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研究者のウソを見抜く方法 [ 科学コミュニケーション]

最近、世間では研究者への信頼度が下がっているそうです。
●科学者・技術者への信頼低下 科学技術白書が指摘(サイエンスポータル)
 http://scienceportal.jp/news/daily/1206/1206201.html


ナナちゃん「ねぇ、地震予知ってできないの?」  専門家「・・・」

これによれば、科学者への信頼度は震災前の約85%→震災後には約66%に低下とのこと。
確かに地震予知や原子力関係の抱える問題を考えると、世間の人の感想はごもっとも。
私も研究者の一人として、このアンケート結果を真摯に受け止め、学術的な部分だけでなく、
科学コミュニケーションの部分でも社会に貢献できればと思います。

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従来の専門家のいうことを鵜呑みにできない昨今、様々な研究者が「ネオ専門家」
としてTVやネットで活躍されています。こういう方々の常套句は次のようです。
「昔からこの分野を研究してきた」「私と同じような研究者は他にいない」
しかしそれは本当でしょうか?ウソの場合もあるようです。
おそらくは、ご自身を大きく見せようとするものでしょう。下記はその一例です。
  • manta33blogmanta33blog@HayakawaYukio 「先生みたいに放射能の研究してる大学教授は他にもいないんですか?大学教授はなぜ放射能研究しないのですか?」「いない。しない。大学教授はみな自分の研究で忙しい。私がこれやってるのは、四半世紀前からこれが私の研究テーマそのものだったから」09/09 17:18 https://twitter.com/HayakawaYukio/status/244455478598443008

HayakawaYukioさんとは、群馬大学の早川先生です。震災後の「放射線汚染分布地図」
を作成して配布されています。一方で、福島県について様々なツイートをされてもいます。
●放射能汚染マップの作者 群馬大学の早川教授が訓戒処分
 http://www.tax-hoken.com/news_TrZmKVjI6.html
●福島農家は「オウム信者と同じ」 群馬大教授「暴言処分」に賛否
 http://www.j-cast.com/2011/12/09115932.html?p=all

ご活動の内容はともかく、上記ツイートにおや?と思って調べた所…「ナイこと」でした。
  • manta33blogmanta33blogウソその1:「放射能の研究してる大学教授は他にもいないんですか?」→たくさんいる、たとえば次の「放射線量等分布マップ」 別紙4をみるとよい。http://t.co/y2liztvd09/09 17:20 文部科学省による放射線量等分布マップ(線量測定マップ)の作成について 平成23年8月2日
  • manta33blogmanta33blogウソその2:四半世紀前から放射能が私の研究テーマそのもの→早川先生の業績リストには311以前には放射能に関する論文は1つもない。http://t.co/7q1xfbfW09/09 17:21

専門家と名乗る方の発言を信用できるかどうか知るためには、その方が関連分野の論文を
書いているかどうかを調べるのが一番の早道です。学会で発表しているとか、著書がたくさん
ある、とかはダメです。査読がないか、あっても甘いからです。必ず「査読付きの学術論文」の
リストを確認して下さい。その方がホームページ等でリストを公開していなかったり、公開して
いても査読付きかどうかを明記していないようであれば、あまり信用しなくてよいでしょう。

「怪しい専門家」は、地震予知や資源開発の分野でも少なからずいます。共通しているのは
関連する論文がほぼない、という点です。たしかに新たにその分野を研究し始めた方の場合は
まだ論文はないでしょう。でもそんな駆け出しの研究者が「私は専門家だ」って公然と名乗る
のは、なんかおかしい。研究とは謙虚なものであると私は思っています。

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おしまいに、冒頭のサイエンスポータルの記事によれば、「科学技術の方向性は専門家が
決めるのがよい」と思う方々は約79%→約45%に激減しているそうです。また一方では、
研究者の予算は減り続けています。
●日本の研究開発費3年連続で減少(サイエンスポータル)
 http://scienceportal.jp/news/daily/1208/1208101.html

研究資金獲得のためでしょうか?最近はあの手この手を使うネオ専門家が増えている
ようです。ウソを言う研究者かどうか、その方の「業績リスト」をネットで一度確かめてみて
ください。”TVにでてるから”とか、”大きい大学だから”って、すぐに信用するのはダメですよ。

え、私の言っていることもウソじゃないか、だって? (^^;)
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Kumagai_JAM

この別紙4は反証にしないほうがよいと思います。この1回の特別測定にのみかかわったかたも多数含まれています。そういういみで全てが「放射能研究している」人々とは言いがたいとおもいます。
by Kumagai_JAM (2012-09-11 17:49) 

MANTA

Kumagai_JAMさん、ご指摘ありがとうございます。ではこちらではいかが?
http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/03_keikaku/data/h23/download/j/05.pdf
H23年度(2010年秋)の科研費の系・分野・分科・細目表です。この中に
「放射線・化学物質影響科学」があります。この分野への応募者は1名しか
いないのでしょうか?あるいはこの分野の研究者は放射線を研究しないので
しょうか? 私にはそうは思えませんが。
by MANTA (2012-09-11 21:25) 

MANTA

なお仮に少ない測定経験しかなく、関連論文もなく、それでも「四半世紀前からの
専門家だ」といえるとしたら、”別紙4”の方々もまた専門家です。
まるで盾と矛のお話ですね。
by MANTA (2012-09-11 21:43) 

アヨアン・イゴカー

>駆け出しの研究者が「私は専門家だ」って公然と名乗る
のは、なんかおかしい。研究とは謙虚なものである

専門分野と言うものは本当に奥が深いもので、駆け出しの頃は実態がつかめていないのではないかと思います。分かったと思い込んでいるだけなのではないかと。それは科学に限らず、どの分野の専門でも同じことだと思います。
by アヨアン・イゴカー (2012-09-11 23:18) 

MANTA

>分かったと思い込んでいるだけなのではないかと

アヨアン・イゴカーさん、若くてもベテランでも、科学者はいつも「思い込んで」
研究をしているものです(そうでなければ未開の地平を切り開けない)。
ただ多くの間違いや成功を通じて、「こうではないか?」という感覚をつかみ、
知見を深くしていく、こういうステージにたってこそ「専門家」と名乗って良いのだと
私は思います。(それでもしばしば間違ってたりしますが)
by MANTA (2012-09-12 08:42) 

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