一年の計 [▼研究実況 Now!]
お正月の三が日も終わり。明日から仕事始め。いやいや、あっという間ですね。
私も例にもれず、帰省したり、知人と会ったりして飲み食いに終わったお正月でした。
帰省時の食卓。大皿に盛られたおせち料理とお刺身。
家内の実家でも、私の実家でも久々に家族が揃いました。
さて昨年はいろいろありました。今年の抱負を考えるに、頭の中で昨年のことを振り返ってみると、
あるシンポジウムで、定年退職されたばかりのある先生とかわした二言が思い出されます。
…バック・トゥ・ザ10月。その頃の新宿。ネオンと人で一杯だ。
それは、シンポジウム後の懇親会でのこと。
ある先生と私と、あと私の研究室の大学院の学生の3人で会話していました。
先生「(学生に向かって)君は来春の大学院修士課程終了後はどうするんですか?」
学生「僕は就職します」
先生「どうして博士課程にいかないんですか?」
学生「いやー、、、」
私 「(うちの学生をフォローするつもりで)博士号を取ってから先が大変だからねぇ」
するとその先生は私のほうを向き直り、ぎょろっとした目で、ひとこと。
先生「そんなことを言っちゃイカン。君は楽しいから研究しているのではないのかね?」
先生いわく「私は研究者ほど楽しい職業はない、と今も思っている。自分の好きなことを
好きなだけ研究して、社会に役だって、給料ももらえる。学生に"研究は楽しい"と言う事が、
研究者としてすべきことではなかろうか?」
もう一つ思い出しました。今度は私と先生と2人で会話していて。
先生「君はなぜ研究所から大学へうつったのですか?」
私 「ただ研究するのも楽しいのですが、その成果や面白さを学生や社会に伝えたいと
思ったのです」
するとその先生はまた私のほうへ、ぎょろっとした目を向けて、ひとこと。
先生「どうやって」
私 「は?」
先生「どうやって伝えるつもりですか?」
私は一瞬戸惑って、ただ一言「できることから一つずつやっていきます」と答えました。
先生からの返答はありませんでした。
先生は数多くの優秀な研究者を世の中に出された方です。しかも研究内容は世界レベルで
本当に素晴らしい。私はその先生と面と向かってお話しする機会ははじめてだったのですが
なるほど、素晴らしい学生と業績に恵まれるはずだと感じさせられました。
----
そんなことを年初に思い出しました。いや昨年来、ずっと気にかかっています。
おせち食べ、お酒を飲みながら考えるにはちょっと堅い話ですね。
もうちょっと気楽に、肩の力を抜いて、”研究は楽しいっす!””役に立つっす!”
って楽しく明るく人に伝えていきたいと思うわけですわ。
このブログもその1つになるかなぁ?
ということで今年もよろしくお願いいたします。
私も例にもれず、帰省したり、知人と会ったりして飲み食いに終わったお正月でした。
帰省時の食卓。大皿に盛られたおせち料理とお刺身。
家内の実家でも、私の実家でも久々に家族が揃いました。
さて昨年はいろいろありました。今年の抱負を考えるに、頭の中で昨年のことを振り返ってみると、
あるシンポジウムで、定年退職されたばかりのある先生とかわした二言が思い出されます。
…バック・トゥ・ザ10月。その頃の新宿。ネオンと人で一杯だ。
それは、シンポジウム後の懇親会でのこと。
ある先生と私と、あと私の研究室の大学院の学生の3人で会話していました。
先生「(学生に向かって)君は来春の大学院修士課程終了後はどうするんですか?」
学生「僕は就職します」
先生「どうして博士課程にいかないんですか?」
学生「いやー、、、」
私 「(うちの学生をフォローするつもりで)博士号を取ってから先が大変だからねぇ」
するとその先生は私のほうを向き直り、ぎょろっとした目で、ひとこと。
先生「そんなことを言っちゃイカン。君は楽しいから研究しているのではないのかね?」
先生いわく「私は研究者ほど楽しい職業はない、と今も思っている。自分の好きなことを
好きなだけ研究して、社会に役だって、給料ももらえる。学生に"研究は楽しい"と言う事が、
研究者としてすべきことではなかろうか?」
もう一つ思い出しました。今度は私と先生と2人で会話していて。
先生「君はなぜ研究所から大学へうつったのですか?」
私 「ただ研究するのも楽しいのですが、その成果や面白さを学生や社会に伝えたいと
思ったのです」
するとその先生はまた私のほうへ、ぎょろっとした目を向けて、ひとこと。
先生「どうやって」
私 「は?」
先生「どうやって伝えるつもりですか?」
私は一瞬戸惑って、ただ一言「できることから一つずつやっていきます」と答えました。
先生からの返答はありませんでした。
先生は数多くの優秀な研究者を世の中に出された方です。しかも研究内容は世界レベルで
本当に素晴らしい。私はその先生と面と向かってお話しする機会ははじめてだったのですが
なるほど、素晴らしい学生と業績に恵まれるはずだと感じさせられました。
----
そんなことを年初に思い出しました。いや昨年来、ずっと気にかかっています。
おせち食べ、お酒を飲みながら考えるにはちょっと堅い話ですね。
もうちょっと気楽に、肩の力を抜いて、”研究は楽しいっす!””役に立つっす!”
って楽しく明るく人に伝えていきたいと思うわけですわ。
このブログもその1つになるかなぁ?
ということで今年もよろしくお願いいたします。
明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。
新年早々考えさせられる内容ですね。私も「何故今の会社を選んだのか?」と聞かれると回答に苦しむと思います。就職する時は漠然と海と関わりのある仕事で社会に役に立つということで決めましたが、それが自分にとって合っているのか、やり甲斐のあるものなのかという疑問はいつも付きまとってます。この仕事を選んで正解だったかは、この仕事を辞めた時に分かるんでしょうね。
by father (2009-01-04 19:59)
> 先生「そんなことを言っちゃイカン。君は楽しいから研究しているのではないのかね?」
博士号を持った人々の就職先が少ないことが新聞記事になるような時代、学生さんも考えるのでしょうね。
とどのつまり、二択に帰着するのかと。そのレールが安全かどうかは別として、レールの上に乗って、慣性の力で生きてゆく人生。レールに乗っていようが、レールがなかろうが、自分の力で前に進み続ける人生。
by アヨアン・イゴカー (2009-01-04 23:59)
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
>研究は楽しい
別分野で全く同じ状況で酒屋で大喧嘩したことがあります。
私は「その需要と供給のバランスを欠いた結果が、供給過多を起こして取ってから先のキャリアデザインが描けなくなっている。これは文科省だけの責任とは言えず、「優秀な」先達としては後輩がその道を選べる環境(その上で後輩が敷いたレールを走るか新しく敷設するかは別)を作り出す責務があると思うが(それをやってきたか)どうか?」
・・・その後死ぬほど荒れました、はい。
by HMS (2009-01-05 00:40)
いい話ですね!
>「どうやって」
私的には 口で説明するのではなく
研究する姿だったり 仕事っぷりだったり
成果や実績だったりします。
それが人を動かす原動力ではないかと・・・
若い人達の目標に自分がなれたらいいな~
職種はぜんぜん違いますが・・・
私はそう考えています。
そのためには私も今まで以上にがんばらなければ・・・
自分が若い潜水士の目標になれたら
うれしいです。w
by やまおか (2009-01-05 09:27)
MANTAさん
先日の新年会ではどうも〜.
今年もどうぞよろしくお願い致します.
by K_Tachibana (2009-01-05 23:11)
あけましておめでとうございます。
先生の言葉、ドキッとさせられますね。この言葉を噛み締めることができるMANTAさんもきっと偉大な先生になることと思います。
今年も海の研究がんばってくださいね。楽しみにしています(^_^)
by satokot (2009-01-07 01:13)
訪問が遅くなりすみません。
寒中お見舞い申し上げます。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
MANTAさんのお人柄を感じます。
難しいことを難しい言葉で難しく伝えても
心になかなか響かないと思うんです。
明るく伝えていきたいというMANTAさんのお気持ち、
生徒さんにもきっと伝わっていきますよ。
by sora (2009-01-09 06:30)
fatherさん、コメントありがとうございます。
>私も「何故今の会社を選んだのか?」と聞かれると回答に苦しむと思います。
私はどうだろう…? 私も答えに窮するかもしれません。その時々の理由
というのはありますが、今は「これまで学んだことを社会に還元していきたい」
というのが、今の職についた一番の理由ですから、なんだか後付ですね。
でも、理由など後付であってもよいのだ、要は何を成すかだ、と思っています。
>博士号を持った人々の就職先が少ないことが新聞記事になるような時
>代、学生さんも考えるのでしょうね。
アヨアン・イゴカーさん、考えてしまうのは学生だけでなく、教員もです。
博士号の就職先のなさ=いわゆる「ポスドク問題」ですが、しかし私はこの
言葉は好きではないです。博士だけに問題があるわけではなく、社会や
教員にも大きな問題や責任があるからです。もはや私も教員ですので、
考えるところがあって当然です。
しかしそれと、研究の楽しさを伝えることとは、別のことと考えねばならない
のだろうと某先生から教わったわけです。だって「研究は楽しい」のですから。
by MANTA (2009-01-11 23:39)
>「優秀な」先達としては後輩がその道を選べる環境(その上で後輩が敷
>いたレールを走るか新しく敷設するかは別)を作り出す責務があると思う
>が(それをやってきたか)どうか?
HMSさん、私も同僚と同様の議論をしたことがあります。同僚曰く、「私は
誰かにならったわけではなく、自分でこの道のことを勉強してきた。手取足取り、
後進を育てねばならないという必然性はないのではないか?」
一理あります。レールを敷かねばならないのかどうか? ただ少なくとも、
学ぶ者が前に走る環境や意欲を与えることだけは心がけたいものです。
>私的には 口で説明するのではなく研究する姿だったり 仕事っぷり
>だったり成果や実績だったりします。
やまおかさん、それ、わかります! 私の知り合いに強面の先生がいて、
学生に恐れられていましたが、学生が恐れる真の理由は「先生は、ご自身が
言ったことはちゃんとやる方で、だから余計怖いんです」とのこと。
やっぱ有言実行ですね。
by MANTA (2009-01-11 23:48)
>先日の新年会ではどうも〜.
>今年もどうぞよろしくお願い致します.
K_Tachibanaさん、こちらこそよろしくお願いいたします。こういういろんな
思いこそ、「コミュニケーション」で伝えていきたいです。
>先生の言葉、ドキッとさせられますね。
satokotさん、そうですね。この先生のように、今度は迷える学生をドキッと
させたいものです。しかし、どうやって?? 日々修行です!
>MANTAさんのお人柄を感じます。
>難しいことを難しい言葉で難しく伝えても
>心になかなか響かないと思うんです。
soraさん、ありがとうございます。まずは「相手のニーズをつかむ」ことが
大事なように思い始めています。これって営業活動に似ているかも?
今年もよろしくお願いいたします。
by MANTA (2009-01-11 23:53)
ぎょろっとした目の先生、素敵ですねー。
教育はゴールを設定しにくいところも難しいのだろうなあ、と思います。
昔と違って今、若い人が影響を受け情報を吸収する媒体がバラエティ豊かになっています。面と向かって交わされる会話であったり、書籍であったり、伝聞であったり、ブログであったり。プレゼンテーションの手段が増えている分、情報量もさることながら、伝えたいことを多面的に表現できるというメリットは大きいですね。
若いころの不勉強がたたって科学には疎いのですが、MANTAさんのブログを拝読していると科学と自分の暮らす日常がこんなにも不可分に結びついているのかと新鮮に感じられてとても楽しいです。こんな素晴らしい先生の授業を受けられる学生さんたちはほんとに幸せですね。
by 素風 (2009-01-12 04:07)
>昔と違って今、若い人が影響を受け情報を吸収する媒体がバラエティ豊
>かになっています。
素風さん、その通りと思います。なのでウカウカしていると、あっというまに
廃れてしまう学問もでてくるんじゃないのかなぁ?と危惧しています。例えば
ネットやTVに情報のない学問には、学生はもはや興味を持たない時代に
なってしまうかも。
でもまずは大学の中できちっとインパクトを与えていきたいところですね。
by MANTA (2009-01-12 09:23)
「どうやって伝えるつもりですか?」 の先生のお言葉を拝見して、
サイエンスコミュニケーションの意味に関するやりとりを思い出しました。
やまおかさんのコメントに近いのですけれども、
”どのように” も然りながら、伝えているのは ”どのような人(達)” か、
伝えたい相手への接し方なども重要な点と感じておりました。
今年もよろしくお願い申し上げます。
by ハニーm (2009-01-15 23:08)
>”どのように” も然りながら、伝えているのは ”どのような人(達)” か、
ハニーmさん、最近はF1層とか、M2層とかいいますよね。
TVや商品販売は、視聴層や購買層によって戦略を変えているようです。
一方で(もはや馴染んでしまったので死語っぽいですが)ロングテールという
考え方もある。いやはや、難しいですが、何も考えずにただ科学技術的成果
を並べるというのは避けたいものです。
by MANTA (2009-01-16 06:59)
>伝えているのは ”どのような人(達)” か、
これは二通りに解釈されそうで、ご返事を頂く前に追伸の予定でした ...
私が意味しましたのは、伝える側がどのような人(達)か、です。すみません。
その伝えようとする側につきましては、専門家-研究者-学者 というより
様々な名称の下にコミュニケーションする立場をより考えてのことです。
MANTAさんがおっしゃるように、マーケティングリサーチやプロモーションの
意義を認めております。が、組織的・科学的な立派な戦略と同様に、例えば
第一線の営業マンがどのような人(達)か、キャリアや知識以外の人間力が
どのような印象をもたらすか、重要な要素と感じてまいりました。
by ハニーm (2009-01-16 10:31)
なるほど!私はプレゼンやレクチャーをする人は「私」としか考えてませんでした。
たしかに受け取る側にとってみれば「誰が話をしているか」が内容よりも
大きなハードル?敷居?あるいは親しみやすさ?になるかもしれませんね。
by MANTA (2009-01-16 20:10)
ステキな先生ですね。
職人的な技術スキル、後進の育成手腕、両立しているに越した事はないのでしょうが、現実的にはどちらか片方でも窮められるのは難しい事。役割分担が有っても良いような気もします。
1人(少数)の天才を作り上げる教育と、全体(万人)の底上げ的な教育とは、また別物のような気もしますし・・・。
by SAKANAKANE (2009-01-18 04:50)
SAKANAKANEさん、ありがとうございます。頂いたコメントを見ていると
自分のなすべきことがわかってくる気がします。
・職人的技術スキルを持つ人がどうやって後進を育てるのだろうか?
(やまおかさんに頂いたコメントが思い出されます)
→ やっぱし研究者は研究しなければ!
・専門家を育てる教育と、一般啓蒙的教育は異なる。
(前者が大学内、後者が大学外での活動)
→ 後者のスキルも徐々に磨きつつ、主体は大学内活動(講義、学生指導)
などと考えております。
by MANTA (2009-01-18 09:59)
>職人的技術スキルを持つ人がどうやって後進を育てるのだろうか?
>専門家を育てる教育と、一般啓蒙的教育は異なる。
これはフネ屋としては「両立させないといけない」んですよね・・・
前者は「海技(フネの運航)」「造船(フネを作る人間)」は職人的技術スキルを持つ人が後進を育てないかぎり誰~も育たないですし、後者は後者で「専門家を育てる教育」をしたら自動車メーカーや陸上の企業へ行ってしまうので「早いうちから啓蒙」しないと「大きくなってからでは専門家を志さない」という(困)。
・・・おかげで学会の事業にされました(泣)
by HMS (2009-01-20 03:24)
この記事、予想以上の反応をいただいております。ありがとうございます。
HMSさん、両立、たしかに重要ですね。でもそれはお一人でやらなくても
本当はよいはず。まあ、まずは一人一人、できることをしっかりと後世に残し
ていくということでしょうか? お互い頑張りましょう!
by MANTA (2009-01-22 07:33)