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アマチュアによる地震予知 (1) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

昨日は防災の日だったので、連載「電磁気で地震予知」を更新いたしましょう。
そういえば先日の記事にこのようなコメントをいただきました。

  「腰が痛い」「虹の雲をよく見る」などで地震の予知はできないのでしょうか?
  ※原文はこちら。China Roseさん、ありがとうございます。
  宏観異常現象なのですが、以前書いておられたように、夜みた夢を朝になって
  遡行して再構築するような例が多く、それを前兆と受け取る側に帰する問題も多いように思います。
  でもエビデンスとして使えるものはまったく無いんだろうか。

「耳鳴りがする」「ペットが吠える」などの地震の前触れ現象は、「宏観異常現象」と
呼ばれていて、これを用いた地震予知の試みはこれまで何度も行われて来ました。


上記は2008年の四川大地震のときの、日本での宏観異常現象の報告数です。
ただ実際には四川大地震ではなく、その前に茨城県沖で発生した地震の影響を
強く受けていました(→ http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-09-08 )。
宏観異常現象とは人間の心理が生みだした物にすぎないように私は思いますが、
しかし本当にこれらの中には地震予知に役立つ情報は埋もれてないのでしょうか?

宏観異常現象には多くの人が興味を持っています。例えば上のグラフは、宏観異常現象
への国民の関心度グラフとも言えます(まさにいまの日本でも地震の前兆への関心度は
UP中でしょう)。身近な現象の変化から地震を予知しようという試みは、プロの研究者
(=給料をもらって研究をしている大学や企業の研究者)ではなく、アマチュア研究者の
独壇場といってもよいでしょう。ただどうも、宏観異常現象の調査方法が誤っているケース
が非常に多いように感じます。例えば下記は地震雲の調査方法に関する本ですが…

わかりやすい地震雲の本―これであなたも大地震を予知できる

わかりやすい地震雲の本―これであなたも大地震を予知できる

  • 作者: 上出 孝之
  • 出版社/メーカー: 北國新聞社
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 単行本


著者は次の方法で124回の地震予知のうち、実に99回を「的中」させたそうです。
・地震雲全体の8割を占める帯状形地震雲については、帯の伸びる方向(例:東西)もしくは
 それに直交する方向(例:南北)の4方向のどれかが震源の方向
・地震までの日数は雲の大きさで判断、震度は雲の鮮明さや色で判断
・震源地までの距離の測定方法は不明

正直、こんな曖昧な方法だったら凄い的中率で予知できると思います。本書によれば、
著者は地震雲の複雑な形状を見極めるのに10年以上かけたそうですが、もしも一言
相談していただければ、次のような簡単なことを試してもらっていたことでしょう。
・1箇所にずっととどまっている変な雲に注目してみてはどうか?
 (地震雲が大地の影響で現れるのなら、風に多少流されても一箇所に出続けるのでは?)
・地震雲の原因は電磁波やイオンらしいが、あわせてそれも測ってみては?
雲の観察日記や随想としてはおもしろいのですが、もったいない一冊です。

P8280245.JPG
この日曜日に琵琶湖で見た夕焼け。

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一方で、同じアマチュアの方による研究でも、素晴らしいものもあります。
●ケロ君の地震予知
 静岡市発 大気中イオン濃度測定で地震予知しちゃおう!
http://www11.ocn.ne.jp/~juno/page5.html
2003年から現在まで、大気イオン濃度比を毎日測定されていて、これと地震活動との
対応を記し続けています。ここまできちっとデータを整理・公開することはとても大変!
その努力と好奇心に脱帽です。

これなら第三者の私でも、予知精度の検証ができてしまいます。例えば的中率。
こちらのサイトの情報をみたところ、2003年以降、64回の地震予兆を検出したそうで、
このうち30回が的中しています。的中率はなんと、約47%!
ただ現時点では「予知したら偶然当たった」確率とあまり変わらないようです(注1)。
私個人の正直な考えとしては、大気イオン濃度の変化では地震予知はできないと
思っています。以前にラドンによる地震予知について書きましたが、同様の意見です。
(→ http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-05-07 )
でもそれもちゃんと測ってみないと分からない。将来、すごい発見に繋がるかもしれない。
こういうアマチュア研究者による、丁寧な地震前兆の調査については応援したいと思います。

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これらを踏まえて、アマチュアの研究者の方々に地震前兆現象、あるいは広く地球の
現象を観測の際に心にとめていただきたい五箇条を下記にまとめてみました。
1)地震の前兆現象などは、長期間の地球の変動によるものです。
 観測方法をコロコロ変えずに、継続的に粘り強く観測してみてください。
2)観測データの記録・整理を行って、あとで地震活動や気象情報と対比してみてください。
3)「地震雲は同じ場所に継続的に漂うはず!」などの仮説をたてて観測するとベターです。
4)ある程度データがまとまったら、第三者に見てもらって下さい。
5)一見うまく予知できなくてもガッカリしない! 実はそのデータの中に驚くべき発見が
 眠っているかもしれません。あるいは地震前兆以外の別の現象も発見できるかも?

といってもねぇ、アマチュアでは限界があるよ。という声が聞こえてきそうです。
次回は、プロの研究者とアマチュアの研究者の付き合い方について考えてみましょう。
続きます。

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注1:
ケロ君さんのホームページに記されている予測ルールによれば、大気イオン比異常が起きてから10日以内に
ある程度の大きさの地震が起きれば的中としているそうです(8日以内の場合もあり)。さて、同ページにある
2010年の予知可能と思われる地震数は15~20回ほどです。ということは、地震の平均発生周期は
365日÷15~20回=約18.3~24.3日。予兆期間の10日間がこの24.3日間に偶然含まれる確率は
10÷18.3~24.3 =約41~55%です。予兆期間が8日間の場合は、約33~44%です。
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China Rose

記事拝読いたしました。お忙しいところ、テーマとしてとりあげて頂き、有難うございます。

おそらく、大きな現象は、一つの要素の発現として決め得るものではなく、近づくことができるとしたら、何種類かの要素の連動であることを解きほぐしてゆく必要があるものだと思います。まあ、簡単にカオスになりそうなぐらい要素が絡みそうですけど。先般の北大の先生の電子量の話は、そのうちの一つの要素を決め得るかも知れない点で、朗報と思いました。あとは「随伴症状」とでもいうべきものをどう分析して見つけてゆくかがカギかと思います。一つ要素が決まれば、その分野の「研究者」としてはそれぞれ一定の道筋ができているのが普通ですから、有効な要素の類推が可能かなと。それから構築して、たとえば「こういう雲がでるはずだ」という仮説ができると、それを検証しやすいでしょう。

素人でもできることとしては、そのためにはまずは随伴症状として考え得るものを要素に限らず全体的に「網羅」することが必要だろうと思ったんですよね。それはともすれば要素分析をつたってものを考えがちな研究者の手助けになるかもしれない、と。まあ、宏観異常現象として挙げられているものが有効な「網羅」になるのかどうか、難しいところですね。

…どうもひとさまのブログで長文を書くのは、勝手にひとさまの家にあがりこんでお茶を淹れているような気持ちになります。まずはお礼まで。次回楽しみにしております。今晩はこれにて失礼。
by China Rose (2011-09-02 20:14) 

MANTA

>先般の北大の先生の電子量の話は、そのうちの一つの要素を決め得る
>かも知れない点で、朗報と思いました。
そうですね、本当に興味深い結果だと思います。私もなにかで電離層とか
地表の電荷を測定できないか、考え始めています。

>素人でもできることとしては(中略)全体的に「網羅」することが必要だろうと
>思ったんですよね。
あるホームページにはこう書いてありました。
『身の回りに起こることはすべて何かのメッセージである』
しかし漫然と観測すれば地球のことがわかる、というほど甘い話ではない
と思います。どうしたらいいでしょうね?次回少し触れてみたいと思います。

宏観異常現象といっても、地球の上で起きる自然現象を地震に結びつけて
考えているだけです。まずは自然現象をちゃんと観測する、というマインドが
大事な気がしています。
by MANTA (2011-09-02 21:50) 

MANTA

ちなみにこの記事は実は下記の続きでした。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2007-05-31
4年越しのアップとなりました。いやはや。
by MANTA (2011-09-02 21:57) 

小林大治

私は神奈川県で探偵をしています,地震予知について3月11日以降
左の脳が震度3,4以上を1、2日ぐらい前に、頭痛とわ違う細い金属音
するのです、この強弱で陸か海かの震源地だいたいわかるみたいなんです、今も9月3日am9時仕事で伊東にいて結構きてます、これってなんですか。
by 小林大治 (2011-09-03 09:45) 

China Rose

お答え有難う存じます。すみません、勝手にお茶をおかわりします、おかまいなく。

四年前からのテーマをたてられていたんですね。

私がここに初めて投稿したテーマは「ぢるそば」なんですが、少々綴りが違っていようが、(英語と違って)「ゆらぎ」をもたせた「あいまい」な状態でも日本語は「ゆるく」読めてしまうというようなお話は、以前にも書いておられましたね。MANTA先生はたぶん、同一のずっと気にかかるテーマがいくつか(狭義の専門、の外でも)おありになるということでしょう。私は、脳科学者・池谷裕二氏の「悪酔い天下暴れ」を読んだ時に、どうも日本人が片言をシチュエーションを共起させて聞きなし判断する能力が高く(言い方を変えると共起するシチュエーションが限られている?)、それが視覚にも及びそうだという感じがあったのですが、なんとなく放置しておいた話題だったため、「ぢるそば」からさかのぼって興味深く拝読しました。

宏観異常現象とぢるそばには共通点があって。観測データと見た目あるいは実感。左脳と右脳。科学と俗説(迷信、伝承)。研究者と素人。研究室と家庭。他にももっと言い方があるでしょうが、その狭間の問題なんですよね。あっ、つまりこのブログそのものがそういうスタンスか、そうか(ニブくてすみません)。

「観測」という言葉を見て、やっと、自分が何がわからなかったかと、MANTA先生のスタンスとが、わかった感じです。了解了解、メリット5。「腰の痛み」と「雲」は、私は別して考えるべき例として挙げたつもりでしたので、そこは一概にすべきではないかなと。「腰の痛み」や生物のそれらについては、「生物気象」とか「気象医学」とか、それらの及ぶ範囲の問題でもあります。分野間の連関と、俗説・素人と研究者の間は、これも別問題か同一なのかは、「科学コミュニケーション」で書いておられることに係るでしょうが、これも簡単な問題じゃないですよね。

…昨日、そういや地震を「病理」と決めつけて考えていたなと。地球の側から見れば、ごくまっとうな生理現象かも知れない、と、思いました。人間にとってごく不都合なのですが。

さてお茶碗を洗ってと…とにかくMANATA先生のブログは、「乾物屋」さんがおっしゃっておられたように、資料を提供して頂いてとても有難いです。ご研究の合間に、お続けくださいね!失礼いたします!




by China Rose (2011-09-03 10:46) 

MANTA

>これってなんですか。
小林大治さん、お医者さんに行かれるとよいでしょう。病気ではないようでしたら
金属音が起きた時間や場所、金属音の強さをその都度記録しておくと、何か
理由がわかるかもしれませんね。

----
China Roseさん、コメントありがとうございます。
>宏観異常現象とぢるそばには共通点があって。
言われて見ればそうかもしれませんね。あとはその謎というか、面白さを
どのように探求するかということでしょうね。

>…昨日、そういや地震を「病理」と決めつけて考えていたなと。
先日、高校生から同様の質問をいただきましたっけ。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2011-07-04

by MANTA (2011-09-03 12:23) 

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