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プレス発表:海底金属資源(2) [▼研究実況 Now!]

前回の続きです。
https://goto33.blog.ss-blog.jp/2019-11-03

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以下でもニュースとして掲載されました。ありがとうございます!
・海底金属資源を可視化
 (日刊産業新聞 2019/11/1)
 https://www.oudoubou.com/blog/175/
・海底の金属資源 地下分布を可視化
 (日本経済新聞 2019/11/4 朝刊)
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51702310R01C19A1TJM000/
・京都大学などが、海底資源の分布可視化に成功
 (J-GoodTech 2019/11/8)
 https://www.oudoubou.com/blog/175/
・科学新聞

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fig1.JPG
 海底熱水鉱床の形成メカニズムの模式図。ただし、具体的なメカニズムは不明
 でした。写真は海底熱水噴出孔、図は下記ページに基づいています。
 http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20120323/
 図をクリックすると大きくなります。

突然ですが、「金属が足りない!」ってこと、ご存知でしたか?
金属は私達の身の回りのあらゆるところで使われています。
スマホや家電製品などの電子機器や自動車。
船、工場、建築物。電力・インターネットのために必要な電線。
様々な用途で金属が使用されていますが、世界中の人々の生活が豊かになる
につれ、金属資源が足りなくなってきています。例えば日本の研究機関の研究
によりますと、2050 年までに多くの種類の金属資源が足らん!そうです。
●2050年までの金属資源需要予測
 https://www.nims.go.jp/news/press/2007/02/200702150/p200702150.pdf
 ※上記は2007年当時の見積もりでした。その後、リーマン・ショック
  (2008年)などがありましたが、金属消費量は上記の予測のように
  相変わらず右肩上がりです。例えば下記は銅の場合です。
●世界の銅地金消費量の推移
 https://www.nmm.jx-group.co.jp/industry/metal/

なぜ金属が足りないのでしょうか?
一言で言えば、地表付近にある金属資源を、私達人類は取り尽くしつつあるから
です(注1)。日本は世界有数の金属消費大国であって、金属から製品を作って
それを売って儲けている国ですが、そのほぼ100%を輸入に頼っています(注2)。
日本、どうなるの?? 世界、どうなるの?

そこで世界各国はいま、海底に注目しています。海底には未開発の金属資源が
眠っているのです。その中でも、銅・鉛・亜鉛・金・銀や、レアメタル(ゲルマ
ニウム・ガリウム)等を含む「海底熱水鉱床」は特に注目されています(注3)。
海底熱水鉱床は海底火山の近くに分布しています。海底から噴出する高温の地下水
(熱水)に含まれる金属成分が海底付近に沈殿してできたものです(上図)。

海底で熱水が噴出している地域(海底熱水地域)は世界各地に存在します。
日本は世界第6位の広さの海(領海・排他的経済水域)を持っていて、その中にも
数多くの海底熱水地域が認められています(注4)。海底熱水鉱床が新たな国産資源
として期待されているのです。これまでに沖縄の沖合や伊豆・小笠原海域で、
海底熱水鉱床が確認されています。その鉱物資源の量は、沖縄沖の海底熱水地域
1 箇所だけで数百万トン以上に及ぶと報告されています(注5)。

今日はここまで。次回に続く。

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注1:陸上でも、地下深くには まだまだ金属資源は眠ってはいます。
しかしそれを掘り起こすのは大変な作業です。危険も伴います。
2010年にチリで起きた銅鉱山での落盤事故(33名が地下600m付近で
閉じ込められましたが、無事に生還)は、そんな金属資源の減少を
背景にしているのです。
●チリ落盤事故救出
 http://www.asahi.com/special/rakuban/

注2:下記を参照下さい。
●世界の産業を支える鉱物資源について知ろう  
 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/anzenhosho/koubutsusigen.html
●金属鉱物資源の安定供給確保に向けた外交的取組
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000183397.pdf

注3:海底熱水鉱床やその他の海底資源の一覧(下記)
●海洋エネルギー・鉱物資源の開発
 https://www8.cao.go.jp/ocean/info/youth_plan/pdf/uminomirai_5.pdf 

注4:以前は日本近海の熱水鉱床の分布図があちこちにあったのですが、近年、
 政府系のWebから消えています。おそらくは諸外国への情報流出を懸念したため
 と思われます。
希少金属資源に関する我が国の採るべき方策(図表15を参照)
 また「海底熱水鉱床は国内に何箇所くらいあるの?」と聞かれることがあります。
 調査中なのでまだハッキリしませんが、下記のよれば「世界で約350箇所程度の
 徴候地が見つかっている」らしいです(P.10)。「350箇所」というのは比較的
 規模の大きな熱水鉱床(を伴う、あるいは伴うと期待される熱水噴出地域)の数
 と思われます。日本近海にはすでに数十箇所の徴候地があり、未発見のものや、
 小規模な熱水鉱床をあわせれば、日本近海だけで百箇所を軽く超えると思います。
●海底熱水鉱床開発計画総合評価報告書(平成30 年12 月,資源エネルギー庁)
 http://www.jogmec.go.jp/content/300359550.pdf

注5:上記のエネ庁報告書の中の「1-1 資源量評価」や、下記を御覧ください。
●沖縄伊是名海穴の海底熱水鉱床の資源量を740万トンと確認
 http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_06_000130.html

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