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事業仕分けと言うパフォーマンス(2) [▼科学ニュース New!]

行政刷新会議の事業仕分けは、いまのスタイルでは全く無駄、というお話し。
前回の続きです。

2)「仕分け人」はどの程度、事業内容を理解しているか?
事業仕分けは1事業1時間とのことだが、下記サイトには内訳が記されている。
●科学技術関連の事業仕分けに時間は十分か (サイエンスポータル)
 http://scienceportal.jp/news/review/0911/0911101.html

新規作成_1.jpg
 わずか5分で何ができますか?

それによれば、事業の要点や補足説明に5-7分、財務省の説明に3-5分、その後
質疑応答だそうだ。数百億、数千億の予算の使い道とその効果をわずか5分強で
話せるのだろうか? 聞く側は理解できるのだろうか?
この「事業仕分け」については基準があいまいだとの批判が相次いでいるが、基準どころか
進め方そのものが疑問だ。ほぼなんの議論もせずに評価していると見るのが妥当だろう。
こうなってくると、10月の時点で各省庁が例年より多めに予算を出していたのも、
「事業仕分け」で始めから「献上」できる予算を積んだのではないか?などとも見て取れる。

3)「木を見て山を見ず」の仕分け結論
事業仕分けの結果は、行政刷新会議のホームページで公開されている。
●第1会場評価結果: http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/1kekka.html
●第2会場評価結果: http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/2kekka.html
●第3会場評価結果: http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/3kekka.html

第3会場で科学技術系の仕分けが行われているが、結果をみて唖然である。
たとえば、科学研究費補助金の「若手研究」は、主として大学の助教の先生など
若い先生が自由に研究するための予算であるが、その評価は「大学院卒業後、
職がない人たちの雇用対策になっている」として、削減とのこと。はっきりいうが
科学研究費補助金の審査は厳しく、職がなくフラフラしている研究者が手にできる
ものではない。下記に詳しいので、お読み頂きたい。

●寄稿『科学技術に事業仕分けは向いていない』 (サイエンスポータル)
 http://scienceportal.jp/news/review/0911/0911171.html

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私の古巣、JAMSTECの予算も仕分け対象に入ったが、この評価も??である。
「深海ドリリング計画」と「地球ダイナミクス計画」をひとまとめに議論したようだが、
・「深海ドリリング計画」は地下掘削技術に関する計画。ターゲットは、
 地震発生帯・マントル最上部・地下生命圏・メタンハイドレートなど深さ10kmまで。
・「地球ダイナミクス計画」は科学的な計画。海底地震・火山噴火の解明から、
 マントル全体の対流のシミュレーションといった地球全般がターゲット。
 深さは0~6400km(地球輪切り)。時間スケールは現在~2億年程度前まで。
・このように技術と科学のそれぞれの側面を担当する異なる研究計画であり、
 各々の計画では多くの成果がある。
・ところが事業仕分けでは、2つの計画を1つにまとめられて短くプレゼン。
・共通目的の一つ「マントル掘削」はまだまだ検討段階(科学的な夢)だが、
 プレゼン側のミスなのか、場の雰囲気なのか、マントル掘削に質問が集まったらしい
・仕分け人には受けが悪く、予算の大幅削減との評価

むちゃくちゃである。例えば両計画共通の重要ターゲットである「地震発生帯掘削」
(昨年から掘削中!)については評価にほとんど登場してない。マントルを掘るだけが
能ではないのだ。しかも両計画とも予算以外の資金獲得数も多いのに、である。

今後、大学の運営費(事業費)についても議論が行われる予定だ。これも謎で、
大学ごとに行ってきた事業や成果には量的・質的に大きな違いがあるのだが、
それらをひとまとめにしてどうやって評価するのだろうか?

そもそも、なぜ「関連計画をまとめて議論」なのだろう? ほかの事業仕分け項目でも
似て非なる計画がまとめて議論されている。もしかすると、1件当たりの予算総額が
ある程度以上でないと、事業仕分けにかからないのではなかろうか?
そうすると各省庁としては、大きな予算枠を献上してまとめて落とされるよりも、小さな
予算枠を「関連がありますから」といって寄せ集めて献上するほうがやりやすかろう。
これはあくまで推測であるが、いままでみたところ、「事業仕分け」は問題の本質を
見ておらず、「木を見て森を見ず」になってないか?

新規作成_1.jpg
  この国の科学技術の未来は、どこに行くのだろうか?

…一方で、科学計画は税金の無駄遣いじゃないか?という批判はあたらずでもない。
科学者や技術者は国民に向けて、その成果をちゃんと還元で来ているのだろうか?
科学的な施設の運用費は適正なのだろうか? もっと低予算で同じ成果を出せるの
ではないだろうか? 私自身思うが、正直言って科学予算にも無駄は多いと思う。
なので、むしろしっかりと議論をしてほしい。前回の記事に書いたように今後も継続審査
してくれるのならば文句はないが、こんな数日のパフォーマンスで、生き残る科学予算と
生き残らない科学予算が振り分けられるなんて、長年かけて一生懸命研究している
研究者からすれば、ごめんである。

事業仕分けの結果として「子ども手当」などを捻出しようとする方々に、最後にこう問いたい。
子供にとって本当に必要なものは、来年限定の現金なのだろうか?
それとも科学技術に彩られた未来の夢なのだろうか?
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MANTA

事業仕分けは必要であるが、その成果は仕分け人の能力に依存している。
次世代スーパーコンピューターやロケットなどの科学技術関連予算が事業仕分け(税金10億円投入)で見送られるようでは、民主党政権には夢も希望もない。
民主党の蓮舫や枝野のような科学技術に無知で、日本の将来に無関心な人物が仕分け人では、致し方ないこと。
毎年2.5兆円の税金を使う高速道路無料化は、無駄な予算であるから、事業仕分けによって廃止してもらいたい。
民主党には成長戦略が無く、成長のための投資と無駄を区別する能力も無いことが見えてきた。
蓮舫が世界一になる必要があるのかと言ったスーパーコンピューターの現在の性能順位は、1~3位は米国、4位はドイツ、5位は中国、6~10位は米国そして日本は30位以下。
民主党を衰退させなければ、日本が衰退することとなりそうだ。
by 夢も希望も無い民主党 (2009-11-22 21:02)

※管理人が再登録しました。
by MANTA (2009-11-23 05:32) 

MANTA

夢も希望も無い民主党さん、おっしゃることは概ね同意します。

>民主党を衰退させなければ、日本が衰退することとなりそうだ
そういう政治的なスローガンが正しいかどうかは別の議論でしょう。
URL先の記事についても本記事とは無関係でしたので、リンクについては
削除させて頂きました。ご了承ください。
by MANTA (2009-11-23 05:33) 

銀色霞渓

科学技術分野での国際競争力の低下がとても心配されます;
こういうのは一度レベルを落としてしまうと回復が難しいのに・・・。
技術立国日本としては、安易な科学技術関連の予算の削減は自殺行為ともなる気がします。
関連計画を一緒くたにした十把一絡げのような議論の進め方も納得いきませんね。
南海トラフの掘削計画にも支障が出るようなことになると、ここで発生するプレート間地震のメカニズムの解明や予知の実現もまた遠のくことになりそうで至極残念です。

by 銀色霞渓 (2009-11-23 16:25) 

MANTA

銀色霞渓さん、コメントありがとうございます。
こういうことにブログを使うのは少し悩むのですが、もしこのブログを読んで
いる方で、深海掘削や地球進化解明、地震・火山防災をもっと進めるべき!
と思われる方がおられましたら、文部科学省さんへご意見をメール頂ければ
幸いです(下記サイトにアドレスが書いてあります)。けっして無理にお願い
するものではありません。ご自身のご判断で、もしよろしければお願いします。
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm
by MANTA (2009-11-23 22:00) 

Working Dad Oversea

>プレゼン側のミスなのか、場の雰囲気なのか、マントル掘削に質問が集まったらしい・・・

仕分け人側は「マントル」しか判らなかったのでは?
あるいは、「検討段階」ということで突っ込みやすかった?

それにしても、乱暴なことです。
by Working Dad Oversea (2009-11-24 22:36) 

MANTA

>仕分け人側は「マントル」しか判らなかったのでは?
>あるいは、「検討段階」ということで突っ込みやすかった?
Working Dad Overseaさん、「事業仕分けと言うパフォーマンス(3)」
に書きましたが、どうやらシナリオがあったようですね。まったくもって
無駄な仕分け作業です。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-11-24
by MANTA (2009-11-26 22:26) 

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