東海に挑む−無事終了!(15) [ シリーズ実況 Old..]
先日の続きです。
捕まえた装置を釣上げます。
無事、船上へ回収された装置。清水で塩を洗い流します。
黄色いのが直径17インチ(直径43cm)のガラス球。
その周りにこれでもかというほど装置がついています。
(マウスカーソルを写真に合わせてみてください)
上から時計回りに順番に説明しましょう。
・浮き:これもガラス球です。装置に浮力を追加してます。
・トランスデューサ:超音波送受信装置(マイク&スピーカー)です。
・トランスポンダー:超音波を解読して返事したり、おもりを切り離したりします。
・磁力計:地球の磁場の変化を測ります。前後・上下・左右の3成分。
地球磁場の10万分の1以下の微弱な変化も捉えます。
・切離装置:この下におもりがつきます。超音波信号に従って切り離します。
・フラッシャー:装置が水面に浮上したときにストロボが光ります。
夜間に回収するときに効果を発揮します。昼間は光りません。
・ラジオビーコン:装置が水面に浮上すると、無線信号を送ります。
装置が浮いたかどうか、どの方向に浮いたか、などがわかります。
・ガラス球(記録計):メインの浮きであると共に、その内側にはデータの記録計や
電池が入っています。
また1台捕まえました。ロープで引き上げられつつあります。
クラゲというか、イカというか、長く見えるのは腕とよんだり、足とよんだりしてます。
腕は設置前には十字に開いてました。 →このときね
この腕は海底で電気を測るときのアンテナなのです。
アンテナの両端には電極がついていて、電位差を測定できます。
アンテナが長いほど信号は大きいのですが、そのかわりに装置の回収が大変。
なので、折りたたむように工夫しました。
このように、1台で海底の磁場と電位差を測定するできるこの装置を、
「海底電位差磁力計(OBEM)」と呼びます。また、このように超音波などで
海底から界面へ浮上する方式を「自己浮上式」と呼びます。
今回は天気があまりよくなくて、洋上での作業時間が限られていたのですが、
折りたたみ式の腕のおかげでスムーズに回収作業ができました。
工夫してよかったなぁ。
結果として、1月に海底に設置した6台を全部無事に回収できました。順調やないの!
東海沖の調査は成功裏のうちに、まずは一段落です。
このデータを解析すれば、東海地震が近い将来おきる場所の地下の構造
(特に地下水の分布)がわかります。大発見!となるかなぁ?
さて次回は3月、その次は4月。そこでやっと大きな一区切り。
東海沖の調査はまだ続きます。がんばるぞー。
追記:コメントをいただきました、み・くりさんのサイトでは、イラストで海底装置の浮上の
様子を説明されてます。すごくわかりやすいです。また、南極観測隊の様子を
日々更新されています。
●--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風
(海底圧力計揚収)
http://obem.jpn.org/field056.html
初めておじゃまいたします。
海底圧力計の揚収について調べていて、たどり着きました。
とても詳しく書かれていて、大変興味深く勉強になりました。
私も実際に船に乗って観測をやってみたいほどです(あまりに職種が違って叶わないことですが)。
ありがとうございました。
私の運営する稚ブログにて、紹介させていただきましたことをご了承いただければと思います。
by み・くり (2007-02-18 23:33)
- コメントありがとうございます > み・くりさん
貴ブログ、拝見しました。すごいですね、南極隊員からのお便り
を紹介されているのでしょうか?
随所のイラストもかわいいです(とくに自己浮上のイラスト!)。
私もちょいちょい遊びにいかせていただきます。
by MANTA (2007-02-20 06:46)
MANTAさんこんにちは。
今朝の読売オンラインにこんな記事が
『海洋研究開発機構は29日、紀伊半島沖で海底掘削中の地球深部探査船「ちきゅう」で、掘削用ドリルパイプの先端部が脱落するトラブルが起き、パイプが回収できなくなったと発表した。』
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071029i413.htm
ドリリングというのは非常にデリケートなテクニックを必要とする感じがします。今回の事故が今後のミッションに影響が出なければよいのですが。
台風の影響があったのでしょうか?
by みきぱぱ@無職 (2007-10-30 07:31)
- そうなんですよ。でも掘削作業ではしばしばあることのようです。
かつて室戸沖で掘削したときには、もっといろいろあって、「あそこには
魔物が住んでいる」とさえいわれました。熊野沖の魔物はまだまだ小物?
台風の影響はわかりませんが、一時避難はしたようですね。
掘削の様子は「ちきゅう発見」というサイトで毎日見ることができます。
by MANTA (2007-10-30 19:44)