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下町ボブスレーにみる日本沈没 [▼科学ニュース New!]

冬季オリンピックも終わり、金・銀・銅メダルの感動も覚めやらぬ中、
テレビ東京「ガイアの夜明け」では、例の話題が取り上げられていた。
gaia.JPG
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber4/preview_20180227.html
(上図は番組HPをキャプチャ、下記説明も同HPより)
2018年2月27日 放送 第804回 「下町ボブスレーの"真実"」
『"氷上のF1"ともいわれるボブスレー。そのソリの開発には、フェラーリ、BMWなど、世界の名だたるメーカーも参戦。巨額の資金を投じ、しのぎを削っている。そこに、ニッポンの町工場が技術を結集して挑む「下町ボブスレー」。2014年のソチでは日本代表に採用されなかったものの、その後、ジャマイカ代表とともに2018年平昌オリンピックを目指すことに。しかし、開幕を目前に控え、事態は急変する。ジャマイカ代表が、「下町のソリを平昌オリンピックで使用しない」と通告してきたのだ。4年越しの夢は、実現目前でまさかの結末に...そこに至るまでに、一体何があったのか?10カ月にわたる独占密着から見えてきた、"知られざる真実"とは?』

番組をぼさーっと、なにげなく見ていた。その感想は以下のようだ。

東京の町工場が持てる技術を結集して完成したソリだが、なんと肝心の試合には
間に合わず、ジャマイカチームは別のソリを使ったそうな。輸送トラブルとのこと
だが、日本から海外の試合会場への輸送であり、諸トラブルが容易に想像できる。
もしも、これが打ち上げ間近のロケットや、完成間近の飛行機のパーツだったら?
下町工場はこのような失態を犯しただろうか? あるいはこの失態で以降の取引が
停止になったとしても仕方がないのではなかろうか?

下町ボブスレー 僕らのソリが五輪に挑む-大田区の町工場が夢中になった800日の記録- (B&Tブックス)

下町ボブスレー 僕らのソリが五輪に挑む-大田区の町工場が夢中になった800日の記録- (B&Tブックス)

  • 作者: 奥山 睦
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 2013/12/25
  • メディア: 単行本


番組はまだ続く。
  • そうなのだ。なぜ日本チームには採用されていないのだろう? なぜジャマイカチームなのだろうか?なぜオリンピックなのだろうか? 日本の国内大会では実績を積んでいないのか?
  • 新たな分野へ切り込むためには、ずば抜けたアイデアと、製品の素晴らしさの粘り強いアピール、そしてユーザーとの意思疎通が必要だ。番組では、下町ボブスレーのソリが軽くて操作性がよいと紹介されていたが、既存製品とどれほど違うのかは不明だった。また下町ボブスレーのスタッフがジャマイカチームの選手に「うちのボブスレー、どう改良すればよいでしょう?」と一所懸命聞いているシーンがあったが、ジャマイカチームのコーチから「選手に聞くな、メカニックに聞け」とたしなめられていた。そのとおりだ。普段、どんなコミュニケーションを図ってたのか?
  • ジャマイカチームは結局、ラトビアの専門会社(BTC)のソリでオリンピックに出場することに。番組では、下町ボブスレーのソリをジャマイカチームがテストした際に、走行路のコンディションが最悪だったと報じていた。下町ボブスレースタッフはなぜそんな状況でテストに応じるのか? なぜ平等なコンディションでBTCと下町のソリのテストを強く訴えなかったのか?どうも下町ボブスレー側には、ボブスレーの専門家は一人もいなかったように見受けられる。スポーツとかジャマイカとか、舐めてませんか?

…とまあ辛辣な感想ばかりで恐縮である。
・ボブスレーの専門家がいない。いなくてもよい。
・チームや選手のことを考えぬく必要はない
・いいものを作ればなんとかなる
・でっかいこと(オリンピック挑戦)はいいことだ
下町ボブスレーのこんな姿勢を番組から感じた。

ちなみに番組ではコーチが黒幕のようなストーリーであった。コーチがラトビア製のソリ
を優遇したというのだ。その決定的証拠はステッカーだそうだ。下町ボブスレーのソリが
届かなかったため(上述)、ジャマイカチームが急遽使用したラトビア製ソリには、
チームのステッカーがすでに貼られていたのである!…しかしラトビア製のソリは
コーチの私物だったそうだ。ステッカーくらい貼ってあるだろう。またこのコーチは
オリンピックを待たずに、チームを去っている。ジャマイカチームはコーチの私物だった
BTCソリを使えなくなった。この時点で下町ボブスレーにもチャンスはあったわけだが、
どうなったのか、番組ではこれも報じられずじまいである。
→ 平昌五輪、下町ボブスレー土壇場で不採用の真相
  http://diamond.jp/articles/-/159946

下町ボブスレーの挑戦 ジャマイカ代表とかなえる夢

下町ボブスレーの挑戦 ジャマイカ代表とかなえる夢

  • 作者: 細貝淳一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本


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どうもこの手の「挑戦しました」というストーリーが最近巷にあふれている。
たとえば下町人工衛星の「まいど1号」。こちらは実は下町製ではなかったそうだ。
●虚構の「まいど1号」が持ち上げられ、意義ある「はやぶさ2」がつぶされる現実
 http://tech.nikkeibp.co.jp/dm/article/COLUMN/20130104/258774/
また下町の技術で完成した深海探査機「江戸っ子1号」も注目されたが、下記タイトル
にある「資源探査」の能力は限りなくゼロであり、資源発見には役立たない。
●「江戸っ子1号」、8000メートルの深海へ 下町の中小が資源探査
 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD150LQ_V10C13A8000000/

下町ボブスレーも含め、技術や「ものづくり」ばかりが先行し、誰のため、何のため
という目線が欠落しているように思える。私は「ものづくり」という言葉は嫌いだ。
ものさえつくればよい=作ったものがどう使われ、どう役に立つのかを考えない、
つまり思考停止状態である。高度経済成長期の頃はそれでもよかった。
とにかく新製品、とにかく高性能。それで物が売れた。
グローバル化が今後もガンガン進むであろう現在は、そうはいかないのである。
しかし「ものづくり」を賞賛するニュース番組や書籍は多い。
思考停止の状態で、島国日本は今後も良好な船旅となるだろうか?
浮いたままで済めばよいが、ほころびが広がり沈没する危惧を、番組視聴後に感じた。

…とここまで書いたが、はてさて、大学や研究所での研究開発はどうだろうか?
「がんばってます」とは言うものの、どれくらい革新的で役に立つものなのか?
下町ボブスレーと似たり寄ったりではないか? と反省したりもした。

1973「日本沈没」完全資料集成

1973「日本沈没」完全資料集成

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2018/03/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



以上は私の番組への感想であって、事実はまた別かもしれない。また町工場の努力を笑い
たいわけでもない。ただし一つだけはっきりしていることがある。いろいろあったんだろう
けど、下町ボブスレーは「ジャマイカチームを訴える」なんて言わなくてよかったよね。
今後も挑戦を続ければよいだけなのに、なにかの欲目が見えてくる。
信頼も同情も戻らないだろうね。

おまけ:ガイアの夜明け 下町ボブスレー”不採用の真実”が明らかに... を見て
 (みんなの感想)
 https://togetter.com/li/1203741
 番組のスポンサー(伊藤忠)は下町ボブスレーのスポンサーでもあったらしいね。

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