SSブログ

ちっぽけな化石が物語る事の多さよ。 [ 科学コミュニケーション]

昨日のブラタモリ、ご覧になりましたか!?
加藤先生、今回はチラリとしか重畳されませんでしたが、いい味がでてます。
タモリさんとのやりとりは次回(来週)に期待!!
https://www.hitohaku.jp/researchers/kato.html
 兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく)の加藤先生。
 麦わら帽子がお茶目。

そんな加藤さん、実は一流の研究者です。例えば、国際的な科学誌である
「Nature」へ、第1著者として書かれてた論文が掲載されています。

New geological and palaeontological age constraint for the gorilla?human lineage split.
Katoh, S., Beyene, Y., Itaya, T., Hyodo, H., Hyodo, M., Yagi, K., Gouzu, C., WoldeGabriel, G., Hart, W. K., Ambrose, S. H., Nakaya, H., Bernor, R. L., Boisserie, J., Bibi, F., Saegusa, H., Sasaki, T., Sano, K., Asfaw, B., & Suwa, G. (2016). Nature, 530(7589), 215-218.
https://www.nature.com/articles/nature16510

この論文の解説が以下にありました(博物館のプレス発表など)。
●最古のゴリラ祖先化石を含む哺乳類化石群を産出したエチオピアの
 チョローラ層の年代とその意義に関する論文の出版について
 https://www.hitohaku.jp/research/h-research/gorilla-human%20.html
 https://www.hitohaku.jp/publication/p-about/hitohakurpt2012-2016projects17-20.pdf

また、そのときの新聞記事が下記。
●800万年前のゴリラの祖先だった!
 9年前にアフリカで発見した化石 兵庫の博物館が調査
 https://www.sankei.com/article/20160211-HYKEC7M4EBJP7HIECWBBXGJ4CE/
・・・うーん、わかりにくい。特に新聞記事については、
記者が本発見の素晴らしさを理解できていないように思います。

project_suwa01+.jpg
※画像は、上記論文の共著者で著名な人類学者である諏訪先生のHPより。
 https://www.um.u-tokyo.ac.jp/people/faculty_suwa.htm

この研究は、人類進化の詳細な歴史を確かなものにしただけでなく、
最古の人類の痕跡がどこにあるかも明らかにしたのです。
(以下、私なりの解説。専門が違うのでちょっと違うかもね)

・分子年代学(分子系統学)に基づけば、人類進化の過程で、人類とゴリラ
 の分岐が約1000万年前、人類とチンパンジーの分岐が約800万年前とされて
 いる。しかし、それはいくつかの仮定に基づく推測に過ぎず、証拠となる
 化石は見つかっていなかった。
 ※分子系統学は分子時計に基づいて進化のプロセスを解明する学問。
  分子時計については下記に詳しい。
 → パラダイムシフト:分子進化の中立説(JT生命誌研究館)
  https://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2005/post_000003.php
  (下記の図も、同ページより)

  MB.JPG 
  このように、体内のアミノ酸が進化の過程でどれくらい変化するかは、生物の
  進化してきた時間に比例している。これを利用すれば、現存する生物のDNAや
  タンパク質の分析から、進化の年表を作ることができる。ただし、求められた
  年代は相対的なものであり、絶対年代を決めるには、化石の発見が不可欠だ。

・新たに発見されたゴリラの祖先の化石は、その周囲の地層の分析から、800万年
 前のものとわかった。分子系統学で予測されていたた化石が見つかった!
 というわけ。分子系統学の正しさが証明された。

・また分子系統学では、進化の場所までは特定できない。今回、ゴリラ祖先化石が
 アフリカで見つかったということから、アフリカの中でゴリラ、チンパンジー
 そして人類へと分岐したという仮説が確かなものとなった。

・分子系統学が正しいとなれば、チンパンジーと人類が分かれた年代は800万年前
 くらいである。すなわち、今回のゴリラ祖先化石が発見された地層やその付近から
 最古の人類化石も発見される可能性があるのだ。

・誰が最初に最古の人類化石を見つけるのだろう?
 その当時の地球環境の様子も、地層に残されているに違いない。
 例えば、なにかの「事件」が人類誕生の引き金になったのだろうか?
 隕石衝突が恐竜絶滅のキッカケになったように、人類進化のキッカケも
 あったかもしれない。あるいはそんな事件はなくてもよい。いずれにせよ
 進化を考える上で大きなヒントになる。興味は尽きない。

・っていうか、これは2016年のお話。その後の調査はどうなった??
 これこそ国がバシっと支援して、エチオピアと合同でちゃんと調査すべき
 案件ではないか? でも、そんな話、あまり聞かないなぁ、、、

・そういえば「台湾から沖縄諸島へ、最初の日本人は船でやって来たのか?」
 ってプロジェクトがあったね。NHKでも大々的に番組をやってた。
 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/special/koukai/
 これも大事だけど、「最初の人類発見」プロジェクトのほうが、国際協力
 にもなるし、より興味深いなぁ。

ほんの少しの化石から、これだけのことが分かるって、すごいですね!!

また、ここで紹介した論文には、化石や骨、生物に関する図はひとつも
載ってません。あくまで地質・地層のお話です。でも地層の年代が決まれば
化石の年代も決まるので、人類進化のお話につながります。
高校までは「物・化・生・地」として、理科の各科目は別々に勉強しますが、
科学全体で見れば、渾然一体となっています。

加藤さんたちの研究成果、そのキッカケとなった小さな化石たちは
そんなことも教えてくれます。
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。