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無駄な宇宙公共事業をやめよ [▼科学ニュース New!]

国が行う公共事業は、効果の有無を測ることは難しい。「国家百年の計」。長い目で
見なければ。しかし、目的と異なる利用がなされていれば、計画を見なおしたり、
目的を修正しなければならないし、事業内容が不透明であればお話にならない。

前置きが長くなった。昨日報じられた情報収集衛星など、悪しき公共事業の典型だ
と私は思う。即刻、やめるか、スタイルを見なおすべきだ。同様な批判は数年前にも
当ブログで実施済みだが、事情は変わってないようだ。
公共事業化する宇宙開発
宇宙開発は官邸主導へ…その次は?

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まず今回の報道の一例である。
●情報収集衛星、軌道に H2A成功 4基体制、初の運用へ(産経新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130128-00000069-san-pol
これだけ読むと、日本の安全安心に貢献する衛星にみえる。世界中をくまなく
監視できるのも、国際貢献や、先日のアルジェリアの事件を考えると重要そうだ。
さらに当初の目的にも含まれていた「防災利用」も推し進めるという(下記)。
●<情報収集衛星>「被災状況地図」をネット公開へ (昨年のニュース)
 headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120620-00000081-mai-soci
 http://ceron.jp/url/mainichi.jp/select/news/20120621k0000m040055000c.html
rocket.JPG
Launch of H-IIA F19 by naritama (protected by CC License)
どこにも悪くはなさそうだが、同じく産経新聞による報道を読むと、、、
●宇宙の目 コストの壁 情報収集衛星、軌道に 運用費1兆円、性能も課題
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130128-00000072-san-pol
問題点は明らかである。例えば以下である。
・日本の情報収集衛星は、米国の商業衛星よりも性能が低い。
・レーダー衛星の寿命は5年程度であり、継続的に打ち上げが必要
 (1基当たり400億~500億円)

この衛星の4機体制、まるで今回はじめて完成したような口調の報道が多いが…
●情報収集衛星、4機体制が完成 真に国民に役立たせる方策を(日経BP)
 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/070226_4ki/index.html
いまから6年前、2007年2月時点で4機体制は一度完成している。ただし、
このわずか1か月後にはレーダ衛星1機が故障したため、4機体制は保てなく
なった。そのたびに、今回のように、衛星を打ち上げる必要があるのだ。

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さらにまずいことに、衛星の運用状況は秘密である。ちゃんとデータがとれているか
どうかも秘密。取得データも一切が未公開だ。その不透明性への批判をかわすためか
防災関係については一部公開すると言っていたが、報道から半年以上たった今日でも
まだ検討中だそうだ。これでは「やるやる詐欺」である。
●情報収集衛星“情報公開の在り方検討(NHK)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130127/k10015094321000.html

情報収集衛星は、防災関連のような、情報を公開できる部分をちゃんと公開すべき
だろう。それもできないのであれば、国防専用として防衛省に移管してスッキリすべし。
実際、この衛星を統括している、内閣官房の衛星情報センター所長は自衛隊出身だ。
●衛星情報センター所長に下平氏
 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012092800508

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ところで省庁間では、この衛星をどう捉えているのだろう? こんな話(図)がある。
  • manta33blogmanta33blogRT @minorucchu: 本日、三菱電機の株価が急落。情報収集衛星で水増し請求が発覚し指名停止になったことから。そもそも同予算は天下り法人の「丸投げ」搾取の”楽園”。何を今さら。(図は当方執筆の週刊金曜日03年4月18日号「衛星にたかった天下り法人と三菱電機」) pic.twitter.com/11rk0NIS ジャーナリスト 田中稔氏 2012年1月30日

なるほど、お互いに利益がある構造が透けて見えてくる。そしてこの衛星の関連予算は
これまでに累計約9800億円(来年度を含む)。まもなく1兆円を超えるだろう。
一方で、人々に夢を与えるはずの宇宙探査・深海探査は「研究用のお金が足りない」
という理由で具体化しない。例えば「はやぶさ2」はいつ打ち上げに至るかわからない。
先日書いた「しんかい11000」も、いまあるのは名前(仮)だけである。

なお、前述の衛星情報センターの定員は219名。内閣官房の定員は807名なので、
この内の3割の職員(定員)が、本衛星絡みに従事している(こちらのコメント欄を参照)。
そして、この人数はJAXAの宇宙科学研究所(ISAS)の研究者(教育職職員)の人数
よりも多い。ISASこそ、あの探査機「はやぶさ」で有名な研究所である。

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以上、我ながら、つまんない一文を書いたなと思う(批判めいた文章は書いていて嫌に
なる)。しかし覚えておいてほしい(私も覚えていたい)。「あると安心」というだけの理由で
年間何百億円もの予算が不透明な格好で「宇宙の藻屑」と消えていることを。


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Working Dad Oversea

アルジェリアの件は酷かったみたいだね。国として全然情報を取れなかったと聞いているよ。
事件の発生を報じるNHKプレミアムで、アルジェリアの大使館員でもなく領事館員でもなく、何とお隣の国のしかもJICAの職員が電話インタビューに答えていたのは耳を疑ったよ。在留邦人の保護は領事館の役目だから、本来は領事館員がインタビューに答えるべき。JICAは援助機関。
衛星に限らず、我が国の情報収集能力と在留邦人保護の能力はやばいレベルかも知れませんね。
by Working Dad Oversea (2013-01-30 00:19) 

MANTA

>お隣の国のしかもJICAの職員が電話インタビューに答えていたのは耳を疑ったよ
Working Dad Overseaさん コメントありがとうございます
(いろいろお感じのところがおありでしょうね…)
私もそのニュースを見て、情報取得手段の少なさに驚きました。
JICAの事務所はセネガルでしたか?

>衛星に限らず、我が国の情報収集能力と在留邦人保護の能力はやばいレベル
そのとおりです。私は、こんな衛星はやめてしまって、他に予算を回すほうが
健全だと私は思います。政府も実は、米国の衛星を頼ってるのでは?
by MANTA (2013-01-30 12:07) 

みきぱぱ

こんな話もあります。

虚構の「まいど1号」が持ち上げられ、意義ある「はやぶさ2」がつぶされる現実
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130104/258774/?bpnet
by みきぱぱ (2013-02-07 20:28) 

MANTA

追記:一応役には立っているらしい。震災当時は話題にもならなかったが。

●MH370便、捜索範囲を北東に移動…日本の衛星も浮遊物確認
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140328-00000069-rps-bus_all
by MANTA (2014-04-02 18:03) 

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