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科学と白黒 [ 科学コミュニケーション]

なぜヒトは、とっつきやすく分かりやすい科学を信じてしまうのか?
なぜデータを正しく確認することもなく、感情論で結論をだそうとするのか?
以前の科学コミュニケーションの連載記事の続きです。先日の記事の続きでもあります。

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   ナンタラの頭も信心から、と申しますが…

「分かりやすい科学は信じやすいが、それは安直で、時に騙される」という趣旨を前回
書きましたが、賛同コメントを頂いておりました(素風さん、ありがとうございます)。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2012-07-04
※コメント(抜粋)
>「疑問を抱く余地なく○○だよね」
>と言い切れることというのは案外少ないのではないかと私は個人的に考えています。
>「分かりやすさ」というのは、その「疑問を抱く余地なく○○だよね」を安易に求めること
>じゃないかと。
>短絡的に結論に飛びつくのではなく、順序立てて論理的に思考して結論にたどり着く、
>学校が恒常的にそういう体験ができる場であるとよいなと思います。とても難しいことですが。

素風さんのコメント通りで、科学ではそもそも完全なる白黒決着はつかないのです。
なので「これで100%分かった!」とか「100%駄目だ!」と言っている人には要注意。
「え、科学って、謎を解き明かして白黒つけてくれるものではないの?」
と考える人は多いでしょう。私がここでいろいろ説明するよりも下記を読んで
頂くと、とても理解しやすいと思います。
●サイエンスアゴラでうまく言えなかったことが、ここに書いてある
 (ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」さん)
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2006/11/post_4817.html
※以下引用
>市井に流通する一般的な科学観では、「科学は何かの問題に対して白か黒か、真か偽か
>はっきりと決めることができる」というふうなことになっているらしい。でも、実際に科学の
>現場で、そう信じている研究者は少ないだろう。(中略) だから、科学は行き詰まっている、
>とか、信頼できない、というわけではないのだ。むしろ逆だろう。このやり方を多くの個別科学
>が取り入れた二十世紀、サイエンスは大きく進展した”

----
ようするに、科学はある確率で「白っぽい」とか「黒っぽい」といえるだけなのです。
(科学的結果には誤差はつきものなのだ)  また科学的結果を導く際にもいろいろな
仮定が入っているので、用いた仮定が間違っていれば、結果も誤ったものになります。
大事なことは、科学的な結果を鵜呑みにするのではなく、どの程度結果が確からしいか
またそこに至るプロセス(仮定)は正しいかを見極めることです。え、難しいって?でも
日々のスーパーの買物でも、洋服を選ぶときも、値段だけみて決断しませんよね。
商品に対して値段は適正か悩みながら買い物しているはずです。逆に「バーゲンだから」
と買ってはみたものの、失敗したって経験も多くないですか?バランスが大事です。

関連して、今朝のニュースでこんな話題がありました。
●志賀原発 地下の亀裂詳しく調査へ(NHK)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120725/k10013842281000.html
石川県の志賀原発の下に活断層がある?ない?という話題に対して、石川県知事いわく
「全く同じ資料を見て、なぜ(専門家の)見解が180度違うのかこれは本当に不思議だ」
県知事はきっと、科学が白黒決着の便利なツールだと思い込んでいるのでしょう。
原発問題や基地問題のように、科学的要素も色濃く含まれる問題については、科学の白黒の
バランスを理解しておかないと期待感や感情論(この場合はイライラ)が先にたってしまいます。

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最後に、素風さんから頂いたコメントの続きで締めたいと思います。
>風力発電にしろ、太陽光発電にしろ、学校内に小さな発電装置があって、発電している
>という事実を用いればいろんな切り口で教育のきっかけが作れると思います。(中略)
>ううう、もったいないなー

おっしゃるとおりで、科学的な白黒バランスの付け方は日常のバランス感覚にも役立つ
ものですので、学校ではむしろ白黒はっきりしない問題に取り組むべきでしょう。
例えば太陽光発電をただ置いておくだけでなく、どうすれば効率よく発電できるか、
そのためにはどんな工夫をすればよいか?一方で、工夫をした結果効率が上がったとしても
苦労が伴うようだったら元のままでもいいかもしれない。 みんなだったらどうする?
こんな感じに、学びを深くする工夫はいくらでもできるとおもいます。
水が綺麗になりました、発電できました、ゴミが減りましたetc.=「エコ・環境教育」
になってるとしたら、私も本当にもったいないなぁと思います。
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素風

コメントをこのように大切に取り上げていただき光栄です。ありがとうございます。
何を以て安易であると決めるかの線引きが難しいのに思い切った表現をしちゃったかな、と思っておりましたので、安堵いたしました。
今後も応援してます。

by 素風 (2012-07-27 22:57) 

MANTA

素風さん、お返事が遅くなってしまいました。また元々はツィッターのつぶやき
でしたのに、こちらに勝手に借りてきてしまいまして恐縮です。

>何を以て安易であると決めるかの線引きが難しいのに思い切った表現を
>しちゃったかな
それは私にも当てはまることです。
でも分からないなりに考えてみて、悩んでみることがまずは大事なように
私には思えてなりません。

by MANTA (2012-07-28 06:36) 

成魚の家族

こんにちわ。
こちらではご無沙汰しております。
前回の記事もそうですが、今回も沢山うなずきながら読ませていただきました。
私もちょっとした科学の解説コーナーを担当させて貰っておりまして「これもまだ見つかっていない」「それも本当にそうかはわからない」「わからないことがわかる。そしてもっと先が知りたくなる。だからまだまだ若い皆さんが研究するべきことは沢山あるんですよぉ~」って話す時があります。(ザックリですみません。。。)
半数くらいの人は、ワクワクした瞳をして聴いてくれます。
でも、半数くらいの人は、目が???になっています(_ _;
一度だけ「何にもわかっていないのにどうしてこんなコーナーをやっているの?」って、小学生から言われたことがありました。
ちょっとがっかりしましたが、それも自分の話術の未熟さ故でしょう。
まだまだ勉強が足りません(^^;
by 成魚の家族 (2012-07-31 21:00) 

MANTA

成魚の家族さん、いつもご覧頂きましてありがとうございます。
>一度だけ「何にもわかっていないのにどうしてこんなコーナーをやっている
>の?」って、小学生から言われたことがありました。

(^^)
そういう子供たちにこそ、科学って何かを知ってもらいたいですね。
こんな喩え話ではどうでしょうか?
「目の前に美味しそうな果物があります。でも毒があるかもしれません。
 さて、こんななにかわからない果物、食べないほうがいいですか?
 それとも調べてみますか?もしかしたら健康にすごくいいかもしれないよ」

私も一度、科学館でインタープリターなどをやってみたいです。
いつもは壇上で講演するくらいしかしておりませんので。
(でも例の科学バーは壇を降りて、近い距離でやらせていただいております)
by MANTA (2012-08-03 06:39) 

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