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次の大地震はどこで起きるか? [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

昨日、福島沖でマグニチュード7.4の大地震が起きました。東北地方にお住まいの方は
もちろん、都内にお住まいの方も飛び起きたのではないでしょうか?
津波も発生しましたし、ドキリとしましたね(被害が少なくて、ホッとしました)。
●平成28年11月22日05時59分頃の福島県沖の地震(気象庁)
 http://www.jma.go.jp/jma/press/1611/22b/201611221100.html

また先週末は関西も揺れました。和歌山でマグニチュード5.4の地震が起きています。
●地震情報 2016年11月19日 11時48分頃発生 和歌山県南部 - 日本気象協会
 http://www.tenki.jp/bousai/earthquake/detail-20161119114809.html

日本中が揺れている昨今ですが、これらの地震はプレート境界では起きたものではなく、
将来のプレート境界での巨大地震(南海トラフ等)に直接影響を与えることはなさそうです。
type.JPG
 ※地震津波対策:地震について(国交省 四国地方整備局 那賀川事務所

地震にはいくつかタイプがあります。地震の起きた深さから判断すると、昨日の福島沖の
地震は上図の丸3に分類されます(海底で起きていますが、陸側プレートの内部で発生して
います)。一方、和歌山での地震は上図の丸2に分類されます。いずれも上図の丸1、つまり
プレート境界の地震ではなく、私が「巨大地震に直接影響を与えない」と書いた根拠です。

なので、地震が増えたからと言って、今日明日に巨大地震が起きるのでは!と
過剰に心配する必要はありません。もちろん下の噂なんて聞き流しでOKです(※)。
●【悲報】11月23日(魔の水曜日)に巨大地震発生で日本列島分断か!?
 「NZ→日本の法則」「スーパームーン」「予言」で検証!
 http://tocana.jp/2016/11/post_11569_entry.html
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とはいえ、巨大地震はそのうち必ず起きる。間違いない。いつ?どこで?
読者のみなさんが期待される精度では、そんなのワカリマセン(きっぱり)。
たまに「実は地震学者達は、いつ・どこで・どれくらいの地震が起きるか、おぼろげに
知っていて、でもパニックを避けるために黙っているのではないか?」と考えている
人がいますが、いまの科学レベルでは無理です(きっぱり2)。

では科学的に分かっている範囲で(正直に)これから来る巨大地震の話をしてみましょう。
下図を見て下さい。南海トラフの巨大地震(プレート境界地震)が起きる前に、日本列島内陸
での地震活動(陸地の浅い地震)が増えることが、歴史資料から明らかになっています。
20140730180648d0d.jpg
 ※福井の原発群と地震・断層(ブログ「原発ゼロと自然エネルギー」さんより)
 ※下記文献などで元資料や解説を見ることができます。
●尾池和夫, 西南日本の地震活動(地震活動分科会報告)
 http://www.jsce.or.jp/library/eq10/book/44492/0001.pdf
●尾池和夫, 京都と周辺地域の地震活動の特性 : 京都と周辺地域の有感地震データベース
 http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/36040
●隈元崇, 最近の西日本の地震活動の活発化―地震の危険度評価の現状と課題―
 http://www.giroj.or.jp/disclosure/risk/risk61-2.pdf

今年になって熊本と鳥取で大きい地震が起きているので、上図にはこの2つを追加せねば
なりません。ちなみに下記の記事では「熊本地震と南海トラフ地震は全く関係がない」と
名古屋大学のY先生はおっしゃってますが、上図を見て分かるように関係アリです。
●「熊本」は「南海トラフ」の引き金にはならない…専門家指摘も「沖縄」の地震活動には影響か
 http://www.sankei.com/life/news/160424/lif1604240009-n1.html

というわけで(よく言われることですが)今後は西日本で地震活動が高くなり、「その日」
すなわち南海トラフ巨大地震の発生日を迎えることになりそうです。しかし、何月何日に
地震が起きるかはもちろんのこと、何年後くらいにどの県で地震が起きるかは全く不明。
関東や東北・北海道などはどうなるかも歴史資料が少ないため不明。科学的と銘打っても
いても、歴史資料や地質資料から再来間隔・時期などを推測しているだけなのです。
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研究者は、この状況を指を加えてただ見ているわけではありません。例えば、下記のように
地震発生パターンの変化と南海トラフ巨大地震発生の関係を明らかにするために、
数値シミュレーションを用いた研究が進みつつあります。
●南海トラフ地震「発生が早くなる」可能性も 専門家が指摘
 https://dot.asahi.com/aera/2016042800283.html
●主にシミュレーションの知見に基づいた南海トラフの震源域で見られる現象とその評価
 「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」第2回
 http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/tyosabukai_wg/pdf/h281013shiryo01.pdf
●地震発生シミュレーション
 http://www.mri-jma.go.jp/Dep/st/member/fhirose/ja/simulation.html
●南海トラフ沿い巨大地震は予知できるか?-地震発生シミュレーションからの知見-
 http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H26/Happyoukai2014/02.pdf

南海トラフ巨大地震は、概ね100年~150年間隔で起きています。次回は2040年頃
とも言われていますが、それが2020年頃なのか、あるいは来年なのか? 明日なのか?
地道な地震・地殻変動などの観測と、地下構造調査、そしてシミュレーションで
迫りつつあるのが、地震予知科学の最前線であり、また精一杯でもあります。

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以上、本地震予知シリーズでの宿題=日本のどこで次の地震が起きそうか、について
簡単に答えてみました。ご参考になりましたら幸い。
 → http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2016-04-22
 → http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2016-10-22

(※)この記事ではニュージーランドと日本の地震活動を比較してますが、そもそも両地域ともに地震活動が高いので、発生期間が「たまたま」近い地震のペアを見つけるのは、そう難しくないでしょう。スーパームーンの話題についてはこちらを参照下さい。末尾の予言については、お話にならない。科学的に困難なことを占いに頼って、なんになる?そんなの、防災への準備じゃない。
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立花

比較的ここ最近でも大阪で4度ほど地震による揺れを感じました。
和歌山南方沖と熊本地震と鳥取中部の地震と和歌山の地震。
これまでに比べて体感的ではありますがちょっと多い感じはします。
ただしかしこれら一連の活動が南海トラフの巨大地震の50年ほど前から増え始めると言われる内陸の大地震に該当するかの判断はなかなか難しいのではないでしょうか。
まだまだ圧倒的に経験が不足しているように思えます。

再来間隔も100年~150年というのが主流なのかもしれませんけれども、150年~200年くらいではないかとか、あるいはもうすこし違った見地からの考え方なども。
たとえばこのような論文もありました。
南海トラフ巨大地震 -その破壊の様態とシリーズについての新たな考え-
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/seno/Papers/jisin.nankai.eq.pdf

大阪住みなので、上町断層の地震も気になるところです。
1か月後なのか、10年後なのか、はたまた500年後なのか、、、

by 立花 (2016-11-24 01:42) 

MANTA

立花様、ご紹介ありがとうございます。いかにも瀬野先生らしい(?)文章、
拝読させていただきました。特に「追記」の部分は、いまだ未解明ですが、
重要な示唆かと思います。すなわち、地震発生と断層の特性はそう単純では
ないということです。

その点から考えれば、南海トラフ巨大地震の再来期間は100~150年よりも
もっと長いかもしれません。「しかし、2040年頃までに起きる可能性があるの
だから、気をつけるに越したことはない」とは、私は思いません。
再来周期は(規則性が結構崩れていたにしても)概ねどれくらいなのか?
その周期を決める要因は何なのか?
次の南海トラフの「その日」を知るにはどうすればよいのか?
圧倒的に少ない「経験」は、コンピュータシミュレーションなどで補助できるのか?
などの議論を閉じることなく続けることが、本当の防災になると私は思います。

上町断層については下記が参考になります。最新の資料です。
●日本の地震活動(地震調査研究推進本部)
 http://www.jishin.go.jp/resource/seismicity_japan/
 ※2014年末までの情報を反映した改訂版v2.01「第7章近畿地方」
  へのリンクをクリック。

大阪の場合、上町断層だけでなく、中央構造線も注意が必要ですし、
南海トラフ地震のときは揺れだけでなく、津波(梅田やなんばまで到達、地下街水没)にも気をつけないといけません。
●「上町断層帯」「金剛山地東縁」… 29断層帯が危険「Sランク」
 http://www.sankei.com/west/news/160815/wst1608150085-n1.html


by MANTA (2016-11-26 06:44) 

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