宇宙線では寒冷化しない [ 地球温暖化を学ぼう]
久々に地球温暖化関係のニュースをひとつ。
温暖化に直接関係するニュースではありませんが、興味深いニュースです。
●西暦775年に宇宙環境の大変動が起きていた(サイエンスポータル)
http://scienceportal.jp/news/daily/1206/1206051.html
Yakushima HDR-12 By Kabacchi (CC Licence)
屋久杉の年輪を分析したところ、西暦775年に強い宇宙線が空から降り注いでいたことが
明らかになったそうな。775年というと、ナントウツクシイ(710年)とナクヨウグイス(794年)の
間だから奈良時代かな? その頃に(なぜかは分からないけれど)宇宙線が通常よりも
20倍も増加していて、過去3000 年の間で最大だそうです。
このニュースで話題になっているのは「なぜ宇宙線が増えたか?」その原因なのですが、
私はむしろ、その時の地球の気候のほうが気になります。というのは、宇宙線が降り注ぐと
雲がたくさんできて地球は寒冷化に向かうのではないか?と考えるグループがいるからです。
この仮説が本当ならば、西暦775年頃に空は雲におおわれて、地球は寒冷化したはず。
しかしその頃に気温が低下したり、冷害や飢饉が起きたという記録は見当たりません。
●冷害・飢饉の歴史年表
http://www.jomon.ne.jp/~kosamu/reigai.htm
●奈良時代前後における疫病流行の研究(東アジア文化交渉研究 第3号)
http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/bitstream/10112/3051/1/26-touka.pdf
●過去の気温変化(Wikipedia)
宇宙線が増加しても、地球の気候は大して変化しなかったようです。これは本連載でも既に
紹介済みで、例えば宇宙線強度の変化によって地球が温暖化した、ということはありません。
●再・太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-01-11
●太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2008-07-21
最近、太陽活動が低下していることが報告されていて、「地球は寒冷化!」と騒ぐ方が
多いようですが、そう単純ではなさそうです。特に現在の地球温暖化の原因は、太陽活動
や宇宙線の変化ではなく、別の要因で考えるのがもっともらしいでしょう。
●太陽活動、17世紀以来の休止期に突入か 米研究
2011年06月16日 10:08 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/2806591
●太陽活動衰退期にも可視光放射増加、改めて問われる温暖化の原因
2010年10月08日 09:41 発信地:パリ/フランス
http://www.afpbb.com/articles/-/2764308?pid=6297595
ところで、西暦775年の宇宙線増加については、その原因が「よくわからん、ミステリーだ」と
掲載元雑誌(Nature)でも紹介されています。つまり、その時に超新星爆発があったら中国
などの文献に残っているはずだし、太陽での大爆発(スーパーフレア)が原因ならばオーロラ
などの記録がやはり残っているはずだ、というわけです。検証作業がこれから始まるでしょう。
●Mysterious radiation burst recorded in tree rings
http://www.nature.com/news/mysterious-radiation-burst-recorded-in-tree-rings-1.10768
この研究をされた名大の増田先生は、東京大学とともに過去の気候の復元にも
挑戦されています。このブログでも過去に取り上げさせて頂いてます。
●屋久杉を使って1100年前の太陽活動の復元に成功(東京大学)
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2008/14.html
今回の西暦775年の大事件と気候変動に関するご意見、ぜひ伺ってみたいです。
温暖化に直接関係するニュースではありませんが、興味深いニュースです。
●西暦775年に宇宙環境の大変動が起きていた(サイエンスポータル)
http://scienceportal.jp/news/daily/1206/1206051.html
Yakushima HDR-12 By Kabacchi (CC Licence)
屋久杉の年輪を分析したところ、西暦775年に強い宇宙線が空から降り注いでいたことが
明らかになったそうな。775年というと、ナントウツクシイ(710年)とナクヨウグイス(794年)の
間だから奈良時代かな? その頃に(なぜかは分からないけれど)宇宙線が通常よりも
20倍も増加していて、過去3000 年の間で最大だそうです。
このニュースで話題になっているのは「なぜ宇宙線が増えたか?」その原因なのですが、
私はむしろ、その時の地球の気候のほうが気になります。というのは、宇宙線が降り注ぐと
雲がたくさんできて地球は寒冷化に向かうのではないか?と考えるグループがいるからです。
この仮説が本当ならば、西暦775年頃に空は雲におおわれて、地球は寒冷化したはず。
しかしその頃に気温が低下したり、冷害や飢饉が起きたという記録は見当たりません。
●冷害・飢饉の歴史年表
http://www.jomon.ne.jp/~kosamu/reigai.htm
●奈良時代前後における疫病流行の研究(東アジア文化交渉研究 第3号)
http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/bitstream/10112/3051/1/26-touka.pdf
●過去の気温変化(Wikipedia)
宇宙線が増加しても、地球の気候は大して変化しなかったようです。これは本連載でも既に
紹介済みで、例えば宇宙線強度の変化によって地球が温暖化した、ということはありません。
●再・太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-01-11
●太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2008-07-21
最近、太陽活動が低下していることが報告されていて、「地球は寒冷化!」と騒ぐ方が
多いようですが、そう単純ではなさそうです。特に現在の地球温暖化の原因は、太陽活動
や宇宙線の変化ではなく、別の要因で考えるのがもっともらしいでしょう。
●太陽活動、17世紀以来の休止期に突入か 米研究
2011年06月16日 10:08 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/2806591
●太陽活動衰退期にも可視光放射増加、改めて問われる温暖化の原因
2010年10月08日 09:41 発信地:パリ/フランス
http://www.afpbb.com/articles/-/2764308?pid=6297595
ところで、西暦775年の宇宙線増加については、その原因が「よくわからん、ミステリーだ」と
掲載元雑誌(Nature)でも紹介されています。つまり、その時に超新星爆発があったら中国
などの文献に残っているはずだし、太陽での大爆発(スーパーフレア)が原因ならばオーロラ
などの記録がやはり残っているはずだ、というわけです。検証作業がこれから始まるでしょう。
●Mysterious radiation burst recorded in tree rings
http://www.nature.com/news/mysterious-radiation-burst-recorded-in-tree-rings-1.10768
この研究をされた名大の増田先生は、東京大学とともに過去の気候の復元にも
挑戦されています。このブログでも過去に取り上げさせて頂いてます。
●屋久杉を使って1100年前の太陽活動の復元に成功(東京大学)
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2008/14.html
今回の西暦775年の大事件と気候変動に関するご意見、ぜひ伺ってみたいです。
MANTAさんは、海洋資源についての研究をされておられるようですが、どうしてそれほど「人為的CO2による地球温暖化」ということに拘るのか不思議でなりません。宇宙線によるイオン化がエアロゾル粒子の生成を促進させることは、CERNでの実験で確認されてますよね。でもスベンスマルクは宇宙線が気候変動を決定づけるとは言っていない。宇宙線、火山、レジームシフト、そして人為的要素の4要素と言っている。
地球規模の気候変動とは、数百年〜数万年の時間スケールで起こるものでしょう。775年に大量の宇宙線が降り注いだというのは、太陽変動の影響ではなく超新星爆発によるものでしょうが、そのことをもって「この仮説が本当ならば、西暦775年頃に空は雲におおわれて、地球は寒冷化したはず」などと時間スケールを無視した話をするのはいかがかと思います。
by TSUNE (2012-06-19 14:20)
>宇宙線によるイオン化がエアロゾル粒子の生成を促進させることは、
>CERNでの実験で確認されてますよね
そんなたいそうなお話でなくても、霧箱の実験でも十分理解できますね。
>スベンスマルクは宇宙線が気候変動を決定づけるとは言っていない。
>宇宙線、火山、レジームシフト、そして人為的要素の4要素と言っている。
しかしそのうちの宇宙線はあまり影響がないのではないか?というのが
私のこの記事の骨子です(CO2の話はどこにもでてきませんし、私はこの
連載の中でCO2が地球温暖化の主要因だと言ったこともありません)。
長期の変動うんぬん、とありますが宇宙線による雲生成は瞬時に起きます。
ではなぜ775年には寒冷化が起きなかったのでしょう? 一方でピナツボ
などの大規模な火山噴火では、噴火の同年や翌年に冷害などが起きました。
つまりはそういうことなのだと私は思います。
なお長時間スケールの話も既に取り上げています。下記をお読みください。
●地球温暖化は自然現象なのか?
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-07-04
by MANTA (2012-06-25 08:35)
たしかにピナツボなどの大規模火山噴火による火山灰は、4年間ほどに渡って成層圏に滞留しましたし、それにより数年間気温が下降したのも事実です。ただ、一時的な現象を気候変動と同じ文脈で語るのはいかがかと。マウンダー極小期の数十年間は火山の噴火が頻発したと言われています。そのような現象は気候にも影響を与えるでしょうが、775年の宇宙線の増大が超新星爆発によるものだとすれば、そのインパクトは数日間とか、せいぜいひと月とか、そのぐらいではないでしょうか。
MANTAさんは、海洋資源などを研究されているようですから、気候というものが海洋の影響を強く受けていること。水深数百メートルの海水温度は、きわめてゆっくりと何十年も何百年もかけて変化すること。気候は海流の影響を強く受けること。海流と大気循環は相互作用していること、などをよくご存知のことと思います。
IPCC報告書では、産業革命前の1750年を基準にCO2濃度が2倍になったときの気温上昇を評価していますね。CO2濃度は2080年頃に2倍になると言われており、そのときの過渡的な気候応答は「1℃より大きい可能性が非常に高く、3.5℃以上である可能性は非常に低い」と書かれています。もちろん、これは、CO2増加の温室効果の寄与だけでなく、水蒸気増加による温室効果や氷床減少によるアルベド(反射率)の低下などのフィードバックも考慮した値です。上昇値の起点は1750年です。
by TSUNE (2012-06-26 14:02)
>775年の宇宙線の増大が超新星爆発によるものだとすれば、そのイン
>パクトは数日間とか、せいぜいひと月とか、そのぐらいではないでしょうか。
なるほど。それは一理あります。でもその根拠は何でしょうか?
日経サイエンス最新号によれば宇宙線はエアロゾルを効果的に生成する
効果があるのではないかと考えられているそうです。
●雲と太陽 深い関係(日経サイエンス)
http://www.nikkei-science.com/201208_046.html
であれば、短期の宇宙線増加も火山噴火と同じような効果を生むでしょう。
(宇宙線が減っても、できてしまったエアロゾルは消えないと思われるので)
by MANTA (2012-06-27 03:27)
宇宙線の話と、長期の気候変動の話は切り離して考えましょう。
>IPCC報告書では、産業革命前の1750年を基準にCO2濃度が2倍に
>なったとき…(中略)上昇値の起点は1750年です。
だとすれば、CO2上昇→気温上昇までは十分に長期の「タイムラグ」が
あったとも言えますね(気温の顕著な上昇は1900年頃からなので)。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-07-04
ところで、TSUNEさんは以前、下記コメント欄で「大気中CO2濃度が有意に
上昇したのは1950年以降」とおっしゃってました。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
(2012-05-07 12:23)
問題に応じて主張を変えられるのは得策ではありません。
by MANTA (2012-06-27 03:27)
横から失礼しますが、最初のコメントの"宇宙線によるイオン化が(中略)CERNでの実験で確認されてます"というのは、doi:10.1038/nature10343が出典かと思います。
が、この報告、"確かに粒子はできたけど、境界層で雲核になるほど大きいものではなかった"というもので、スベンスマルク効果に対してはむしろネガティブな報告だと思います(現段階では)。
この報告と、AD775年の事象―気候変化が起きたのであれば、文献や氷床コアにその事実が残っている可能性は高いが、今のところ見つかっていない―を考え合わせると、宇宙線の変動による影響は小さい(ないとは言わない)と考えるのが妥当、というのが私の考えでありおそらくMANTAさんの考えでもあると思いますよ。
なお、"インパクトは数日間とかひと月とか"というのは無理があると思います。宇宙線の起源がTSUNEさんの勘通り超新星爆発によるのだとしても(名古屋大のグループは、おそらく超新星爆発が原因ではないとしています)、宇宙線はそんなに一気に押し寄せるものではなく拡散しながら到達します。名古屋大のオリジナル論文(doi:10.1038/nature11123)にも、宇宙線の増加は少なくとも1年は継続したようだと書かれていますね。
by mushi (2012-06-27 21:51)
MANTAさん
問題に応じて主張を変えるとは、何のことを仰っているのか、ご指摘の意味が分かりませんでした。私は1750年頃からCO2濃度が上昇したとは言っておりません。IPCC報告書に書かれていることも、大気中CO2濃度の推移も、調べればすぐに分かることですね。
私のコメントの趣旨は、気候とは海洋の影響が大きく、過渡気候応答は定常状態を想定した平衡気候感度の計算と異なる。これは長期の気候変動に関する水深数百メートルの海洋の応答は数十年〜数百年を要するためで、一時的な現象に対して気候変動うんぬんを語るのはいかがと。
1975年頃から2000年頃にかけて約25年間に、世界の平均気温平年差は0.5℃上昇しました。平均気温平年差は、全球の5度×5度の格子ごとの平均から算出しますので、7割がたは海面水温(SST)で決まりますね。MANTAさんは海洋の専門家でらっしゃるので、レジームシフトや太平洋10年規模振動(PDO)などはご存知だと思いますが、0.5℃の昇温のうち、CO2増加による温室効果の直接的な寄与は、どれぐらいだとお考えですか?
by TSUNE (2012-06-28 02:08)
mushiさん
仰るように、775年の宇宙線の増大は、超新星爆発によるものではないかもしれないですね。氷床コアの気温復元の分解能は1年とかいうオーダーではないので、樹木の年輪分析が有効でしょうね。炭素同位体と合わせて酸素同位体の含有比も調べればよいのにね。
by TSUNE (2012-06-28 03:12)
TSUNEさんは温暖化に興味をお持ちで、知識も豊富のようですね。
しかし「長期の気候変動」というのと「宇宙線」という2つの問題が
ごっちゃになっているようにお見受けします。
>一時的な現象に対して気候変動うんぬんを語るのはいかがと。
ピナツボなどの火山噴火では冷害が起き、記録に残ります。
宇宙線の突発的な変化では冷害は起きたという記録は残っていません。
これはあくまで「短期」のお話です。しかし「短期」ですら何の顕著な変化も
引き起こせない宇宙線が「長期」の温暖化を引き起こせるメカニズムはない
というのが私の主張です(と何度も書いてますね)。
>0.5℃の昇温のうち、CO2増加による温室効果の直接的な寄与は、
>どれぐらいだとお考えですか?
CO2による温室効果の、温暖化への直接寄与は私にもはっきりとは分かり
ません。ただ、単純な放射平衡モデルから類推からは、直接的寄与は50%程度
だと思っています。なおPDOに関しては、貴殿の前のコメントへお返事済みです。
>世界の平均気温平年差は…7割がたは海面水温(SST)で決まりますね。
ところがよく知られているように、平均気温上昇は北半球でより顕著です。
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/shindan/a_1/glb_warm/glb_warm.html
「温暖化」に寄与しているのは陸地の多い(あるいは人が多い)北半球側
なのです。「海」に温暖化の影響が現れるのはこれからだと思っています。
(海の温暖化はARGOブイで明らかになっています。それはまた後日)
>氷床コアの気温復元の分解能は1年とかいうオーダーではない
間違いです、下記をご参照ください。
http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20080623NGRIP.html
by MANTA (2012-06-28 06:05)
mushiさん、お久しぶりです。お元気ですか?
>CERNでの実験で…スベンスマルク効果に対してはむしろネガティブな報告
御紹介ありがとうございます。私も読んでませんでした。というか、もう宇宙線
はいいだろう、というのが本音です(この記事の趣旨)。
>名古屋大のオリジナル論文(doi:10.1038/nature11123)にも、
>宇宙線の増加は少なくとも1年は継続したようだと書かれていますね。
私の環境ではAbstractしか読めなかったのですが(なぜ??)、「宇宙線
の継続時間はもっと短くてもよい」と思わせる図が載ってますね。
http://www.nature.com/nature/journal/v486/n7402/full/nature11123.html
しかしかに星雲の場合でも、スーパーフレアの場合でも、ある程度継続して
宇宙線が来るでしょうから、”数日間とかひと月とか”は短すぎでしょうね。
ちなみに上記のどちらも宇宙線源ではないのではないか、と著者は考えて
いるようですね。なぞの宇宙線到来??
●AD774-775における宇宙線強度の急激な増加を発見
http://www.gcoe.phys.nagoya-u.ac.jp/content1104.html
by MANTA (2012-06-28 06:23)
おお、めずらしく長々とお返事してしまった。しかし、仕事が…汗
by MANTA (2012-06-28 06:24)
MANTAさん
>「長期の気候変動」というのと「宇宙線」という2つの問題が
> ごっちゃになっているようにお見受けします。
MANTAさん自身が仰っていることが、まさに私のコメントの趣旨です。数百年の時間スケールで変動する太陽磁気の、気候への影響という観点と、775年に宇宙線が増加したという一時的な現象を、結びつけて論じるのはいかがなものかと、繰り返し述べています。
by TSUNE (2012-06-28 10:59)
TSUNEさん、コメントの論旨はもっとまとめてください。例えば貴殿の最初
のコメントを要約すると次のようでした。
・MANTAさんはどうして「人為的CO2による地球温暖化」に拘るのか?
・宇宙線によるイオン化がエアロゾル粒子の生成を促進
・地球規模の気候変動とは、数百年-数万年の時間スケールで起こるもの
・775年に大量の宇宙線の話だけでは長期の時間スケールを無視している。
4番目が趣旨だとすれば、その前の3つは蛇足です。他のコメントもそうです。
さてやっとスタートラインに立ちました(時間を無駄しました)。ご趣旨の点、
すでに記事中・コメントでも何度も書きましたが、「短期」の寒冷化も引き起こ
せない宇宙線が、長期の気候変動を引き起こせるメカニズムは何とお考え
なのでしょうか? 私は「長期の気候変動だけに効く宇宙線の効果」などない
と思っています。あれば教えてください。では。
by MANTA (2012-06-28 17:09)
お久しぶりです、最近なかなか時間が取れず、ブログの更新もすっかり滞っています・・・。
宇宙線に関してはもういいだろう、というのは、おおむね同感です。これほど検証されても「影響があるかどうか不明」となると、やはり影響があるとしてもかなり小さいのでしょう。影響が大きいのであればそろそろ分かっていてもいいだろう、と考える蓋然性はあると思います。
・読み間違っていました。本文中に
"...the agreement of the model with the measured data decreases."とあるのですが、最後のdecreaseをincreaseに空目していました・・・。情けない。
年輪のデータだけで、どの程度宇宙線が増加した期間が続いたか検証するのは難しいということなのでしょうね。
・TSUNEさんは「太陽磁場の変化による宇宙線の増減は気候に影響を及ぼす。突発的な宇宙線の増減は気候に影響を及ぼさない」と考えているということですか?
スベンスマルク効果の骨子は「宇宙線増加が雲を増やし、増加した雲がアルベドの増加をもたらす」というものですが、アルベドの増加は急速な気候変化をもたらします(火山の噴火と同じ)。宇宙線がアルベドを増加させるのであれば、宇宙線増加の原因が太陽磁場だろうが突発的事象だろうがその影響は急速に現れることは同じだと思いますが、違うのですか?
それとも、スベンスマルク効果とはまた異なるメカニズムがあると考えているということですか?
・年輪中の酸素同位体比を分析するのは非常に困難です。アイスコアと異なり有機物の場合は試料を燃焼させる必要がありますが、燃焼させると酸素同位体比に関する情報は失われるので、14Cのように分析することはできません。分析すればいいのに、と気軽に言えるようなものではないでしょう。
ただし、近年状況が変わりました。年輪中の酸素同位体比を分析する方法が確立されつつあります。今後はそのような研究に発展していくのかもしれません。
なお、MANTAさんにせよ私にせよ、AD775の事象のみをもって宇宙線の増減は気候に(ほとんど)影響を及ぼさないと主張しているのではありません。そう考えるに足る数多くの根拠があり、AD775の事象は新たに追加された根拠の一つにすぎない、ということは強調しておきます。
by mushi (2012-06-29 00:20)
mushiさん、お久しぶりです。私もバタバタ忙しかったので、こちらのコメント欄へ
お返事するので精一杯、昨日むりやりラーメンの写真で記事更新しました (^^;)
コメントありがとうございます。全くそのとおりで、私からの補足はありません。
by MANTA (2012-07-01 13:37)
雲(水蒸気の粒)は太陽光を遮るとともに、強力な温室効果がありますよね。夜間の赤外放射も多いですし。
それは雲のない夜の放射冷却現象を見れば明らかだと思います。
雲の多い状態が気温に及ぼす影響は短期的にはプラマイゼロに近いが、長期的に継続するとマイナス方向に僻するという可能性はあるかもしれません。
宇宙線と雲の量にはかなりの相関関係があるようです。
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/1ry/Kagaku200912.pdf
by 通りすがり (2012-07-26 04:53)
通りすがりさん、原稿をご紹介いただきまして、ありがとうございます。
図1は有名ですね。一方で、気温上昇と宇宙線強度の相関は悪いです。
(しかも図1を書いたスベンスマルク自身が”そのように”報告しています)
●再・太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-01-11
著者の宮原さんのご研究はこのブログでも紹介しました。中世の温暖期の頃、
太陽活動は現在より活発だったようです。でも気温は現在のほうが高いです。
●太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2008-07-21
以上も御覧頂いて、コメントいただけると幸いです。
そういえばTSUNEさんからは返答がありませんね。結局、宇宙線で長期の
気候変動を引き起こすメカニズムは見つからなかったようです。
by MANTA (2012-07-26 12:33)
MANTAさんの「太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない」という言い方は、そのとおりで、太陽活動「だけ」では説明できないですね。最初に書いたようにスベンスマルクも、宇宙線、火山、レジームシフト、そして人為的要素の4要素と言っています。
大気には温室効果がありますが、これは圧倒的に雲と水蒸気の寄与が大きく、二酸化炭素の寄与は僅かです。通りすがりさんが仰ったように、雲は温室効果が大きい反面、アルベド(反射率)を増大させる効果もあり、これらのバランスは、雲の種類によって異なると言われてますね。この辺は、まだ研究途上でしょう。
by TSUNE (2012-08-06 12:21)
気候の変動は、数十年〜数千年に渡る変化であって、このような時間スケールで考えないといけない、というのが僕の主旨です。丸い地球の海洋と大気は、つねに強制力の変化を打ち消すように働きます。日射が強まれば対流が激しくなり、雲が発生して降雨が増えます。温度差が大きくなれば風が強まり、海流も変化します。大気や海洋の働きによって、気候は長い年月をかけて変動するのです。
by TSUNE (2012-08-06 12:48)
>気候の変動は、数十年?数千年に渡る変化であって、このような時間スケール
>で考えないといけない
TSUNEさん、長期の気候変動に関するお話は既出です。
(何度もご紹介しました)
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-07-04
この記事の趣旨は宇宙線と地球温暖化の関係です。記事と無関係にご自身の
主旨を繰り返したいようでしたら、ここではなくご自身のブログなどでどうぞ。
by MANTA (2012-08-08 08:02)
はじめて書き込ませていただきます。
地球温暖化の原因は別にしても、775年の宇宙線量の増加は、宇宙線現象の地球への影響として興味深い問題ですね。
しかし、これが比較的短期間(数年以下)の現象で、超新星等の遠くの天体によるならば、それはガンマ線の増加でないといけません。現在までのところ、単一の天体による短い期間の宇宙線量の増減はガンマ線でしか認められていないからです(ニュートリノもありますが、これは気候に影響しそうにないので除外します)。陽子の増加は、銀河磁場や有限速度の影響で、短期間に集中するということは考えにくいです。
従いまして、通常気候変動を起こすという陽子線量の変化と775年の変化は同じ宇宙線現象でも別種の現象であった可能性が大きいです。ガンマ線も核反応を起こすことはありますので、どういう結論になるかといわれても私は答えられません。しかし、少なくとも粒子の性質が違うので、同列に論じられるかは疑問です。
by S.U (2013-02-25 08:17)
S.Uさん、コメントありがとうございます。
>少なくとも粒子の性質が違うので、同列に論じられるかは疑問です
たしかに宇宙線と一口に言っても、いろいろありますもんね。
ご指摘、ありがとうございます。
ところで「通常気候変動を起こすという陽子線量の変化」とありますが、そのような
文献をご存知でしたら教えて頂けますと助かります。
また勉強いたします。
by MANTA (2013-02-25 12:32)
早速ありがとうございます。
>通常気候変動を起こすという陽子線量の変化 の文献
これは、結局のところは上で議論されているスベンスマルク効果そのものことで、地球温暖化の原因の議論になってしまいます。しかし、ここで、その基礎として解明されていることと解明されていないことを区別することが大事ですよね。MANTAさんはそのようなすでに整理をされていますので、これ以上私が付け加える余地はありませんが、
- 太陽活動の変化によって、地球周辺の宇宙空間の磁場や粒子密度が変化し、遠くから飛んでくる陽子が大気圏に突入する頻度が変化することはすでに宇宙線の測定で解明されています。これは、宇宙線(天文学か物理学)の教科書を見れば載っているのではないかと思います。
- 陽子線の地球大気に及ぼす影響についてはかなりわかっているが、どんな状態の気体についても完全にわかっている訳ではない。(放射性同位体の生成については古くから詳しく研究されているが、様々の状態にある気体の電離や雲の形成については研究続行中。これはCERN他でやっている素粒子検出器による実験分野になります)
- 宇宙線の変化による雲の形成の変化が気候にどの程度影響するかはほとんどわかっていない。(これは地球温暖化の原因論争)
という整理で、いかがでしょうか。
私も、昔の宇宙線の増加については深く考えたことがなかったので今後勉強させていただきます。確かに超新星によるものかどうかはまだ何とも言えないと思います。しかし、何らかの宇宙線の増加によることはたぶん間違いなく、年輪以外の証拠をあたれば、宇宙線の種類が特定できる可能性はあると思います。
by S.U (2013-02-25 19:00)
やっぱりCERNの結果が頼りのようですね > 宇宙線と雲の詳しい関係
S.Uさんがまとめられた通りだと思います。
一方で、(宇宙・地球観測機器が発達した)近年のデータを見る限り、私自身は
宇宙線が地球温暖化に及ぼす影響は軽微だと思っています。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2010-01-11
この辺もCERNの結果で今後変わるかも。でも変わることは悪くありません。
科学の進歩です…なんていうと、いろんな人からズルいといわれるんでしょうね。
そう私も科学者なのです (^^)
by MANTA (2013-02-26 17:21)
どうもありがとうございます。
科学者の態度としてはそれが正しいですよね。自然現象の解明は時間がかかるものですから、結論をいそいではいけません。
個人的には、地球温暖化は太陽活動との相関が大きいとみています。それをつなぐ有力な理論としては、今のところ宇宙線経由くらいしかアイデアがないので、この可能性はなかなか捨てられません。今はまだ不測だと思いますが、あと20年くらいすると観測データから決着するかもしれません。
私は、海洋生物や気候にはまったくの素人ですが、ずっと昔に深海で宇宙線を観測する準備に参加していたことがあります。生物発光など海洋関係の先生方の助言を耳にしたこともありました。今は離れていますが、宇宙線の測定のいろいろな応用は、今後考古学などに楽しみな分野だと思います。
では、今後ともよろしくお願いします。
by S.U (2013-02-27 10:02)
深海の宇宙線観測とか、興味津々です!
311の地震以降、地震やエネルギー関係の記事を書くことが多く、
温暖化関係はお休み気味ですが、ネタは書きためています。
またそのうち、アップします~
(現在は、年度末の報告書地獄で死んでます)
by MANTA (2013-02-27 12:13)
追記:
いま、久々に温暖化の記事を書こうとして、過去のコメント欄を少し読み返して
いましたが、一部のコメンテーターは酷いね。例えば上記の某氏は
「時間スケールを無視した話をするのはいかがか?」と問いかけられたので
「短期の寒冷化も引き起こせない宇宙線変動が、長期の気候変動を引き
起こせるメカニズムは何とお考えなのでしょうか?」と聞いたところ、結局
まともな返答はなく、ご自身の言いたいことだけ書いて、トンズラです。
あげく、第三者からは「このブログは荒れてますね」などと言われる始末。
科学的な議論をできない輩を相手にするのは無駄なのか?
それでも議論をすることになんらかの意義があるのか?
科学者の悩みの一つですわ。
by MANTA (2014-03-06 08:35)
別所では返信ありがとうございました。
カミオカンデによるノーベル物理学賞は、ニュートリノ検出で13秒間に11個です (ニュートリノで雲に影響はしないでしょうが、超新星爆発の時間感覚として記入しました)。
また、ガンマ線バーストも1分に満たない時間です。
下記 ↓ で検索してみてください。
「ガンマ線バースト偏光検出器の環境試験と 放射光を用いた性能評価」
> スベンスマルク効果は(あったとしても)気候に与える影響は限定的だと私は思っております。
とのことで、関係ないと思われているようですから、このブログ的には意味の無い事かも知れませんが、一応。
by Sen Funa (2015-07-28 13:08)
>また、ガンマ線バーストも1分に満たない時間です
たしかにご指摘のとおりです(775年のものはもっと凄かったかもしれませんが)。
・強い宇宙線が短い継続時間で地球に降ってくる
→雲は作れるが短期間で霧散、気候変動はない
・強い宇宙線が短い継続時間で地球に降ってくる
→炭素14は作れる&大気中に滞留、木の年輪中にその痕跡を残す
ってことは思考実験としてはありえますが、どうなんでしょう?それだけ大量
の炭素14を作れるのであれば、短時間とはいえ、地球のかなりの部分が雲に
覆い尽くされていてもよいはず。定量的な評価が必要ですね。
ちなみにサイエンスポータルの記事はURLがコロコロ変わるので困ります。
いまはこちらのようです。
●西暦775年に宇宙環境の大変動が起きていた
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2012/06/20120605_01.html
by MANTA (2015-07-31 06:38)
そろそろ気がつきませんか?
by Sen Funa (2015-08-05 10:54)
① 仮に、本件C14の増加が超新星爆発に因った場合。
銀河系の中でも、地球(太陽系)に近い位置の爆発であれば、カニ星雲のように爆発の明るさで気がつくだろうし、超新星残骸が見つかるハズです。
そうでないとすれば、「銀河系でも微妙な位置」なのかもですが、銀河系なり近傍の銀河でガンマ線バーストは滅多に起きない(例:ベテルギウスが超新星爆発してもガンマ線バーストは発生しない)とも考えられるため、「良く解っていない」
② 太陽に起因する場合
巨大なフレアーが発生したのかもしれないが、そんなフレアーは観測されたことが無いため、「良く解っていない」
サイエンスポータルの記事「西暦775年に宇宙環境の大変動が起きていた」って、こういうことですよね。
さて、「スベンスマルク効果はたいしたことが無い」と言うのには、地上実験の成果や実際の反応を見て(一次資料)、それのもっともと思われる解説(二次資料)を提示されるのがよろしいのではないでしょうか?
サイエンスポータルの記事に → 「現在のところは不明だ」 と書いてありますよね。
良く解っていない、不明なことを前提には、「何たら効果はたいしたことが無い」とも、「たいしたことがある」とも、言ってもしょうがないのではと思います。
本件をもって「スベンスマルク効果はたいしたことが無い証拠だ!」と言うのは、むしろ、「スベンスマルク効果はたいしたことが無い派」の足を引っ張るのでは、とか愚考します。
by Sen Funa (2015-08-08 12:55)
(ブログをしばらく更新しておりませんでしたので、コメントに気づいており
ませんでした、失礼致しました)
>サイエンスポータルの記事に → 「現在のところは不明だ」 と書いて
>ありますよね
「宇宙線の増加」は起きていたと思われます(サイエンスポータルでは
「増加の原因」が不明と言っています)。地球全体の大気成分に影響を
及ぼすほどの宇宙線の飛来があったが、気候には変動はおきなかった。
これが今分かっている事実です。このことから単純に考えれば
(+上記に書いた別の事由とあわせて)
「宇宙線が気候に与える影響は小さい」と私は考えています。
逆に、宇宙線増加が放射性炭素14の変化には影響は与えるが、雲発生
には影響を与えない状況があれば「宇宙線が気候に与える影響は小さい
とは言えない」と言えるでしょう(うーん、日本語がややこしい。例=ガンマ線
バーストなどのように短時間の宇宙線増加は炭素14を増やすが雲は
増やさない?) スベンスマルク効果を信奉する方々が、そのようなメカニズム
を探されればよいでしょう。私も興味はあります。
by MANTA (2015-08-21 12:13)