SSブログ

海からの大量のCO2放出は無い(1) [ 地球温暖化を学ぼう]

あらためて今、地球温暖化問題に注目が集まりつつある。
きっかけはもちろん、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が最近、
地球温暖化に関する報告書をアップデートしたからである。
●科学からのメッセージ:IPCC第5次報告書が伝えること(4)
 http://www.kankyo-business.jp/column/007493.php

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

異常気象と人類の選択 (角川SSC新書)

  • 作者: 江守 正多
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
  • 発売日: 2013/09/10
  • メディア: 新書


あわせて、東日本大震災からの復興が少し進んできて(+景気も上向いてきたので)
「地球温暖化にどう対応しようか?」という機運や懸念が再び高まってきているのだろう。
ただし御存知の通り、地球は複雑である。地球温暖化の正体やその対策を、明々白々に
示すことはとても難しい。

一方、その「科学的な限界」につけ込むがごとく、
「地球温暖化などウソまやかしだ」と吹聴する類には、私は不快感しか抱けない。
「ウソまやかし」を不快と感じるわけではない。私は気象学者でも気候学者でもないし
温暖化関係の予算にも全く無縁だ。この連載でも「二酸化炭素(CO2)が増えたから
地球は温暖化した、だからCO2を減らしましょう」などと書いたことも一度もないはずだ。

----
不快の原因は、温暖化懐疑派と言われる人達の多くが気象データなどの科学的な成果に
ついて、原典を当たることもなく、自身の都合の良いように解釈し、あまつさえ「温暖化論に
疑義アリ」という論拠に利用している点である。その典型例は下記だ。

※物理学会誌Vol.65No.4「原因は気温高,CO2濃度増は結果」槌田敦(2010.04.09) より
 http://www.env01.net/main_subjects/global_warming/contents/s003/tutida201004.pdf
キャプチャ.JPG
上の図の実線は気温、破線がCO2の変動だ。CO2の変動が気温変動よりも遅れている。
すなわち「気温が増加したから、CO2が増加したのだ」と主張する人たちの論拠だったり
する。実際はどうか? もちろん、そんなわけはない。詳細は下記をご覧頂きたい。
●気温が上がって二酸化炭素が増えたのではない
 http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2008-07-13

----
同様に、次の図が「CO2増加が人為的でない証拠」として、ネット上でしばしば
紹介されている。この図は気象庁がホームページで公開していたものだ。
キャプチャ.JPG
図1:炭素循環の模式図(1990年代) (以下は気象庁HPでの説明文より)
IPCC(2007)をもとに作成。各数値は炭素重量に換算したもので、貯蔵量(箱の中の数値、単位:億トン)あるいは交換量(矢印に添えられた数値、単位:億トン/年)を表している。黒の数値は、産業革命前の自然の循環の状態を表しており、収支はゼロである。赤の数値は、化石燃料の燃焼などの人間活動の影響によって、自然の状態から変化した量を表しており、交換量は1990〜1999年の平均値、貯蔵量は1750年から2004年末までの期間についての積算値である。なお、「植生、土壌および有機堆積物」の蓄積量の変化は、陸上生物圏の吸収による増加(+1010億トン)と土地利用の変化による減少(−1400億トン)に分けて示している。

図1の海から大気への矢印(”706”と書かれた黒矢印や、”200”と書かれた赤矢印)から
次のようなことが吹聴されている(※下記のトン数=図1と同じく炭素重量に換算)。
・人間が放出するCO2は年間64億トンだが、海から放出されるCO2は706+200
 =年間900億トン以上! 人為的なCO2放出量の10倍以上も多い!
・海から放出されるCO2の量(1年あたり)は産業革命前よりも200億トンも増えた。
 これがハワイなどで観測されている大気中のCO2増加の要因ではないか!

…はい、その通り。この図だけを見ていれば。ではそれで正しいのだろうか?
ちょいと、図1の原図をたどる旅に出てみよう。
・まず上記の説明文にある通り、これはIPCC第4次報告書からの抜粋だ。
 http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/wg1/ar4-wg1-chapter7.pdf
 ※Figure 7.3。
      ↓
・この原図はSarmiento, J.L., and N. Gruber (2006):
 Ocean Biogeochemical Dynamics, Princeton University Press, 503 pp.
 ※Figure 10.1.1。ただし貯留量は貯留量はSabine et al. (2004)より。
      ↓
・さらに原図は下記。
 Sarmiento, J. L., and N. Gruber (2002): Physics Today, 55, 30-36.
 ※Figure 1。ただし一部はSabine et al. (2004)より。
      ↓
そして大元の図へたどり着いた。いったいどんな図なのだろう?
と、ここで続く。明日をお楽しみに。
nice!(7)  コメント(1)  トラックバック(1) 
共通テーマ:学問

nice! 7

コメント 1

MANTA

本記事を批判するトラックバックをichijinさんより頂きました。
氏は同じ内容を何度もブログに書いておられます。
それらに対する返答は当ブログの下記記事のコメント欄にまとめました。

http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24

by MANTA (2014-06-27 18:55) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。