報告:大学生が登校したら、こうなりました(2) [▼連載【新型コロナウイルスと社会】]
前回の続きです。大学1年生による下記のツィートが話題になってます。
https://twitter.com/D6Hy1q0FQJuxtPO/status/1284137078914076673
当大学は7月6日から、対面講義が再開しましたので、その報告です。
前回の記事では5月まで報告しました。6月から後の報告を続けます。
↓
↓
6月・・・「先生、キツイです」
・しかし5月末頃~6月になると、気持ち的に参ってくる学生が増える。
例えばこちら。レポートが多すぎて死にそうな学生多数。
https://twitter.com/Micky__0125/status/1265460295343804416 より
教員には「ちゃんと学生は理解できているか?」という、授業内容の有形・無形
のチェックが入り始める。なので講義のビデオ録画は無論、レポートを出す、
小テストを出す、などが必須となり始める。教員側も、学生の顔を直接見ることが
できないので「私の講義内容は伝わっているのだろうか?」という不安もあり、
学生にとっては「まじか、いくつ宿題あると思ってんねん!?」状態である。
・また同級生の顔をまだ見たことのない1回生が、不安に苛まれ始める。
5月末に、1回生用の履修相談会(ネット)を行ったところ、学部の1割程度の
学生がやってきた。しかし深刻な相談内容は実はなくて「同級生がどんなことを
相談しているか聞きに来た」という学生が多かった。学生のキツさを感じた。
・ネット講義の配信・受講は順調であった。しかし実験・実習はビデオ学習では
限界がある。後期もこの形では、理系の学生は、実験・実習の知識は身についても
技術・経験はゼロ。
・緊急事態宣言も解除されたので、6月中旬頃から対面講義・実習をどう再開するかの
議論が始まる。ただし、感染対策はもちろん必要。小中高と違って、1箇所に1日に
数千人以上が集まる大学ではそう簡単な話にはならない。教室・食堂・図書館に、
情報処理室・自習室だけでなく、通学での3密対策も考えねば。
すべてを完璧にやろうとすると、時間割を組めなくなるというジレンマ。悩む。
・一方、研究室で卒論・修論に勤しむ学生は、登校して良いことになった。研究室では
いつ・だれが登校するか、事前に把握して大学へ申請。わが研究室はゼミはネット配信
のみとしているが、登校する学生がチョイチョイいて、研究室らしくなってきた。
↓
↓
7月・・・「やめるのは簡単、やるのは大変」
・やはり対面講義の再開は無理。諦めた直後に、天の声。
・「全面的に対面講義を復活しなさい!」
これが誰の声か、本当のところは私は実は知らない。とにかく7月から、
一部の学部の全講義・実験、別の学部では一部の学生実験、そして全学共通科目
(理系の1回生)を対面で行うことになった。6月下旬にこれが決まった。
・といっても、ネット配信も継続する必要がある。すでに学生・保護者に
「前期講義・実験はネットで配信します」と言ってしまったので、実家に戻ってる
学生も多数いるのだ。はっきりいって、学生無視の暴挙・暴走である。
・しかも感染第2波がニュースで話題になっている時に、である。
・しかもしかも、大学内のネットワークが未整備で、登校した学生がネットに
繋ぐと、その負荷で大学のネットが落ちてしまうらしい。だから学生には学内で
ネットに繋がせるな、というお達しが出る。マジか、なかなかの無理ゲーやぞ。
本当に「対面は対面、ネットはネット」での講義を行わないといけない。
・大学側は大慌てで、対面+ネット配信のためのハードウェアを準備して、
そのためのサポート教員とかアシスタント学生も配備。
・そして、7月6日から、対面講義を全学年に向けてスタート。
↓
↓
学生はどちらを受けてもOKとして、
対面とネット配信の併用講義がスタート。
結果:ざっくり平均すれば、学生の5%程度が対面講義に参加。
残りは従来と変わらず、自宅からネットで参加。
・・・教員・事務職員は、7月の対面講義再開のため、とにかく準備しました。
それ以前から感染対策のために、学生には何度もアンケートに答えてもらい、
あの手この手で対応をしてきました。対面講義再開はそれを遥かに上回る大変さ。
なにをどこまで、どう確認するか? もしも学内で感染が起きたらどうするか?
完全な対策などできなくても、可能な限り学生の安全を担保できる方法はないか?
毎日、会議・会議。でも決まった内容も、すぐにまた変更・変更。
そうして始まった、対面講義。…でも、だーーーーーーーーれも来ない。
対面再開後のある晴れた日、昼休みにキャンパスを歩いている人を数えてみました。
たったの約30名ほど。その殆どはカバンをもってないので4回生や大学院生だね
(カバンを研究室に置いているから)。図書館利用者もみてみた。午前中で数名。
大学キャンパスの閑散とした風景に変わりはありません。
いや、いいんです。これが大学教員の仕事ですから。
正直言って、教室に1名の学生が来ようと、50名の学生が来ようと、準備の手間は
同じなのです。だからもっとたくさんの学生に登校してもらってもよいのよ。
対面再開当初は「奇数日は学籍番号が奇数の学生が、偶数日は偶数の学生が登校可」
ってしてましたけど、それ、数日で撤廃されました。みんな、来ていいよ!ってね。
でも登校者数は増えない。いいえ、少なくってもいいのです。皆さんのうち少数かも
しれませんが、登校したいと思う気持ちや権利を奪うわけにはいきません。
対面出席者ゼロ名という講義もたくさんあります。一方で、実験・実習については、
3割ほどの学生さんが出席しているような感じです。やっぱし実感したいもんね。
そんな感じで、明日からまた月曜日ですが、きっと明日もキャンパスはガラガラです。
後期はどうなるのだろうか? ただ、大学の側は準備と練習はできました。
秋以降も、緊急事態宣言がでなければ、対面+ネット配信の併用講義が続くと思います。
学生の皆様、どちらでもよいので、元気に学んでください。
それが当大学と教員の願いです。
以上、備忘録を兼ねて書いてみました。なにかの参考になれば幸いです。
https://twitter.com/D6Hy1q0FQJuxtPO/status/1284137078914076673
当大学は7月6日から、対面講義が再開しましたので、その報告です。
前回の記事では5月まで報告しました。6月から後の報告を続けます。
↓
↓
6月・・・「先生、キツイです」
・しかし5月末頃~6月になると、気持ち的に参ってくる学生が増える。
例えばこちら。レポートが多すぎて死にそうな学生多数。
https://twitter.com/Micky__0125/status/1265460295343804416 より
教員には「ちゃんと学生は理解できているか?」という、授業内容の有形・無形
のチェックが入り始める。なので講義のビデオ録画は無論、レポートを出す、
小テストを出す、などが必須となり始める。教員側も、学生の顔を直接見ることが
できないので「私の講義内容は伝わっているのだろうか?」という不安もあり、
学生にとっては「まじか、いくつ宿題あると思ってんねん!?」状態である。
・また同級生の顔をまだ見たことのない1回生が、不安に苛まれ始める。
5月末に、1回生用の履修相談会(ネット)を行ったところ、学部の1割程度の
学生がやってきた。しかし深刻な相談内容は実はなくて「同級生がどんなことを
相談しているか聞きに来た」という学生が多かった。学生のキツさを感じた。
・ネット講義の配信・受講は順調であった。しかし実験・実習はビデオ学習では
限界がある。後期もこの形では、理系の学生は、実験・実習の知識は身についても
技術・経験はゼロ。
・緊急事態宣言も解除されたので、6月中旬頃から対面講義・実習をどう再開するかの
議論が始まる。ただし、感染対策はもちろん必要。小中高と違って、1箇所に1日に
数千人以上が集まる大学ではそう簡単な話にはならない。教室・食堂・図書館に、
情報処理室・自習室だけでなく、通学での3密対策も考えねば。
すべてを完璧にやろうとすると、時間割を組めなくなるというジレンマ。悩む。
・一方、研究室で卒論・修論に勤しむ学生は、登校して良いことになった。研究室では
いつ・だれが登校するか、事前に把握して大学へ申請。わが研究室はゼミはネット配信
のみとしているが、登校する学生がチョイチョイいて、研究室らしくなってきた。
↓
↓
7月・・・「やめるのは簡単、やるのは大変」
・やはり対面講義の再開は無理。諦めた直後に、天の声。
・「全面的に対面講義を復活しなさい!」
これが誰の声か、本当のところは私は実は知らない。とにかく7月から、
一部の学部の全講義・実験、別の学部では一部の学生実験、そして全学共通科目
(理系の1回生)を対面で行うことになった。6月下旬にこれが決まった。
・といっても、ネット配信も継続する必要がある。すでに学生・保護者に
「前期講義・実験はネットで配信します」と言ってしまったので、実家に戻ってる
学生も多数いるのだ。はっきりいって、学生無視の暴挙・暴走である。
・しかも感染第2波がニュースで話題になっている時に、である。
・しかもしかも、大学内のネットワークが未整備で、登校した学生がネットに
繋ぐと、その負荷で大学のネットが落ちてしまうらしい。だから学生には学内で
ネットに繋がせるな、というお達しが出る。マジか、なかなかの無理ゲーやぞ。
本当に「対面は対面、ネットはネット」での講義を行わないといけない。
・大学側は大慌てで、対面+ネット配信のためのハードウェアを準備して、
そのためのサポート教員とかアシスタント学生も配備。
・そして、7月6日から、対面講義を全学年に向けてスタート。
↓
↓
学生はどちらを受けてもOKとして、
対面とネット配信の併用講義がスタート。
結果:ざっくり平均すれば、学生の5%程度が対面講義に参加。
残りは従来と変わらず、自宅からネットで参加。
・・・教員・事務職員は、7月の対面講義再開のため、とにかく準備しました。
それ以前から感染対策のために、学生には何度もアンケートに答えてもらい、
あの手この手で対応をしてきました。対面講義再開はそれを遥かに上回る大変さ。
なにをどこまで、どう確認するか? もしも学内で感染が起きたらどうするか?
完全な対策などできなくても、可能な限り学生の安全を担保できる方法はないか?
毎日、会議・会議。でも決まった内容も、すぐにまた変更・変更。
そうして始まった、対面講義。…でも、だーーーーーーーーれも来ない。
対面再開後のある晴れた日、昼休みにキャンパスを歩いている人を数えてみました。
たったの約30名ほど。その殆どはカバンをもってないので4回生や大学院生だね
(カバンを研究室に置いているから)。図書館利用者もみてみた。午前中で数名。
大学キャンパスの閑散とした風景に変わりはありません。
いや、いいんです。これが大学教員の仕事ですから。
正直言って、教室に1名の学生が来ようと、50名の学生が来ようと、準備の手間は
同じなのです。だからもっとたくさんの学生に登校してもらってもよいのよ。
対面再開当初は「奇数日は学籍番号が奇数の学生が、偶数日は偶数の学生が登校可」
ってしてましたけど、それ、数日で撤廃されました。みんな、来ていいよ!ってね。
でも登校者数は増えない。いいえ、少なくってもいいのです。皆さんのうち少数かも
しれませんが、登校したいと思う気持ちや権利を奪うわけにはいきません。
対面出席者ゼロ名という講義もたくさんあります。一方で、実験・実習については、
3割ほどの学生さんが出席しているような感じです。やっぱし実感したいもんね。
そんな感じで、明日からまた月曜日ですが、きっと明日もキャンパスはガラガラです。
後期はどうなるのだろうか? ただ、大学の側は準備と練習はできました。
秋以降も、緊急事態宣言がでなければ、対面+ネット配信の併用講義が続くと思います。
学生の皆様、どちらでもよいので、元気に学んでください。
それが当大学と教員の願いです。
以上、備忘録を兼ねて書いてみました。なにかの参考になれば幸いです。
はじめまして。この学生さんの寂しくやるせない気持ちには非常に同情している事を前提でコメントさせて頂きます。
芸術系の大学は入試前に大学生と同等かそれ以上の、かなり高度な実技を要求されます。
そのため、受験する大学系列の塾に通いその大学の芸風を身に着け、かつ、受験する前から大学と繋がっておく必要があるのです。
したがって、既に教授や講師の先生方とは顔見知りの状態です。
入学と同時に研究室へ強制的も振り分けられ、(1学年につき、3~4人×4学年=12~16人構成のチームになります。後から研究室変更は可能です)指導教官や先輩方と同門下生になりまので、「相談できるともだちや先輩もいない」という状態は無いので、いったいどこに進学されたのか、不思議で仕方ありません。もしかして、コロナ以前から大学が機能していないのではないか、と勘繰ってしまいます。
by 芸術系の大学生…でした。 (2020-07-19 19:43)
芸術系の大学生…でした。さん、コメントをありがとうございます。
実は私、芸術系大学に通っていた親族がいますが、その実情はよくは
知りませんでした。ありがとうございます。
芸術系でなくても、まさに、お話のとおりだと思います。
「大学であれをやりたい、これをやりたい」と考えている学生さん
ばかりでしょう。部活も、友達も、恋愛も、すべて延期。
なのでキャンパスを開放したところ、こんな感じです。これは失敗でも
悪いことではないと思っています。学生も教員も、手探りなのです。
誰かが言ってました。「新型コロナウイルスに対して普通の生活を
保とうと考えてはいけない。これはウイルスとの戦争だ」と。
戦時中に平安無事な暮らしをどう取り戻し、保てば良いのか?
日常がいかに重要で、かつ大変なことか、あらためて知る毎日です。
by MANTA (2020-07-20 11:52)
某白いお城の街の公立大学ですね。お疲れさまです。
漫画も読みました。そういう不満があるのも確かですね。・・ということで、御存知の通り対面可能にしたわけですが、学生はほとんど来ませんでしたね。ある程度予想はしていましたが、想像以上でした。人間、楽をするのと文句を言うのは得意だなと思います。
いろいろ非常に大変でしたが、学生にいろんな選択肢を示すことで不満の解消に努められたのは良かったのではないでしょうか。登校学生数を増やす施策も考えられていましたが、感染が広がっているので全部やめて、この低調のまま前期は終わろうという話になっているようです。某お城の街は理系キャンパスだからか統率が取れていて、結構しんどい話でも皆、なんだかんだ頑張ってくれるのも素晴らしいと思いました。文系学部だとこうはいかないでしょう。ともかくあと2週間頑張って乗り切りましょう。
by 匿名希望 (2020-07-21 00:45)
匿名希望さん、コメントありがとうございます。
おもいっきり関係者の方ですね。勝手にこんな記事を書いてしまい、恐縮です。ただ匿名希望さんがご指摘の通りだと思います。
「いろいろ非常に大変でしたが、学生にいろんな選択肢を示すことで不満の解消に努められたのは良かったのではないでしょうか」と私も思うわけで、そういう大学もあるのですよ、という事実は世の中にお伝えしたいと思った次第です。過疎ブログですので大げさですが。
ただ、私達(一部の教員)の意見をまったく聞かず、急にいろいろ決められるのは、もう勘弁です。6月末から今日まで、毎日なにをやっていたのか、いまひとつ記憶がありません。。。orz
by MANTA (2020-07-22 06:43)