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科学からは程遠い「地震予知」(地震科学探査機構) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

人々に期待される地震予知。学者たちが期待を与え始めてから、相当の時間が
経ったにもかかわらず、地震の予知・予測はちっとも実現しない。
「こんなことなら、地震・地殻変動観測に予算をつけなくてもよいのではないか?」
だとか、「地震予知ムラ」などと揶揄される昨今である。その反面、次のような
週刊誌記事が世間の注目をしばしば集めている(特に3月11日前後には)。

●地震予測 次々と的中! 村井名誉教授「次に起こるのはココ」(2015/3/4)
 http://dot.asahi.com/wa/2015030300101.html
 (以下引用)
 "2月6日の徳島県南部の地震、同17日の東北地震などを次々に的中させた
 東大名誉教授の村井俊治氏(中略) 国際写真測量・リモートセンシング学会
 会長を務め、「測量学の世界的権威」である村井氏の地震予測法は、測量学
 を応用したものだ。”

●的中続出MEGA地震予測 今年は「首都圏東海ゾーン」が要警戒(2016/1/8)
 http://www.news-postseven.com/archives/20160108_374166.html
 (以下引用)
 "測量学の世界的権威である村井俊治・東大名誉教授の「MEGA地震予測」は、
 抜群の的中率で本誌読者をたびたび驚かせてきた。GPSデータに基づく予測法は、
 今も日々精度を高めている"

「次々当てる地震予知」は、村井氏が顧問を務める民間会社JESEA(地震科学探査機構)
によるものだ。では、村井氏らは今回の2016年熊本地震の予知に成功したのか?

村井氏のツィッターによれば、、、
村井俊治 @sh1939murai 今年の正月(1月5日発売)に出た週刊ポストの迎春合併特大号に掲載されたJESEAの「異常変動全国MAP'16」では九州南部警戒ゾーンを地図で示し「熊本・鹿児島に顕著な沈降現象」と言う見出しで警戒を呼び掛けていました。週刊誌が出てから4か月半後に熊本地震が起きたことになります。 5:25 - 2016年4月16日

村井俊治 @sh1939murai 熊本地震および今後の地震発生の可能性について週刊ポストの取材を受けました。来週の月曜日発売の週刊ポストに掲載されます。前に述べましたように正月号では熊本の地域を春まで要注意としましたが、メルマガでは4月に取り下げました。その経緯が書かれています。ご興味のある方は購読してください。 10:19 - 2016年4月22日

あたかも地震予知に成功したかのような文言が並ぶ。
では実際にどうであったかというと、大外れである。

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例えば、熊本地震発生直前の同氏ら(JESEA)の地震予測は以下のようであった。
●MEGA地震予測 2016年4月6日発行
 http://ch.nicovideo.jp/jesea/blomaga/ar1003813
 (以下引用)
 2016年4月6日発行(Vol.16,No.14)
 地震予測サマリ-
 〇警戒レベルアップ地域
  南西諸島(レベル1→2)
  北海道道南・青森県(レベル1新規)
 〇警戒レベルダウン地域
  北信越地方・岐阜県(レベル4→3)
  北海道北部周辺(レベル3→削除)
  鹿児島県・熊本県・宮崎県周辺(レベル2→削除)

どうやら、4/14の時点では、日本全国、殆どと言っていいほどの地域に地震警報を出して
いたにも関わらず、熊本・宮崎・大分など九州地方の警報は解除されていたらしい。
参考:ブログ「横浜地球物理学研究所」さんより
●村井俊治・東大名誉教授は、2016年熊本地震(最大震度7)を、全く予測できませんでした
 http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/a525982aff0851971b3774b45b7f2ce6
 ※同記事の数々のコメントも、とても参考になります。

村井氏もツィッターで予知ハズレを明言している。
(M6.5地震の発生後、M7.3地震の発生前)
村井俊治 @sh1939murai 熊本地震で亡くなられた方に哀悼の意を表します。地震予測は難しいですね。数か月前からメルマガで鹿児島・熊本・宮崎周辺に「3月末頃まで」ということで要注意を呼びかけていました。4月になったので4月13日に取り下げたところ昨日熊本で震度7の大きな地震が起きました。反省しています。 8:51 - 2016年4月15日

天気予報と同じで、予報というのはあたらないこともある。まして地震予知だ。
外れても仕方ない。むしろ近かった。今後の検討に期待したい、などと言う意見も
あるかと思うが、私はこれに全く同意できない。


地震は必ず予測できる! (集英社新書)

地震は必ず予測できる! (集英社新書)

  • 作者: 村井 俊治
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/01/16
  • メディア: 新書


 村井氏の著書。
 カスタマーレビューが興味深い。

私の頭にはある疑問が湧いてくる。4/14の最初の地震(M6.5)の発生後、
村井氏はなぜ次のようにつぶやかなかったのだろうか?
「熊本県は少し前まで警報を出していましたが、今回の地震を予測できず
反省しています。ただし四国地方などの警報は続いていますので、
これらの地域での地震活動に注意をしてください」


4/14の地震の直後(4/15時点)、彼はそのような警告を発さなかった。この時、気象庁は
「余震に注意してほしい」とマスコミに言っており、「さらなる大地震が危惧される」
とは言わなかった。村井氏のつぶやきは内容としては気象庁の発表と同じであった。

科学者としての私は、これに強い違和感を覚える。
もしもある方が、地震予知科学に情熱を傾けていて、地震とはどのような現象かを
理解していて、熊本などに直前まで地震警報を出しており、四国などに警報を出し続け
ている状況であるにもかかわらず、「次なる大地震」についてなんのコメントも
出さないのはなぜなんだろう? (反省の弁はつぶやくのに)

これでは村井氏はただ単に「当たった・外れた」を気にしているだけにみえる。
あるいは、独自の地震予測法に科学的な自信をお持ちではないのだろうか?

・・・長くなったので、次回へ続きます。
→ http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23-1
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伊牟田勝美

初めてコメントします。
伊牟田勝美です。

本来は、地球温暖化に備える食糧自給率向上を掲げたブログを運営していますが、科学全般に興味があり、地震予知にも首を突っ込んでいます。

村井氏の地震予知については、私も科学的に問題だらけと考えています。
また、理科離れ著しいメディアが、真偽も確認せずに流したため、ドコモまで巻き込んでしまいました。
せめて、ドコモが提携を解除してくれれば、村井氏の地震予知の問題が世間にも理解させるのではと、思っています。

「次回」を待ちきれずにコメントを書いてしまった事をお許しください。
by 伊牟田勝美 (2016-05-09 22:32) 

MANTA

伊牟田さん、コメントありがとうございます。

>ドコモが提携を解除してくれれば、(以下略)
一部の地震学者などが個人的にドコモへコンタクトを取っているようですが、
ドコモからは門前払いを受けている様子です。また地震学会はこの件に関して
関知しない姿勢をみせています。

熊本地震で何がなされたのか、こんな辺境(?)のブログではありますが
備忘録くらいにはなろうかと思い、記事をUpした次第です。
今後ともよろしくお願いいたします。  



by MANTA (2016-05-11 06:58) 

坂井

お気に入りに登録していた14話の記事。
いま、拝見しました。
マグマ、マントルのお話とてもわかりやすいです。
もしかしたら、参考になることもあるかもしれません。ご紹介するブログ、書籍をぜひ情報の一つとしてください。
森羅万象10巻まででてます。
伊勢白山道
私には難しい記事もありますが、専門のかたなら参考になることもあるかと思います。
by 坂井 (2016-05-18 16:12) 

MANTA

>気に入りに登録していた14話の記事。
>いま、拝見しました。
坂井さん、ありがとうございます。Web科学バーのことでしょうか?
http://kagakubar.com/earth/14.html
17話以降が止まっていますが、近いうちに続きがアップされ始めますので、
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
by MANTA (2016-05-23 12:50) 

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