SSブログ

事業仕分けというパフォーマンス(1) [▼科学ニュース New!]

たまーーーの、政治ネタ。
行政刷新会議による「事業仕分け」(=政府のお仕事の無駄チェック)が話題だ。
船の上でもニュースで見ていて驚いた。体育館のようなところで、ガヤガヤと予算の
要・不要を議論している様は新鮮だ。私はオープンな場は嫌いではない。そこで議論
された結果であれば歓迎であり、その結果として、仮に私の研究予算がなくなっても
真摯に受け止めねば、と思っていたのだが・・・

船から降りて、調べてみて驚いた。
「事業仕分け」など、TVカメラの前の単なるパフォーマンスに過ぎない。
あれなら、TVの「太田総理」や「朝まで生テレビ」のほうが、よっぽどマシだ。
その根拠を以下に端的に述べておこう。

新規作成_1.jpg
   カメラの前だからと言って正義とは限らない

1)国の事業の大半は「事業仕分け」の議論に上らない
今回の事業仕分けで、国の全事業を見直しているわけではない。
約3000ある国の事業のうち、今回の「事業仕分け」で議論されるのは500足らず。
それを選んだのは財務省。つまり行政側にとって、最初から切られてもよいような
お題目だけが「事業仕分け」で議論されていて、本当に削減しないといけない「本丸」は
まな板の上にも乗らないわけだ。例えるならば、「事業仕分け人」は魚をさばくわけでもなく、
皿の上のどの刺身が豪華かを議論するわけでもなく、刺身のつま(大根)やワサビの
多い少ないを議論している程度にすぎない。

詳細は池田信夫氏のブログをお読み頂きたい。
彼の意見にすべて賛同するわけではないが、問題点が端的にまとめられている。
●事業仕分けという人民裁判(池田信夫Blog Part2)
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51310943.html

彼の予測通り、ほぼ半分を終えた事業仕分けの結果、削減できた予算額は1000億円
にも達していない。このままでは5000億円にも届かないだろう。
●事業仕分け、前半終了で廃止額900億円超 各省に募る不満、攻防激化も
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091117-00000020-fsi-bus_all

なかには、事業仕分けの効果について次のような報道をしている新聞もあるのだが、
●「事業仕分け」1兆125億円の財源確保
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091117-00000029-yom-pol
900億円超と1兆125億円。この大きな差はなんなのか? それは財団などの基金の
召し上げ分だ(いわゆる埋蔵金)。しかし召し上げ分なので、財源としてはH23年度以降
には存在しない。毎年の予算で考えれば、削減額は現時点で1000億円弱なのである。

1000億円も小さな額ではない。しかし民主党が掲げる「子ども手当」の予算は、1年で実に
2兆7000億円、「高速道路無料化」は準備費だけで年6000億円、「農家への戸別補償制度」
に年6000億円を予定している。そして、これらは今回の事業仕分けにはかからない「聖域」と
化している。
●概算要求 初の90兆円台 子ども手当など新規事業7兆円(フジサンケイ)
 http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200910160009a.nwc

新規作成_1.jpg
   そしてそれはすべて国民の借金となるだろう

挙句の果てに、こんな記事も出ていた。財務省がすべて取り仕切っていることが暗示される。
●事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南-政治主導に逆行・行政刷新会議
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091117-00000117-jij-pol

パフォーマンスで国民をバカにするのもいい加減にしてほしい。
あるいはパフォーマンスをやめてはどうか?このようなオープンな議論をあと5日間限り
といわず、他の事業についても議論を重ねてはどうだろうか?あるいは実施中の今年度
予算や実施済みの昨年度までの予算についての議論を続けてもよいだろう。1年を通じて
オープンに会合を続けるのであれば、今回のパフォーマンスはパフォーマンスに留まらない。
しかし子ども手当などを「聖域」化している民主党にそんな真似ができるだろうか?

…理由その1だけでこれだけ書いてしまったので、続きます。
ぜんぜん端的じゃないなぁ。
nice!(5)  コメント(14)  トラックバック(2) 

nice! 5

コメント 14

Working Dad Oversea

やはり、パフォーマンスでしたか・・・。
しかし、旧与党にも新与党にも馬鹿にされる有権者というのも、反省するべきなのかな?
賢くならないといけないのかな?
by Working Dad Oversea (2009-11-19 22:50) 

yutakarlson

■函館市長、市事業助成「廃止」を批判 職員向けメルマガで-本当は私たちは、財政ゾンビの手のひらで操られ遊ばされているだけだ!!

こんにちは。事業仕分けいろいろと軋轢を生んでいますね。これが、プラスの軋轢なら良いのですが、どうも実際にはそうでもないようです。こちら函館では、函館市長が事業仕分けのやり方について、「無礼」だとまで言っています。しかし、問題の本質はもっと別のところにあります。おそらく、今回の事業仕分け、私の考えではほとんど効果が出ないと思います。かといって、函館市長が擁護する函館市が推進する事業もうまくはいかないでしょう。多くの人は、本質を見失っています。実は、本丸は、私が財政ゾンビと呼んでいる、似非財政民主主義を信奉する財務省の高級官僚たち、および彼らの構築したインフラ、システムです。これを何とかしない限り、事業仕分けの委員や、函館市長も、結局は、財政ゾンビの手のひらで操られもて遊ばれているだけに等しいです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
by yutakarlson (2009-11-20 13:54) 

MANTA

>旧与党にも新与党にも馬鹿にされる有権者というのも、
>反省するべきなのかな? 賢くならないといけないのかな?
さすがはWorking Dad Overseaさん。おっしゃる通りです。
この記事の趣旨は「だから民主党は駄目なんだ」とか「科学予算を削るとは
けしからん!」ではなくて、私たちは本当に必要なことをどう議論して成し遂げ
ていくか、ということだと思っています。

>私が財政ゾンビと呼んでいる、似非財政民主主義を信奉する財務省の
>高級官僚たち、および彼らの構築したインフラ、システムです。
yutakarlsonさん、コメントありがとうございます。なにが原因でこんなこと
になっているのでしょうね? 分かっていることは我々国民は投票によって
しか、国を変えられないということです。
国ってなんでしょうか? 税金で食べさせて頂いている私としては、
非常に考えされられる日々です。
by MANTA (2009-11-23 05:40) 

おおくぼ

>900億円超と1兆125億円。この大きな差はなんなのか? それは財団などの基金の召し上げ分だ(いわゆる埋蔵金)。

ほとんど詐欺だと思います。
例え1兆125億円であっても大した額ではありません。
日銀は毎月1兆円以上の国債を買い取っていますが、少なすぎると批判されています。

http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa4932732.html

参考

『「日銀貴族」が国を滅ぼす 』(光文社新書)
上念司:著

『 日本銀行は信用できるか 』(講談社現代新書)
岩田規久男:著

『 日本経済復活 一番かんたんな方法』 (光文社新書)
勝間和代&宮崎哲弥&飯田泰之:著

『 伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本』(東洋経済新報社)
浜田 宏一&若田部昌澄&勝間 和代:著

『 デフレ不況 日本銀行の大罪』(朝日新聞出版)
田中秀臣:著
by おおくぼ (2010-07-15 12:53) 

MANTA

>日銀は毎月1兆円以上の国債を買い取っていますが、少なすぎると批判
>されています。
それは順序が逆で、国債発行額が多すぎるのでは?
by MANTA (2010-07-16 12:06) 

おおくぼ

国債の発行額が多すぎるのは事実です。
でも、日銀の買取額はどこから捻出されるのでしょうか?
これは日本国家に対する信頼から捻出されていると思うのです。

アメリカは日本と違い対外債務が大きいですが、ドルの根拠というのもアメリカ国家に対する信頼です。
日本は対外債権が多い国ですので、アメリカ国家以上の信頼があると考えてもいいと思うのです。


by おおくぼ (2010-07-16 12:56) 

おおくぼ

補足

私が言いたかったのは、日本国家の出す「お金」の根拠なのです。
国家は「お金」を発行することができます。

だから自国通貨を持っていて、自国通貨に信頼のある国は、国債を発行しなくても、「お金」を発行して、国家予算に当てることができるということがいいたいのです。

900億円超の削減以上の額が、日銀官僚の気分次第で、産み出されるということです。
by おおくぼ (2010-07-16 13:42) 

MANTA

>自国通貨に信頼のある国は、国債を発行しなくても、「お金」を発行して、
>国家予算に当てることができるということがいいたいのです
それはインフレになるのでは? そのような方法で都合よく国債を消すこと
ができた国があればお教えください。それができないから、みな、苦労して
いるのでしょう。むろん、この国でそんな「実験」はしてほしくはないです。
by MANTA (2010-07-16 19:50) 

おおくぼ

>それはインフレになるのでは?

インフレにすべきなのです。
インフレを強制的に起こすことが目的です。
「マイルドなインフレ」と言って、2%〜4%のインフレを起こすのが目的なのです。

また国債は消す必要はありません。
国債を買取ることの目的は国債の金利を上げて、インフレにすることなのです。
特に日本国債の場合は円建てあり、所有者のほとんどは国内の金融機関や政府機関で、個人所有の率も小さいですから、減らす必要はあっても、消す必要はありません。

参考

『バカヤロー経済学 』

『鳩山由紀夫の政治を科学する (帰ってきたバカヤロー経済学) 』

共に高橋洋一 &竹内薫 :著
by おおくぼ (2010-07-16 20:34) 

おおくぼ

>そのような方法で都合よく国債を消すことができた国があればお教えください。それができないから、みな、苦労しているのでしょう。

たしかに簡単ではありません。
インフレ率をコントローラーしながら、長い時間がかかります。

ちなみにオーストラリアの政府債務残高GDP比率は1950年代は140%ぐらいでしたが、現在は0%に近いです。

逆のパターンはたくさんあるので、オーストラリアは例外的な存在です。
by おおくぼ (2010-07-17 00:13) 

おおくぼ

訂正

コントローラー → コントロール

by おおくぼ (2010-07-17 00:15) 

おおくぼ

日本の国債の買取グラフ(2006年の古いデータですが・・・)

http://www.nli-research.co.jp/report/econo_eye/2006/nn060808.html

日本の財務状況は、アメリカと比べた方がよくわかると思います。
アメリカは自国通貨なのですが、対外債務の多い国です。
それに対して日本は自国通貨で、対外債権も多いです。
長文になるので、今回はこれで最後にしたいと思います。
by おおくぼ (2010-07-17 01:29) 

MANTA

>ちなみにオーストラリアの政府債務残高GDP比率は1950年代は140%
>ぐらいでしたが、現在は0%に近いです。
おおくぼさん、オーストラリアの場合は財政黒字を毎年達成した結果です。
これも銀行が国債をたくさん買い取ってくれたからでしょうか?
インフレにならずにすむ努力はどうやったのでしょうか?
例を出すのであれば、根拠となる資料とともに、適切にご提示ください。
また他の話をして本題をはぐらかすのは感心できません。

逆の例として、1990年代のイタリアの財政再建例をみつけました。
http://www.nri.co.jp/opinion/chitekishisan/2001/pdf/cs20010501.pdf
いまの日本のなすべきことは国債のさらなる発行ではなく、これらのような
制度改革と歳入上昇の努力でしょう。イタリアにまねるって?っと思った人、
こちらの記事でイタリアのGDP伸び率を見てくださいね。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-06-12
by MANTA (2010-07-17 06:22) 

おおくぼ

>例を出すのであれば、根拠となる資料とともに、適切にご提示ください。また他の話をして本題をはぐらかすのは感心できません。

これは時間を下さい。
また返信がかなりの長文になる予感なので、自分のブログに書いて、トラックバックをしたいと思います。

>インフレにならずにすむ努力はどうやったのでしょうか?

インフレは悪ではなく、2%から4%のインフレが望ましいのです。
イタリア経済についても言いたいことがたくさんあるのですが、これも自分のブログに書いて、トラックバックしたいと思います。
by おおくぼ (2010-07-17 09:00) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

乗船レポート(14) またね寒い日本 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。