世界最大のガワール油田

前々回の連載記事”原油価格はなぜ上昇するか？”で、下記のご質問をいただきました。
”トゥピ油田とかリブラ油田の巨大油田は今後の原油価格に影響を与えないのでしょうか？”
（eye4ujpさん、ありがとうございます）

これらは最近発見された油田ですね。そりゃもちろん、影響アリですよ。
●石油超大国ブラジルの衝撃（トゥピ油田）
　http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071128/141768/
●ペトロブラス株、６週ぶり高値－ブラジルのリブラ油田で新たな層発見
　http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ahppoZUq9gZs
問題は影響の程度ですね。そのためにまず「世界最大の油田」を見てみましょう。


それはサウジアラビアにあるガワール油田です。1948年に見つかったこの油田は
幅は30km程、長さは280km程。日本列島と比較すると上の図のような感じです。
（黒い部分がガワール油田の大きさ）。東京～名古屋間に匹敵する大きさなのです。
推定可採埋蔵量は660億バレル。もう、「デカイ」ということしか分からない（笑）

さて、このような世界の大規模油田のTop 10、実はすべて、1977年以前の発見です。
●世界の主要油田、ガス田の概要（資料・参考図）（石油便覧：ＪＸ日鉱日石エネルギー）
　　http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/data/pdf/7.pdf

一方、1978～2000年に発見された油田のうち、Top 35に入るのはわずか4つ。先に
ご紹介のあったトゥピ油田は確認埋蔵量50億～80億バレル（天然ガスを含む）なので
Top 30に入るかどうかです。リブラ油田の可採埋蔵量は最大150億バレル（推定）なので
これはTop 10に入るかもしれませんが、Top 5はとても無理ですね。仮に音楽業界で
喩えれば「大型新人登場！」っていっても、CD売上は100万枚には届かずに
50万枚くらい、それでも最近でいえば大ヒットですよ～ってかんじですか？

一方で、世界は石油をがぶ飲みしています。年間で約300億バレル。150億バレルの
新発見の油田でも、それだけだと世界を半年しか支えられません。ガワール油田でさえ
それ単体だけだと、世界を2年間とちょっと支えたら干上がります（！）。


Smiling Camel by ST33VO (protected by CC License)
写真のラクダの対岸がサウジアラビアだそうな。

実は先に紹介したガワール油田もピンチです。年老いた油田のため、すでに自噴できず、
大量の海水を油田に押しこむことで強制的に石油を回収していると聞いてます。さらに、
噂ですが（WikiLeaks）、あるサウジアラビア政府関係者の話では、サウジアラビアの
原油埋蔵量の残りはあと4割ほどかも、とのこと。また別のサウジアラビアの地質学者は
2007年11月頃に、原油を増産すれば原油価格上昇を抑えられるが、それに必要な原油
生産量をサウジでは達成できないと述べたとか。なるほど、2006年2月の下記記事では
サウジが今後5年間、石油を増産するとありますが、、、
●原油価格はなぜ上がる？その要因・原因
　http://allabout.co.jp/gm/gc/292744/2/
実際には2007～2010年の生産量は2006年を下回っています
●BP Statistical Review of World Energy 2011
　http://www.bp.com/sectionbodycopy.do?categoryId=7500&contentId=7068481

つまり、年間に300億バレルずつ、新たな油田を発見しなければ徐々に油田は枯れていく
わけですから、世界中で石油を探しています。こうなったら深海でもどこでも構いません。
トゥピ油田・リブラ油田といったブラジル沖の海底油田はこうして見つかりましたが、
前回に書いたように、これらの石油の採掘コストは従来の油田よりも高くなると思われます。

”地球は広い、最新の科学技術で探せば、未知の大規模油田が見つかるのでは？”と
思われる方は多いと思いますが、このように新たな油田はなかなか見つからないし、
見つかっても手放しでは喜べないようです。