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福岡での大規模陥没の理由はなにか? [▼科学ニュース New!]

皆さんの記憶にも新しいと思いますが、これ、大事件でした。
●博多の地下鉄、工事再開難航 道路の仮復旧は14日にも(2016.11.10)
 http://www.asahi.com/articles/ASJC951MYJC9TIPE01Y.html
 (下記写真も上記記事から)
 chika2.JPG

博多の陥没は地下鉄工事に伴うものです。
chika.jpg
 平成25年12月議会第4委員会報告資料(福岡市)に加筆。赤い部分が
 建設中の地下鉄の駅。その右端でトンネルが崩落し、真上の道路が陥没。
 http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/37615/1/251219houkoku-koutsuu1.pdf

1月17日に出された施工者の報告書では、トンネル崩落の様子が詳しく書かれて
いるようです。死者が出なかったのが不思議なくらいの大事故でした。
●博多陥没「砂、津波のよう」 JV報告書 作業員証言生々しく
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/301780

その原因は?対策は? NHKでは繰り返し、解説されています。
ざざっとまとめてみました。
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●「なぜ崩れた 福岡 大規模陥没」(時論公論:11/10)
 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/256756.html
 ・地下水を支えている地層が損傷した
 ・地盤の調査をさらに細かくする必要はなかったのか?
 ・岩盤の補強は十分だったか、適切な掘削方法だったのか?
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●身近に迫る脅威 下水道管による陥没(おはよう日本:11/28)
 http://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2016/11/1128.html
 (博多ではなく一般的な道路陥没の原因として)
 ・下水道管の亀裂に土砂が引きこまれ、空洞が生まれる
 ・電磁波を送って異常を探し出したり(地中レーダー)、水道の検針員が
  道路のへこみや亀裂を報告するなど、対策はされている。
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●都市陥没?広がる地下クライシス?(クローズアップ現代:12/15)
 http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3909/
 http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3909/1.html
 ・博多:専門家が危険性を繰り返し指摘
 ・博多:またライフラインがひしめき合うように埋設。これが陥没対策を阻んだ。
 ・東京都の場合:下水管を埋め戻す際、空洞が出来やすくなっている場合あり
  (下図、上記サイトから引用)
 東京都.JPG
  この円グラフは意外でした。これじゃ修理になってないやん(泣)
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総合すると、1) 地盤強度が予想より弱かった、2) 都会では陥没対策も取りにくい、
3) 博多以外の地域でも陥没は頻繁に起きており対策が求められる、といったかんじ。

このうち、1の地盤の弱さが今回の事故の本質と思われます。
まず、下記の通り、2年前にも(今回より小規模ですが)同様の事故が起きています。
●2年前の地下鉄工事陥没事故の原因、特定せず…
 福岡市、調査甘く再発か 防げた可能性も
 http://www.sankei.com/west/news/161111/wst1611110015-n1.html
専門家による技術委員会でも、地盤が軟弱さが指摘されていました。トンネルをもっと
深くしたほうがよいとの意見が委員会ではありましたが、福岡市は当初案より1mだけ
深くする案を押します。
●スクープ! 博多陥没の内部資料入手 福岡市は事故リスクを黙殺していた!
 https://dot.asahi.com/wa/2016122700138.html

今回の地下鉄トンネルですが、たしかに基盤(硬い岩盤)の中を掘り進んでいるようです。
●H7 福岡県:西山断層系、水縄断層系、警固断層系
 http://www.hp1039.jishin.go.jp/danso/Fukuoka2frm.htm
 http://www.hp1039.jishin.go.jp/danso/Fukuoka2/figures/f4-2-3-2-2.jpg
おそらく上図の「第三紀層」を掘削中だったと思われます。しかし基盤は一部が風化したり
亀裂があって脆かった。一方で、上のトンネルの断面図を見ると分かりますが、新駅と
既存の博多駅とを繋ぐ必要から、新駅をこれ以上地下深くに設置したくなかったのでしょう。

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結論:博多の陥没事故は「予見できなかった、仕方のない事故」だったのでしょうか?
ここまでみると、そうは思えません。要するに、福岡市の見積もりが甘かった。
(それを最終的に認めてしまった委員会にも一定の責任はあるでしょう)

過密な都会にあらたなインフラを整備する際には、工事案に制約ができますし、
安全率は下がり気味です。どうやら、これまでの工事の経験だけでは、ギリギリ安全と
思っていてもアウトの場合がある、そういうケースが増えているように思います。
経験だけではなく、例えば数値シミュレーションや、事前の地下探査などが必要ですが
そのマッチングが上手くいっていないようです(現場は実はシミュレーションなど全く信じて
なかったりして)。ここに研究の価値があるともいえます。がんばりましょう。

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