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地下を監視する技術 [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

地震や火山活動を見れば分かるように、地下は時間とともに変化しています。
しかし、どれくらいの速さで、どの場所が、どう変化しているのか??
私達はその様子をどの程度詳しく把握できているのでしょうか?

近年、地上や掘削孔で地面の震動(地震波)を観測して、地下の様子を監視
(モニタリング)る試みが盛んに行われています。例えば、下記は一例です。
https://www.facebook.com/segjfbsite/posts/2623030274624184
(物理探査Facebookより)
AIST.JPG
”産業技術総合研究所は、地下400mに設置した高感度振動センサーを使い、地熱発電に利用可能な熱水の流動を検出することに成功しました。センサーの変化を24時間、リアルタイムで検出することで、熱水流動を簡易に推定できるようになり、より効果的な地熱資源の開発への貢献が期待されます。詳しくは産業技術総合研究所のプレスリリースをご参照ください。
「人が感じないごく小さな揺れの成分解析から地熱発電に利用可能な熱水の流動を検出-地熱発電などの深部地下開発時の新たなモニタリング技術-」
https://www.aist.go.jp/・・・/pr2021/pr20210419/pr20210419.html


上記の研究では、地下の熱水の動きを、地面の揺れから検出しています。
熱水とはマグマなどで熱せられた地下水のことであり、温泉とも関係が深いですし、
地熱発電にも利用されます。ここで、研究者たちが注目したのは「ノイズ」です。
地震が起きていなくても、地面はいろいろ要因で常に揺れています。
これは常時微動と呼ばれています。常時微動は地震の観測ではノイズなのですが、
あえて、このノイズによる振動記録に注目したところ、地下の熱水の動きが
見えてきたというわけです。目の付け所ですね!

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自然の地面の揺れに加えて、人工的に地面に震動を与えてみて、その際の揺れの
伝わり方を多くの観測点でキャッチして、地下の変化を調べる試みも始まっています。
●大量のCO2を削減できるCO2地中貯留で連続的なモニタリングが可能に!
 ~小型連続震源装置、光ファイバー型地震計を活用した新システムを開発~
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/659?fbclid=IwAR1LqLeptGqlCgXNWz-VqXT6v5WJNcZJbD7W8tD_G9KLJfBYFqKTU4d-098
※以下の図は、九州大学の論文から引用。

Fig.0.JPG
 九州や東北沖の海底で試験観測がなされています。
 https://www.nature.com/articles/s41598-021-97881-5

ここでは画期的な2つの「システム」を組み合わせています。
1つは、人工的な振動源です(人工震源と言います)。
震源には回転する偏心おもりを活用しています。これは名古屋大学が長年開発
している"アクロス"と呼ばれるシステムです。人工震源を用いて地下を監視する
ためには、何度も何度も地面を振動させねばなりません。強い力で地面を振動させ
続けると、震源の土台が壊れてしまいます。どうすれば安定して強い力の震源を
作ることができるのか? この矛盾を解決したのがアクロスです。
●精密制御震源(アクロス)システム | 地震本部
 https://www.jishin.go.jp/resource/column/2009_0907_03/

fig1.JPG
 こちらが人工震源です!
 https://www.nature.com/articles/s41598-021-97881-5

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もう1つは地震計の工夫です。人工震源で発生した地震波の受振(受信ではなく
受振)には通常の地震計ではなく、光ファイバーを利用しています。
光を用いることで、光ファイバー沿いの何百箇所・何千箇所で振動を計測できる
のです。これによって、観測点数を飛躍的に増やすことができます。
●光ファイバーで振動を捉える
 http://www.gp.tohoku.ac.jp/research/topics/20210521155254.html
●光センサー地震計|白山工業株式会社
 https://www.hakusan.co.jp/LABO/opt_fiber/

光ファイバー地震計はすでに国内外で成果を上げつつあります。
●海底に敷設された光ファイバーで、断層の発見や地震観測が可能に
 米国の研究チームが実証
 https://wired.jp/2020/01/21/scientists-spot-an-undersea-fault/
●通信用の光ファイバー網が、高精度な地震センサーになる
 https://wired.jp/2018/08/27/broadband-earthquake-detection/

九州大学の研究では、この新たな観測システムを用いて、地熱発電所の周辺での
地下のモニタリングに成功しました。地熱発電所では、発電に用いた熱水を地下へ
戻します。これを熱水の「還元」と言います。地熱発電所の近傍で、地下を地震波
が伝わっていく速度(地震波速度)を連続的に測り続けて、還元水の量と照らし
合わせた結果、両者の変化はとてもよく対応しました。
 Fig2.JPG
 上が地震波速度の変化、下が地熱発電所での還元水の量の変化。
 詳細は下記の論文を読んでね。誰でも見れるよ!(英語)。
  https://www.nature.com/articles/s41598-021-97881-5

将来的には、例えば海底でのCO2地中貯留などへの応用が考えられている
そうです。地球温暖化の抑制につながる技術なのだ?(ホント??)
(詳しくは下記の九州大学のホームページをご覧ください)

目に見えない地下の変化を、手にとるように可視化できる時代。
夢のようなことが可能になりつつあります。
さて、あなたなら、地下の何を監視(モニター)しますか?

地底の科学 地面の下はどうなっているのか (BERET SCIENCE)

地底の科学 地面の下はどうなっているのか (BERET SCIENCE)

  • 作者: 忠徳, 後藤
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2013/10/22
  • メディア: 単行本



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