小池都知事は危機管理能力に乏しい [▼科学ニュース New!]
先週の話だが、東京都の豊洲市場問題がまた賑やかになっている。
●豊洲地下水まだ有毒 最終結果で衝撃の基準値超え
http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1765496.html
この見出しにある「最終結果」というのがそもそもおかしい。
今回(第9回)の調査では、72カ所で環境基準をを上回る(最大約79倍)ベンゼンを検出。
またヒ素やシアンも検出された。しかし、前回(第8回:昨年11月発表)でも3か所で
基準値を超えるベンゼンとヒ素が検出されている。小池東京都知事もこう語っている。
●小池知事定例会見録(2017.1.21)
http://www.sankei.com/premium/news/170121/prm1701210029-n13.html
(以下引用)"1回目から8回目(※)まで数値が上がってこなかったのが、突然、8、9回目で
大きく跳ね上がるというのは一体どういうことなのか(中略)私も当然そのように、非常に
疑問を感じているところであります" (※注:おそらく「1回目から7回目」の誤り)
それならば、前回の8回目に疑問を感じておくべきだっただろう。そして「最終結果」と
いうつもりであったのならば、もっと万全の体制で地下水調査にのぞむべきだった。
・例えば第9回の地下水サンプルはどこかに保管されているのか?
・同じ地下水サンプルを複数社に測定させるなど、クロスチェックをしていたのか?
Toyosu by Hajime NAKANO (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/jetalone/3486090800
しかしどうやらそういう万全さはなかったようである。
●小池知事定例会見録(2017.1.21)
http://www.sankei.com/premium/news/170121/prm1701210029-n14.html
(以下引用)"ご指摘がありましたような疑念を抱かれないように、クロスチェックを次回、
再調査という形でやり、今回は暫定値であると、(中略)と理解いたしております"
そうだね、などと思ってはいけない。すなわち、、、
・そのクロスチェック、なんで今回やらなかったの?
・もし次回、ベンゼンやヒ素が環境基準を下回ったとして、それで安全宣言がだせるの?
・逆にもし異常な値だったら危険宣言だすの? でも測定のたびに値は上がったり
下がったりするかもよ(たぶん)。豊洲移転の可否はなにを判断基準とするの?
小池知事は「調査そのものに疑問が抱かれては、エンドレスになる」と言っているそうだが
すでにご自身でエンドレスへの道を歩み始めてしまっている。小池知事自身が「結果に疑問」
と言ってしまえば、第1~7回の結果も捏造ではないか?という意見もでてくる。どうすんの?
●「捏造したのか!」豊洲市場の地下水“異常”で不信感ピーク 発表現場に怒号
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170121-00000529-san-soci
どうやら小池知事は「転ばぬ先の杖」を用意しなかったようだ。この「杖」は危機管理において
必須である。転んでしまってからアーダコーダ考えるようでは遅い。また、これは都知事の
科学的素養の欠如ともリンクしているように思われる。未来予測はカンだけでは無理で、
科学技術的知識や情報が不可欠だ。知事はもっとよい科学技術顧問を探すべきだろう。
このままでは、仮に首都圏に大地震・大災害が起きた場合、はなはだ心もとない。
Tsukiji Market by Yasuyuki HIRATA (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/hirata_yasuyuki/3886079855/
さて豊洲の今後であるが、地下水についてはなんとなく予想がつく。
1) 分析会社の測定ミスではない
今回(第9回)は環境基準を上回るベンゼン・ヒ素・シアンなどが検出されたようだが、
調査エリア毎に別々の会社が担当して地下水分析をしたようだ。報道によれば、特定
のエリアだけに異常が集中したわけではなさそうなので、地下水の異常値は分析会社の
測定ミスではなかろう(第9回の結果が下記で公開されるとはっきりするだろう)。
●地下水のモニタリング調査(東京都中央卸売市場)
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/siryou/monitoring/
2) 地下水の異常値の原因はおそらく「地下水管理システム」
豊洲市場には「地下水管理システム」といって、地下水位上昇時にはポンプで水を汲み上げて
地下水位を維持するとともに、水質のモニタリングや浄化機能を有した装置が備えられている。
これは昨年10月から本格稼働しており、その前から試運転状態だったらしい。
(→ おときた駿公式サイト: http://otokitashun.com/blog/daily/13072/)
つまり地下水に異常が生じ始めたのは、地下水管理システムが動き始めてからと言える。
地下水を組み上げると、地中には新たな地下水の流れが生じる。これが(いままでは
動かなかった)ベンゼンなどを含む地下水を押し動かし、観測井戸で地下水異常として
検出されたのではないか?
3) 地下水の異常値は今後も継続するだろう
1,2が正しければ、地下水の新たな流れによって、今後も地下水の異常値が検出される
だろう。ただしより長い時間が経てば、汚染された地下水はいずれはすべて地下水管理
システムによって吸い上げられて浄化されるので、地下水の異常値は下がるだろう。
ただしそれには1年あるいは数年以上かかるのではないか?
地下水学のズブの素人である私でもそのような予測はすぐにつく。
なぜ、お歴々の先生方は気づかないのか? あるいは気づかないふりをしているのか?
●豊洲市場の地下水、突然の悪化なぜ 専門家「経験ない」
http://www.asahi.com/articles/ASK1G5HWYK1GUTIL01B.html
Tsukiji fish market by Greg Palmer (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/gregpalmer/1304138582/
実のところ、小池知事にとっては、この豊洲問題はいつまでも決着がつかなくてよいのかも
しれない。例えば、今回の都知事の記者会見でも、次の話題に時間が費やされていた。
●豊洲移転訴訟、石原氏の責任巡る対応再検討へ 小池知事
http://www.asahi.com/articles/ASK1N4S6GK1NUTIL027.html
悪代官を懲らしめる正義の味方のようである。しかしそこに本当の正義はあるか?
たんに政治のネタとして恰好なのではないか? そして今年は都議会議員選挙だ。
迷惑しているのは、卸売市場で生活している人たちと、豊洲周辺に住む人達である。
そして都知事のこのスタンスが、都の抱える他の問題にも波及していくことを危惧する。
ただ、それもこれも、都民の選択の結果なので、私にはさしあたって関係ない話ではある。
●豊洲地下水まだ有毒 最終結果で衝撃の基準値超え
http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1765496.html
この見出しにある「最終結果」というのがそもそもおかしい。
今回(第9回)の調査では、72カ所で環境基準をを上回る(最大約79倍)ベンゼンを検出。
またヒ素やシアンも検出された。しかし、前回(第8回:昨年11月発表)でも3か所で
基準値を超えるベンゼンとヒ素が検出されている。小池東京都知事もこう語っている。
●小池知事定例会見録(2017.1.21)
http://www.sankei.com/premium/news/170121/prm1701210029-n13.html
(以下引用)"1回目から8回目(※)まで数値が上がってこなかったのが、突然、8、9回目で
大きく跳ね上がるというのは一体どういうことなのか(中略)私も当然そのように、非常に
疑問を感じているところであります" (※注:おそらく「1回目から7回目」の誤り)
それならば、前回の8回目に疑問を感じておくべきだっただろう。そして「最終結果」と
いうつもりであったのならば、もっと万全の体制で地下水調査にのぞむべきだった。
・例えば第9回の地下水サンプルはどこかに保管されているのか?
・同じ地下水サンプルを複数社に測定させるなど、クロスチェックをしていたのか?
Toyosu by Hajime NAKANO (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/jetalone/3486090800
しかしどうやらそういう万全さはなかったようである。
●小池知事定例会見録(2017.1.21)
http://www.sankei.com/premium/news/170121/prm1701210029-n14.html
(以下引用)"ご指摘がありましたような疑念を抱かれないように、クロスチェックを次回、
再調査という形でやり、今回は暫定値であると、(中略)と理解いたしております"
そうだね、などと思ってはいけない。すなわち、、、
・そのクロスチェック、なんで今回やらなかったの?
・もし次回、ベンゼンやヒ素が環境基準を下回ったとして、それで安全宣言がだせるの?
・逆にもし異常な値だったら危険宣言だすの? でも測定のたびに値は上がったり
下がったりするかもよ(たぶん)。豊洲移転の可否はなにを判断基準とするの?
小池知事は「調査そのものに疑問が抱かれては、エンドレスになる」と言っているそうだが
すでにご自身でエンドレスへの道を歩み始めてしまっている。小池知事自身が「結果に疑問」
と言ってしまえば、第1~7回の結果も捏造ではないか?という意見もでてくる。どうすんの?
●「捏造したのか!」豊洲市場の地下水“異常”で不信感ピーク 発表現場に怒号
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170121-00000529-san-soci
どうやら小池知事は「転ばぬ先の杖」を用意しなかったようだ。この「杖」は危機管理において
必須である。転んでしまってからアーダコーダ考えるようでは遅い。また、これは都知事の
科学的素養の欠如ともリンクしているように思われる。未来予測はカンだけでは無理で、
科学技術的知識や情報が不可欠だ。知事はもっとよい科学技術顧問を探すべきだろう。
このままでは、仮に首都圏に大地震・大災害が起きた場合、はなはだ心もとない。
Tsukiji Market by Yasuyuki HIRATA (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/hirata_yasuyuki/3886079855/
さて豊洲の今後であるが、地下水についてはなんとなく予想がつく。
1) 分析会社の測定ミスではない
今回(第9回)は環境基準を上回るベンゼン・ヒ素・シアンなどが検出されたようだが、
調査エリア毎に別々の会社が担当して地下水分析をしたようだ。報道によれば、特定
のエリアだけに異常が集中したわけではなさそうなので、地下水の異常値は分析会社の
測定ミスではなかろう(第9回の結果が下記で公開されるとはっきりするだろう)。
●地下水のモニタリング調査(東京都中央卸売市場)
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/siryou/monitoring/
2) 地下水の異常値の原因はおそらく「地下水管理システム」
豊洲市場には「地下水管理システム」といって、地下水位上昇時にはポンプで水を汲み上げて
地下水位を維持するとともに、水質のモニタリングや浄化機能を有した装置が備えられている。
これは昨年10月から本格稼働しており、その前から試運転状態だったらしい。
(→ おときた駿公式サイト: http://otokitashun.com/blog/daily/13072/)
つまり地下水に異常が生じ始めたのは、地下水管理システムが動き始めてからと言える。
地下水を組み上げると、地中には新たな地下水の流れが生じる。これが(いままでは
動かなかった)ベンゼンなどを含む地下水を押し動かし、観測井戸で地下水異常として
検出されたのではないか?
3) 地下水の異常値は今後も継続するだろう
1,2が正しければ、地下水の新たな流れによって、今後も地下水の異常値が検出される
だろう。ただしより長い時間が経てば、汚染された地下水はいずれはすべて地下水管理
システムによって吸い上げられて浄化されるので、地下水の異常値は下がるだろう。
ただしそれには1年あるいは数年以上かかるのではないか?
地下水学のズブの素人である私でもそのような予測はすぐにつく。
なぜ、お歴々の先生方は気づかないのか? あるいは気づかないふりをしているのか?
●豊洲市場の地下水、突然の悪化なぜ 専門家「経験ない」
http://www.asahi.com/articles/ASK1G5HWYK1GUTIL01B.html
Tsukiji fish market by Greg Palmer (protected by CC License)
https://www.flickr.com/photos/gregpalmer/1304138582/
実のところ、小池知事にとっては、この豊洲問題はいつまでも決着がつかなくてよいのかも
しれない。例えば、今回の都知事の記者会見でも、次の話題に時間が費やされていた。
●豊洲移転訴訟、石原氏の責任巡る対応再検討へ 小池知事
http://www.asahi.com/articles/ASK1N4S6GK1NUTIL027.html
悪代官を懲らしめる正義の味方のようである。しかしそこに本当の正義はあるか?
たんに政治のネタとして恰好なのではないか? そして今年は都議会議員選挙だ。
迷惑しているのは、卸売市場で生活している人たちと、豊洲周辺に住む人達である。
そして都知事のこのスタンスが、都の抱える他の問題にも波及していくことを危惧する。
ただ、それもこれも、都民の選択の結果なので、私にはさしあたって関係ない話ではある。
追記:
●<豊洲再調査>30日から3月上旬まで実施
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170127-00000142-mai-soci
・29カ所で2回ずつ実施
・再調査は民間の分析会社1社が代表して水を採取
・同業他社2社や都の環境科学研究所とともに分析
どうしてそれを今回(第9回)でやらなかったのか?
次回の測定値が下がったら「それでよし」にするのか?
上がったらどうするのか?
なんで水採取は1社なの? その採取方法がまずかったらどうするの?
先の見通しもなく測定を繰り返すだけでは解決には至らない。
by MANTA (2017-01-28 10:35)
落としどころが見えないこの問題。もちろんご自分にはまったく関係ない事柄ですが、もし直接関わっていたとしたらどのように導きますか?
基準は越えているが安全だから(多分、実際に問題は無さそう)と説明して突っ走りますか?
それとも基準値を策定した専門家(だと仮定)として、この値なら移転はまかりならん、とアドバイスしますか?
by 白嶺丸 (2017-01-29 22:42)
白嶺丸さん、コメントありがとうございます。
私ならこうします。ユニークなアイデアというわけではなく、これが普通です。
1) 地下水の流動シミュレーションを実施
2) シミュレーション結果と、第8回・9回(+今後)の測定結果を対比して、
汚染源を絞り込む
3) 推定された汚染源域で地下探査やボーリングを行って、汚染物質を確認
1のシミュレーションはこれまでにやっているはずなので、再シミュレーション
はすぐできるでしょう。3は案外難しい。すでに建物がありますから。
しかし全くできないということもない。
1~3にはさしあたって3ヶ月~半年くらいでできるでしょう。
汚染源が特定できれば具体的な対策や将来予測も可能です。
築地市場移転についてはその上での政治判断となるでしょう。
by MANTA (2017-01-30 12:11)
追記:●豊洲市場の地下水質の空間統計とリスク分析
http://ameblo.jp/kazue-fgeewara/entry-12240149705.html
(以下引用)"対策で完全に除去できなかった潜在的な部分が地下水管理システムの揚水による移流で流動して顕在化したと考えるのが合理的であると考えます"
私もそう思います。
あと、上記のような資料こそ東京都が出しておいて然るべきですが、
ないねぇ、、、
by MANTA (2017-01-31 18:40)