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逃げていく磁北極 [▼研究実況 Now!]

前回、気象庁の地磁気観測所の紹介を行った際に、
「地磁気の北極(磁極)、年に数十kmのスピードで移動しています」
ってお話をしたら、コメントを頂戴しました( くまからさん、ありがとうございます)。
”「そんなことは、あるまい」と思いながらも(中略)概算してみました。(中略)
 磁北極は結構動くけど、「年に数十km」は誇大広告だな~と思って、最近5年間つまり
 2005年から2010年を 計算すると、びっくり!! 6.85, 6.85, 53.98, 5.43 (km/year)
 磁北極がかなりのスピードを出しています。”

そうなんですよ!朝早起きして計算されたとのこと、お疲れ様です。私も触発されて、
グラフを作ってみましたのでご紹介。こういうやりとりできるのがブログのいいところです。

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まず地球は磁石だってところからおさらいしましょう。
j-sen.gif
「東京磁石工業・コンパス豆知識」より
http://www.tokyocompass.co.jp/mame.htm
この図のように、北極はS極になっていて、磁力線は地面へ突き刺さっています。
この「磁力線が垂直に立っている場所」が磁極。磁北極と磁南極があります。
ところがよくよく調べてみると、磁北極は北極点とは結構ずれています。
しかも、毎年動いています。
pole_ns-j.gif
「磁石の北と地磁気極と磁極(京都大学)」より
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/poles/polesexp-j.html
※同ページには磁南極の移動の図もあります。

上記の京大サイトには、過去約100年間(+2015年までの予測)の磁北極の位置が
まとめられています。そこで、1900年の磁北極をスタート地点として、100年余りで
どれくらい移動したかをグラフにしてみました。磁北極は過去100年間で1000km程度
移動していて、近年加速しているようです。
dist.gif
※厳密には移動距離ではなく、1900年の位置からの直線距離です。
※「緯度経度から距離を算出(Excel版)」を使用させていただきました。
 http://www.vector.co.jp/soft/win95/home/se438927.html

移動速度も計算してグラフにしてみました。2000年以降、10km/年→50km/年へと
加速してます(くまからさんが見積られた値と概ね同じだと思います)。
vel.gif
なお2006年以降、速度がガクガクしていますが、原因はよくわかりません。
ご存知のかた、教えて下さい!

前の記事にも書きましたが、3月11日の巨大地震の元凶はプレートの移動だと
考えられています。プレートの押し合いへし合いが地震を起こすのです。
プレートの移動速度は10cm/年以下なので、その10~50万倍の速さで磁極は
移動しているのです…あれ?前の記事で1000倍って書いちゃった。計算ミスだ!
いかん、いかん、、、

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磁極が移動しているので、磁石が指し示す北と、本当の北の間の角度差(偏角)も
時とともに変化していきます。地磁気観測所さんのページを御覧ください。
●地磁気の基礎知識
 http://www.kakioka-jma.go.jp/knowledge/mg_bg.html

ということで、地磁気が急速に変化している様子がお分かりいただけましたでしょうか?
その理由は?? 次回は地磁気観測所「巡礼」の続きです。
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アヨアン・イゴカー

早速、地磁気観測所の説明見ました。200年前の伊能忠敬と350年前のオランダ船の記録と現在とを比較して、15°(1,666キロ)もずれているのですね。こんな短時間に余りに大きい変化なので、自分の日常的な感覚では信じられませんでした。地磁気の移動が何にどのような影響を及ぼしうるのか、大変興味深いです。
by アヨアン・イゴカー (2012-10-11 23:58) 

MANTA

アヨアン・イゴカーさん、お返事が遅くなってしまいました m(_ _)m
そうなんです、方位磁石が指し示す方向も、(東京付近は現在) 本当の北
(真北といいます)から8度程度「西」へずれていますが、江戸初期には8度くらい
「東」へずれていました。

関連する話として「京都二条城のお堀は真北を向いていない」が知られています。
これも地磁気の角度の変化のせいだと言われています。
http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/wdc/pdf/pamphlet/wdc_pamp.pdf
(こちらの7ページ目)
「動かないと思うものも結構動く」の一例ですね。

by MANTA (2012-10-13 11:19) 

アヨアン・イゴカー

京都大学地磁気世界資料解析センターも拝見しました。
プレートテクトニクスと地磁気の移動が大きな関係があると感じました。地球が自転しており、マントルも対流しているので、モーターになり磁力が発生するというイメージはあります。
地磁気の移動は、変化を齎すというよりも、むしろ変化の結果と考えられるのでしょうか。
深海の磁気を測定と言うのは、もっともマントルに近い部分の磁気を測定すると言うことで、より正確な磁気を測定できるのでしょうか?(高校の時にホメオスタシスと言う言葉を習いました。)
by アヨアン・イゴカー (2012-10-13 22:22) 

MANTA

>プレートテクトニクスと地磁気の移動が大きな関係があると感じました
最近はそのように捉えられています。地磁気の源はマントルではなく、
その下の核(外核)です。外核の中の液体金属が対流していて、これが
地磁気を生んでいると考えられています(ほぼSFですね!) この外核の対流と
プレートの移動の両方にマントル対流が深く関わっていると思われています。
地磁気の極の移動はこの外核の対流の変化を反映しているようです。

ところで深海で地磁気を測定するのはまた違った目的があります。
それはまたいずれお話しましょう。
by MANTA (2012-10-15 08:01) 

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