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電磁気で地震予知 ~地下の"格差"が地震を起こす(6) [ 知識ゼロから学ぶ地底のふしぎ]

前回は「ゆっくりすべり」というものを紹介した。
ひとつの断層の中でもゆっくりすべりを起こす部分と地震を起こす部分(アスペリティー)
は重ならずに棲み分けているらしい。同じ断層でどうしてこんなことがおきるのだろうか?

もっと大きなスケールで考えてみると、ヒントが得られるようである。
海側から沈み込んでくる海洋プレートのために、日本列島は全体的に東西(あるいは北西-
南東方向)に押し縮められているが、実際の縮み方は不均一であることが分かってきた。

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進歩その5:GPS観測によって神戸から新潟にいたる”歪が集中する帯”が発見された。

nktz1.jpg
黄色が「歪みが集中する帯」、赤は最近の大きな地震

GPSを用いれば広い範囲での地面の変形を精密に捕らえることできる。日本列島上には
1993年以降、続々とGPS地殻変動観測点が設置されていて、日本列島の変形を絶え間なく
観測している。通称、「Geonet」。「国土地理院」が1200箇所の観測点を運用している。

●日本列島の地殻変動 - 国土地理院
 http://mekira.gsi.go.jp/
このページにある「地殻変動アニメーション」を見てほしい。神戸~新潟に至る日本列島の
中軸部に向かって、日本列島がギュッっと押し縮められている様子が分かる。
もう少し学術的な図でも再確認しよう。

●歪み集中帯とは(名古屋大学)
 http://www.seis.nagoya-u.ac.jp/INFO/niigata070716/hizumi_shuchutai.html

1枚目の図では、青い地域ほどよく縮んでいる(といっても1kmの距離が、1年間でわずか
0.15mm程度縮む程度だ)。そしてこの神戸~新潟の地域では大きな地震が起きやすい
ようでもある(2枚目の図)

なぜ日本列島全体で等しく歪まないのだろうか?
なぜ歪みが集中する地域=「歪み集中帯」ができるのか?
その理由はまだ明らかではないが、ここ10年で進歩の目覚ましい
「地下の可視化技術」がその答えを出しつつある。

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進歩その6:地震波・電磁気学的探査の進歩による地下の可視化が進んだ。

自然の(時には人工発生させた)地震波や電磁波を用いて地下の断面図を得る方法は
どんどん進化している。いまや地殻はおろか、マントル、はては地球の核までも見通せる
ようになり、その解像度や情報量は年々増えつつある。一例として、沈み込むプレートから
マントルへ水が輸送されている様子がイメージされているようなので紹介しておこう。
まるで産婦人科で胎内の赤ん坊を見るがごとく、である。
●マントル深部への水輸送の地震学的証拠(東京大学地震研究所)
 http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/koho/press/2007slab/index.html

さて、「歪み集中帯」の地下の構造についていえば、次のようなことが分かってきている。
1)地殻の下部(深さ15~30km付近)では、地震の波の伝わる速度が遅いようだ。
2)またその部分には、電気が流れやすい物質もあるようだ。

nktz2.jpg

地震波の速度が遅くて、電気をよく通すものはなんだろうか?
いろいろ考えられるが「地下水を多く含んだ岩石」が一番考えやすい。水を含んだ岩石中
では、断層面はすべりやすい状況になる(ツルッもしくはスルスル!→こちら)。このツルッが
積もり積もると、神戸~新潟に渡る歪み集中帯になるのではないか?と考えられつつある。
また歪みの大きな地域の中に、部分的に地下水を含まないような「硬い」地域があると、
そこで大地震が起きるのかもしれない(つまりアスペリティーになるわけだ)。

同じことは一本の活断層についても言えるのではないか?同じ断層面でも地下水を
含む・含まないなどの不均質はあるのだろう。その結果、歪みの不均質、地震のおき方の
不均質(ゆっくりすべりか?地震か?)がおきているのはなかろうか?

まとめると、、、
「地下の構造が均一でない」
→「 歪みのたまり方も均一でない。特に地下水を含むような場所はよく変形する」
→「変形域の一部が変形しなければ、そこには歪みが蓄積して大地震を起こす」
ということのようである。
地下の不均質="地域格差"が、結果的には大地震を引き起こしているようだ。

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このように、地面の変形の精密観測と、地下構造の可視化を組み合わせると、
どこで大地震が起きるかが予め判明する可能性がある。

ただし「地下の格差が地震を起こす」のかどうかは異論もあるだろう。例えば歪み集中帯と
地震発生分布はあまり一致していないのではないか?という指摘がなされていたりもする。
●地震発生分布はひずみ集中帯とあまり一致しないそうだ(Hori's Weblog)
 http://www.horijp.com/blog/archives/2007/12/post-785.html
 ※読売新聞の引用

続きます。
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飛騨の忍者 ぼぼ影

飛騨高山に住んでいるのですが、地盤が固いため地震には強いと土地だと聞きました。実際の所どうなんでしょうね。
by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-03-26 13:31) 

MANTA

>実際の所どうなんでしょうね。
高山自体は地震は少ないですが、岐阜ー富山県境の跡津川断層は大きな
地震を起こします。また高山の南にある阿寺断層も活動度の高い断層です。
岐阜県の下記サイトが読みやすいと思います。
http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11117/portal/katsudan.htm
by MANTA (2008-03-27 22:12) 

SAKANAKANE

多忙の為、ご無沙汰してしまいました。
段々と解明が進んでいるのですね。
地下水が大きな役割を果たしているとは、知りませんでした。
GPS網が、アメダスなみになったら、スゴイでしょうね。
by SAKANAKANE (2008-03-30 13:09) 

MANTA

>多忙の為、ご無沙汰してしまいました。
いえいえ、SAKANAKANEさん、こちらものんびりやらせていただいて
おります(特に連載は)。

>GPS網が、アメダスなみになったら、スゴイでしょうね。
じつはですね、すでにアメダス並みなのです。
アメダスは全国に約1300ヶ所、GPSは約1200ヶ所。ねっ?
地面の中を知るのは天気予報と違って難しいのです…
by MANTA (2008-03-30 23:08) 

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