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勝ち残るグループ [ 科学コミュニケーション]

人間は助けあって生きるのがいいのか、競いあって生きるのがいいのか?
のっけから重いテーマですが、ほったらかしの(笑)連載「科学コミュニケーション」、
今回はコミュニケーションそのものを話題にしてみましょう。

単純に考えれば、他人のための行動=利他的な行動は、自分のための行動
=利己的な行動より損します。利他的な行動は、利己的な人にとって都合の
よいものになるからです (例:囚人のジレンマ ←検索してみて下さい)。
しかしある環境下では、利他的な行動でも損をしなくなります。例えば下記。
●The Coevolution of Parochial Altruism and War(Science, 2007年)
 http://www.sciencemag.org/content/318/5850/636.short
hoge.jpg
 ※上記論文のもの(コンピュータシミュレーションによる)に加筆

この論文では、グループ間で戦争が起きうる場合、利他的かつ外部への敵対心の強い
(偏狭な)グループが生き残る確率が高いようです(グラフ右上の山)。一方で、利己的で
外部への敵対心の弱い(寛容な)グループ(=戦争をあまりしないグループ)も生き残り
ます(左下)。下記のReviewでは前者は「戦士型」、後者は「商人型」と評されています。
●The Sharp End of Altruism
 http://www.sciencemag.org/content/318/5850/581.summary

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この論文、下記のブログでを知りました。
●偏狭な利他主義と寛容な利己主義(池田信夫ブログ)
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51773530.html

経済のお話なのですが、生命進化や、あるいは科学研究の進め方といった
「協力関係」を伴うありとあらゆる場面で成り立つお話かもしれません。
ただ、上記の池田氏の文章は、次のように結ばれています(以下引用)。

”普通は社会が大規模化するにつれて人的交流が増えて部族社会が崩壊し、右上の
 利他的な社会から左下の利己的な社会に移行する”
”特に隣の中国が左下のグループで急速に成長しているので、日本だけが右上の
 タコツボ的な均衡に閉じこもっていると、収益力の高い企業から裏切ってアジアに
 出て行き、圧倒されてしまうおそれが強い。”

一方で、上記のScience論文によれば、グループ間競争が激しいほど、グループ内部では
結束を固めて、互いに協力することが重要になります。国際競争が激しくなる昨今、日本を
裏切って他の国に出ていくことよりも、国内で協力関係を強化する方が、国際的に生き残れ
そうな気がするのですが、どうでしょうか?

グループ内で結束を固めたほうが生き残れる、という事例が下記にも紹介されてました。
●あのとき、経営は判断を誤った 会社がダメになった瞬間 ソニー NECほか
 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31779?page=3
興味深く読ませてもらいました。社内の内紛が会社崩壊の要因ということのようです。
そういえばたしか昔の日経BPに紹介されていたと思いますが、会社の複数部門を分社化
した結果、部門間連携が取れなくなってしまうケースがあるそうです。昨今の業績主義の
煽りで、グループ会社同志で競いあった結果、Science論文のいう「戦士型」になって
しまったのでしょう。この場合、再び統合しても部門間の連携はうまくいかないそうです。

はてさて、みなさんの職場や学校ではいかがでしょうか?
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コメント 4

yao

社会学者野先生もこのようなシュミレーションあるのですね。
結果はとても興味深いです。

日本人の常識は世界の非常識(良い意味でも悪い意味でもです)といわれて久しいですよね。まさにたこつぼの中にいる日本。
経済が相対的に小さくなっていく日本では、やはり政治に強力なリーダーシップを求めているのは私だけでしょうか?
私は主張すべきすることは主張し、譲るべきことは譲る。普通の国になることと思います。
特に東アジアではとてもセンシティジブな判断が要求されます。
日本は東アジアで唯一 先進国(今でもかな?)となって、へたなこと言われることはありませんでしたが、経済で3位になり、みんな下を向く状況になったところで周辺国からいろいろ言われるようになりました。漁船で体当たりまでされています。

個人的には日本という国にスクリュー付けて、いっそハワイの隣まで移動したい。(笑)

経済は間違いなく欧米中心から東アジアへシフトしていることは確かでで、その意味では、日本はとてもいい位置してることは確かですが、残念ながらこの地理的な有利さを日本はうまく使えていません。

経済ルールが違う国、反日教育している国がが世界経済の牽引役というのが悩みの種なんでしょうね。




by yao (2012-03-04 22:31) 

MANTA

>社会学者野先生もこのようなシュミレーションあるのですね。
yaoさん、社会学と言うよりも経済学のようですよ。
「ゲーム理論」で検索すると、いろいろな例がみつかります。

>経済が相対的に小さくなっていく日本では、やはり政治に強力なリーダー
>シップを求めているのは私だけでしょうか?
私もです。ただ、冷静な判断と優れたブレーンを持たないリーダーは要りません(笑)

>経済は間違いなく欧米中心から東アジアへシフトしていることは確かでで、
>その意味では、日本はとてもいい位置してることは確かですが、
そう言われたらそうですね。日本、がんばろうぜ。
日本は米国や欧州の方を見過ぎなのかもしれません。
by MANTA (2012-03-08 12:54) 

yao

>反日教育をしている国

ああ、この表現が相手の手のひらに乗っていることでした。
外交、政治はもっと狡猾であるはずですね。

お恥ずかしい。
by yao (2012-03-13 21:40) 

MANTA

>> 反日教育をしている国
> ああ、この表現が相手の手のひらに乗っていることでした。
世界標準で考えれば、敵が味方であり、味方が敵なのだと思います。
そう考えると、池田さんのブログに書いてあるような、簡単な切り分けは
国単位では不可能なのかもしれません。

by MANTA (2012-03-14 07:28) 

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