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夜のバス停にて [▼研究実況 Now!]

ある夜のことである。
仕事が終わって、いつものように、バス停で最寄り駅へ行くバスを待っていた。
時間はそう、8時をおおきく回っていた。バス停は住宅地内にある。
この時間は歩く人は少なく、バスの本数も少ない。
時刻表ではあと数分でバスが来る。

bus.JPG

その時、歩道沿いに少し離れた場所から、賑やかな声が聞こえてきた。
「…で、さあ、もうほんと私って、しょうがない、でもさぁ…」
女性の声だ。二人連れだろうか?
女性同士の会話というものは、10代であっても70代であっても常に賑やかだな。
そう思った矢先である。
気づくと女性は一人しかいない。
女性二人の会話に見えたのは暗がりだったからで、実は独り言であった。
デカイ声での独り言である。

人間は周囲の異常には鈍感である。
ネコをみたまえ。
物音や匂いはもちろんのこと、見たことのない箱が1つ置いてあるだけで
興味津々で中に入ろうとする。あれは、箱が好きなのではなくて、
警戒心の強さを物語るのだろう。
他方、人間ときたら。
「ここは災害が起きるとは思わなかった」
という声をこの夏は多数聞いたが、本当にそうだろうか?
案外、人間はそのあたりが鈍くできていて、
危険と隣り合わせでも平気だったりする。


 https://goto33.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22

しかし、夜もふけてきて、一人でバス停で待っているときに、
女性とは言えど、独り言がすぎる見知らぬ方とバス停で待つのは
違和感を通り越して、少し怖い。

わずか2分ほどであっただろうか?
恐れていることなど何もおきず、バス停にバスがやってきた。
私は乗る。
もう一人の女性は、乗らない。
バスには乗らず、バス停で独り言をつぶやき続けている。
かなり怖い。

バスは出発した。
彼女は行き先の違うバスを待っていたのだろうか?
気になって手元の時刻表をみてみたが、別方向行きのバスはもう来ない時間帯だった。
最寄り駅行きのバスだって、次の便まではだいぶ間がある。

人はそれぞれである。
この女性はひょっとすると何かの病気だったのかもしれない。
あるいは個性であったかもしれない。
しかしそれが個性か病気かを知る方法は、夜のバス停には見当たらなかった。

バスはいつもどおり、最寄り駅へ向けて走っていった。
ある夜のことであった。

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MANTA

Facebookのほうにコメントを頂きました(感謝!)。
以下抜粋です。
「私も時々屋外で大きな声で歌を歌うことがあります」
「その女性もあるいは演劇の稽古だったのでは」
「ヘッドセットで通話中で、電話中だからバスに乗らなかった、
 ってことじゃ?」

by MANTA (2018-08-10 05:49) 

MANTA

みなさま、コメント、ありがとうございます。
いろいろな説が浮上しますが、小さな灯りしかないバス停のことです。
「わからない」ことが恐怖につながる一例かと思い、随筆風(?)
の記事にしてみました。相手の行為を好意的に取ることも、不気味と
取ることも、自分次第であることを改めて認識した次第です。

ちなみに写真1枚目のバスは「その時のバス」です。
最寄り駅で下車時に撮影したので、周辺はずいぶん明るくなってます。
実際のバス停は、写真2枚目程度の雰囲気です。
by MANTA (2018-08-10 05:53) 

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