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台湾の最新研究船は沈んだが… [▼科学ニュース New!]

先日、タンカーが関西空港にぶつかった事故をみて、
数年前に起きた、台湾の海洋調査船の事故を思い出した。

●海研五號澎湖沈沒 45人全尋獲 2死25傷(自由時報電子報)
 http://news.ltn.com.tw/news/society/breakingnews/1128057
(下の図も本記事より引用)
OR5.JPG

非常に悲しい事故であった。「海研五号」(英語ではOcean Research V)は
2012年に完成した最新の調査船であった。サイズは2700トン。世界各国の
調査船に引けを取らない大きさである。実は私は2012年、完成直前の海研五号
を目撃している。当時、台湾沖合の海底である調査を行っていたのだが、その
際の母港が台湾南部の港町、高雄であった。海研五号は同港に着岸していた。
ちなみに私が乗船をさせてもらったのは「海研一号」。
台湾国立大学が所有する、800トンの古い調査船だった。
http://or1.oc.ntu.edu.tw/

新型の海洋調査船は、台湾の海洋研究者の悲願だったが建造費用が足りなかった。
そこで、台湾の複数の海洋研究機関(大学や国の研究所)が手を携えて、
共同研究組織を構築し、合同で新型海洋調査船を建造したのである。
台湾には当時、海研一号・二号・三号があった。新造船に付けられた名は
「海研五号」。「四号」の名が回避される事例は日本でも見られられる。

 P6210111.JPG
  海研五号:2012年に高雄港で撮影

2012年、「海研五号」を沖合から見た日のことをよく覚えている。
台湾の教授は私に対して誇らしげに語った。
「どうだ、これが台湾が世界に誇る、調査船だ!」
そこには研究機関を越えた連携を主導した彼の苦労や、
政府から予算を引き出す際のあの手この手の努力が垣間見られた。

しかしながら、2014年、この船は挫傷する。場所はこのあたりだろう。
(ピンの場所はズレてしまっている、どうもうまく調整できない)


前出の自由時報の記事によれば、、、
・2014年10月10日、「海研五号」は沈没。船体は完全に海に沈んだ。
・本来の航海の目的は大気中の汚染物質調査など
・船が電力を損失したため、浅瀬に座礁(その後、台風が襲来)
・乗員45人のうち、死者は2人、負傷者は25人
・死者2名は、いずれも研究者

悲願の調査船が、新造からたった2年で沈没とは。なんの言葉もでてこない。
私も調査船によく載っている。それが沈むなんて、、、想像できてしまう。
まして台湾の研究者達のショックときたら、、、

しかし、彼らはタフである。今回、「海研五号」を拙ブログで紹介するに
あたって調べてみたら、なんと、台湾の研究者たちは新たな海洋調査船を
建造済みであり、つい先日完成・お披露目があったしたらしい。
その名は、「勵進(LEGEND)」
legend.JPG
 ※http://www.tori.org.tw/ より
 ※下記には動画もある(「勵進」研究船大事紀| 國家實驗研究院)
  https://www.narlabs.org.tw/xmvideo/cont?xsmsid=0I138516686377703465&type=0&sid=0I190611206336730040

海研五号の沈没事故からわずか4年で建造とは!
通常、調査船の沈没事故の調査には数年を要するはずだ。
(加えて裁判などもあるでしょう)
また船を作るには数年は必要である(参考→船に関するギモン編)。
そのためのネゴシエーションにはさらに数年必要だろう。今回の台湾の
ケースを日本に当てはめるなら、沈没事故から研究船新造まで10年以上
かかっても不思議ではない。台湾の人達はそれをたったの4年で成し遂げた。
彼らの不屈の精神に敬意を表したい。

今回の台風関連の事故は、非常に痛ましい。
ただ台湾の人達と同じように、日本もこれを糧に自らを「励」まして「進」む
必要がある。災害からの復旧・復興は、けっして暗い言葉ではないのだと、
台湾の調査船の事例に学ぶ次第である。

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73

宇宙万象という本も面白いです。
ご参考まで

過去記事にUFO、ピラミッドがありましたので(๑・̑◡・̑๑)
by 73 (2018-09-09 09:18) 

midorin

最近変な記事を見て不安になっているのですが、 プレートのズレによって 地震や火山が起こるのですよね?

ならそのズレが 凄く大きかったら大変なことになりませんか?

世界規模の影響や日本全体の影響などを引き起こすなど。

ズレの限界はあるのでしょうか? 凄く不安です
by midorin (2018-09-12 10:20) 

MANTA

73さま、本のご紹介、ありがとうございます。

midorinさん、大雨に台風に地震にと、災害が続きますね。
ズレには限界があります。地震で割れる岩盤の厚さには限界があって、
通常は地表から深さ15km程度までです。なので地震で地球全体が割れる
ということはありません。
ただし今回の北海道の地震は深さ30-40kmで起きています。
おもったより少し深いところで起きたという印象ですが、
みなさんが不安に思うほど奇妙な地震ではありません。
(すこし岩盤が厚い場所だったのですね)

地震が起きて日本列島全体が沈むこともなければ、北海道が沈むこと
もありません。大きな島全体を一晩で沈めてしまうこともありません。
安心してください。

地震の話は拙著にも詳しく書きました。第5章だけでも読んでみて
ください。ご自身の自宅が安全かどうかを自分で調べる方法も
載せました。
  ↓
https://www.amazon.co.jp/dp/4591156702/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_Ih3MBb6R89JC8

by MANTA (2018-09-14 17:32) 

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