聖地=柿岡へ巡礼(2) [▼研究実況 Now!]
前回に引き続き、気象庁地磁気観測所、通称「柿岡」への巡礼レポートです。
実は大勢で押しかけました。
今回はただ地磁気観測所に見学に行ったわけではなく、地磁気の「絶対強度」
の測定方法の講習を受けに行ったのです。勉強を兼ねているので大勢なのだ。
地磁気だけではなく、何かを測定する際には、絶対測定と比較測定という2種類の
測定方法があります。地磁気の場合、多くの測定装置(磁力計)は比較測定しか
できません(地磁気が”ある基準値”からどれくらいずれているかだけが分かる)。
しかもこの”基準値”も、機械の経年劣化でずれる場合があるので、やっかいです。
前回お話したように、100年以上かけて少しずつ変化する地磁気の様子を精確に追う
ためには、比較測定だけでなく、地磁気の絶対測定をする方法も必要です。
それを可能にする装置がこの「磁気儀」。
実は地磁気の絶対的な大きさは「プロトン磁力計」や「オーバーハウザー磁力計」で
測定することができます。下記ページにその原理が載っています。
●核核磁気共鳴の原理(金沢工業大学樋口研究室)
http://www2.kanazawa-it.ac.jp/higuael/nmr_basic.html
●傾斜補正型dIdDベクトル磁力計(国際電子工業)
http://digitro.jp/NEW-dIdD.pdf
なので地磁気の向き(伏角・偏角)を決めることが出来れば、絶対測定が
完成します。磁気儀はこの伏角・偏角を決めるための装置なのです。
(伏角・偏角とは? → http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/element/eleexp-j.html)
磁気儀には小型の磁力計(1方向成分だけ比較測定できるモノ)が取り付けられていて、
これをいろいろな方向に回して出力がゼロになる平面を探します。この平面と垂直の
方向が地磁気の向きだというわけです。ただし、前のページのコメント欄にも述べたように、地磁気の
指し示す北は、本当の北(真北)とはずれています。
真北の方位も知るために、磁気儀には小さな望遠鏡もついています。夜になると
これで星(例えば北極星)を観測して、真北の方位を求めるのです。なかなかの職人技。
だからこそ、大勢で地磁気観測所に押し入って「伝授」していただいたのです。
望遠鏡なしでも、真北を知る方法はあります。こちらはジャイロスコープ。国土地理院の
研究者の方が、今回の実習のためにわざわざ持ってきて下さいました(感謝!)
ジャイロコンパスの原理を利用しているので、北極星を観測しなくても真北が求まります。
(北極星を捕まえるには夜まで待たないといけないし、曇ってると駄目だし、観測点の
北側が開けていないといけないし、と条件がたくさんくっついてくるのだ。。。)
ところがこのジャイロスコープも、なかなかの職人技を必要とします。
あ、いい忘れましたが、方位の測定精度は数秒単位(3600分の数度)が必要です。
1km先に立っている鉛筆の左か右かを見分けられるくらいの角度精度です。
実際の実習は、上の磁気儀よりももっと小型で可搬型のものを使って、3班に分かれて
行いました。磁気儀の操作方法、水平合わせ、方位合わせ、磁力計回転などなど
地磁気観測所の方々に手取り足取り、教えていただきました。ちなみに私はメガネが
磁力計に反応してしまい、メガネを外しての実習となったので、いろいろ大変でした。
上の写真は、実習を行った部屋の中の張り紙。貴重な機材がある部屋なので勝手に
触っちゃいけません。また日本人以外もここで実習を受けるので、各国の言葉で
「触るな」と書かれています。茨城弁もあるし、その下にはハンガリー語が手書きで
追加されています。きっとハンガリーの方もここに来られたのでしょう。
実習は2日半に及びました。私自身、この観測所に何回もお邪魔しているのですが
絶対観測の実習を受けたのは初めて。本来、若い研究者や学生さん用の
集中講座だったのですが、私がとても勉強になりました。ありがとうございます。
ちなみに地磁気観測所のある柿岡という町は、のどかで歴史があります。
こんな旅館が残っていたりします。
こちらにはまた、1月ごろにお伺いする予定です。そんときは寒いんだろうなぁ…
関東平野より北、筑波山の裏側に位置していますからね。
でも楽しみにしています!
実は大勢で押しかけました。
今回はただ地磁気観測所に見学に行ったわけではなく、地磁気の「絶対強度」
の測定方法の講習を受けに行ったのです。勉強を兼ねているので大勢なのだ。
地磁気だけではなく、何かを測定する際には、絶対測定と比較測定という2種類の
測定方法があります。地磁気の場合、多くの測定装置(磁力計)は比較測定しか
できません(地磁気が”ある基準値”からどれくらいずれているかだけが分かる)。
しかもこの”基準値”も、機械の経年劣化でずれる場合があるので、やっかいです。
前回お話したように、100年以上かけて少しずつ変化する地磁気の様子を精確に追う
ためには、比較測定だけでなく、地磁気の絶対測定をする方法も必要です。
それを可能にする装置がこの「磁気儀」。
実は地磁気の絶対的な大きさは「プロトン磁力計」や「オーバーハウザー磁力計」で
測定することができます。下記ページにその原理が載っています。
●核核磁気共鳴の原理(金沢工業大学樋口研究室)
http://www2.kanazawa-it.ac.jp/higuael/nmr_basic.html
●傾斜補正型dIdDベクトル磁力計(国際電子工業)
http://digitro.jp/NEW-dIdD.pdf
なので地磁気の向き(伏角・偏角)を決めることが出来れば、絶対測定が
完成します。磁気儀はこの伏角・偏角を決めるための装置なのです。
(伏角・偏角とは? → http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/element/eleexp-j.html)
磁気儀には小型の磁力計(1方向成分だけ比較測定できるモノ)が取り付けられていて、
これをいろいろな方向に回して出力がゼロになる平面を探します。この平面と垂直の
方向が地磁気の向きだというわけです。ただし、前のページのコメント欄にも述べたように、地磁気の
指し示す北は、本当の北(真北)とはずれています。
真北の方位も知るために、磁気儀には小さな望遠鏡もついています。夜になると
これで星(例えば北極星)を観測して、真北の方位を求めるのです。なかなかの職人技。
だからこそ、大勢で地磁気観測所に押し入って「伝授」していただいたのです。
望遠鏡なしでも、真北を知る方法はあります。こちらはジャイロスコープ。国土地理院の
研究者の方が、今回の実習のためにわざわざ持ってきて下さいました(感謝!)
ジャイロコンパスの原理を利用しているので、北極星を観測しなくても真北が求まります。
(北極星を捕まえるには夜まで待たないといけないし、曇ってると駄目だし、観測点の
北側が開けていないといけないし、と条件がたくさんくっついてくるのだ。。。)
ところがこのジャイロスコープも、なかなかの職人技を必要とします。
あ、いい忘れましたが、方位の測定精度は数秒単位(3600分の数度)が必要です。
1km先に立っている鉛筆の左か右かを見分けられるくらいの角度精度です。
実際の実習は、上の磁気儀よりももっと小型で可搬型のものを使って、3班に分かれて
行いました。磁気儀の操作方法、水平合わせ、方位合わせ、磁力計回転などなど
地磁気観測所の方々に手取り足取り、教えていただきました。ちなみに私はメガネが
磁力計に反応してしまい、メガネを外しての実習となったので、いろいろ大変でした。
上の写真は、実習を行った部屋の中の張り紙。貴重な機材がある部屋なので勝手に
触っちゃいけません。また日本人以外もここで実習を受けるので、各国の言葉で
「触るな」と書かれています。茨城弁もあるし、その下にはハンガリー語が手書きで
追加されています。きっとハンガリーの方もここに来られたのでしょう。
実習は2日半に及びました。私自身、この観測所に何回もお邪魔しているのですが
絶対観測の実習を受けたのは初めて。本来、若い研究者や学生さん用の
集中講座だったのですが、私がとても勉強になりました。ありがとうございます。
ちなみに地磁気観測所のある柿岡という町は、のどかで歴史があります。
こんな旅館が残っていたりします。
こちらにはまた、1月ごろにお伺いする予定です。そんときは寒いんだろうなぁ…
関東平野より北、筑波山の裏側に位置していますからね。
でも楽しみにしています!
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