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なぜ消印で断定するのか? [▼科学ニュース New!]

普段大変お世話になっていますので、悪口めいたことは言いたくないのですが、次々に起
きる教育問題に対する文部科学省(文科省)の対応を見ていると、この省はきちんと考え
て行動しているかどうか心配になってきました。特に気になることは、いじめを苦にした
生徒からの自殺予告手紙の件で、生徒が豊島区にいると思い込んでいることです。

●いじめ自殺予告手紙 「豊島区の可能性」 文科相
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061107-00000019-san-soci
●いじめ自殺予告日、東京・豊島区で関係機関が厳戒
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061111-00000005-yom-soci

私は昔、文京区に下宿していたことがありますが、道路を挟んで向かい側は豊島区でした。
ごみの収集場所は微妙に豊島区側でした。徒歩5分の最寄り駅、JR巣鴨は豊島区でした。
もしあの辺に住んでいる文京区の子供が巣鴨駅で自殺予告の手紙を出していたとしたら、
肝心の地域は調べていないことになります。

そもそも豊島区には乗降客数200万人超の池袋駅があります。文科省に手紙が届いたのは6
日(月)だそうですから、日曜日に池袋で投函されたのかもしれません。あるいは塾の行き
帰りに池袋を通るかも。池袋には練馬や新宿、埼玉などからも電車1本です。だいたい、
自身を特定されたくないがために無記名の自殺予告手紙を出しているのに、わざわざ近所
のポストから投函しますか?

すなわち、なぜ消印だけで「豊島区」だけを厳重警戒とするのでしょうか?

さらに上記記事によれば、専門家の意見に基づいて自殺予告の手紙の消印が「豊島」と推
定しているようですが、なぜ郵便局に問い合わせないのでしょうか?郵便局WEBによれば、
豊島区内の集配局は「豊島郵便局」のみです。サンシャインの裏にあります。昔、学会の
申込書とかを締め切りギリギリに豊島局へ投函に行ったことがあったなぁ…

手紙の消印をちゃんと調べもせず、さらに消印だけで豊島区と断定して他の学区を調べようとし
ない文科省の消極的な姿勢は「いじめ問題は各教育委員会や学校で対応してほしい、文科
省は今回の件を大げさにせず、沈静化を見守りたい」という意識があるように私には思え
ます。その傾向は下記のページを見ても感じます。

●いじめを原因とする自殺予告の手紙の公表及びお願いについて (文科省ホームページ)
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06110713.htm

このページによれば文科省に届いた自殺予告手紙に関する情報については、文科省に
直接知らせてほしいとありますが、子供達の不安や悩みの窓口は文科省にはなく、各教育
委員会などの窓口紹介にとどまっています。ところが各教育委員会や学校は、自分達の
担当エリアにはいじめはない、と今まで言い続けているのです。子供達が文科省に駆け込む
理由もわかるというものです。案の定、複数の自殺予告の手紙が文科省に舞い込んでいるよう
です。

●自殺予告 新たに5通 2通は差出人特定 文科省
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061111-00000004-maip-soci

いじめ問題以外でも、文科省の思慮不足が心配されるニュースがいくつか報じられています。
(詳細はこちらの記事の追記を参照ください)
体裁を重んじ、危機意識が薄い、という文科省の姿勢を見て取れます。

…いじめ問題にせよ、履修不足問題にせよ、担当者レベルでは"成果"のほうが重要視され
て問題が棚上げになる。状況は耐震偽装問題とそっくりです。こうなると、国の積極的関
与によって問題を解決する必要があると思います。さてどうする、文科省?

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最初の自殺予告は昨日でした。まだ悪いニュースはきてません。悪口めいた記事を書きました
が、教育現場では一生懸命走り回っている先生がいるはずです。
このまま、自殺を思いとどまってくれることを祈ります。

ところで、ここまで書くと「自殺予告はいたずらなんとちゃう?」「いじめくらいで自殺
するやつなんてほっとけば?」という意見もでてくるでしょう。ではいじめる側が
正当化される社会で、いいのでしょうか?そんな子供が大きくなったらどうなるのでしょ
うか?同様のご意見がブログ「古本のともしび洞」さんで述べられています。
http://blog.tomoshi-bi.com/?eid=430686


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コメント 7

ask

消印の解釈については全く同感です。マスコミも文科省もバカじゃないの?と思ってました。
石原都知事が「あれは大人が書いた文章だ」と言ってましたね。さすが、いじめっ子の代表にふさわしい言葉です。
by ask (2006-11-12 10:37) 

ともしび洞

 こんにちは。弊ブログの拙い意見をご紹介を頂き、有り難うございます。スパムが多いためトラック・バックを受け付けていませんので、ご不便をお掛けしたのではないでしょうか。

 作家の なだいなだ さんが「いじめを考える」という本の中で、「これまでのいじめ対策といえば、いじめられている子供を把握しろとか、いじめられる子供にはこういうタイプが多いとか、『いじめられる者』を中心に考えられてきたが、本当は、いじめる者にそれをさせないようにすることが必要なのだ」という趣旨のことを書いておられます。正に、そのとおりだと思います。

 「自分で戦え、強くなれ」という石原都知事の発言は、裏返して言えば、「弱いからいじめられるのだ、弱いヤツが悪いのだ」ということに他なりません。この発想は、一部に見られるような「いじめられる方にも問題がある」という考え方と同じです。気弱でも、動作がトロくても、それがその子供の個性ならば、それは最大限に尊重されなければならず、皆が皆同じように強くなる必要などない筈だと思います。

「いじめを考える」 なだいなだ・著 岩波ジュニア新書271
by ともしび洞 (2006-11-12 17:35) 

MANTA

- コメント&Nice、ありがとうございます > askさん
マスコミは文科省以上に考える力を失ってるようです。これはマスコミだけでなく、社会全体にいえるのかもしれません。

- TBのかわりにコメントを残させていただきました~ > ともしび洞さん
当方へのコメントと本のご紹介、ありがとうございます。
子供達の世界(学校の中)は狭く未成熟なものであると思います。その狭い世界のつたないルールで「あいつ、ちょっと変わってる」程度で、いじめが始まるのではないでしょうか?それを一般社会と同様に「強いものが勝つべき」というのは少々短絡的と思う次第です。
by MANTA (2006-11-12 21:41) 

ちゃめ

 いつもコメントに爆弾を置いて帰ると迷惑だろうから、自分のブログに書いてみたよ。
 で、TB を送ったよ。
 私の意見も、「ともしび洞」さんがコメントで紹介されている「なだいなだ」さんの意見と同じかな。
 いじめた奴をもっと問題にするべきだろうね。
「いじめた奴は子供であっても実名報道に値する」というのは極論としても、更生施設に放り込むぐらいの事はやらないと、そいつらは社会に出てきて、会社とか役所でもいじめを繰り返して、そいつと同じように人をいじめてもなんとも思わない子供を再生産するのだ。
 これは大変な国家的損失だ。
(また爆弾を置いてしまった(汗))。
by ちゃめ (2006-11-12 22:52) 

MANTA

- いえいえ、いつもコメントありがとうございます > ちゃめさん
いじめを先生に相談すると「告げ口」となって、よけいいじめられるんですよね。先生がいじめっこを罰しても、きっといじめはなくならない。いっそ国のお墨付きの元、子供同士でいじめ裁判所を作らせて見るとか?あるいは子供によるいじめGメンとか?スケバンデカみたいやな。
冗談はさておき、「国家的損失」に対して、国はちゃんと対策するのだろうか?
by MANTA (2006-11-14 07:14) 

火山の化学系

どうも、ご無沙汰しております、化学系です。
# 当方のblogは移転させていただいております。

私も子供の時分の引越でいじめに遭いましたが
そのころに比べても極端になってきている様に思います。
正直なところ自分の子供を預けるには不安です。

「いじめ」のカテゴリに出来事を無理矢理押し込めるのでなく、
人死にが出たらもう、それは殺人であり、犯罪という観点が
必要なのではないか、と思うわけです。

学校の中の空間というのは、MANTAさんのおっしゃるように狭く未成熟であると同時に
大人の(現実の)広大な社会では自明ではない
人と人との(行為)関係とか、努力がある程度?報われるとか
相応の理想化が可能な唯一の空間なのだと思います。
強者の論理のみ支配するような冷たい空間にはして欲しくないですね。
そういうわけで、都立の教育機関には大事な子供を預けたくないと思います。
# まぁ、預けることも出来ないわけですが。
by 火山の化学系 (2006-12-03 20:00) 

MANTA

- お久しぶり?です。 > 火山の化学系さん
この記事は文科省ガンバレ(っていうかガンバルんだろうなぁ)という趣旨でしたが、やはりというか、いじめをどう防ぐかに議論が集中しますね。起きてしまったいじめは学校や教育委員会まかせでは解決できない、というのが私の考えです。文科省が国としてどう考えるか明確にすることで、教育の現場は(先生も生徒も)安定するとおもいます。その上でいじめがおきにくい土壌を作るには、化学系さんのおっしゃるような「単一評価ではない学校教育」が必要と思います。しかし理想は理想、いま学校に子供を通わせてる、またはこれから通ううこととなる親御さんにとっては頭が痛いですね。
私立がいいのでしょうかねぇ。
by MANTA (2006-12-03 23:06) 

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