SSブログ

海からの大量のCO2放出は無い(2) [ 地球温暖化を学ぼう]

前回の続きだ。下記の図1をみると、海から大気へ放出される二酸化炭素(CO2)に
比べると、人間が出すCO2なんて微々たるものだ、CO2増加は自然現象であって人間の
せいではないのではないか?なんて思えてくる。はたしてそれは正しいか?というお話。

キャプチャ.JPG
図1. 炭素循環の模式図(1990年代) (気象庁HPより)

じゃあ、この図の原図を確かめてみようというわけで、なんとか大元となる図が
見つかった。というか、廻り回ってたどり着いたのはIPCC第3次報告書だった。
 http://www.grida.no/climate/ipcc_tar/wg1/pdf/TAR-03.pdf
 ※Figure 3.1。下記はその一部。

 fig1.JPG
 fig2.JPG
図2. a) CO2の自然循環、b) 人為的なCO2放出

これでハッキリした。
気象庁の模式図(図1)にあるような、900億トン以上のCO2の海から大気への
放出は図2には描かれていない。その代わりに、約900億トン(90Gt)の「平衡状態」
が描かれている。図2aの右側、海と大気を繋ぐ「両矢印」である。
(※トン数=図1と同じく炭素重量に換算)。

平衡状態とは、ある変化と別の変化が釣り合って、外から見ると何も変化が起きていない
ように見える状態を指す。つまり水の表面が波一つなく鏡のように滑らかに見えたとしても
そこでは分子のやりとりが常に行われているのだ(そして出入りは釣り合っている)。
最初に紹介した図1の、海から大気あるいは大気から海への矢印(赤や黒色)は
足し引きするとほぼゼロであり、概ね釣り合っている。これも平衡状態を示していたのだ。
詳しくは下記をご覧頂きたい。
●海と大気による二酸化炭素の交換(ココが知りたい温暖化:国立環境研究所)
 http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/3/3-1/qa_3-1-j.html
●海洋物理学 第4章 海面での気体交換(天魚のウェブサイト)
 http://www.geocities.jp/amenouoiwana/oceanography.html

----
ただし完全に釣り合っているわけではない。大気中のCO2も海洋中のCO2も刻々と変化
する。なので海か大気のどちらかへ過剰にCO2が移動しているケースは無論ありうる。
ではどちらに移動しているのか? 前回の温暖化連載(下記)でその計算例を紹介した。
計算結果によれば、大気から海へ年間約21億トン(炭素重量に換算)のCO2移動が
明らかとなった(なお、この例では「海からの放出もありえる」として計算している)。
●CO2はどこから来たか?CO2に聞けば良い 
 http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2014-03-13

「そりゃおかしいぞ! 図2は古いし間違いじゃないか?図1の方が正しくて、CO2は
海から大量に放出されている!」という人、図2がなければ図1もないことをお忘れなく。

----
私見だが、IPCC第4次報告書には炭素循環を1枚にまとめた図1が採用された。シンプル・
イズ・ベストのつもりだったのかもしれないが、かえって一般大衆の誤解を招いたようだ。
そして現在はどうか? 実は気象庁のHPでは図1はもはや掲載されてはいない。今年4月
くらいから次のような図に差し替わっている(図3:数字の単位は億トン、炭素重量に換算)。
これは最新のIPCC第5次報告書からの引用であり、第3次報告書のもの(上記の図2b)に
似ている。誤解を生む図1のスタイルから、昔の図2のスタイルへ戻したようにも思える。

●海洋の炭素循環と炭素収支(気象庁)
 http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/co2/knowledge/carbon_cycle.html
 キャプチャ.JPG
図3. 人為起源炭素収支の模式図(2000年代)(以下は気象庁HPより)
IPCC(2013)をもとに作成。各数値は炭素重量に換算したもので、黒の矢印及び数値は産業革命前の状態を、赤の矢印及び数値は産業活動に伴い変化した量を表しています。2000~2009年の平均値を1年あたりの値で表しています。

つまりは、海からのCO2大量放出などなく、むしろ海がCO2を大量に吸収しているらしい。
その詳細プロセスはまだ研究中であり、いまこの瞬間も多くの科学者が「温暖化は人類に
とって深刻な問題かどうか?」「どうすれば回避できるか?」を一生懸命に考えている。
地球温暖化問題は、科学的にすべて解き明かされたわけではない。にもかかわらず彼らの
努力をねじ曲げて、勝手気ままな温暖化懐疑論へ結びつけたって、何の意義も意味もない。
温暖化は私の専門ではないが、科学を愚弄する行為は許しがたい。

さて次回は、CO2濃度の年周変化とそのルーツを考えてみよう。

この毎年の上がったり下がったりのパターンはなぜ生まれるのか?

注意:温暖化関係の記事に関しましては、コメント・トラックバック(TB)を承認制と致しました。一部の方のために、多くの読者の方にご不便をおかけいたします。また下記のようなコメント・TBは受け付けません。 i) 記事に関連しない内容の場合、ii) 科学的議論を行う姿勢がない場合(例:反論に資するソースがない、言葉遣いが酷い)。またSo-net Blogでは承認待ちコメント・TBが管理ページトップに表示されないため、お返事が遅くなる場合があります。予めご了承下さい。
nice!(9)  コメント(23)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 9

コメント 23

MANTA

どうも「平衡」や「正味」の意味が分かっていないのに、上記の記事を批判
している人がいるらしい。上記のリンク先などを少しは読んだらどうだろうか?
また、当ブログはCO2変化と気温変化の相互の因果関係を「無視している」とも
批判されているようだ。実際にはもう何度も書いてる。

科学を理解したフリをして持論を振りまいたり、批判や質問に対して「既出だよ」
と言われることは、普通は恥だから控えるのだが、そんなことには気が付かず
「オレ、温暖化懐疑派の論客!」と思い込む人もいる。
まさにこういう「論客」が科学をダメにしている。(背景には、こんな意見を
本当と信じ込む「市民」の存在もある)。だからこんな余分な補足を書かねば
ならない。困ったもんだ。
※これは原発批判にもつながる傾向である。興味深いので別に記事を書こう。

Twitterでぶつぶつとつぶやく暇があるのなら、ここへコメントを寄せられたら
どうであろうか? 貴殿が、いわゆる無知な「論客」でないのなら、

by MANTA (2014-05-25 10:44) 

mushi

お疲れさまです、としか言い様がないですね・・・。
平衡の意味を理解していない(あるいはわざと曲解している)のは、私のブログに対するコメントと同じです。
by mushi (2014-05-26 00:12) 

MANTA

mushiさん、コメントありがとうございます。
まずは同氏からのコメントを待ちたいと思います。彼のブログの解説では
全く的を射ていませんので。どうぞよろしくお願いいたします。
by MANTA (2014-05-26 07:43) 

MANTA

本記事を批判するトラックバックをichijinさんから頂きました。
ichijin.seesaa.net/article/397791931.html

以下のようにお返事いたします(『』は上記ページより引用)。
・上記の図2は『「平衡状態」が描かれているものでは全くない』と
 指摘されていますが、間違っています。原資料を読むべきでしょう。
 http://www.grida.no/climate/ipcc_tar/wg1/pdf/TAR-03.pdf
 Figure 3.1のキャプションによれば、"これらの矢印はCO2の釣り合い
 を示している。海については物理的な大気-海洋間での交換(physical
 air-sea exchange)であり、毎年概ね釣り合っている”だそうです。
 さらに3.2.3の2段落目(p.197)では"大気と海面での交換は、そこを
 横切る分子拡散による"と明記されています。つまり図2は物理的な
 "交換"あるいは"平衡状態"を描いています。
・『海によるCO2の放出・吸収のいずれもが厳然と存在している』ことは
 当然です。人為的影響がない状態で釣り合っているかどうかです。
 ところで先のFigure 3.1のキャプションでは「釣り合っていない部分」
 についても言及があり、"複数年~複数世紀に渡るCO2濃度変化に影響を
 与えうる"そうです(与えるではなく、与えうる)。ではそれは具体的に
 どの程度の大きさかというと、Francey et al. (Nature, 1995)の式1が
 そうであるように、大気中のCO2濃度変化において"交換"の項は
 無視される(できる)のが通例です。
・ご反論がお有りでしたら、上記の図2の両矢印が"交換"や"平衡状態"を
 示していないという文献をご紹介ください。ichijinさんのブログの
 文献はいずれも"交換"または"平衡"を示すものです。
・ちなみにFrancey et al. (Nature, 1995)では、"交換"における
 「disequilibrium term(※)」についての記述があります。ただし
 これは炭素同位体比についてであり(式2)、大気濃度そのものには
 影響を与えないと考えられています。

※注:equilibrium=平衡なので、上の記事中では「平衡状態」と書いた。しかし厳密には、i) 物質の濃度変化も物質輸送もない状態を平衡状態といい、ii) 物質の生成過程と分解過程の速度が等しく物質の濃度変化がない状態を動的平衡状態という。よって上記は動的平衡状態と言い換えたほうが正確である。なお分野や視点によっては、定常状態と呼ばれる場合もある。
by MANTA (2014-06-27 19:17) 

MANTA

追記:上記の反論に対する反論がブログに追記されたようです。しかし、
残念ながら、同氏は科学的な議論の仕方をご存じないようです。

(以下はichijin.seesaa.net/article/397791931.html#comment より)
>「3.2.3の2段落目(p.197)」との箇所も、海-大気間のCO2交換過程
>そのものが主として何によってなされているかを説明しているだけであり
それを理解することが大事なのですが、分子拡散を理解できないようですね。

>問題にしているのは「分子拡散」そのものではなく、それによってなされ
>る海-大気間のCO2交換過程が「平衡状態にあるのかないのか」
この一文に、氏が分子拡散を全く理解できていないことが示されていますね。
またFrancey et al. (Nature, 1995)などで、大気中のCO2濃度変化
において"交換"の項が無視されている例を紹介しましたが、それに対する
科学的な反論もありません。

>この手の文献やら論文やらを示せとの要求は、もはや逃げ口上の類。
科学では「証拠」をベースに議論します。それを示さない議論はもはや疑似
科学、あるいは妄想です。

>そうした証拠などに対する解釈・理解が珍妙であると指摘しているのである。
ですので指摘に資する資料を持ってこられるとよいでしょう。ichijin氏の
資料はいずれも"交換"または"平衡"を示すものです。

それでも同氏のブログを読んで、「科学的なブログだ」と思う輩が多いよう
です。科学技術教育の重要性をあらためて感じます。
by MANTA (2014-07-01 19:06) 

伊牟田勝美

地球温暖化が問題視されるようになって何年経ったのでしょうか。
気象庁のデータベースで調べてみましたが、潮岬の気温は年平均で0.01℃のペースで上昇していました。都市化などの影響を受けにくい潮岬ですので、温暖化していることは間違いないと思っています。
ですが、本当の問題は、大気中に排出されるCO2が多すぎることではないでしょうか。
地球温暖化は、CO2の増加による二次的な問題です。
CO2増加は、海洋の酸性化や深海の酸欠を引き起こすそうです。樹木の低栄養化にも関係するため、草食動物への影響も懸念されます。
仮に、地球が寒冷化しつつあるとしても、CO2排出量を減らさなければなりません。

世の中には、地球温暖化懐疑論者がおられますが、CO2増加の問題を無視した論法はどうかと思っています。
by 伊牟田勝美 (2016-05-11 23:00) 

MANTA

伊牟田勝美さん、お返事が遅くなりました。

>世の中には、地球温暖化懐疑論者がおられますが、CO2増加の問題を
>無視した論法はどうかと思っています。
ところが、世の中には「CO2増加は温暖化の要因ではない!」と信じこみ、
そのための証拠をたくさん並べ(しかし誤読が多く、証拠になっていない:
上記のichijin氏はその典型例)、「ほらみろ、CO2増加なんて関係ないんだ」
と主張をする一方で、科学的な議論には決して踏み込まない、そんな輩が
多いことも事実です。

そして、それらの科学的ではない情報をみて、「温暖化ってやっぱり嘘だった
んだ」と信じこむ一般の市民や大学生が如何に多いか。
科学教育がこの国には圧倒的に不足しているのです。
科学立国など、欧米と比べたら、まだまだ夢の向こうの向こうであることを
この国の人達はまだ理解できていないかもしれません。
by MANTA (2016-05-23 12:57) 

通りすがり

地球温暖化について関心があり、ブログ記事拝見させていただきました。どの記事も、科学的な裏付けと説得力をもって解説されていて感心しました。
しかし、肝心のCO2の温室効果については、似非科学から引用したもので、失笑です。
個々の解説に「真」があっても、大前提としていることが間違っています。
もっと勉強してから記事を書いて下さい。
by 通りすがり (2020-10-26 11:39) 

通りすがり

気球温暖化に関して関心があり、記事を拝読しました。
どれも、科学的な考察と説得力ある記事で感心しました。
しかし、大前提となるCO2の温室効果について、科学的な根拠が示されていません。
改めて、解説を望みます。
都合の悪いコメントは削除ですか??
by 通りすがり (2020-10-26 12:08) 

MANTA

>都合の悪いコメントは削除ですか??
いいえ、そういうコメントは削除したことはありません。

私が削除せざるを得ないコメントは、科学的な議論を無視して、ご自身の(わけのわからない)主張を繰り返される場合のみです。このコメント欄ではなくて、ご自身のブログなどで主張して下さい、と繰り返し申し上げてもお聞き頂けない場合はやむを得ません。

CO2の温室効果について、上記のどこが似非科学からの引用か、ご明示頂けますと助かります。IPCCの報告書からですけれど。

一方で、CO2が現在の温暖化の原因とする科学的根拠は、数値シミュレーションのみです。それはそれで弱いですが、地球を使った実験などはそうそうはできませんから、やむを得ないでしょうね。
by MANTA (2020-10-27 22:16) 

MORITA

 上記の通りすがりさんがいいたいのは、以下のことでは!?
 上記の記事は「CO2の増減や循環」について書いてあるだけで、「大気中のCO2濃度と気温との関係」の考察が不十分。温暖化について論ずるなら、「大気中のCO2濃度と気温との関係」も不可欠。
 あと、温暖化は、原因だけでなく結果でも意見が分かれているね。特に次の部分。「温暖化→砂漠化?それとも緑化?」
by MORITA (2020-10-28 19:10) 

通りすがり

ANTAさん、返信ありがとうございます。目に止めて頂きたいとの思いで、無礼な表現になったことお詫びしておきます。いろいろ知識をお持ちの方に分析してもらえれば、ICPP評価報告書の理解が深まり疑問点(=懐疑の念)が解消できるか(又は反対?)と思った次第です。いろいろ確認したい点があったのですが、過去記事を拝読して納得度が上がった点もあり、今回は名古屋大学大学院のアイスコアの研究(=古気候)について取り上げます。

HP:http://has.env.nagoya-u.ac.jp/~uemura/icecore.html
論文:https://www.jrias.or.jp/books/pdf/201904_TRACER_UEMURA.pdf
ポイント
・CO2濃度は気温よりも海水温との相関が高い(新たな知見?)
・CO2濃度は気温より遅効性がある(長い時間スケールにおいて)
・CO2濃度と気温は温暖期から寒冷期に移行する時期に不一致が多くなる
CO2の遅効性とおよび気温との相関が薄れる時期があることを考慮すると、CO2が温度変化の駆動因子になるとは考えられないとの思いが強くなります。
MANTAさんも、ICPPや気象庁の説明図を引用し、海洋のCO2吸収・放出は短期的なもので長期的には平衡状態との見方をしていますが、当論文では、『この結果は南大洋の海水温と大気CO2濃度の密接な関係を示しており、海水温に関連する海洋環境の変動が大気CO2濃度を調整する重要な役割を持っているという仮説を支持する証拠といえる』としています。
将来の大気中CO2濃度予測方法に、新たな知見を提供し得るものになるのではないでしょうか。

by 通りすがり (2020-10-28 19:46) 

通りすがり

MANTAさん、続いてコメントする。
私は、専門知識がある訳でなく、平均的な国民の一人で、気候変動が国際政治・経済で取り上げられていることに関心を寄せている。そんな前提でコメントを受け止めて欲しい。
尚、極域のアイスコア研究の考察が中心で、査読レベルがどうかといった権威主義的なものは排除、内容はすべて真を前提。
<ICPP仮説の妥当性>
『直近100年の急激な温度上昇(概算1度)は人為的CO2意外に原因は考えれれない(確信度95%??)』
古気候学者の多くはこの仮説自体を疑っているので、今回は、北極のアイスコアの考察。
論文より抜粋
■最終間氷期中盤頃の氷から,当時は現在よりも気温が5℃程度も高かったことが推定され,これほど高温でもグリーンランド氷床の氷が消失しなかったことが明らかになった。
■グリーンランドの降水の起源となる海域の海水温が1~3年という短期間で2~4度も低下した。その後,グリーンランドの気温が,最初の温暖化の際にはわずか3年で,後の温暖化の際には50~60年で10℃も上昇した。これほど急激な気候変動は,NGRIPコアの分析結果が出る前は予想もしていなかったものである。
極域と全球レベルは同じとは言えないものの、極域のこの変動を見ると、100年に1度が急激で人為的なものと言えるか多いに疑問。
尚、懐疑論者の槌田氏は、大気汚染(CO2以外の人的要因)からの分析も必要と主張するも蹴られた経緯があるが、北極圏のブラックカーボンの影響も研究対象になってきている。ブラックカーボンはエアロゾルとされ、正負の強制力2面性を持つので今後の分析が必要であるが、急激な温度上昇の原因となっていることが容易に想像できる。
以上から、ICPP仮説自体に疑問を感じる次第。

論拠の資料
『北極域のアイスコアによる古環境研究:歴史と今後の展望』
 国立極地研究所 総合研究大学院大学 教授 東 久美子氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikyukagaku/53/4/53_133/_pdf
『北極に運ばれるブラックカーボンはどこからくる?』
 国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20170925/20170925.html

CO2に関する考察は別途予定。
by 通りすがり (2020-10-30 18:06) 

MANTA

なるほど、アルベドの変化ですね!
地球温暖化は(ご存知でしょうけれども)地中への太陽光の入射量のわずかな変化(たかだか1%程度)で引き起こされます。ブラックカーボンも影響は考えないといけないかもしれませんね。

そしてご紹介くださった資料にあるように、IPCCもブラックカーボンの影響を考慮し始めています。今後の研究でいろいろ分かってくると思います。

一方で、私は地球温暖化における「CO2主犯説」はこの程度では揺るがないと思います。
・地球の温暖化を促進する要因が、CO2「だけ」ではないことは、
 このブログの他記事に書いたとおりです。ですので過去の急激
 な気温変化はCO2以外が要因だったかもしれませんね。
・だからといって、いまの地球温暖化がCO2ではないといえません。
・いまの地球温暖化の主要因がCO2がだとされる論拠はコンピュータ
 シミュレーションです。CO2の温室効果の原理は物理学的には
 シンプルです。このシンプルな温室効果を組み入れた地球のシミュ
 レーションにより、現在の地球全体の温暖化傾向は概ね説明できて
 います。論拠が弱いですが、地球を使った実験が難しいのでやむを
 得ません。
・これにブラックカーボンが加わると温暖化の数値計算結果は、
 観測値をオーバーしてしまいます。
・またご紹介いただいた、東(2019)のFig.8をみると、氷床コアから
 復元されたブラックカーボンの量は1910年頃にピークを迎えており
 以後は減少していますが、地球温暖化はむしろ20世紀なかばから
 加速していて、いまも止まっていません。

是非一度、ゆっくりとIPCCの報告書を読まれることをおすすめします。
完全ではないですが、かなりいろいろな要素を考慮していることが
おわかりになるかと思います。

…ところで、槌田某の主張は科学の皮を被った妄想のたぐいです。そして気象学会を訴えて、敗訴しています。参考にされるのであれば同じ懐疑論者でも、もっとまともな方の論説を引用されることをお薦めします。

また、長いコメントを頂きましたが、「この記事」の本旨とは全く関係はないですね。ここはホワイトボードではありません。今後は、ぜひご自身のホームページでお書き下さい。リンクの紹介は大歓迎です。
by MANTA (2020-10-30 20:19) 

通りすがり

MANTAさん、失礼しました。確かにここは自説を長々述べる場ではありませんね。
・CO2は温度変化の駆動因子にはなり得ない
・CO2の温室効果は限定的
 →CO2の赤外線吸収帯域
 →太陽光スペクトル分布(大気の窓)
 →大気通過後(=地表から)の放射スペクトル分布
よってICPPは似非科学  以上
by 通りすがり (2020-10-31 06:16) 

MANTA

>CO2の赤外線吸収帯域
>太陽光スペクトル分布(大気の窓)

もうちょっと温暖化の基礎の教科書とか、対流圏と成層圏の違いとか、
IPCCの報告書についてをちゃんと読まれることをおすすめしますよ。

参考資料:
気候変動の複雑な仕組みが見えてきた?より詳細な温暖化の解明に挑む?
https://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201704/316004.html
地球温暖化と温室効果気体
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/28/5/28_270/_pdf

by MANTA (2020-10-31 23:04) 

通りすがり

MANTAさん、返信ありがとうございます。
知識の豊富な方に、検証の目を持って頂けるのは有意と感じます。
当スレッドのコメント欄が長くなって恐縮です。
懐疑論者の近藤氏の資料に地球環境センターは間違った解説をしているとのコメントがあり、調べてみました。
近藤氏の解説
https://www.env01.net/main_subjects/global_warming/contents/s001/kondoh10.pdf
CO2温室効果の解説 地環研江守氏
http://cger.nies.go.jp/ja/library/qa/4/4-1/qa_4-1-j.html
wikipediaの「暴走温室効果」金星の解説
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%B4%E8%B5%B0%E6%B8%A9%E5%AE%A4%E5%8A%B9%E6%9E%9C
地環研の解説は稚拙で暴論のように思えます。
『ICPP仮説は正しい』を証明する方向にバイアスがかかっているようで、他の解説も嘘っぽく思えてきます。
名古屋大学の講演で使われた資料では、「今後はCO2以外の温室効果ガスの研究が重要」と、CO2の温室効果が飽和(平衡)状態であるかのような記述もありました。
(この資料は再検索中)
以上 
by 通りすがり (2020-11-01 09:31) 

MANTA

そうとう昔に読みました。 > 近藤氏の解説
槌田氏・近藤氏、ともに2008年~2010年頃、「温暖化はなかった」論の代表者として、ネットではモテはやされました。
嘗て、このブログのコメント欄に、近藤某に感化された方がたくさんこられましたっけ。懐かしいですね。

私の記憶が正しければ、近藤氏は、槌田氏と同じく疑似科学者です。
微分という簡単な数学的概念を(わざと?)理解せずに
「気温上昇がCO2上昇を引き起こした」と主張しましたが、
裁判で敗訴していたかと思います。
参考資料:
http://taste.sakura.ne.jp/static/farm/science/global_warming_tsuchida.html

ネットには有象無象の情報が転がっていますが、ちゃんとした情報を得て、疑似科学に引っかからないことが肝要です。近藤某のような、査読(他の学者に寄るチェック)を受けていない妄想文ではなくて、査読を受けた論文をお読みになることをおすすめします。
by MANTA (2020-11-01 09:51) 

MANTA

追伸:
この話はもうこれくらいで良いかと思います。
IPCCの言を信じる人は、信じるに足る証拠をさらに集めて文章化。
一方、IPCCを信じない人は、反証をあつめて文章化。
科学は宗教のようなものです。ある仮説を信じる・信じないは人の自由です。なので水掛け論になります。

他方、科学の重要な作法として「手法や理論に誤りがないこと」「検証可能であること」などをあげることができます。疑似科学はこれらを守ることはなく、自らの(検証されてない・検証できない)理論を振りかざし、あるいは手法の誤りを認めることはありません。結果、学術的な論文として世に出ることはない。反証が明瞭であれば、論文になるでしょう。

インターネットの世の中になり、そのような疑似科学者も、非科学的な持論をばらまけるようになりました。フェイクニュースですね。疑似科学は、専門用語や数式やグラフなどが並ぶ込み入った文面を駆使して、さも科学的に見せかけているので、多くの人が騙されます。

科学が常に正しいと、主張しているわけではありません。人間は思い込みが強い生物です。科学的手続きを踏んだとしても、多くの科学者が同時に誤った方向へ向かうことは、これまでもありました。なので反証は大事ですし、科学はそれを受け入れてきました。なので、科学は疑似科学や妄想よりは、何億倍もマシであると思います。
by MANTA (2020-11-01 10:10) 

通りすがり

MANTAさん、早速のコメントありがとうございました。
専門家の分析となると、私では踏み入ることができません。
重要なことに一つに、先の名古屋大学の論文で紹介した「CO2濃度は海水温との相関が高い」を、今後の研究にどう反映していくかがあると感じます。
直近100年について、気温だけでなく海水温を含めてCO2濃度変化を分析することで、現在用いている気候感度の考えが変わるかもしれません。
 大勢が海水温によって支配される因子(CO2濃度)を気候感に組み込み分析することの妥当性
そんな目を持って、今後も勉強継続です。長くなって恐縮です。
ありがとうございました。
by 通りすがり (2020-11-01 11:45) 

MANTA

通りすがり様

>CO2濃度は海水温との相関が高い」を、今後の研究にどう反映して
>いくかがあると感じます。
>直近100年について、気温だけでなく海水温を含めてCO2濃度変
>化を分析することで、現在用いている気候感度の考えが変わるかもし
>れません

それはもう、地球規模の数値シミュレーションにも組み込まれていたようにも思います。またCO2以外の温室効果ガスも考慮されていたのではないでしょうか? この点は私も専門外で未確認ですので、ぜひIPCCの報告書(和訳)を御覧ください。

途中で書きましたが、CO2の温室効果は物理学的にはシンプルであって、これで温暖化傾向は大雑把には説明ができてしまっています。なので他の要素を考えたところで、地球全体に及ぼす影響は変わらないと私は思います。

ただ、各地域ごとの個別の温暖化予想は高精度とは言えません。
例:地球温暖化の停滞現象(ハイエイタス)の要因究明 ~2000年代の気温変化の3割は自然の変動~
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2014/20140901.html
※こちらの図2など

このあたりは今後、研究が必要でしょう。


by MANTA (2020-11-01 12:57) 

通りすがり

MANTAさん、またまたコメントありがとうございます。
ICPPは、他の温室効果ガスは、CO2排出量相当に換算しており、この点でCO2は大気全体の代替因子になります。しかし結論はCO2削減のみに帰結しており、他の温室効果ガスは対象外になっています。CO2排出を抑えても気温上昇は抑えられないリスクと言うことになります。
名古屋大学では、CO2の温室ガス効果は飽和状態、よって今後は他の温室効果ガスが重要との見方に立っていると解釈しています。
長くなってしまいますので、この辺にしておきます。
有意な情報交換でした。ありがとうございました。
by 通りすがり (2020-11-01 13:45) 

MANTA

通りすがりさん、名古屋大学の資料がなにかわかりませんが、
温室ガス効果は飽和しませんよ。そもそも飽和とはなんでしょうかね?
おそらく貴方が信じているのは疑似科学なのだと思います。

CO2が吸収した熱が大気中にこもっていて、それが地球温暖化なのだ
と思っている人は多いようですが、違います。
イメージで考えるのではなくて、一度ちゃんと「地球温暖化」について
勉強されることをお奨めします。

by MANTA (2020-11-01 17:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。