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巨星墜つ [▼科学ニュース New!]

世の中には「このインターネットライブ中継、いるの?」ってことがチョイチョイ
あります。例えば、絶食中のダイオウグソクムシのライブ中継とか。
(でも亡くなっちゃったねぇ)

あるいは約10年に「1滴」ずつ落ちていく、ピッチ(樹脂)のしずくを
ライブ中継するとか。

 この実験をライブ中継。 当ブログで昔に紹介しました。
  →マントルって硬いのねん http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2006-07-25

もうほぼ静止画!!(笑) 
「ピッチドロップ」と呼ばれるこの実験、オーストラリアのクイーンズランド大学が
1927年から実施しています。この87年間に「8滴」のピッチのしずくが落ちたとか。
下記がライブ映像サイトです。
● The Pitch Drop Experiment
 http://smp.uq.edu.au/content/pitch-drop-experiment

あ、久々に覗きに行ったら、ライブ中継が動画から「リアルタイム写真」に
変わってました。でも全然問題なし。だって、上記のサイトで公開されている
「1年間の様子を10秒に縮めた早回し映像」(なんと3,075,840倍速!)をみても 
何の変化もないのだから。 安心の無駄ライブ中継 (笑)

…と思いきや、いつものように垂れ下がっているピッチのしずくがない!
87年間続く実験に予想外の展開が!!
(上の煽り文句、次のYahooニュースの見出しから頂きました m(_ _)m )
●【悲報】世界最長の「ピッチドロップ」実験、9滴目が落ちる前にちぎれる
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140425-00000118-it_nlab-sci

つまり、漏斗の下に置いてあるビーカーに、今までに落ちたピッチのしずくが沢山
溜まっていて、現在の第9滴目が溜まったピッチと当たりそうになっていたらしい。
じゃあ、ビーカーを掃除しようかな?と思って作業したら、その振動で歴史的な
9滴目が落ちちゃったというわけです。嗚呼、巨星墜つ(しかも誤って)。

ちなみにちょうど1年ほど前、実験を担当する教授は「もうすぐ9滴目が落ちるかも」
と語ってました(→世界最長の実験「ピッチドロップ」、まもなく決定的瞬間か)
 http://www.cnn.co.jp/fringe/35031537.html
しかしその教授は去年の夏にお亡くなりになったらしい。教授、無念。天国で泣いて
いるかもしれないね(でもその教授も実験を引き継いだ二代目だそうな)。

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ところで上記のYahooニュースには、こう書かれています。
アンドリュー・ホワイト教授(三代目の教授)の言葉:
「バルブができるまでに一体何年かかるのか。従来の8年サイクルに戻るのか、
 新しい13年サイクルが続くのか、それらは未解決の問題だ」

「バルブ」とは、ピッチのしずくのことです。さて彼は何を言っているのか?
まずこれまでの9滴の落ちたタイミングを見てみましょう。
table.JPG
(※上記のYahooニュースより作成)

これに基づいて、横軸を年に、縦軸を1滴目、2滴目…にしてグラフを書くと、
graph1.jpg
こんな感じ。1滴ずつ、規則正しく落ちるのなら、グラフの傾きは一定なはずです。
でも実際は時が経つにつれて、少しずつ緩やかになっています。つまり次の1滴が
落ちるまでにかかる時間が少しずつ長くなっているのです。

2滴目以降、落ちるのにかかった時間を縦軸に、年を横軸にしてグラフを書くと
graph2.jpg
2滴目を例外とすると、以降はだんだんと落ちるのにかかる時間が長くなっています。
最初は約8年間隔でしたが、最近は約13年間隔になっています。なぜこのような変化
があったのか? 室温が変化したのか? ピッチの成分が変わったのか?
実験があらたな謎を呼んでいる、と件の教授は仰ってるわけです。
(そして次の実験にまた何十年もかかるのか…)

しかし、このピッチのしずくが落ちる瞬間を、誰も見ていないのでしょうか?
実は(他の大学での実験ですが)、映像として記録されています。
●トリニティカレッジ、「ピッチドロップ実験」で滴が垂れる映像の撮影に
 世界で初めて成功
 http://w2.technobahn.com/articles/2013072005539000.html

こちらはイギリスの大学。1944年から実験してるんだって!

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こういう 馬鹿げた 長い期間かかる実験は、大学でやらねば誰がやる?!
似たようなお話で、先日「竹の開花」の研究成果を聞く機会がありました。
なんでも約50年に1度、花を咲かせる竹があるそうです。どうやって時を知るのか?
本当に一斉に咲くのか? 約50年周期は正しいのか?など面白いお話でした。
いずれ稿を改めて、ご紹介しましょう。

もう一つ感じたのは、ピッチ(樹脂)が垂れる瞬間は誰も正確には予測できないが、
規則性はあるということ。古いトンネルの壁がいつ崩れるか?とか地震はいつ起きるか?
などと通じる、難しさ&内包される規則性を感じますね。そしてこれらを解明するため
には、ものすごく長い実験期間が必要なのです。

研究とは奥深いだけでなく、人間の一生を超える時間が必要だったりもします。
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アヨアン・イゴカー

気の遠くなるような実験です。
視点を変えてみると、静止画像と呼んでいる物でも、完結的に連続的に定点から取り続ければ、立派なライブ中継になる訳ですね。
by アヨアン・イゴカー (2014-04-28 22:52) 

MANTA

アヨアン・イゴカーさん、ガラスは固体か液体か、どちらと思われますか?
実は両方の性質を持っているのです! 時間という観点で考えると、物の見方
は変わりうるのかもしれません。それも「絶対普遍」と信じられがちな科学の世界で
です。興味深いと思います。
by MANTA (2014-04-28 23:12) 

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