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いまさらラドンで地震予知?~2 [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

※連載【電磁気で地震予知】のプロローグ

放医研さんのプレス発表へのツッコミ記事、続きです。

※ご注意:その後、放医研さんへメールで問い合わせた結果、下記記事の一部に
 誤りがありました。追記として記しています。

「いまさら!その1:阪神大震災から12年も経ってから発表?」では、タイミングの悪さ
をツッコミました。
「いまさら!その2:阪神大震災でのラドン濃度異常、10年前に発表されてるよ」では、
プレス発表のどこが新しいのか分からないことにツッコミました。

その2で紹介した地震予知連絡会会報(こちら→)の第5図では、ラドン以外の地下水成分
について臨界点モデルを当てはめてみて、モデルがよく当てはまる成分とそうでない成分
があるところまで議論してますね。臨界モデルはそれほど最新というわけでもなく、阪神
大震災の際の化学成分変動にすでに適用されているのです。プレス発表資料では「地震の
メカニズム解明に寄与する新たな研究として注目されます。」とあるけど、どのあたりが
プレス発表するほど新しいのだろう…

追記(2/20)
前の記事にありますように、12年前のデータを元にした地震発生予測の試みは
新規性・独創性があると認められますので、この批判は誤りです。
知らぬとはいえ、申し訳ありませんでした。

さて続きです。まだツッコミます。
- - - -
◆いまさら!その3:地震の前のラドン濃度変化は昔から有名なのに?
地震前に断層付近の地下水中のラドン濃度が変化することは古くから知られています。
例えば、岐阜県北部の跡津川断層では1984年の長野県西武地震の3ヶ月前からラドン
濃度が変化しました(論文はこちら→)。

しかし、ラドンを用いた地震予知はいまだにできていないのです。放医研さんの研究が
過去の例を克服できるならよいですが、プレス発表資料には過去の手法との対比は
ほとんどありません。なぜいままでラドンを用いた地震予知ができなかったのか、どうすれば
できるのか、大気中のラドン濃度を測るとできるようになるのか? そこが不明瞭だと、
結局は過去の研究の焼き直しであり、税金の無駄遣いにおわるのではないでしょうか?

ラドン濃度は地震の前に変化するのに、なぜ地震予知は難しいのでしょうか?
答えは簡単。
地表のラドンは、地震の前に震源の深さからササッと昇ってきたものではないからです。
ラドンは元々岩石に含まれていますが、地下深くにあるラドンが地表まで来るためには、
地下水で運ばれねばなりません。これはものすごく時間がかかります。10年?100年?
なのに、ラドン濃度は地震のわずか数ヶ月前から変化をはじめ、地震直後には元に
戻ってしまう。ラドン濃度は巨大地震発生そのものではなく、地表付近の断層や地下水の
副次的な動きを反映しているのです。副次的ですから、季節や場所がちょっと変わるだけで
前と違うラドン濃度変化をするでしょう。
「変化はするけど、毎回違う」 これでは実用的とはいえませんし、科学的にも未解決です。

ラドン濃度変化を有力な地震発生情報に育てるには、巨大地震に伴うラドン濃度発生の
メカニズムを解明する必要があるでしょう。現時点ではラドン濃度異常と地震発生は間接的には
関係アリですが、直接関係は不明です。ですので、ラドン測定だけではなく、大気中へラドンを
輸送している地下水そのものを測ったり、地表付近の断層の微弱な変動を測定する努力も
行ってメカニズム解明を進めて、ラドンと地震の直接的関係を探るのが筋だと思います。
結果として直接関係はなし、予知手法には不適、となるかもしれませんけれど。

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えーっと、偉そうに書いてしまいました。放医研さんやラドン測定関係者の方々、ごめんなさい。
もしかしたら、断層や地下水の調査も既にされてるかもしれませんね。
でもね、10年前に公表済みのデータをつかって、解析手法も目新しいものではなく、論文・学会・
シンポジウムのいずれへも発表も伴わない私的な研究成果をですよ、阪神大震災から12年後の
「その日」の朝刊に載るようなタイミングで研究所がプレス発表するのは、おかしいですよ。
このような新規性の乏しいプレス発表ではなく、放医研さんの「本来の目的」で成果を出して
いただきたいと思います。中期計画には、地震予知などどこにも載っていませんね。
 (独立行政法人 放射線医学総合研究所 中期計画 : 文部科学省)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/dokuritu/keikaku/housyai.htm

追記(2/20)
こちらの追加記事にありますように、中期計画で述べられている「環境」に関する研究
テーマに含まれるようです。ただしその具体的内容や達成目標は、はっきりと明記は
されていません。
なお放医研さんへのメールおよび頂いたお返事ついては、下記をご覧ください。
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-02-19
http://blog.so-net.ne.jp/goto33/2007-02-20


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コメント 7

みゆき

知らない世界のお話だったけど、とてもおもしろかったです!賢くなった気分です。
by みゆき (2007-01-20 09:44) 

ちゃめ

 やっと理解したよ。
 放医研のスタンドプレー的な発表に、呆れていた訳ね。

>ラドン濃度変化を有力な地震発生情報に育てるには、巨大地震に伴うラドン濃度発生のメカニズムを解明する必要があるでしょう。

 まぁ、理学的な立場から言うとそうなんだろうけど、実利的な側面からだと、必ずしもメカニズムが解明される必要はないんじゃない?
 メカニズムが不明だけど、その因果関係を利用している技術は沢山ある筈です。
 まぁでも…
>「変化はするけど、毎回違う」 これでは実用的とはいえません
 という訳で、ラドンがその例に当てはまるかどうかは、また別問題ですね。

 面白かったですよ。

PS:
>ラドン濃度は巨大地震発生そのものではなく、地表付近の断層や地下水の副次的な動きを反映しているのです。
 ということは、巨大地震はその発生以前から、地表付近の断層や地下水に影響を与える場合もある、という事だよね。
 つまり、場合によっては予知が可能、という事かな?
 ラドン濃度の上昇は、地震以外にも発生原因があるのだろうけど、他の要素と組み合わせたら、どうなんだろう?
by ちゃめ (2007-01-20 13:22) 

通りすがり、です

えと、最初の文章で引用されている地震予知連の資料は資料であって、今回のはそれが論文になって発表されたのをうけてのプレスリリースではないのでしょうか。きちんと追いかけていませんが。地震予知連の資料はあくまで資料であって、それをネタに論文書いちゃいかん(という不文律がある)、と指導された経験があります。最近は論文中で引用されることが多くなりましたが。
目くじら立てることもないとおもいますし、五十嵐さんの研究を引き継いだ放医研、データを取った神戸薬科大学もえらいとおもいます。そういう意味では評価できるとおもいます。
プレス中に載っている図も予知連資料のままではありませんし、再解析したのでは?独立した(データソースは一緒かもしれませんが)解析なのではないのでしょうか。
by 通りすがり、です (2007-01-20 13:26) 

MANTA

- みゆきさん、コメントありがとうございます。
こんなマニアックな記事に興味を持っていただけて感謝です。

- 通りすがりさん、この予知連資料は発表済みの論文を紹介してます。
大気中のラドン濃度は、神戸薬科大さんが1997年に英語の論文として
公表済みで、地震前の明瞭な異常はこの時点で指摘されています。
ところが、プレス発表資料では同じデータを使っておきながら、その点が
まったく触れられてません。あたかもデータまで新発見のように読める
ところに不誠実さを感じています。
by MANTA (2007-01-21 23:23) 

MANTA

- ちゃめさん、オチを理解いただけたようですね。
今度は、「続きは次回」のやり方・見せ方ももっと工夫したいと思います。

>まぁ、理学的な立場から言うとそうなんだろうけど、実利的な側面から
>だと、必ずしもメカニズムが解明される必要はないんじゃない?
というご意見はあるかとおもいました。別記事で簡単にお答えしましょう。

>ラドン濃度の上昇は、地震以外にも発生原因があるのだろうけど、
>他の要素と組み合わせたら、どうなんだろう?
その通りだと思います。ではどうやって?なにを観測すればよいの?
そういったアイデアが出ない限り、ラドンのような地震前兆現象による
予知はいくら観測点を増やしたところで「ここまで」でしょう。
by MANTA (2007-01-21 23:24) 

埼玉「うさぎ」

思い付いた仮説をメモしておきます。

ソーラー電卓CASIO DS-120第4の指向性確認実験がラドン壊変時の放射線エネルギー(α線?)を感知している可能性。

海外等の遠隔地で発生したラドン(半減期3.8日)が、気団の移動によって当地(埼玉県川口市: 市役所本庁は北緯35度48分17秒,東経139度43分38秒に所在)に到来して観測された可能性。

 四川省東部もイタリア中部も陸域の大地震だった。
いずれも当地より西方に位置しており、気団の移動に伴ってラドンが日本にも到来していた可能性を考える。
 四川省大地震の際は、大地震後も数日高いレベルが続いたのが奇妙だったが、気団移動を考慮すれば有り得ないことではないと思う。
 気象庁は早急に我が国固有の領土である尖閣諸島にラドン濃度測定装置等諸々の気象・地震関連の観測設備を設置すべきだと思う。
 たとえば、尖閣諸島でラドン濃度の異常がないのが把握出来ていて、国内でラドン濃度異常が観測されれば、海外ではなく、国内の大地震であろうと推定できるのではなかろうか。過去には戻れないが、例えば、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は、そのようにすれば予知出来ていたかもしれないと思う。

過去ログ[10]No.2940
実験No.33 08/05/11 23:49 196回 出現率 0.122 [ほぼ全方位]
→08/5/12 15:28四川省東部(中国)(30.986N,103.364E)M7.9(死者極めて多数)★

09/4/15付No.3449
実験No.334 09/3/31 23:46 66回 出現率 0.041 [ほぼ全方位]【今年の最大値】
→09/4/06 10:32イタリア中部(42.334N,13.334E)M6.3(死者多数)●

 観察データの詳細は、[地震宏観現象と推測される事象研究(電気機器関連)掲示板]の該当書込みで、その後の状況もつかめますので、ご参照下さい。

 尚、上記の内容はKS氏のHP内の下記掲示板に、2009/04/17 05:10に書込みしました。
前兆情報、ご意見・議論・質問掲示板
ttp://34257.progoo.com/rental/normal_bbs/bbs.php
by 埼玉「うさぎ」 (2009-04-18 22:39) 

MANTA

埼玉「うさぎ」 さんの書かれたこれらのことこそ、「未科学」の極みです。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-04-09
今回は、「希望的観測」に頼った地震予知の例としてあえて削除いたし
ませんが、以後はこのようなメモはご自身のページで行ってください。
当ブログの読者にとっても、私にとっても意味不明で不必要な情報です。
by MANTA (2009-04-27 23:28) 

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