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温暖化データにトリック? [ 地球温暖化を学ぼう]

当方が米国出張中に、コペンハーゲンでは地球温暖化に関する会議が開かれていた。
米国のニュースでも大きく取り上げられていたが、基本的には物別れに終わったようだ。
●COP15、「コペンハーゲン合意」を承認 「留意する」との表現で
 2009年12月19日 21:38 発信地:コペンハーゲン/デンマーク
 http://www.afpbb.com/articles/-/2676676?pid=5064784

その一方で、(11月末ごろから話題になっていたが)温暖化を示すデータに
トリックがあったのではないかという噂が持ち上がっている。
温暖化データに「トリック」?研究者メール暴露(読売新聞)
上記記事は関係者からの電子メール流出が元ネタの様で、
”(地球温暖化傾向とは異なる)気温の低下傾向を隠すため「トリックを終えた」と米国の
研究者に送信したメール”等が含まれていたそうだ

私のところの学生も最近「温暖化はねつ造らしいですね」と言ってくる。ところがこの話、
実はもうとっくの昔に「疑惑」として知られているのだ。ちょっと解説をしておこう。

今回話題になっているのは、過去から現代までの気温変動の曲線である。
ondan.jpg
20世紀になってからの気温の急上昇がホッケーのスティックに似てるので、
「ホッケースティック曲線」とよばれている。例えば下記ブログにグラフが紹介されている。
●地球温暖化(3)温暖化の程度(連山)
 http://www.teamrenzan.com/archives/writer/nagai/warming-abnormality.html
●IPCCの「データ捏造」疑惑(池田信夫Blog Part2)※
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51316866.html

これらの記事にもあるように、ホッケースティック曲線はIPCC(気候変動に関する政府間
パネル)が2001年に出した第3次報告書に大きく取り上げられたが、その後すぐに数々の
疑問が生じたため、2007年時点の第4次報告書には含まれなかった政策決定
者向け要約には含まれなかった(報告書本体には、参考データとして含まれてはいる)。
今回流出したメールはあらためて、それが意図された作業であったことを示すにすぎない。

----
ところで、ホッケースティック曲線はウソマボロシだったのか?そうとも言えない。
Wikipediaの「ホッケースティック論争」によくまとめられている。そこにある複数の過去~現在
への気温変動を見てほしい。結局、他の多くの追試によっても最近100年間の気温上昇が急で
大きいことは明白だ。今回の「ねつ造」問題は確かに問題であったかもしれない。科学論文は
「研究者の善意」をベースに採択されているため、このような「ねつ造」はしばしば問題となる。
詳細はこちらをご覧いただきたい)。しかし一方で、このようなウソはいずれ暴かれるか、
あるいはウソではなく”大胆な仮定”であったことが立証される。 これが科学である。

ただし、過去数千年で見ると、例えば西暦1000年頃(中世)の気温が今と同程度に高く、
その前後の気温変化が急なこともまた事実の様である。従って、ここ100年間の気温変化が
急だからと言って、地球温暖化=人的要因と考えるのは、さすがに短絡的すぎるであろう。

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「ねつ造」の話題に戻すが、以上のようにすでに「終わった話題」なので
「もう何年も前に議論が始まり、その真偽も含めて十分に議論されている話題」なので
いまさら「地球温暖化はウソだ!」「学者が国民の目を欺いて予算を取ろうとしている!」
「先進国が途上国に足かせをはめるための陰謀だ!」などと騒ぐのはやめた方がよい。

そんな地球温暖化懐疑派の人たちのために、ここはひとつ、本ブログでも
CO2要因ではない地球温暖化」を書いてみようか?そして温暖化はウソだとか
人為的ではない、と言う人たちには、ぜひその記事を引用いただきたい。
次回、次々回の連載記事で書いてみよう。お正月休みをお楽しみに!?

----
※ちなみに池田氏のブログの訳は少し間違っている。このメールは1999年時点であり
1998年に出版されたNatureの論文を遡って「ねつ造」することはできない。メールの
Subjectを見るとどうやらWMO(世界気象機関)の報告書に関するやり取りのようだ。
下記のWiredvisionの記事のほうが正しいだろう。またこの「トリック」がもし本当だとしても
「捏造」「工作」と言うより「不適切な引用」と言うべきであろう。
●「温暖化は捏造」論争が過熱:メール流出で
 http://wiredvision.jp/news/200911/2009113022.html

※追記(2009/12/30)
1998年のNature 論文については、米国科学アカデミーはその一般的主張を支持している
ようです(=トリックというわけではなさそう)。またtmiyamaさんから頂きましたコメントに従い
まして、上記文章のうち誤解を与えそうな部分を一部改編しました。(訂正線部分が原文)
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アヨアン・イゴカー

>●「温暖化は捏造」論争が過熱
牽強付会的な文章の引用、データの引用は非科学的です。
>CO2要因ではない地球温暖化
この記事、楽しみにしております。
by アヨアン・イゴカー (2009-12-27 14:33) 

MANTA

>牽強付会的な文章の引用、データの引用は非科学的です。
アヨアン・イゴカーさん、学者にあるまじき行為です。とはいえ、結構ギリギリ
の渡世であるのも事実。最新科学って最先端(Leading Edge)ですね。
by MANTA (2009-12-27 16:35) 

tmiyama

私も「海の研究者」です。
いつも興味深い内容で、感心して拝見しています。
しかし今回は論旨がよくわかりませんでした。

ホッケースティック曲線をいろいろつつくことで、地球温暖化理論全体の否定に論理飛躍する否定論者というのは確かに非常にやっかいなものですが、それをかわすためなのか、ホッケースティックは過去のものだからそんなとこつついたってだめだよって形でdefenceする人がなぜか意外に多く、私にははなはだ疑問です。(ただし古気候学は専門ではないため、私の知らない情報があるならば、意見を変えることにやぶさかではありません)
たとえば
「すぐに数々の疑問が生じたため、」 それを理由に 「2007年時点の第4次報告書には含まれなかった」というのは実際にそれを裏付けるreferenceはあるのでしょうか?
"もうとっくの昔に「疑惑」として知られている" "すでに「終わった話題」"と(弧つきというのはわかっています)厳しい言葉を投げつけていますが、IPCC2007の報告書を読むにつけてもそのようなニュアンスはかんじられません。古気候学というuncertainityのなかからなんとか情報をつかもうとしている分野に対してこのような情緒的な言葉は敬意がかけてませんか?(もちろん具体的科学的な批判があるなら大いにやるべしです。)
最後に「不適切な引用」とは何を指しているのでしょうか。どのような引用をすべきだったお考えでしょうか?
Jones本人の説明は
http://www.uea.ac.uk/mac/comm/media/press/2009/nov/CRUupdate
他の研究者による説明も多数ある中の一例ですが
http://www.ucsusa.org/global_warming/science_and_impacts/global_warming_contrarians/debunking-misinformation-stolen-emails-climategate.html
私は「捏造」もちろん「不適切な引用」とか特に感じないのですが。




by tmiyama (2009-12-29 00:11) 

MANTA

tmiyamaさん、本物の温暖化の研究者からコメントを頂けるとは、ありがたい
ことです。緊張しますね、こちらは全くの専門外ですから。
本文の趣旨が伝わらないとのこと、恐縮です。以下、補足します。

まずMannらのいわゆるホッケースティック曲線は、IPCCの第3次評価報告
書のうち政策決定者向け要約(2001)には含まれていましたが、第4次
評価報告書の同要約(2007)に含まれていないのは事実です。
それを踏まえて本論の趣旨は以下の2点です。
・Mannらのホッケースティック曲線にまつわる議論はいまに始まったことでは
 ない。いまさら「データ捏造の新事実だ!」などと騒ぐ話ではない。
・その後の多数の研究結果により、ここ100年の温度上昇が急であることは
 疑いないようだ。すなわち「終わった話題」である。

>「すぐに数々の疑問が生じたため、」それを理由に「2007年時点の第4次
>報告書には含まれなかった」というのは実際にそれを裏付けreference
>はあるのでしょうか?
McIntyre and McKitrick(2003)が有名ですね。詳細は、下記Wikiを
ご参照ください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Hockey_stick_controversy
by MANTA (2009-12-29 12:52) 

tmiyama

補足していただいたことをコメントをみても「不適切な引用」が何を指すのかはわかりませんでした。以下は補足コメントに対してです。
ご紹介の英語のwikiのHockey_stick_controversyを読みましたが、「すぐに数々の疑問が生じたため、2007年時点の第4次報告書には含まれなかった」を裏付けるような資料は見つけられませんでした。ひとつそれに近いと思ったのは、Hans Von Storchのコメント(wikiの文献56)を読むと「The 4th Assessment Report of the IPCC now presents a whole range of historical reconstructions instead of favoring prematurely just one hypothesis as reliable.」というのがあります。しかし、他の研究ものるようになりました(この言い方は理解できる)、というのと、ホッケーダイアグラムは削られました(この言い方は理解できない)と言うのは位置づけとして似て非なるものですよね。
おそらくmantaさんと私の意見の相違は政策決定者向け要約の位置づけなのでしょう。政策決定者向け要約というのは政治的な思惑のある文章で、にもかかわらず図が掲載されことは確かに意味のあることでしょうが、本体報告書に掲載されたが政策決定者向け要約に掲載されなかった(こちらの図のほうが大多数)ことは科学的な意味が減じている証拠だとは思わないんですよね。2007年の報告書は政策決定者向け要約は古気候学全体があっさりとしたサマリーになっているようです(本体報告書では立派に一章にになっている)。なぜこのような扱いにしたか(仮にホッケースティックが問題だとしても別の図をのせてもよかったわけだ)、本当のreferenceがあれば知りたいところです。

by tmiyama (2009-12-29 15:17) 

MANTA

>おそらくmantaさんと私の意見の相違は政策決定者向け要約の位置づ
>けなのでしょう。本体報告書に掲載されたが政策決定者向け要約に掲載
>されなかった(こちらの図のほうが大多数)ことは科学的な意味が減じて
>いる証拠だとは思わないんですよね。
tmiyamaさん、コメントありがとうございます。ただ上記はtmiyamaさんの
解釈にすぎませんね。事実は「ホッケースティック曲線は第4次の政策決定
者向け要約に掲載されなかった」です。また同曲線が第3次報告書の同要約
に掲載後に論争を生んだのも事実です。
by MANTA (2009-12-29 18:04) 

MANTA

>私は「捏造」もちろん「不適切な引用」とか特に感じないのですが。
tmiyamaさん、ご指摘ありがとうございます。
あらためて、下記ページの中段([27] 付近)を読むと、
http://en.wikipedia.org/wiki/Hockey_stick_controversy
米国科学アカデミーの結論では「オリジナルのホッケースティック曲線やその
後の新発見に基づけば、北半球のここ数十年の気温は過去1000年のうち
最も高い」とありますので、これによれば不正なトリックはないようですね。
by MANTA (2009-12-29 19:03) 

tmiyama

あまりこれ以上はしつこくは書きたくありませんが、ブログのもともと記事は「第4次報告書には含まれなかった」であって、「第4次報告には政策決定者向け要約には含まれなかった」ではありませんでした。(この記事読む人は報告書本体を見る機会のある人はそれほど多くないのかもしれません。報告書本体のリッチな科学的議論に触れる機会のない人に、もともとの記事がどのような知識を与えるかもう一度ふりかえられてはいかがでしょうか)しかも「数々の疑問が生じたため」と解釈が述べられていたので、それにreferenceはあるのですか?とお聞きしたわけです。「科学的な意味が減じている証拠だとは思わないんですよね。」というのはもちろん私の解釈にすぎません。ですから、第4次報告書で何故このような扱いになったか本当のreference(IPCCの議事録とかあれば)が知りたいところと書きました。
以上で私の言いたいことはつきましたので、私のコメントは切り上げたいと思います。ブログに議論を吹っかけるよう形で失礼しました。コメントの冒頭にも書きましたように、普段より楽しみに拝見させていただいてます。今後とも期待しています。
by tmiyama (2009-12-30 00:29) 

MANTA

tmiyamaさん、丁寧なコメントありがとうございます。確かに上記表現では
誤解を招くかもしれません。若干書きなおしましたのでご参照ください。

私は温暖化研究の専門家ではありません。この連載も自分宛の覚え書き
が元になっています。IPCCの報告書を詳細に紹介することもあえてせず、
どこまで簡単に温暖化を理解できるか?を念頭にした連載記事です。
科学的詳述が甘いところも多々ありますがご容赦ください。
「Mannの論文は正しいのさ!」というバシっという記事は、tmiyamaさん
のような専門家の方にお任せしたいと思います(^^)
by MANTA (2009-12-30 09:22) 

MANTA

こういうページもありました。ご参考まで > 読者の皆様

ホッケースティック論争
http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/memo/hockey.html
by MANTA (2009-12-30 11:46) 

kaoru

おはようございます。
色んな事を教えて下さり
素敵な記事を楽しませて頂き
ご訪問頂きとお世話になり
有難うございました。
来年も宜しくお願い致します。
よいお年をお迎えください。
by kaoru (2009-12-31 10:10) 

MANTA

kaoruさん、丁寧なご挨拶を頂きまして、ありがとうございます。
いつもブログ拝見しております。来年もよろしくお願いいたします。
(といいつつ、このあと今年最後の記事をUpするつもりです)
(でも年賀状ができあがってからね!えへへ!)
by MANTA (2009-12-31 14:37) 

おおくぼ

ホッケースティック論争は、どちらかが正しいとは決まっていないと思います。
だから科学的な決着は、あと数十年はかかると予想しています。

ホッケースティック説が間違い(あるいは捏造)であって欲しいと願う人達が、針小棒大に騒いでいるとしか思えません。
そんなのは科学的な態度から最も遠い態度です。
科学的な態度など、どうでもいい人達なの自由ですけど。

現時点では私は、ホッケースティック説が正しいとは思わないけど、間違いとも思っていません。
by おおくぼ (2010-01-01 16:24) 

おおくぼ

>いまさら「地球温暖化はウソだ!」「学者が国民の目を欺いて予算を取ろうとしている!」
>「先進国が途上国に足かせをはめるための陰謀だ!」などと騒ぐのはやめた方がよい。

1980年頃から、はっきりした温暖化があるのは統計的事実だと思います。
だから、仮にCO2が原因ではなくても、温暖化による被害があるのも事実です。
もし温暖化の原因がわからなければ、研究する費用が必要になります。
また温暖化によって被害が出るなら、被害対策の費用が必要になります。
「温暖化」を「地震」や「津波」という言葉に変えて考えれば明快です。

また温暖化とは関係ないかもしれませんが、大気汚染は地球規模で酷くなっています。
そしてエネルギー資源を巡って、多くの戦争が起こっています。
だから温暖化と関係あるないにかかわらず、大気汚染とエネルギー開発は各国の政府が連携して、真剣に取り組むべき大問題だと思います。
by おおくぼ (2010-01-03 14:28) 

綾波シンジ

この件に関しては、結構慎重に見ています。適切と思えない根拠で書かれているのを見ると、慎重に書かれてきたはずのMANTAさんがどうしたの?という思いです。

>このようなウソはいずれ暴かれるか、あるいはウソではなく”大胆な仮定”であったことが立証される。 これが科学である。

との表現の意図は何となく分かりますが、読者の方にそれが通じているのか、心配です。

研究成果は、その後に続くより質の高い研究成果によって上書きされていくものであって、早晩、Mann et al. (1998)あたりは消え去っていって然るべきもののはずです。そして、並列表記されている現在(といっても2007年)はその過渡期のはずです。その古気候復元を「正しいか」「正しくないか」で論じ出すような論調にこそクギをさして頂けたらと思うのですが。(その意味で「ホッケースティックを過去のもの」という必要はあるとおもうのですが)

by 綾波シンジ (2010-01-03 23:01) 

MANTA

おおくぼさん、綾波シンジさん、コメントありがとうございます。お二人のコメント
には「過渡期」「正しいか、正しくないか」というキーワードが含まれています。
(おおくぼさん)
>ホッケースティック説が正しいとは思わないけど、間違いとも思っていません
(綾波シンジさん)
>研究成果は、その後に続くより質の高い研究成果によって上書きされて
いく
特に綾波シンジさんは本連載のスタイル変化を敏感に感じておられるようで
敬服します。

解明された自然現象を「科学」と呼びますが、解明途中もまた「科学」です。
地球温暖化の科学は解明途中の科学の典型例でしょう。この記事が過去の
記事に比べて慎重な書きぶりに見えないのは、連載当初から比べると随分と
温暖化の科学の最先端まで踏み込んでいることを意味するのでしょう。
とはいえ、「ホッケースティック曲線」の真偽は、本連載記事に述べたとおり
です(総論はここ100年の温暖化を支持するが、各論では誤差が大きい)。

本記事の重要な変化は、「地球温暖化支持派」「懐疑派」という、端的な見方から
本連載を自由にすることです(※本連載はそもそも、どちら派でもないのですが
勝手に支持派に分類されているようです)。一度、CO2要因ではない地球温暖化
にフォーカスしてみて、それからあらためてCO2の影響を考えてみると言う、
読者から見た視点の転換を試してみたいとおもいます。

最後に、私自身はホッケースティック曲線にほとんど興味を持っていません。
現在を含む未来の地球温暖化については、誤差の大きい歴史的データのみでは
なにも分からないことが理由です。むしろ衛星データ等に基づく、近年の温暖化
研究に注目したいと思います。
by MANTA (2010-01-04 06:21) 

MANTA

補足です。
(おおくぼさん)
>だから温暖化と関係あるないにかかわらず、大気汚染とエネルギー開発
>は各国の政府が連携して、真剣に取り組むべき大問題だと思います。
同意しますが、この連載の第1回目に書いたように、それらの問題がごちゃ
まぜになって、地球温暖化の議論がなされるのを危惧します。この連載では
まず科学的知見を私の理解できた範囲(+執筆時間)でまとめたいと思い
ます。連載タイトルにもあるように「エネルギー問題」も取り上げていきたい
とは思っています。

(綾波シンジさん)
>適切と思えない根拠で書かれているのを見ると
些細な1行ですが「適切と思えない根拠」が本記事のどこにあるのか、ご指摘
頂ければ幸いです。私は「適切」と考えていますが。

by MANTA (2010-01-04 06:25) 

綾波シンジ

>解明途中もまた「科学」

MANTAさまの考えの程は、この頂いたコメントを見る限りでしか分かりませんが、そのスタンスは私も大事だと思います。

どうも世間では、「IPCCという全く間違いのない組織が出した、地球温暖化という絶対堅固な既成事実」がある、と捉えられているのかも知れません。その「結果」を元に考えてしまうから、少し異論(のようなもの)があると、そっちに靡いてしまうような現状があるのかな、と見ています。

>どちら派でもない

「懐疑派」という定義自体、不思議な感じがします。本来的には、十分に根拠を疑いながら理解していくことが「懐疑的」であって、適当な根拠で温暖化の「犯人」を、CO2にしたり、宇宙線にしたり、太陽活動にしたりする論議では無いはずですから。
(適当な論証で温暖化論争に口を突っ込みだした人達がskepticsと自称しだしたので、おかしな表現になっている、ということかも知れませんが)

 その意味で、支持派でも、所謂懐疑派でもない、というスタンスは大事かと思います。


ところで、古地磁気を扱われているMANTAさんが言われる「誤差の大きい歴史的データ」という表現の意味は、おそらく私たち、その道の研究をしている人たちには、その不確実性の大きさとともに理解すべき、という意味に受け取れるかと思いますが、それで宜しいでしょうか?

この「不確実」を述べた時に、一般の読者の方が、「じゃあ信頼できない。ウソだ」と極端な誤解に走らないような、但し書きが必要では無いかと、最近思っています。すなわち、その信頼性がどんなものか、どう理解が進んでいるのか?という、一般の人からすると、けだるい、どうでも良いような部分を、どう説明出来るか?ということです。

>「適切と思えない根拠」
「IPCC AR4から削除された~」云々との記述はどこからですか?努力して、「適切」と言ってよい程度に調べた記述がなされている情報源が根拠となっていた、とは思いにくいのです。(既にtmiyamaさまからの指摘で文章は変わっていますが)
by 綾波シンジ (2010-01-04 12:42) 

おおくぼ

環境問題論争で重要なのは、中立の立場を貫こうする強い意思だと思います。
「敵か味方か?」で、抗争するヤクザ映画みたいなのは、科学者としてはマズイと思います。


by おおくぼ (2010-01-04 16:08) 

おおくぼ

追記

上のコメントはMANTAさんを批判しているのではなく、同意しているコメントです。
勘違いされることはないと思いますが、念のために。
by おおくぼ (2010-01-04 16:11) 

MANTA

>その不確実性の大きさとともに理解すべき、という意味に受け取れるか
>と思いますが、それで宜しいでしょうか?
綾波シンジさん、すばらしい指摘です。ですので踏み込んでお応えいたし
ましょう。

不確実性の大きさをどうとらえるか?これは研究者と、一般市民で大きく
異なります。研究者は「こんなに大きな誤差だけれども、世界で初めて議論
ができるようになったんだ」と考えます。一方で、一般市民は「そんな大きな
誤差では話にならない」と考えます。その温度差は埋めようがありません。
なので研究者は努力しつづけるしかないのです。あえてきつい言い方をすれば
一般市民に受け入れられないレベルであれば、所詮その程度の「科学」で
あるともいえます。

本連載では、できる限り端的に温暖化の科学を理解できないか?(できれば
一般市民の目線で)を目指しています。あいまいさの残る研究成果は(実は
科学としては最も面白い段階なんですが)本連載では紹介の比重が軽く
ならざるをえないでしょう(むろん各研究には敬意を払った上でですが)。

>「IPCC AR4から削除された~」云々との記述はどこからですか?
記事の修正前から「(ホッケースティック曲線は)報告書本体には参照データ
として含まれている」と付記していました。原案でも問題ないとも思いましたが
tmiyamaさんのご指摘を受け入れて、上記のように加筆修正しました。
by MANTA (2010-01-05 02:44) 

MANTA

>「敵か味方か?」で、抗争するヤクザ映画みたいなのは、科学者として
>はマズイと思います。
おおくぼさん、同感です。ありがとうございます。
ただ最近は(何を目的としているのかよくわかりませんが)わけのわからない
イチャモンをつけてくる温暖化懐疑派の方が多くて閉口ではあります(苦)
そんな方に限って不勉強で、なおかつ自身のURLなど開示しません。
もはやネットイナゴの類と考えて無視したほうがよいのかもしれません。
by MANTA (2010-01-05 02:47) 

綾波シンジ

○研究者と、一般市民の温度差

なるほど、こういう表現がありますか。わかりやすいです。
おそらく一般の方は、完璧に理解出来ていないと不安なのでしょう。それが故に、わかりやすい答えを求めて、例えば温暖化では、いともあっさりと温室効果を否定し、太陽活動や宇宙線に原因を求めてしまう説に飛びつくという感じでしょうか。(そちらの理解の方が実は不確実であるにもかかわらず。)

○(ホッケースティック曲線は)報告書本体には参照データとして含まれている

細かく言えば、
本文には論文自体引用されて議論されていて、
当該論文の図自体は本文にもなく、
当該論文のデータセット自体はその論議を反映して複数掲載されている中の一つ、と言うことになるのでしょうか。
TARの時点から、AR4の時点で、Mannらの図の比重が軽くなった一般的な理由も含めて、一般の方に伝えていくことが必要なのかも知れません。

○ヤクザ映画
他の方の表現ですが、確かにそう思われているのかも知れませんね。支離滅裂な「論」でも、声を大にして言えば勝ち、と。(どっかの局の朝生討論あたりが「科学的やりとり」と思っている人が多いのかも)
by 綾波シンジ (2010-01-05 09:35) 

MANTA

綾波シンジさん、こちらの意図が少し伝わったようで安心しました。
>おそらく一般の方は、完璧に理解出来ていないと不安なのでしょう。
ところが、一般市民の方が科学的成果を完璧に理解することは無理です。
では、科学的理解には何が重要なのでしょうか? これも興味深い問題です。
ここで一旦筆を置き、別の連載「科学コミュニケーション」でこの問題を取り
挙げてみたいと思います。ちょっと先になると思いますがお楽しみに。

>TARの時点から、AR4の時点で、Mannらの図の比重が軽くなった一般
>的な理由も含めて、一般の方に伝えていくことが必要なのかも知れません。
tmiyamaさんも同様のことを「reference(IPCCの議事録とかあれば)が
知りたい」と書かれていました。真実はむろん調べてないので分かりませんが、
IPCC報告書は学術論文ではありません。政治的な取り決めにも利用される
ものですから、本記事の様な世論に左右されることはむしろ普通ではないで
しょうか?
by MANTA (2010-01-06 07:12) 

おおくぼ

私は、URLは名刺だと思っています。
こちらのブログには何度か名刺を渡したつもりなのですが、たまにしか書き込みをしないので、今回はURLを提示しました。
日本は発言の自由が保証されている国であり、自分のブログやサイトやツイッターで、温暖化に対して、自説を主張できますし、そのことは弊害があるけど、大事なことだと思います。
私は自分のブログで自分勝手な主張をたくさんしていて、同意してくれる人もいれば、反発する人もいます。
対立する主張や独立した主張の存在が許されるというのは重要なことです。
科学者の発言が国家によって厳しく規制されていたら、自由な発言や議論は難しいです。
科学は事実に対して忠実であるべきであり、そのためには発言の自由が保証されていなければいけません。
また事実に対して忠実だからと言って、科学者の意見が全員一致するわけではありません。
私は懐疑論者のつもりですが、他の懐疑論者の主張を読んでいると、科学者の主張を真と偽で明快に分割できて、自分たちは永遠の真の側にいるという信仰を持っているとしか思えないのです。
by おおくぼ (2010-01-06 13:51) 

綾波シンジ

○科学コミュニケーション
博士課程などで数年に渡って叩きこまれて、意識せずに理解している「ベース」があるのだと思います。パソコンで言うOSのようなものでしょうか。
MANTAさまがパッと見て「明らかな間違い」と分かる事でも、そのベースが備わっていない人には伝わらないことは容易に想像出来ます。そのベースのOSを瞬時に埋める、というのは非常に難しいことのように思えます。
MANTAさまがどのような切り口で臨まれるか、楽しみにしております。

○tmiyamaさん・・・
tmiyamaさんは、IPCCの議事録まで遡っておられるようです。恥ずかしながら、私とのレベル差を痛感しました。
by 綾波シンジ (2010-01-06 22:22) 

おおくぼ

過去千年間の「地球規模」の気候変化を測定するのは、極めて困難だと思うのです。
その例としては、日本の屋久杉から再現した気温を巡る論争を見ればわかると思います。

参考までに・・・以下のサイトの・・・

http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho

第三章の「温暖化問題の科学的基礎」のpdfファイルを見てください。

<議論9 過去約2000年間の気温変動に比べれば、過去約100年間の温暖化は異常なものではない。>

抜粋して引用します。

>すなわち、少なくともこの個体に関しては、大気CO2の変動とは異なる、その木が育った環境からの影響が圧倒的に大きいことが明らかである。
>また、古気候学の常識的に考えても、1本の樹木年輪のデータから全球的な変動を再現することは不可能である。

by おおくぼ (2010-01-06 23:47) 

MANTA

>私は、URLは名刺だと思っています。
おおくぼさん、そういってくれるとありがたいです。ぶしつけな質問でも、初心者的質問でも「お名刺」ひとつおいていっていただけると嬉しいです >皆様

>博士課程などで数年に渡って叩きこまれて、意識せずに理解している
>「ベース」があるのだと思います。パソコンで言うOSのようなものでしょうか
綾波シンジさん、私もそうだと思います。このブログをはじめたきっかけの
ひとつは、そんな「プロ的コミュニケーション術」だけでなく、「素人的な術」
も身につけたかったからです。なので、よほど酷いコメントでない限りは、
削除もしませんし、ちゃんとお返事いたすようにしています。
今後とも、よろしくお願いいたします。
by MANTA (2010-01-07 08:49) 

MANTA

>過去千年間の「地球規模」の気候変化を測定するのは
>極めて困難だと思うのです。
おおくぼさん、ご紹介いただいた資料も拝見しました。 古文書に基づく歴史
地震の議論に似た印象を持ちました。 木1本では古気候すべての議論は
できませんが、とはいえ 貴重な1本でもありますね。

一方で氷床データからはこんな結果も出ているようです。
●Hockey stick observed in NOAA ice core data
 http://wattsupwiththat.com/2009/12/09/hockey-stick-observed-in-noaa-ice-core-data/
※最新データが1900年までであることにはご注意!
 2000年の気温は1900年より0.6~0.8℃程度上昇しています。
これをみると、紀元後1000年頃の気温はいまと同程度に高く、その前後の
気温変化も現在と同程度に急です(とある氷床データの結果に過ぎませんが)。
なんにしても、ここ数百年の間では、最近100年の気温変化が激しいことは
疑いようのない事実のようです。
by MANTA (2010-01-07 17:46) 

おおくぼ

私は、素人ですが、温暖化の原因は太陽説だと思っています。
でも、因果関係はよくわかりません。
丸山茂徳先生の宇宙線(雲)説は、まったくダメだと思います。
私は、地球の電離層に謎を解く可能性があると思っているのが、現時点では裏付けのための相関性の明確なデータはありません。

私の仮説を簡単に説明すると・・
太陽が地球の電離層に影響を与える →  大気の流れと海流の流れが変化する→海水温が変化する→地表の温度が変化する

海水温の変化によって、地表の温度が変化したと考えると、北極圏の温度上昇と南極大陸の内陸部の地表温度が変化しにくい理由が両方説明できると思うのです。

by おおくぼ (2010-01-08 21:05) 

おおくぼ

追記

もちろん、現時点では仮説の域を出てませんので、気長に考えたいと思っています。
by おおくぼ (2010-01-08 23:55) 

MANTA

>私は、素人ですが、温暖化の原因は太陽説だと思っています。
>でも、因果関係はよくわかりません。
おおくぼさん、Niceタイミングです。次回記事は「再・太陽活動だけでは
地球温暖化は説明できない」で、太陽活動変化に同期する現象では温暖化
はやっぱり説明できないというお話です。お楽しみに。

海水温変化が地球の気温をコントロールしているのはその通りで、エル
ニーニョが代表的ですね。電離層変化→海流変化は(私の専門分野に近く
なりますので)興味津々ではありますが、本連載ではでてこないかなぁ…
by MANTA (2010-01-09 13:12) 

おおくぼ

水を差すようで申し訳ないのですが、次回記事を出る前に書いときます。

私も現時点では、「太陽活動だけでは地球温暖化は説明できない」という意見に同意します。
でも、だからと言って、そのことが「二酸化炭素+太陽活動」で温暖化が説明できるというのは、飛躍だと思うのです。

私は二酸化炭素の温室効果をもちろん認めています。
過去2百年間で、急速に増えた二酸化炭素の原因は、人間が最大の原因だと思っています。
そして、二酸化炭素が増えれば、二酸化炭素の温室効果も増えます。

でも私は二酸化炭素の温室効果が、過大評価されていると思うのです。
ただ温暖化と関係なく、二酸化炭素の削減には大賛成です。
by おおくぼ (2010-01-09 16:39) 

MANTA

おおくぼさんには、すっかりこちらの手の内がばれているように思います(笑)
今後、過大評価かどうかを考えて見たいと思います。お楽しみに。
by MANTA (2010-01-09 17:50) 

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