も宇宙には行っていない。宇宙の臨場感を読者にどう伝えるのか、
相当の取材をし、工夫された点が、若い私の感覚とシンクロしたのかも知れない。

サイエンス・ミレニアム

サイエンス・ミレニアム

  • 作者: 立花 隆
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/06/23
  • メディア: 単行本


----
つい先日、若い大学生から「オススメの本を教えて下さい」と言われた。
恥ずかしながら、最近は読書をまったくしていない。読むのは科学的な論文や
解説ばかりである。困ったなぁ、、、そんなとき、一番最初に頭に浮かんだのが
「宇宙からの帰還」であった。大学生には読むことを薦めた。
今朝のニュースをみて、またいろいろと思い出した次第だ。

----
最後に。
私は立花隆氏を「ドキュメンタリー作家」だと思っていた。
しかし新聞の訃報などでは「ジャーナリスト」となっている。
彼はジャーナリストなんだろうか? 調べてみると、ジャーナリストとは
マスメディアに報道記事・素材を寄稿する人だそうな。立花氏もそのような
速報的な記事を寄稿されているが、どうも違う気がする。
じっくりと取材して考えて、一冊の本にまとめあげる。
私は、ドキュメンタリー作家としての立花隆さんが好きだったのだ。

nice!(4)  コメント(2) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 2

さくら

立花氏のご冥福をお祈り申し上げます。
かつて読んで感銘を受けた本の著者に、ご自身が上梓された著書の書評をして頂くなんてすごい出会いですね。
by さくら (2021-06-24 13:36) 

MANTA

さくらさん、ありがとうございます。
そうなのです。
http://obem.jpn.org/chitei/index.html

ご本人に会うことはありませんでしたが、
書を通じて交流できたことは宝物です。


by MANTA (2021-06-27 09:49) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。