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印刷業界が電子出版を嫌う理由 [▼科学ニュース New!]

先の記事「電子書籍はなぜ流行らないか?」で、"本のページをパラパラめくるだけで
スキャンできる装置があるのでは?"というコメントを頂きました。
(げおさん、ありがとうございます)

それはこちら。
●ページをパラパラめくるだけでスキャンしてくれる技術が実用化されるそうです
 http://www.gizmodo.jp/2010/09/post_7616.html

実はほぼ同じ技術が「海底調査」にも利用されています。
新規作成_1.jpg
東大の水中ロボットの研究室では、海底から高度数mを維持しながら移動できる
自動航行ロボット(AUV)にデジカメを搭載して、海底を写真撮影していますが、
これだけでは海底の立体的な凸凹はわかりません。

そこでレーザー光を利用します。上図のようにレーザーを斜め前に照射し、海底と
一緒に撮影するのです。海底が平らだったらレーザーの軌跡は横一文字に真っすぐ
ですが、デコボコがあると歪みます。この歪みを逆に利用すれば、海底のデコボコを
デジタル化できるので、3D的な海底イメージを撮ることができるというわけです。
下記のサイトで、実際にレーザーを照射している水中ロボットが紹介されています。
●東京大学生産技術研究所千葉実験所一般公開レポート(Robot Watch)
 ~浦研究室の最新型水中ロボット「TUNA-SAND」と10年選手の「Tri-Dog 1」がデモ
 http://robot.watch.impress.co.jp/img/rbw/docs/336/239/html/ph23.jpg.html

最初にご紹介した「パラパラスキャナー」は、この水中ロボットの逆で、本のページの
湾曲度をレーザーで測定し、平坦なページに戻すわけです。どちらも東大発の新技術
ですが、両者の最大の違いは、スキャン(撮影)の速度でしょう。パラパラスキャナーを
開発した研究室は、高速カメラとその画像処理をもともと得意としていて、ロボットが
投げたボールをロボットが打つ!といった研究にも成功されているらしい(すごい!) 
だからこのようなスキャナーを思いついたんですね。
●東京大学 情報理工学 石川小室研究室
 http://www.k2.t.u-tokyo.ac.jp/index-j.html
ちなみにパラパラスキャナーの最大の問題点は「いかにしてページを上手にめくるか」
だそうでして、この研究室ではそれをロボットにやらせよう!と新たな研究を開始した
とか。パラパラ本をめくるロボット。なんかすごい絵ですね。

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ただこのような素晴らしいスキャン装置を個人で買えるはずはなし。またスキャン請負
会社に頼もうとしても、著者や出版社の合意がなければ違法になります。結局、電子
出版の問題は、出版社や印刷業界に起因するわけですが、ここで先日の記事に頂き
ました、もう一つのコメントをご紹介しましょう(HIROMIさん、ありがとうございます)。

”日本は本が消費者に届くまでが複雑だそうです。電子書籍化されれば、問屋のような存在が
必要なくなるんでしたっけ?”

そうなんです。まず本が売れたとして、著者には売り上げの10%程度しか入らない
そうです。本屋さんにも20%しか渡りません。売り上げの3割以上は印刷・製本に
かかっているそうです。
●コンテンツ産業の「25%ルール」(池田信夫Blog part2)
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51376379.html
上記の数字を円グラフ化するとこんな感じ。
book.jpg
なので、電子出版が進めば、印刷・製本の35%は圧倒的に縮小されるでしょう。
10%の取次もぐっと減るのでは?

逆に上の円グラフを見ると、印刷業界が本の電子出版に大反対するのも、よく
わかりますね。出版社にとってはどうかなぁ?自社で印刷・製本事業をやっている
大手は困るかもしれませんが、外注している出版社にとっては得になるのでは?
そのあたりから電子出版が盛んになればよいのですが… ちなみに上記ブログ
では映画とテレビの場合の製作側の取り分も明らかにされていて、25%と10%弱
だそうです。製作者の取り分の低い出版業界とテレビ業界が、それぞれネット化に
反対しているのも偶然とは思えませんね。CD業界はどうなのかな?

あと著者自身の儲けも電子化されれば増えるでしょう。いまのところ、著者に支払われる
原稿料はここ30年ほど変わりなく、原稿用紙1枚あたりで5000円ぐらいだそうです。
●電子出版の経済学(池田信夫Blog part2)
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51375630.html
電子出版になると、原稿料も変わってくるのかな?実はそういう話もあるようですね。
いいクリエーターがいなければ、コンテンツ産業はなりたたない。ユーザーも次第に
離れていく。業界の短期的な生き残りだけ考えていては、長期的には絶滅するかも
しれないので、体力のあるうちに新しい手を打ったほうがよいように思います。
(これは印刷業界だけではなく、どの業界もそうですね)

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