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次の大地震はどこか?~東海地震はいつか~ [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

前回の連載記事の続きである。気になるのは東海地震である。
つい先日、我が国の首相が会見を開き「国民の皆様に重要なお知らせがあります」
と、浜岡原発の運転停止を切りだした。このタイミングで緊急に止めるとは、もしや
東海地震発生が予知されたのではないか?と一部でざわめきもあったようだ。
●「浜岡原発停止」まで政局に利用した菅首相(日経BP)
 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110513/269785/?ST=business&P=3

繰り返すが、先日の巨大地震は地震予知の成功例であり、失敗例でもある。つまり、
「宮城県沖地震が今後30年以内で99%の確率で発生する」とした点は予知成功であるが
規模が異なった点、何年何月何日に起きるかについては全く分からなかった点については
失敗、というかその肝心な情報を予測する方法は確立されていない。

なので東海地震がいつ起きるかは、わからない。おしまい。
それじゃあアンマリなので、いま私が知りうる情報を列挙しよう。
jpn.jpg
※ASCIIにいい図がありました。加筆させていただきました。
 http://ascii.jp/elem/000/000/455/455932/index-3.html

まず今回の地震のおさらいであるが、上図の太平洋プレートと北米プレート(東北だけど!)
の間で起きた地震だと考えられている。一方、東海地震はユーラシアプレートとフィリピン海
プレートの間で起きるので、今回の地震は東海地震発生にあまり影響しないと考えられている。

実際、有名な「御前崎の沈降」の様子は今回の地震で変化は見られないらしい。
東海地震については、地震が発生するまでは静岡県の沿岸部(御前崎)が沈降を続け、
地震発生の数日前には隆起に転じて、地震が起きるのではないかと考えられている。
●西澤修(1995) 日本の地震予知研究史, 地質ニュース494号, P43-59.
 http://staff.aist.go.jp/osamu-nishizawa/others/imamura/yochirn.html
 ※こちらの第4図が有名なグラフ。
これにならって、現在はGPSを使って御前崎の沈降の様子が測られている。
新規作成_2.jpg
気象庁資料:地震防災対策強化地域判定会会長会見より(”調査結果及び添付資料”)
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/gaikyo/hantei20110531/index.html

御前崎は今回の地震とは関係なく、今のところ沈降を続けている(赤矢印:地震発生時)。
しかし確実に歪をためつつあるともいえる。なお下記の国土地理院のデータベースでは
最新のデータを見ることができる。今も沈降傾向が続いているようだ(例:浜岡2-掛川間)。
●最新の地殻変動情報(国土地理院)
 http://mekira.gsi.go.jp/project/f3/ja/index.html

----
しかし東海沖だけに注目していてはいけない。フィリピン海プレートと「北米プレート」の
境目=これは実は千葉・東京・神奈川の真下にあたるが、上図のようにフィリピン海プレートは
日本に対して斜めに沈み込むため、「逆断層」だけでなく「横ずれ断層」の力もかかっている。
今回の地震では北米プレートが東に移動し、いまも余効変動で東に移動し続けている
つまり、関東平野の直下ではプレート境界に力が加わり続けていると言える。

また「御前崎の沈降」に変化がないと言っても、東海地震がまだ来ないとは言い切れない。
下記の記事をぜひ一読いただきたい。
●東海地震の予知はできるか? (2011年5月14日:サイエンスポータル )
 http://scienceportal.jp/news/review/1105/1105141.html
上記記事では、「連動型」巨大地震の場合は、現在の予知体制では東海地震は予知できない
のではないか?と結論づけている。連動型とは、今回の超巨大地震のように、複数の巨大地震
が同時に発生するタイプを指す。東海地震の場合は、その隣りの東南海地震、そのまた隣の
南海地震との同時発生を指す。例えば、断層の破壊が四国沖から始まる場合、静岡県の
観測網ではその前兆は捉えられないということである。まったくその通りだ。

将来の連動型地震の発生を裏付ける「不気味な影」は忍び寄っている。
新規作成_1.jpg
上図は東北地方太平洋沖地震発生から1ヶ月間の地震活動の分布を示している。
(防災科技研HP:http://www.hinet.bosai.go.jp/hypomap/
(4月11日にキャプチャ。地名を加筆)
あまりにも震源が多いため、もはや日本列島の形を確認しづらいが、奇妙なことは
静岡沖~宮崎沖の地域だけ、地震活動が非常に少ない。まるで、ケモノか何かに
ガブリとかじられた跡のようだ。この地域がいわゆる「東海・東南海・南海地震」
の地域であり、複数の巨大地震が連動して起きることが危惧されるのも頷ける。

色々書いたが、結局のところ東海地震がいつ起きるかは「わからない」。もしもこの
ブログを書いている、いまこの瞬間に起きたとしても、専門家たちはTVで「起きるべくして
起きた」というだろう。さてどうしたものだろうか?
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乾物屋

学会お疲れさまでした。今日(6/2)の朝日朝刊科学面にもGPSで検知できないかなどの紹介記事が乗っておりました。全く別の研究会ですが、17日から幕張に行きますので、浦安と比較してまいります。

>東海地震がいつ起きるか・・・いま私が知りうる情報を列挙しよう。
かっこいいセリフです。男っとこまえです! 提供された情報を判断するのは我々です。そして、それが「減災」につながればと願ってやみません。
by 乾物屋 (2011-06-02 13:29) 

Working Dad Oversea

読みやすくて、判りやすくて、適度にまとまった良い投稿だね。さすが。

しかし、空白域が不気味だぞ~。
by Working Dad Oversea (2011-06-02 15:12) 

BERET

私も今朝の朝日新聞で大会の記事を拝見しました。学会、本当にお疲れ様でした。
私たちの意識も変化してきているように感じます。提供された情報を、どう判断し、いかにして防災・減災に結びつけるかが大切なんですね。
by BERET (2011-06-02 17:57) 

MANTA

乾物屋さん、asahi.comを見に行きましたが、そこにはありませんね。
だからといって新聞を取る気はありませんが。(^^;)

>>東海地震がいつ起きるか・・・いま私が知りうる情報を列挙しよう。
>かっこいいセリフです。男っとこまえです!
いや、大して知っていないので「知りうる情報」を列挙できたりします。
私よりもっと知っている人には、もっと話して欲しいところですが、研究者は
忙しく、めんどくさがり屋や照れ屋が多いものです。。。

----
Working Dad Overseaさん、ありがとうございます。
私もHinetの図を見て、ちょっとゾッとしました。東北地方太平洋沖地震の
発生前から、概ねこんな感じではありましたが、地震発生後各地で地震活動
が活発になっているのに、南海トラフはまだ静かです…

by MANTA (2011-06-02 18:05) 

乾物屋

http://kanbutsu.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_56d/kanbutsu/image/2011-06-03T06:40:43-6d9c5.jpg
出先から写メですが置いときます(笑)
by 乾物屋 (2011-06-03 06:55) 

MANTA

BERETさん、コメントありがとうございます。
>提供された情報を、どう判断し、いかにして防災・減災に結びつけるかが
>大切なんですね
情報を提供する側にも大きな問題があるようにおもいます(原発事故の情報
提供と根は同じです)。「想定外」と言われた地震でも、実は事前に「想定」
されていた部分もあったことが、地震・原発双方で明らかになってきてますね。
不確実だが、ある程度の危険性が示唆されるとき、どのように国民へ情報を
提供すべきか?危険性だけを叫び続けてもオオカミ少年ですし、頭の痛い
ところです。
by MANTA (2011-06-03 07:21) 

MANTA

乾物屋さん、朝日新聞の記事の雰囲気はわかりました。(解像度が低いので
問題ないと思いますが、新聞を撮影してのUPはお気をつけください)
貴ブログを拝見しますと、”「防災の担い手」であるはずの地震学者は震源
調べばかりだという指摘”だそうですね。
http://kanbutsu.blog.so-net.ne.jp/2011-06-03
同じようなことがTwitterでつぶやかれていましたっけ。その理由を言い訳
というか説明はできますが、ここではやめておきましょう。

しかしマスコミは「前兆現象」が好きですね。たしかに頼りたくなる気持ちは
分かりますが。マスコミといいましたが、大衆もそうかもしれません。
ちなみに前兆現象に関する私の思いはこちら。そんな簡単ではないです。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2007-03-12
by MANTA (2011-06-03 07:24) 

乾物屋

MANTAさま、ご指摘ありがとうございます。取り急ぎ処置いたしましたので、リンク切れました。

>地球は複雑です。だから実験や理論よりも観測に頼りたくなる気持ちはわかります。しかし、地球は複雑で広大で、一人の研究者の手には余るものだからこそ、闇雲に観測をしてはならないのです。

考え方読ませていただきました。


by 乾物屋 (2011-06-03 11:21) 

MANTA

乾物屋さん、写真、未だ見れますよ~  でもこれくらいの解像度であれば
大丈夫だと思いますよ。あ、そういえば「ブログ著作権講座」もほったらかし
だなぁ…
by MANTA (2011-06-03 18:40) 

乾物屋

MANTAさま
エントリーだけ削除して画像ファイルを消し忘れておりました。
重ね重ねのフォローありがとうございますm(__)m
by 乾物屋 (2011-06-05 03:11) 

MANTA

乾物屋さん、お気になさらずに(^^)
by MANTA (2011-06-05 11:43) 

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