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石炭ガスや燃料電池は救世主か?(1) [ 資源エネルギーを考える]

エネルギー関係の連載の続きである。これまでに例えば下記のような話をしてきた。
原発を誰に任せれば良いのか?
石油価格はだんだん上昇
原油価格はなぜ上昇するか?
これらの記事のコメント欄に「原発ではなく燃料電池や石炭ガスに注目すべきだ」という
ご意見が散見される(といってもお一人の方のコメントだが)。以下は抜粋である。
・このまま原発を続けることは自殺行為そのものです。
・代替は、燃料電池です。既に実用化されています。
・燃料は、都市ガス、LPG、石炭ガス、ゴミ焼却炉ガスなど無限にあります。

このような代替エネルギーは原子力発電の代わりができるのか?
今日は一例として、発電所用の石炭ガスと燃料電池の可能性について考えてみよう。

まず、このような代替エネルギーは結構研究が進んでいる。
図.jpg
(下記資料11,12頁図を加筆修正)
●温暖化ガスを極力発生しない石炭火力発電(電源開発株式会社)
 http://www.brain-c-jcoal.info/news_images/20091101_goto.pdf

たとえば石炭火力発電では石炭でお湯を沸かし「水蒸気タービン」を回している(上図左端)。
しかし最近は、石炭を「ガス化」してから燃やして発電する技術が実用化されている。
(先ほどのPDFファイルにガス化の詳細あり。水素・メタン・一酸化炭素・二酸化炭素を発生)
(石炭ガスは、「合成天然ガス」または「代替天然ガス」の一種である)

なぜ石炭をわざわざガス化するのか? メリットの一つは”二度おいしい”発電方法である
(上図真ん中)。まずガス燃料を圧縮空気の中で燃やし、ガスの膨張力で「ガスタービン」を
回す。次にその熱でお湯を沸かし「水蒸気タービン」も回す。そう、ダブルタイフーンである。

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…わからない人は気にしないで下さい。

この技術、すでに90年代から開発が進められており、実証実験も行われている。
●ニューサンシャイン計画「石炭水素添加ガス化技術開発」プレ最終評価報告書概要
 http://www.meti.go.jp/report/data/g00323ej.html
 国が主導のプロジェクトの報告書(2000年時点)
●IGCC(石炭ガス化複合発電)とは (クリーンコールパワー研究所)
 http://www.ccpower.co.jp/igcc/about.html
 ※同研究所は電力会社の共同出資により2001年に設立
 ※実証試験機(2007~2011年)の最大出力は原子力発電所約1/4基に相当

さらに、石炭ガスに「燃料電池」を組み合わせた”三度おいしい”発電も提案されている。
(上図の右端) 燃料電池については下記資料が図入りで大変わかり易い。
●燃料電池について(電気技術解説講座、日本電気技術者協会)
 http://www.jeea.or.jp/course/contents/09402/
石炭ガス化で発生する水素や一酸化炭素を燃料電池の原料に利用すると、三段階の
発電になり、発電効率は更にUPする。すでに発電所用の大型燃料電池も実用化済みだ。
●10kW級低温作動固体酸化物形燃料電池(SOFC)のモジュール開発(関西電力、2006年)
 http://www1.kepco.co.jp/rd/topics/2006/0410.html
●固体酸化物形燃料電池(SOFC)とマイクロガスタービン(MGT)の複合発電システム
 国内最長の3,000時間運転を達成(出力229kW、三菱重工、2009年)
 http://www.mhi.co.jp/news/story/0910014859.html
●4.5MWりん酸形水冷式燃料電池の実証試験と実用化研究(東京電力、1985年)
 http://dbjet.nii.ac.jp/pub/cgi-bin/detail_pro.php?id=581
 ※SOFCとは異なるタイプだが、MWクラス。1987年に電気学会学術振興賞を受賞。

このようにニ段、三段と発電していけば、発電効率は上がっていく。従来型では、石炭からの
熱エネルギーのうち4割しか電気エネルギーに利用できていなかったが、最新型では6割程度
を電力として取り出せる。素晴らしい技術だ。しかも石炭は、石油や天然ガスに比べると
埋蔵量も多めである。近年の原油高に引っ張られて、石炭価格も上昇傾向だが、石油や
天然ガスに比べるとましというところか?
電気料金にさらなる上げ要因 中国で進む石炭輸入(日本経済新聞)
 
生産国が中東地域に偏っている石油や天然ガスと違い、世界中のあちこちで採取されるの
も石炭の特徴である。なので、ある一地域の政情不安などに左右されづらいと言われる。
coal1.JPG
種々のエネルギー資源の地域別埋蔵量分布
(資源エネルギー庁HPより:石炭政策について

coal2.jpg
世界の石炭埋蔵量と生産量
(あとみんHPより:世界のエネルギー資源と消費

oil.jpg
「石油世界地図(Who has the oil?)」。見方がわからない人は下記をクリック。
http://www.energybulletin.net/node/37329

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それではなぜ、石炭ガスや燃料電池による多段階発電が、火力発電の主力になって
いないのか?上記を見てお分かりのように全国の電力会社が開発に携わっているのに?
つづく。
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コメント 5

yao

V3
同世代はよく分かる。(笑)
ここからの情報でしたっけ? LNGは臨界ガスでタービンを廻し、原子力発電は水蒸気でタービンを廻す。その違いに、エネルギー効率に差があった気がしましたが、上記発電ではやはり水蒸気なんでしょうねぇ。
LNGは発電効率60%位だった気がします。
ちょっと調べてきます。(新しいマーケットを作った池上さん。これが彼との大きな差ですね。彼は頭に入ってる)

by yao (2011-09-21 19:35) 

MANTA

yaoさん、LNG(液化天然ガス)も、上記の石炭ガスとやってることは同じです。
上記の図真ん中のような「ダブルタイフーン」をコンバインドサイクルと呼んでます。
(IGCC=Integrated coal Gasification Combined Cycle)
「コンバインドサイクル」とか「火力発電 効率」などで検索してみてください。
池上先生じゃなくて、グーグル先生が答えてくれます(^^)

by MANTA (2011-09-22 01:50) 

MANTA

yaoさんへ、補足です~
●コンバインドサイクル発電
 http://www.fepc.or.jp/learn/hatsuden/fire/combined_cycle/index.html
発電効率は約50%、MAXで約60%です。
●姫路第二発電所のコンバインドサイクル発電方式への設備更新について
 http://www1.kepco.co.jp/pressre/2009/0226-2j.html
こちらの記事でも取り上げてみました。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2011-09-26
by MANTA (2011-09-26 18:48) 

yao

MANTAさん

ありがとうございます。
コンバインドサイクル発電、覚えました。
ひとつ賢く(?)なりました。(^^)


by yao (2011-09-29 11:51) 

MANTA

いいえ~、私も勉強になりました。
by MANTA (2011-09-29 12:27) 

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