アメリカと日本の震度の違い [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]
先の記事で、米国地質調査所のホームページに世界中の地震の
予測震度が公開されているというお話をしました。
「震度」は地震の揺れの指標です。マグニチュードとの違いは大丈夫ですか?
電球に例えれば、何ワット=「マグニチュード」で、どれくらい手元が明るいか(何ルクス)=「震度」です。何百ワットの電球で照らしていても、それが遙か遠くで光っていれば手元はちっとも明るくありません。地震の揺れの大きさは、マグニチュードではなく、震度で表示します。
↑↓2つの地震のマグニチュードが同じなら、絵の中の家の「震度」はどちらが大きいだろう?
ところでこの震度、何種類もあって国によって違うってご存じですか。
アメリカでは「改正メルカリ震度階級」というものを使っています。ⅠからⅩⅡの12段階です。
一方、日本では「気象庁震度階級」を使っていて、0から7の10段階です。
※これ以外にもヨーロッパで使われるヨーロッパ震度階級などがあります。
※詳しくはWikipediaの震度の項目をみてね。
しかもこの2つ、一対一に対応しません。
気象庁のホームページに簡単に解説があります。うーむ、なるほど。
●MM震度階(改正メルカリ震度階)と気象庁震度階級はどのように対応するのですか?
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html
ということは、この四川大地震の予測震度(ShakeMap:下図)は
日本の震度ではどれくらいか分からないわけです。
震度階級は図の下の表にありますが、I、II、III…とギリシャ数字で表示されてますから
改正メルカリ震度ですね。赤や黄色の地域はどれくらい揺れたのか分かりません。
やっぱり日本の震度でいくらか知りたい!
ということで、ムリヤリに変換表をつくってみました。それがこちら。
地震学の専門家には怒られそうですが… なるほど、四川大地震の
ShakeMapのうち、赤い地域が震度6強以上、黄色が5弱くらいでしょうか?
以下に作り方を書いておきます。
1)まずShakeMapの下の方にある表に注目します。
よく見るとEstimated Intensityの上にPEAK ACC(%g)という欄があります。
これが地震の時の地面の揺れの大きさ(加速度)を示します。
2)PEAK ACCは単位が%gなので、これをcm/s^2になおします。
大体10倍すればよいです。なぜなら%は100倍、gは重力加速度=9.8m/s^2なので、
1%g=0.01*9.8*100cm/s^2=9.8cm/s^2だからです。
3)気象庁のホームページには、加速度と震度の関係のグラフがありました(図3です)。
震度と加速度
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/comp.htm
揺れの周期を0.5秒と勝手に決めてしまって、その時の加速度と震度の関係を
読み取ります。
4)2と3を比較して、改正メルカリ震度に気象庁震度をエイヤっとあてはめます。
できあがりです。
まあこんな荒っぽいやり方なので、すでにあわないところがあります。
改正メルカリ震度のVIと気象庁震度の4がだいたい対応するそうなのですが
上の表ではズレています。まあその程度の精度と言うことで…
でも試しに2007年の新潟県中越沖地震で震度を比較して上の表を確かめてみましょう。
●米国地質調査所 ShakeMap
http://earthquake.usgs.gov/eqcenter/shakemap/global/shake/2007ewac/
●気象庁ホームページ
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/2007_07_16_chuetu-oki/EVENT1/INT.PNG
ShakeMapで黄色の地域(VI以上)が、気象庁震度では5弱以上なので、上の対応表は
大局的にはあっているようです。まあ参考程度には使えそうですね。
人気ブログランキングへ
ただし新潟県中越沖地震の時には、気象庁は震度6強を観測しましたが、ShakeMap
にはそれに対応する「IX」(赤)の地域はなさそうです。これは上の対応表が悪い、と
いうよりもShakeMapは予測震度にすぎないということなのでしょう。
予測震度が公開されているというお話をしました。
「震度」は地震の揺れの指標です。マグニチュードとの違いは大丈夫ですか?
電球に例えれば、何ワット=「マグニチュード」で、どれくらい手元が明るいか(何ルクス)=「震度」です。何百ワットの電球で照らしていても、それが遙か遠くで光っていれば手元はちっとも明るくありません。地震の揺れの大きさは、マグニチュードではなく、震度で表示します。
↑↓2つの地震のマグニチュードが同じなら、絵の中の家の「震度」はどちらが大きいだろう?
ところでこの震度、何種類もあって国によって違うってご存じですか。
アメリカでは「改正メルカリ震度階級」というものを使っています。ⅠからⅩⅡの12段階です。
一方、日本では「気象庁震度階級」を使っていて、0から7の10段階です。
※これ以外にもヨーロッパで使われるヨーロッパ震度階級などがあります。
※詳しくはWikipediaの震度の項目をみてね。
しかもこの2つ、一対一に対応しません。
気象庁のホームページに簡単に解説があります。うーむ、なるほど。
●MM震度階(改正メルカリ震度階)と気象庁震度階級はどのように対応するのですか?
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq7.html
ということは、この四川大地震の予測震度(ShakeMap:下図)は
日本の震度ではどれくらいか分からないわけです。
震度階級は図の下の表にありますが、I、II、III…とギリシャ数字で表示されてますから
改正メルカリ震度ですね。赤や黄色の地域はどれくらい揺れたのか分かりません。
やっぱり日本の震度でいくらか知りたい!
ということで、ムリヤリに変換表をつくってみました。それがこちら。
地震学の専門家には怒られそうですが… なるほど、四川大地震の
ShakeMapのうち、赤い地域が震度6強以上、黄色が5弱くらいでしょうか?
改正メルカリ震度 |
I |
II-III |
IV |
V |
VI |
VII |
VIII |
IX |
X+ |
気象庁震度 |
0~1 |
1~3 |
3 |
4 |
5弱 |
5強 |
6弱 |
6強~7 |
7 |
以下に作り方を書いておきます。
1)まずShakeMapの下の方にある表に注目します。
よく見るとEstimated Intensityの上にPEAK ACC(%g)という欄があります。
これが地震の時の地面の揺れの大きさ(加速度)を示します。
2)PEAK ACCは単位が%gなので、これをcm/s^2になおします。
大体10倍すればよいです。なぜなら%は100倍、gは重力加速度=9.8m/s^2なので、
1%g=0.01*9.8*100cm/s^2=9.8cm/s^2だからです。
3)気象庁のホームページには、加速度と震度の関係のグラフがありました(図3です)。
震度と加速度
http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/comp.htm
揺れの周期を0.5秒と勝手に決めてしまって、その時の加速度と震度の関係を
読み取ります。
4)2と3を比較して、改正メルカリ震度に気象庁震度をエイヤっとあてはめます。
できあがりです。
まあこんな荒っぽいやり方なので、すでにあわないところがあります。
改正メルカリ震度のVIと気象庁震度の4がだいたい対応するそうなのですが
上の表ではズレています。まあその程度の精度と言うことで…
でも試しに2007年の新潟県中越沖地震で震度を比較して上の表を確かめてみましょう。
●米国地質調査所 ShakeMap
http://earthquake.usgs.gov/eqcenter/shakemap/global/shake/2007ewac/
●気象庁ホームページ
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/2007_07_16_chuetu-oki/EVENT1/INT.PNG
ShakeMapで黄色の地域(VI以上)が、気象庁震度では5弱以上なので、上の対応表は
大局的にはあっているようです。まあ参考程度には使えそうですね。
人気ブログランキングへ
ただし新潟県中越沖地震の時には、気象庁は震度6強を観測しましたが、ShakeMap
にはそれに対応する「IX」(赤)の地域はなさそうです。これは上の対応表が悪い、と
いうよりもShakeMapは予測震度にすぎないということなのでしょう。
2008-06-10 07:28
nice!(12)
コメント(15)
トラックバック(4)
へぇ~、震度って国、というか地域によって違うんですか。授業のネタにしよう。^^
by すうちい (2008-06-10 17:44)
意外でした。
しかし、世界的に震度がバラバラなのはやはり問題があるような気がします。感覚的にもわかるように世界共通の震度表の確立と世界的な観測網の確立が必要かもしれませんね。
by キリンさん (2008-06-10 18:04)
>へぇ~、震度って国、というか地域によって違うんですか。
そうらしいんですよ。メルカリ震度やヨーロッパ震度がどのようにして
決められているか、検索してもよくわからなかったのですが、地震計(加速時計)
で定量的に決めている日本の震度計測は世界最先端なのだと思います。
>しかし、世界的に震度がバラバラなのはやはり問題があるような気がします。
キリンさん、震度は被害状況の推定に重要な情報です。いままでは、地震の
起きた国の警察・消防や軍隊が救助隊などとして出動してました。なので、
その国の中で都合の良い「震度」を定義すれば良かったのです。
ところが最近は、国際的な救助隊は構成されたり、国境を越える巨大地震が
起きたり(スマトラ地震)と、状況は変化しつつあると思います。震度とは
違いますが、スマトラ地震後にインド洋に国際的な津波観測ネットワークが
構築されつつあります。震度も国際的に「困ったなぁ」という経験があれば
一気に統一されるのでしょう。でもできればその前に、いっそ日本の震度が
国際基準になるような働きかけをする、なんてどうでしょうね?
> 関係者の皆様
by MANTA (2008-06-11 07:01)
>いっそ日本の震度が国際基準になるような働きかけをする、なんてどうでしょうね?
その意見、私も賛成です。
by キリンさん (2008-06-12 01:53)
ご賛同いただきましてありがとうございます。日本の地震観測、防災技術
は世界イチィィィィです。国際貢献できる部分だと思います(外務省のO■A
よりも効果をあげられるのでは??)。
by MANTA (2008-06-12 07:49)
以前のコメントで震度に国際基準がないことを知り、驚いた一人です。私も日本の震度を国際基準にすることに賛成です。政治面(観測することを考えると軍事面でも?)で難しい部分はあるのでしょうけれど、せっかくよい技術を持っているのですから、国際貢献できそうですよね。
by 素風 (2008-06-12 08:33)
素風さん、コメントありがとうございます。
もしかしたら震度の世界基準などが議論されているのかな?とおもって、
Googleで「震度 国際基準」で検索してみたら、このページがトップに来ました!
ということは…ぜんぜん議論されていないのかなぁ…なんでだろ?
不勉強ですみません。もしも検索でこのページに来られた方がおられたら、
ご意見や事情などお知らせいただけると幸いです。
by MANTA (2008-06-14 11:49)
日本って、こういう国際貢献って、ホント下手クソですよね。
贈り物が苦手で、いつも現金ばかり渡している人みたいです。
それでも、国際的な評価が得られればまだしも、「金を出すだけ」みたいに、却って評価を落としているんですから、目も当てられませんね。
その辺は戦前から変わってないって言うか、戦後にアメリカに良いようにヤラレタって言うか・・・。
でも、イイ加減、何とかして変えて行かないと。
by SAKANAKANE (2008-06-15 15:36)
>日本って、こういう国際貢献って、ホント下手クソですよね。
>贈り物が苦手で、いつも現金ばかり渡している人みたいです。
SAKANAKANEさん、コメントありがとうございます。実際には建設などで
多くの日本人が海外で目に見える貢献をしているとおもいます。それでも
よその国に言われてやるのではなく、日本から率先して動いていくプロジェクト
を徐々に増やしていきたいですね。
by MANTA (2008-06-15 17:14)
震度に国際基準がないことは面倒くさいけど、悪いことではないと思う。
地震のメカニズムがよくわかってない上に、揺れ方の種類によって破壊力に違いがある。今は小さな地域で使われる基準を使い、変更していくのが簡単なように基準の機動力のようなものを優先させる時期だと思う。
地震が台風や竜巻のように可視化されてきたら自ずと統一基準を作る機運が高まるだろう。
by なー (2017-08-02 19:56)
なーさん、コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、地震の規模を示す「マグニチュード」に比べると、
震度は地盤の強さや堆積層の厚さ、震源がどちら方向で、活断層がどの
ようにずれるか、といった複数の(複雑な)要素で決まりますし、
地震の揺れの周波数が高いか低いかで、建物への被害も変わってきます。
アイデアが必要かもしれませんね。ありがとうございます。
by MANTA (2017-08-08 20:42)
世界共通といえる震度がないのも問題ですが、体感判定も問題ですね。日本でも阪神大震災のころまでは体感判定だったし、今でも世界では体感判定が珍しくないようです。
よく考えたら、地震動の影響は複数の要素(振幅・周期・継続時間など)に左右されるため、機械判定で一つの数字で表すのは意外と難しいかも。
by MORITA (2019-06-29 21:22)
>機械判定で一つの数字で表すのは意外と難しいかも
MORITAさん、そのとおりかと思います。
揺れは強さ(振幅)だけでなく、揺れの速さ(周期)も重要です。地震の揺れの周期が異なれば、揺れの強さが同じでも被害を受ける建物の種類(高さ)は変わります。また国によって建築素材は様々ですから、やはり周期によって壊れ方が変わってきます。
国によって異なる震度を採用しているのは、そのような事情からだと思います。一方でそれが物事を複雑にしているのもまた事実です。いずれ世界中でセンサー計測による震度決定が一般化していくと思います。その際に、どのような統一的基準を考えるか、例えば日本などがリードしながら考えていくことになると思います。実際、世界中に普及したスマホ(に付いている加速度計)をネットーワーク化して、震度計測ネットワークを作る流れもありますので、「世界統一震度」が生まれる日もそう遠くないと思います。
コメント、ありがとうございます。
by MANTA (2019-06-30 10:48)
震度を統一するのは、建物の問題のほか、様々な問題があると思います。
日本においても震度基準が何度も見直されていますが、実際に起きた地震の被害状況等と照らして不都合な部分があったからと思います。
地震大国である日本と地震のあまりない国での考え方の差もあるでしょう。
定量的な基準を決めた場合、途上国の観測機器の整備をどうするかという問題もあります。
by 節操のない者 (2019-07-07 02:23)
そうとも思いますし、そうでないとも思います。> 節操のない者さん
学問の流れは、発見→法則化・規格化→次の発見へ、というループです。
場所場所で異なる震度では、議論しずらいでしょう。
単純に、加速度だけで議論するようになるかもしれませんね。
(降雨量や風速、気圧で、気象を考えるように)
しかしそうなったらそうなったで、レベル4やらレベル5やら、
避難勧告やら避難指示やら、別に「命を守る」ための基準が必要と
なる。情報過多、わかりにくい。。。
これは科学の問題と言うよりも、人間の認知能力のほうの課題ですね。
by MANTA (2019-07-09 07:54)