SSブログ

事業仕分けと言うパフォーマンス(3) [▼科学ニュース New!]

今日から事業仕分けが再開されるらしい。
●事業仕分け、後半戦スタート=官庁営繕費など検証-行政刷新会議
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091124-00000021-jij-pol

国民の評判も良いらしい。
●事業仕分け評価9割 内閣支持率もアップ
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091123-00000520-san-pol

しかしその実態は変わらない。テレビでは「仕分け人」の女性議員などがまるで
正義の味方(アイドル)のように取り扱われているが、彼らは省庁の言うままに
評価しているだけである。
新規作成_1.jpg
   仕分けと言っても、すでに「宛先」が書いてあるのだ。

「事業仕分け」の実態をWebサイトで見ることができる。
たとえば先日の「深海地球ドリリング計画推進」「地球内部ダイナミクス研究」の
削減について、予算担当部局(文科省財務省)が説明時に用いたと思われる
「論点等説明シート」が内閣府のサイトで公開されている。
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov13-am-shiryo/09.pdf
※追記:obaQさんに間違いをご指摘いただきました。ありがとうございました。

8、9ページ目にはこう書かれている(当方で簡略化して抜粋)。
・「深海地球ドリリング計画」の本来の目的は、人類未踏のマントルへの到達。
 しかし、完成から既に4年が経過しているのが、目途が立っていないのではないか。
・「地球内部ダイナミクス研究」については、掘削計画の進捗に合わせた研究。
・ドリリング計画の大幅な遅れ・目途が立たないことを踏まえれば、関連研究も大幅に
 規模縮小、計画の後倒しをすべきではないか。
・ドリリング計画に巨額の国費が投入されていることに鑑みれば、それ以外の関連研究は
 極力抑制すべきではないか。

これだけ読むとお説もっとも。しかしその上にある近年の成果や目標(p2.3.7)には、マントル
掘削が本来の目的とは書かれていないし、逆に「地震発生帯掘削」や「大陸棚延伸申請
への貢献」と言ったことは行政側の説明資料「論点等説明シート」には何も書かれていない。

そして、ほぼこの説明シートに沿って、仕分け人による事業仕分けの評価がなされている。
現状の予算ではとてもマントルには行けないのだ。なので行けるところを一生懸命掘っている。
そして成果も出している。なのに予算削減。事業仕分けをどうせやるのであれば、決まった結果
をトレースするだけではなく、その事業の意味や成果も含めて考えないと、それこそ無駄である。

ほかの科学関連事業の資料も下記サイトにまとめられている。スポーツ予算もあるね。
気になるものを見てほしい。また同サイトでは、各仕分け結果に対する文部科学省への
意見をメールでも募集している。

●行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください(文部科学省)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm

----
今回の件、研究者の間でも、メールや口頭でいろいろな話をしている。
あるサイトには、今回の事業仕分けの音声がアップロードされているらしい。
(著作権の問題があるので、ここでは紹介しません。ごめんなさい。)
知り合いの研究者は、3回も繰り返して聞いたそうだ。この気持ちがおわかりだろうか?

一方でこんなニュースも。
●下町工場の技術結集、深海探査ロボット計画
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091121-00000532-yom-sci
大変楽しみであるが、こういった事業を行う余力も研究機関にはなくなって行くという
ことである。そして国民が手にするのは子供一人当たり何万円という現金と、
走り放題の高速道路である。これが国を元気にする施策なのだろうか?
nice!(4)  コメント(15)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 15

Working Dad Oversea

>そして国民が手にするのは子供一人当たり何万円という現金と、走り放題の高速道路である。これが国を元気にする施策なのだろうか?

走り放題の高速道路もいらんし、科学・技術立国を支える基礎をないがしろにして払われる数万円もいらない。
うちの子供も、同じ意見だろうね。

投稿と脈絡がないけど、そろそろ「文系による理系支配」を終わらせる必要があるなぁ、と感じました。
by Working Dad Oversea (2009-11-24 23:15) 

M.N

まったくもってその通りです。どんなに金がなくても、未来に投資をしない国(いや、個人も)は滅びます。政府には是非、人気取りの目先から将来を見据えた戦略を考えてもらいたいもんです。
ちなみに私はその女性議員に抗議のメールを送りました。政治に「口を出した」のははじめてのことです。
by M.N (2009-11-24 23:24) 

ma2rosie

私たちが削減して欲しかったものは、そういった研究費ではなく、天下りを繰り返している人々の為に作られたであろう公益法人、もしくはそういった人々のために作られた仕事であって、どう考えても仕事量に見合わない不必要で膨大な人件費等が無駄だと思うだけなのです。

未来は費用対効果などで評価されるものではないと信じております。

乗船レポート親子で楽しく読まさせて頂きました。
インターネットやブログがなかったら、私たちは知る事の出来ない世界なのに、こんなに身近に研究の最先端を見せていただいて、感謝しております。
ありがとうございました。
by ma2rosie (2009-11-26 18:54) 

ウリママ

こんにちは。
いろいろ考えながら拝読させていただきました。

私の子供は将来海のことを研究したい、深海の研究をしたいと夢を持っています。 やっぱりそういう夢を持つ子供たちが大きくなったときのためにも、日本の科学技術は頑張ってほしいなとはおもいます。

けれども、『「自分の懐が痛まないから」と、無駄なお金を請求している研究者もいるのよ、そういった人たちには、今回の仕分けはいい薬よ。』と知人からの指摘もあって、ちょっと今複雑な気持ちです。(それと仕分けとは直接の関係はないとは思いますが・・・)

今は事業仕分けのことで、盛り上がっていますが、その後いったいどういうことが起きるのか、誰もわかりませんね。
今までも、何か政治的な盛り上がりがあって、その後困ったことがたくさん起きて、今に至っているのですが、これからどうなるのか、とっても心配です。
by ウリママ (2009-11-26 21:46) 

MANTA

>走り放題の高速道路もいらんし、科学・技術立国を支える基礎をないが
>しろにして払われる数万円もいらない。うちの子供も、同じ意見だろうね。
Working Dad Overseaさんのように、お子さんをお持ちの方にそう言って
頂けると、すこしホッとします。あ、ちなみに「文系の理系支配」ですが、
鳩山総理も管副総理も、理系出身ですよ(苦)。

>未来に投資をしない国(いや、個人も)は滅びます。政府には是非、
>人気取りの目先から将来を見据えた戦略を考えてもらいたいもんです。
M.Nさん、コメントありがとうございます。 (Twitterに書きましたが)、
誤解を恐れずに言えば、科学的研究は国の「娯楽」だと思います。あるいは
先行投資です。すぐに役に立たないかもしれないけれど、遊びながら学んで
いかないと、新たなビジネスチャンスもなく、はかない人生だと思います。
by MANTA (2009-11-26 22:34) 

MANTA

ma2rosieさん、ウリママさん、親子でこのブログをご覧頂いているのですね。
ありがたいです。もうやめようかなぁ…とちょくちょくよく思うこのブログですが、
読者のみなさんに支えられております(^^)

>未来は費用対効果などで評価されるものではないと信じております。
ma2rosieさん、私もそう思います。といっても某研究機関に天下り理事
がいるのも事実ではあります。

>インターネットやブログがなかったら、私たちは知る事の出来ない世界
>なのに、こんなに身近に研究の最先端を見せていただいて、感謝して
>おります。
そういって頂けると凄くありがたいです。でも本物はもっともっと凄いですよ!
伝えきれず、残念!

----
>私の子供は将来海のことを研究したい、深海の研究をしたいと夢を持っ
>ています。 やっぱりそういう夢を持つ子供たちが大きくなったときのため
>にも、日本の科学技術は頑張ってほしいなとはおもいます。
ウリママさん、そうですね。私も頑張らないといけません。

>”「自分の懐が痛まないから」と、無駄なお金を請求している研究者もいるのよ”
記事にも書きましたが、私はそれは否定しません。なので、こういう議論は
今後も継続してやればよいのです。科学予算だけでなく。たとえば八ッ場
ダム、あれは事業仕分けしないのかな?公で議論することはWelcome
です。むしろしっかりやってほしいと思います。
by MANTA (2009-11-26 23:03) 

ウリママ

お返事ありがとうございました。

全くの素人主婦ですが、お返事を下さってうれしく思います。

私の子供は以前JAMSTECの一般公開に行った時に、一番食いついたのが、こちらのブログにも時々登場する、黄色いブイのような装置(すみません、名前は忘れました。)でした。

「形がかわいい! 跳ねると画像が反応しておもしろい! これ私好き~」と、ずっと黄色いブイの周りでピョンピョン跳ねていました。

こちらのブログでは、いろいろな船上での様子が楽しくて、親子で楽しんでいます。
そんな子供もいますので、どうか研究頑張ってくださいね。
by ウリママ (2009-11-27 00:01) 

obaQ

MANTAさま、

記述に若干の勘違いがあるようなので指摘させて頂きます。資料p.8,9の「論点等説明シート」を作成している予算担当部局は、文科省などのお金を使用する側ではなく、財務省主計局、つまりお金を出す側です。その上の資料p1-7を作成しているのは、資料の記述の通り、担当部局の文科省です。

前半の資料の記述はお金の必要性について書いてある一方、後半の資料の記述は、このお金本当に必要ですか、と疑問を呈しているはずです。少なくとも大学の運営費交付金に関する資料はそうでした。

仕分け人のみなさんは、各担当部局の資料など読まずに、簡単に書いてある財務省の資料を読んで、1時間で各省庁の予算をガンガン削ろうとしているわけです。私としては、財務省主計局の皆さんが各省庁の担当分野にどれだけ熟知しているかは大いに疑問に感じています。
by obaQ (2009-11-27 23:03) 

さなえ

先日、テレビで深海探査ロボット計画に従事している下町の小さな工場をインタビューしていました。現在の効率だけでばっさり切れば、それまでの努力も未来の芽もすべて消えてしまうのに。

就任早々円高容認発言をするほど経済音痴にびっくりしましたが、どんどんひどくなります。日本の産業界に多大な重荷を背負わせるだけで、選挙至上主義での支離滅裂なばらまきの帳尻合わせのために、カットするだけで、新たな雇用や技術を創出するような方向には向かわないのであれば、もう日本はいよいよ終わりかもしれません。

by さなえ (2009-11-29 18:34) 

MANTA

>私の子供は以前JAMSTECの一般公開に行った時に、一番食いついた
>のが、こちらのブログにも時々登場する、黄色いブイのような装置(すみ
>ません、名前は忘れました。)でした。
?? 跳ねると画像が反応?? かわいい??
…わかった! ウリママさん、海底地震計ですね!!

>記述に若干の勘違いがあるようなので指摘させて頂きます。資料p.8,9
>の「論点等説明シート」を作成している予算担当部局は、文科省などの
>お金を使用する側ではなく、財務省主計局、つまりお金を出す側です。
obaQさん、そうでしたか。そうですね。ご指摘ありがとうございます。
本文を修正しました。

ということは、毎年財務省内でやってる査定作業を今年は公にやっている
というだけなのですね。国民はバカにされているだけですね。
by MANTA (2009-11-30 00:41) 

MANTA

>カットするだけで、新たな雇用や技術を創出するような方向には向かわない
>のであれば、もう日本はいよいよ終わりかもしれません。
さなえさん、同じようなことを知り合いと話をしていました。枝葉末節を
切ることではなく、新しく作ることを、もっとちゃんと議論してほしいですね。
by MANTA (2009-11-30 00:49) 

おおくぼ

江戸時代に興味があるのですが、政府による倹約政策は失敗ばかりなのです。
このパターンは明治時代〜昭和時代〜平成時代でも同じです。

江戸時代 その1

http://www.mag2.com/sample/0001109500/html

江戸時代 その2

http://www.orionnet.jp/blog2/index.php?mode=category&aim=E6ADB4E58FB2E7B58CE596B6E5ADA6E8AC9BE5BAA7&display=list

参考

『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)
飯田泰之:著

『日本銀行は信用できるか』(講談社現代新書)
岩田規久男:著

『 世界同時不況』(ちくま新書)
岩田規久男:著

歴史的な統計を無視した精神論が、日銀や財務省でも未だに根強いのには驚きます。
by おおくぼ (2010-05-22 00:57) 

おおくぼ

2番目のリンクは、真ん中の「田沼意次の税制改革 」を再クリックして下さい。
by おおくぼ (2010-05-22 01:00) 

MANTA

現政権にも少しでもいいから、過去の過ちを学んでほしいのですが・・・
思いつきで行動されることが多いようで、ガッカリどころか、怒りです(--#)
by MANTA (2010-05-23 07:33) 

おおくぼ

事業仕分けへの素朴な疑問は、倹約した費用をどう使うかです。
倹約が日本経済にとってプラスに働くのか、大いに疑問です。

倹約よりも、景気を良くする政策を重視すべきだと思うのです。

一番メスを入れなければいけないのは、相続税だと思うのです。
相続税にメスを入れれば、国の収入は大きく増えます。

参考

和田秀樹:著『富裕層が日本をダメにした! 「金持ちの嘘」に騙されるな』 (宝島社新書)
by おおくぼ (2010-05-23 10:16) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。