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電磁気で地震予知 ~宏観異常では地震予知はできない(14) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

連載「電磁気で地震予知」の第14回目です。前回の「大気イオンで地震予知?
の記事が某掲示板に紹介されたらしく、多くの人にお読み頂いているようです。
ご愛読ありがとうございます。その某掲示板を見ていると、
以下を地震の前兆と考えてる人が多数おられました。
 ・耳が痛む、眠気がおそってくる。地面から音が聞こえた。
 ・ペットが朝からうろうろしてる、蟻が2階に上ってきた。金魚が暴れた。
 ・お風呂のお湯が濁っている、携帯のつながりが悪い。なんだか臭い。
こういう普段は見慣れない現象を大きな地震の前触れと考えて、地震を予知しよう
という試みは昔からあり、「宏観異常現象」という名前も付けられているのですが、
世の中そう簡単には地震予知はできません。今日はそんなお話を。

さて世はネット時代。宏観異常現象とやらも、ネットで日々その増減を見ることが
できます。例えば下記サイトでは、地震の前兆かな?と思われる異常現象を、
パソコンや携帯から報告できるサービスを開始しており、集まった異常報告数も
WEBで公開しています。なかなか良いアイデア、良い試みだと思います。
●みんなの力で地震予知しよう!(地震防災チームジスラボ)
 http://jislab.jb-network.org
 ※昔はグラフで公開されていましたが(http://blogmeter.jp/pub2.php?id=5795
  最近は数字のみ公開されてます(http://yochi.j-jis.com/
先日ご紹介しましたNPO法人e-PISCOさんでも同様のサービスがありますが、
ジスラボさんのほうが報告数が多く、実際の地震との対応を考えやすいです。

ではジスラボさんの公開データに基づいて、昨年5月に中国で起きた四川大地震の
頃の宏観異常の報告数変化を見てみましょう。

eq1.jpg
    地震の数日前に宏観異常現象の数が増えている?

上記グラフを見ると、宏観異常現象が四川大地震前に急増しているように見えます。
あら?宏観異常現象で地震予知ができちゃいました?
でも種明かしすると以下のようです。
・上記期間(2008/04/16~6/30)に国内で震度5弱以上が観測された地震は以下。
 2008年5月 8日 01:45:18 深さ51km M7.0 茨城県沖
 2008年6月14日 08:43:45 深さ 8km M7.2 岩手・宮城内陸地震
 2008年6月14日 09:20:12 深さ 7km M5.7 宮城県北部
 ※気象庁ホームページ 震度データベース検索より
  http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/shindo_db/shindo_index.html
・これらを上図に追加するとこうなります。

eq1.jpg

このように国内外で大きな地震が起きると、その少し「後」に宏観異常の報告数が
増加します。例えば茨城県沖や岩手・宮城内陸地震ではいずれも地震発生から
1~2日後にピークを迎えています。ここで興味深いのは四川大地震の場合です。
地震から4日も後の5/16にピークを迎えていますが、これは四川大地震の報道が
国内で盛んになされ始めた頃と概ね一致します。
例えばYahoo!ブログ検索によれば、「四川大地震」の注目度の推移は次のようです。
eq5.jpg
地震発生後3~7日経って、ブログでの注目度が上がっているのは、この頃に
国内の新聞・TVで具体的な地震被害の様子が盛んに報道されたためでしょう。

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同様の結果は、先日の駿河湾の地震でも見られます。同じくジスラボさんに基づくと…
eq2.jpg
こんなグラフを書くことができます(※ジスラボさんでは最近、西日本と東日本で
報告数を分けてカウントされています)。8/11の駿河湾の地震の前(8/9)、異常数に
小さなピークが見られますが、これは8/9の東海道南方沖の地震(深さ333km、M6.8、
東京での最大震度4)に対応するようです。一方、8/11以降、異常数は何度かピークを
迎えていますが、この間大きな地震は起きることなく異常数は収束に向かっています。

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以上をまとめると、宏観異常現象は地震の前兆どころか、地震発生後の影響を強く
受けているようです。なぜでしょうか?
私見ですが、宏観異常現象とは人間の心理が生みだした物ではないでしょうか?
例えば地震の揺れを感じたり、地震報道を見た後で、不安や恐怖を感じて
「そういえばこないだ猫が妙に鳴いていた、あれは地震の前触れだったのでは?」
「いま雲が変な色だ。これから地震が起きるのではないか?」
といった心配をしているにすぎないように思います。

宏観異常現象には種々あるのに、このような十把一絡的な扱いは荒っぽいかも
しれません。例えば地震の前の変な雲(=地震雲)や、家電製品の誤作動など、
個別の宏観異常に注目すればもう少し地震予知ができるのではないか?と考える人も
いるでしょう。しかし個別に見て言っても、宏観異常現象はさして当てにはなりません。
次回、ちょっと違う目線で見てみましょう。続きます。
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きこじじ

もう一月以上前になりますが、niceをありがとうございました。
とても興味深いことばかりで、色々と読ませていただいてしまいました。
本業のページまで見てしまいました。

7月に、横須賀のJAMSTECに息子が見学に行きました。私は道中具合が悪くなってしまい見学できませんでしたが、息子は非常に興味を持って楽しんできたようです。

また、7年前まで私の妹が京都の大学院で「電磁圏」(よくわからないのですが)の研究をしていて、やはり地震予知ができるとか言っていたので、あ~こういうことをやっていたのかなと、今は遠方にいる妹のことを思い出しました。

また、お邪魔させていただきます。


by きこじじ (2009-09-09 14:23) 

MANTA

きこじじさん、コメントありがとうございます。
>7年前まで私の妹が京都の大学院で「電磁圏」(よくわからないのですが)
>の研究をしていて、やはり地震予知ができるとか言っていたので
あら、では妹さんとニアミスしているかもしれませんね(汗)

by MANTA (2009-09-10 08:18) 

素風

宏観異常現象、なるほどー。以前ニュース番組の特集コーナーでやっていたような気がしますです。
これがもし有効ということになれば観測そのものへの関心が高くなりそうですが、安易にムーブメントにしてしまってはいけないんでしょうね。
なにはともあれ人によって宏観異常現象ととらえるかどうか判断に幅があるところが扱いにくそうな感じ。私は自覚があるくらい鈍感なのでデータ提供できないに違いないです。
by 素風 (2009-09-11 16:14) 

MANTA

>なにはともあれ人によって宏観異常現象ととらえるかどうか判断に幅が
>あるところが扱いにくそうな感じ。
素風さん、そういう切り口が重要だと思います。間接的なあいまいな情報で
一喜一憂するのではなく、もしも宏観異常現象が本当にあるのであれば、
できるだけ定量的に、かつ現象の原因にできるだけせまる観測をしないと。

でなきゃ、江戸時代にもう地震を予知できてますよ(笑)
by MANTA (2009-09-12 15:45) 

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