SSブログ

電子書籍で学ぶ著作権 [ ブログ著作権メモ]

先月、当ブログで2回ほど電子書籍のお話をしました。
電子書籍はなぜ流行らないか?
印刷業界が電子出版を嫌う理由
これらの記事を書くにあたり、著作権の話題もたくさん出てきましたので、
ものすごく久々に「著作権」のことを考えてみました。
Q&A方式にしたので、みんなも考えてみてね。

Q1)電子書籍の波に伴って、背表紙を裁断した本の売り買いが流行り始めてるけど
    著作権法に違反しないの?
Q2)そもそも古本の売買っていいの?許可とか、著作権料ってどうなってるの?
Q3)自分の本を裁断してスキャンしてくれる有料サービスも合法?
    そもそも、元の本は私がお金出して買ったんだし。
320_3470579450_0103c46ea9.jpg
Kindling by oskay (protected by CC License)
木でできた電子ブック。ほしい。でも動かない。

答えはこちら。
----
Q1)電子書籍の波に伴って、背表紙を裁断した本の売り買いが流行り始めてるけど、
 著作権法に違反しないの?
     ↓
A1) まったく問題ありません。「キズものの古本」を売り買いするだけですからね。

----
Q2)そもそも古本の売買っていいの?許可とか、著作権料ってどうなってるの?
     ↓
A2)売り買い自由です。著作権料などは新刊購入時のみにかかります。古本売買時の
著作権料は「2重・3重取り」になるのでかかりません。これを「消尽」と呼びます。
下記サイトのイラストがわかりやすいです(著作権料ではなく特許料の場合ですが)
●IT事業と知的財産権法[15]リサイクルビジネスや中古品ビジネスと消尽理論の関係
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20091126/341144/
ただし映画”だけ”は例外。DVDやフィルムを売買しても著作者の権利は残ります。
●映画を守る頒布権とは - ネコにもわかる知的財産権
 http://www.iprchitekizaisan.com/chosakuken/zaisan/hanpuken.html#ti01
●中古ゲームソフトの著作権:LEC弁理士サイト
 (中古ゲームは売り買い可能で、映画はそうではない理由がまとめられています)
 http://www.lec-jp.com/benrishi/begin/faq/hanrei/faq14.shtml

----
Q3)…ってことは、自分の本を裁断してスキャンしてくれる有料サービスも合法だよね。
 そもそも、この本は私がお金出して買ったんだし。
320_4035210519_aaac4c2027.jpg
First Cut by Ms. Tharpe (protected by CC License)
裁断機ってこんな感じらしいよ… ズバー!
     ↓
A3)残念。そうはいかないのです。このサービスは著作権法違反です(※)。
一部サイトでは、下記のような主張もあるようですが、
●ブックスキャン代行サービスは合法だよね?(404 Blog Not Foundさん)
 http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51434363.html
ここでまず、スキャンという行為が何かをあらためて考えます。
スキャンとは、CDやDVDで言うところのダビングです。著作権法では「複製」と言います。
この複製、個人利用のレベルでは自由です。たとえば自分の本を自分の手でスキャンする
のは自由だし合法です(これを「私的複製」と呼びます)。

ところが、業者などが自動複製的な機械を使ってスキャンすることは私的複製に入らず
著作者などの許可を得ないと違法です。これは法解釈がどうのというレベルではなく、
著作権法第30条第1項第1号に明確に書かれています。詳しくは下記をご覧ください。
●コピライトQ&A(著作権相談から)(著作権情報センター)
 http://www.cric.or.jp/qa/sodan/sodan14_qa.html
●Webで著作権法講義 > 私的複製
 http://copyright.watson.jp/private_use.shtml

----
つまりは「物」としての本は、古本のやり取りが自由なように、一度販売された後は著者や
出版社の権利は及ばないのですが、「電子コピー」としての本には再び著者や出版社の力が
及ぶのです。なんか釈然としませんが、これが「著作権法」なのです。では、法律が改正されて
電子コピーを使いやすくなる日は来ないのでしょうか?下記によれば、どうやら来ないようです。
●<反>知的独占 (池田信夫blog part2さん)
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51487972.html
「問題はそれをどう改革するかだが(中略)日本の現状では、絶望的というしかない。」
だそうです。しかも池田氏は、改革は全世界的に絶望的であり、グーグルなどが「世界を
支配」でもしなければ、本質的な改革はできないのではないか?と締めくくっています

さて出版社はこういう議論をどう見ているのでしょうね? このままだとより活字離れが
進むのでは? あるいはボンヤリしてると海外の出版社に電子書籍業界を牛耳られる
かもしれませんよ(日本語の本もね!)。

240_4684179231_30a103376e.jpg
スターバックスコーヒー新宿南口店 by jediduke (protected by CC License)
カフェで電子ブック。あの頃の未来に僕らは立ったのにね…
次回連載記事へ続きます。

※注:そういう指摘が多かったためか、スキャンサービスは「裁断サービス」へと移行して
 いるようです。裁断まではしますがスキャンはご自身で、というわけです。

※追記(2010/10/28)
 下記のブログを読むと、電子出版の未来は明るくないように思います。はぁ…
 ●講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について(池田信夫Blog)
  http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51493371.html
  ・著者は自分の作品のデジタル的利用を行なわないこと
  ・デジタル書籍の所有権は出版社にあり
  ・印税は15%程度(アマゾンなどより大幅に低い)
nice!(6)  コメント(1)  トラックバック(2) 
共通テーマ:学問

nice! 6

コメント 1

MANTA

追記:こちらのサイトに良くまとめられていました。
●今流行の書籍電子化の違法性とグレーゾーンのまとめ
 http://blog.livedoor.jp/businesslaw/archives/52029061.html
by MANTA (2010-10-24 01:38) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。